放課後の教室に、張り詰めた緊張が漂う――はずだった。
しかし、今この場に集まった面々の表情には、焦燥や不安ではなく、戸惑いと絶望が色濃く滲んでいた。
教室の前に立つ月詠は腕を組み、静かに一同を見渡す。
「よいか主ら?」
その声は冷徹な刃のように研ぎ澄まされ、教室全体を一瞬で支配する。
「今集まってもらったのは他でもない。明日のテストで赤点を取らないようにするための対策授業じゃ」
対策授業。
響きだけを聞けば、至極真っ当な補習に思える。
しかし、次の一言が、一同の運命を大きく狂わせることとなる。
「今日担当する教師は、わっちと……ヅラじゃ」
「ヅラじゃない桂だ!!」
即座に桂の訂正が入るが、誰も聞いちゃいない。
いや、それどころではなかった。
ここで二乃の怒りが炸裂する。
「ちょっと待ちなさいよ!!」
「なんじゃ?」と涼しい顔の月詠に対し、二乃は眉を釣り上げながら詰め寄る。
「なんじゃ?じゃないわよ!!」
「どうして教師枠に長髪ロン毛侍がいるのよ!?それに……」
二乃の目が、晴太の姿を捉えた。
「……どうして高校生の補習に中学生が紛れ込んでるわけ!?」
「なんだよ!居たら悪いのかよ、生意気娘!」
晴太が反撃する。
火花が散る二人の視線。まるで戦国時代の宿敵同士のような張り詰めた空気が走る。
「二乃殿、落ち着くんだ。」
桂が場を収めようとするが、説得力が皆無だった。
「説明するから落ち着かんか、主ら。」
月詠が話し始めると、ようやく二乃も一歩引く。
「二乃。今回のテストはな。**30点分は中学生と同じ内容にしておるんじゃ……**だから、中学生の晴太も参加しておるんじゃ」
「……」
二乃は納得したようなしないような、釈然としない顔をしていたが、反論の余地はなかった。
「そして、なぜ教師枠にヅラがいるのかについてじゃが」
「ヅラじゃないかーー」
シュバッ!!!
月詠の手元が一瞬、閃いた。
「ぐふっ……」
桂の額にクナイが正確に突き刺さる。
そのまま桂は見事な仰向けの体勢で床へと崩れ落ちた。
「……バタン。」
教室に静寂が戻る。
「**こやつはこう見えても、あの上杉と同じ学年一位……**たまには別の人から学ぶことも大事と上杉から頼まれて連れてきたんじゃ」
「え?」
みんなの視線が、一斉に床で倒れている桂へと向けられる。
**「こいつが!?」**という驚愕の色が浮かぶ。
「さて……早速授業といくか。」
月詠は鋭い視線を放ちながら、ゆっくりと口を開いた。
「じゃあまずは……」
「皆、目を隠せ。」
「……は?」
「そして……クナイと番号のカードを大量に投げる。 わっちが事象を言うから、主らは目隠しをして気配でクナイだけをよけて、年号の番号が書いてあるカードを取れ。」
「いや無理でしょ!?」
「ちょっと待って!!何突然高難易度の問題出題してんの!?」
晴太が叫ぶ。
「それにクナイを投げるなんてほぼ拷問じゃない!!パワハラよ、パ・ワ・ハ・ラ!!」
「いいよ、準備は出来てる。」
三玖が静かに目隠しをつけ、すっと立ち上がる。
「ちょっと三玖!?」
四葉が慌てて止めようとするが、もう遅かった。
桂も復活し、すっくと立ち上がる。
「では行くぞ!!」
「問題!風紀委員会真選組、これをなんと読むか!!」
「こんな簡単な問題なら解けるよ。でも……」
「取れないィィィィ!!」
視界を奪われた状態で、四方八方から飛び交うクナイとカード。
悲鳴が飛び交い、阿鼻叫喚の嵐が巻き起こる。
「正解はクズだ。」
桂が淡々と告げる。
「俺の中では常識だな。」
「ということで、みんな不正解。月詠先生……」
「主も真面目にやれェェェ!!」
ドシュッ!!!
月詠の放ったクナイが、教室にいるみんなの頭に再び突き刺さる。
「ギャァァァァァ!!」
――これは、テスト前日の放課後。
戦場と化した教室で、補習は――いや、生存戦争は幕を開けたのだった。
壁に突き刺さったクナイが小刻みに揺れる。教室の床には無数のカードが散乱し、まるで戦の跡地のような有様だ。
「……はぁ……はぁ……」
教室内にいる生徒たちは、息を切らしながらも目隠しを外し、虚ろな目で一点を見つめていた。
そこへ、この騒動を聞きつけた銀八が、ゆるりと教室に足を踏み入れる。
銀八「……歴史の勉強してたんじゃねーの?」
額に手を当てながら、教室内の惨状を見回す。
銀八「何? 先生が途中で『よし、今日はドッジボールやろうぜ』みたいな展開になったわけ?」
銀八の視線は、天井にぶら下がるクナイ、床に散乱するカード、そして何よりも、床に倒れ込んでいる桂へと向けられる。
「……」
桂、無言。
まるで討ち死にした武将のように横たわるその姿に、銀八は肩をすくめた。
月詠は咳払いを一つすると、腕を組み、堂々と答えた。
「ねっ……年号暗記だけでは歴史は学べん。」
その一言に、銀八は盛大に眉をひそめる。
銀八「いや、そりゃそうかもしんねーけどよ……」
月詠の言葉を引き継ぐように、桂がすっくと立ち上がり、意味深に天を仰ぐ。
桂「だから一つ隠し味を入れて、印象をよく捉えてもらえるように出題したのだ。」
**「隠し味」**というワードに、銀八の眉がさらに深くなる。
「……」
この時点で、嫌な予感しかしない。
銀八「……で、何をやらかしたんだよ?」
桂は自信たっぷりに胸を張り、こう続けた。
「関ヶ原の戦いを、細かく説明しすぎてしまったのだ。」
銀八「……いや、何出題を料理の解説みたく語ってんの?」
銀八のツッコミにも関わらず、桂は頷く。
「ちなみに、授業の成果として、一つ聞こう。」
銀八は腕を組み、わざとゆっくりとした口調で問いかける。
「関ヶ原の戦いは何年?」
「せ……」
「1,600本のクナイ……」
生徒全員の震えた声が、ぴたりと揃う。
銀八「変な覚え方しちゃってるよ!!」
銀八「年号暗記どころかトラウマ刻まれちゃってるよ!?」
生徒たちは、一様に過去の戦(=補習授業)を思い出したようにガタガタと震えていた。
「歴史を学ぶはずが、歴史に怯える人間を生み出しちまってんじゃねーか!!」
月詠は口をへの字に曲げ、少しバツが悪そうに視線を逸らした。
「し、仕方ないじゃろーが。あやつらに突然補習授業を頼まれたんじゃから!!」
「いつものように授業の準備ができていたわけじゃないんじゃ!!」
桂も肩をすくめながら、どこか遠い目をして語る。
「そうだ。俺はただ皆にこの世の不条理に対しての考えをーー」
「テメーは黙ってろバ革命ヅラ子。」
銀八の冷酷なツッコミと同時に、月詠のクナイが再び飛ぶ。
ドシュッ!!!!
桂、再び撃沈。
「……バタン。」
今度こそ、完全に沈黙した。
一花が銀八の袖を軽く引っ張りながら、しれっと言い放った。
「この際だから銀八先生でいいから対策授業してほしいな〜」
銀八「え?」
何かの聞き間違いかと思ったが、次の瞬間、その願望は思いのほか大きな支持を集めることになる。
晴太「そうだよ銀八先生!助けてくれよォ!!」
晴太は銀八の足にしがみつきながら、涙目で懇願する。
晴太「オイラはもう月詠姐の勉強は嫌だ〜!!5教科全部嫌だ〜!!」
そう言いながら、必死に銀八にしがみつく。まるで沈みゆく船から逃げ出したい乗客が、最後の希望の浮き輪にすがるように。
晴太「オイラはもう地理も数学も古典も嫌だ!」
晴太「保健体育の授業がしたいよ!!」
銀八「はなせ。保健体育なんてなぁ、思春期迎えたらみんな100点取れるようになってんだよ」
銀八「そんなに受けたいなら、あのドMストーカー(さっちゃん)にでも習ってこい!」
銀八が吐き捨てるように言った瞬間、三玖がボソリと呟く。
「あの人、いつも銀八先生に抱きついて、どうしても私のギントキに手を出してるようにしか見えないから、やだ。」
銀八「……すごい執着心持っちゃってるよ〜この子。」
銀八「それにさらっと『私の』って言ってるし!!」
銀八「嫉妬するよ〜この子。浮気でもしたら包丁持って襲ってくるよ、この子。」
三玖「包丁じゃない。刀で追い詰める。」
銀八「すいません!!ここに北条政子(嫉妬深い女性)がいるんだけど!!」
銀八は思わず一歩後ずさる。いや、後ずさったところでどうにもならない。ここにいるのは、歴史上の最強の女傑に匹敵する執念深さを持つ少女なのだから。
銀八「というか何でここではギントキって名前読み?あいつ(銀時)の前ではなんで銀さん呼びなの?」
三玖「ギントキの前ではさん付しないと……」
銀八「なんで『私の』って独占しときながら、そこだけチェリーなんだよ!!そこはせめていけや!!」
そして、突如として乱入するもう一人の狂戦士(食いしん坊)。
五月「もう!なんでもいいから早く始めてください!!」
四葉「すごい、五月さんからやる気のオーラが滲み出ています……!」
神楽「そうネ!この茶番劇を早く終わらせて帰らないとーー」
五月・神楽「今日から発売される限定フカヒレ肉まん買えないじゃないですか!(アルか!)」
ズコー!!
銀八「オメーラこんな時まで飯の心配かよ!?」
銀八「それより明日のテストの心配でもしたらどうなんだよレッドポインターガールズ!!」
月詠「そうか。そんなに終わらせたいなら……」
静かに立ち上がる月詠。その手には、見慣れたクナイと……見慣れぬこけし。
月詠「今からこのこけしとクナイを投げるから、それをーー」
銀八「オメーは何を終わらせようとしてんだよ!!人生か?こいつらの人生とオメーの人生を終わらせるってか!?」
月詠「違うぞ。これはある合戦での出来事をーー」
銀八「お前はほんとに何ヶ原の戦いを教えようとしてんだ!!」
教室に沈黙が広がる中、銀八が深くため息をついた。どこか悟ったような顔で、教壇に腰掛けると、ダルそうに手をひらひらと振る。
「はいはい、もう分かったよ。じゃあ今日は俺が対策授業の担当になってやるから。」
その言葉を聞いた瞬間、一同の顔に驚きと警戒が混ざる。だが、その前に銀八は続けた。
「ツッキー。テメーは俺の残業代を増やしてくるように学園長様に伝えこい。」
銀八の言葉に、月詠は鋭い眼差しを向ける。
「……仕方ない、行ってくる。」
そう言い残し、彼女は無言で教室の扉を開け、ガラガラと引き戸を閉めながら姿を消した。
——そして、月詠が去った瞬間。
五月・三玖・四葉を除く全員の表情が、一瞬にして変わった。
ニ乃、晴太、神楽、一花、桂——彼らの顔には、まるで夜神月のような邪悪な笑みが浮かんでいた。
心の中で全員が叫ぶ。
『計画通り……!』
まるで作戦が成功したことを確信するかのように、彼らは自信に満ちた顔で互いに目配せを交わす。
「これで一番警戒すべき先生はいなくなったわね。」(二乃)
「まさか本当にあの月詠姐が出ていくなんて……。」(晴太)
「良くやったネ。アイツ授業を真面目にやったところ見たことないから、これでサボり放題ネ。」(神楽)
一花はあくびをしながら、のんびりと机に突っ伏した。
「さて、あとは寝るとしようかなぁ。」
——しかし、その楽園のような空気は、一瞬で崩壊する。
銀八「おいおい、何テメーらサボろうとしてんだよ。やるぞ、補習。」
何気ない口調で放たれた一言。しかし、それはこの場にいる全員の心臓を凍りつかせた。
ズゥゥゥゥゥ……
一花、二乃、晴太、神楽の顔から一瞬にして血の気が引く。
二乃「はぁ!?なんでいつもやる気出してないアンタが授業の準備しちゃってるのよ!!」
銀八「いつもは学校に行ってるだけで金が入るからな。テキトーにやってても授業さえやってれば問題ないの。」
銀八「だが!放課後は違う!! 放課後に授業をやれば残業代が出る。しかし、これは真面目にやらないと金がでねぇ……」
銀八「つまり、ここから仕事人・坂田銀八として授業を行うから覚悟しとけよ〜。」
一花「えぇ〜!?」
晴太「なんだよ、ノリ悪りぃなぁ。せっかくのチャンスだったのに……」
銀八「男はなぁ、ちゃんとしないといけない時はビシッと決めなきゃいけねぇんだよ。」
そう言って、銀八は黒板に「期末試験対策」と大きく書き込む。
しかし、その横で桂がスッと手を上げる。
桂「よし、『花の慶次』十巻を開くんだ。安心しろ、みなの手元にはエリザベスが配っておいたからな。」
全員「仕事はや!!」
銀八「さてと、みんな開いたか? これ、一巻終わったら一旦休憩——」
ザシュッ!!
突然、黒板の端にクナイが突き刺さる。
銀八「!?」
月詠「授業の方はどうですか?」
——キランッ
クナイが不気味な光を放つ。銀八は無意識に喉をゴクリと鳴らす。
月詠「そのまま休憩に入りましょうか? 永劫の……」
銀八「い、今から始めるとこなんでどうぞお構いなく!!」
月詠「どうぞよろしくお願いしますね……殺せんせー。」
銀八「変な呼び方されてんだけど!? いつでも玉取る気みたいですね〜!?」
桂「すまないな銀八先生。玉をとったら何も残らんかった。」
銀八「マジで取るやつがあるかァァァァァ!!」
こうして、計画通りだったはずの放課後補習は、またしても戦場へと変貌していくのであった……。
月詠が不敵に微笑みながら廊下に立ち、静かに言い放つ。
月詠「そろそろ鎌倉時代の後期……逃げの若君とか、それに近いぐらいには到達しましたよね?」
銀八は、まるで戦の狼煙を上げる武将のように勢いよく手を上げる。
銀八「あっ入りました! たった今、戦国の火蓋切りました!!」
——しかし、それを聞いた瞬間、教室の空気は一変した。
五つ子たち、一花、二乃、三玖、四葉、五月。
さらに神楽と晴太も、まるで城に攻め入られた民のようにパニックに陥る。
『早く銀八先生! 鎌倉時代のページ開いて!!』
バサバサバサバサバサ!!
教科書が一斉にめくられる。 まるで戦場で剣を抜く音のように、緊迫した空気が教室を包む。
だが——
銀八「オイ鎌倉時代っていつだっけ!?」
——その場にいた全員が、一瞬で沈黙した。
みんな「どんな教師!?」
晴太が半ば呆れながら手を挙げる。
晴太「つーか、いきなり鎌倉時代とか突入しちゃっていいの?」
三玖が静かに、しかし確実に本質を突く。
三玖「うん。セイタの言う通り。全然前の時代に触れてない……」
銀八は自信満々に、まるで長年の経験から導き出した真理を語るかのように答えた。
銀八「安心しろ。学生の間は鎌倉から戦国やっときゃ大体やっていけんだよ。」
銀八「それ以前とかほぼゴリラが槍を持って走り回ってただけだからね」
二乃が目を見開き、**「こいつ何を言ってるんだ……!?」**という表情を浮かべる。
二乃「フワフワしすぎでしょ!?」
四葉が恐る恐る手を挙げる。
四葉「じゃあ上杉さんから教えてもらった平城京から平安京の移り変わりとかは?」
銀八「平城京から平安京に遷都したっつったって、アレは洞窟から隣の洞窟に引っ越しただけだから」
五月「えっ!? 七九四鶯平安京はどうしたんですか!?」
銀八はドヤ顔で、まるで最も合理的な暗記法を編み出した学者のように語る。
銀八「違う!『794万たまったしそろそろ引っ越そうか母さん平安京』だ!」
五月「どんな暗記の語呂合わせなんですか!?」
四葉「じゃあ鎌倉時代は?」
銀八「それはーー」
銀八が語り出そうとした瞬間、隣にいた桂がスッと前に出た。
まるで歴史を語ることこそが己の使命であるとでも言うように、堂々と胸を張る。
桂「それは俺から説明しよう。」
桂「鎌倉時代は——男はゴリラのままで、さらに隣のかまくらに引っ越しただけにすぎん。」
二乃「400年まんじりとも進化してないじゃない!!」
エリザベス 『ところがどっこい』
桂「女たちは進化し——」
桂「人妻という新たな人種が誕生した。」
——バァン!!
桂の言葉と同時に、教室の黒板に突如現れる「人妻」の文字。
その横には、まるで戦国時代の美女図鑑から飛び出してきたような、気品溢れる女性のイメージイラストが描かれていた。
二乃「進化しすぎでしょォォォ!! 何男はゴリラのままなのに、女たちだけ劇的ビフォーアフターしてるのよ!?」
桂「母強し、とよく言うだろう。人妻は日進月歩していくのだ。」
二乃「完全にアンタの趣味でしょうが!!」
二乃は拳を握りしめながら叫ぶ。
二乃「完全にアンタの趣味でしょうが!!!」
桂「歴史とは、男が変わらずとも女が進化し、家庭を支えていくものなのだ。」
銀八「まぁ、3代将軍が出てくるまではゴリラのままだからな」
二乃のこめかみに青筋が浮かぶ。
二乃「どんだけゴリラ引っ張るのよ!!」
桂「それでは鎌倉時代の後半、3代将軍ぐらいのところから行くとしようか。」
二乃のツッコミを軽やかにスルーしながら、桂は悠然と語り出す。
二乃「無視するんじゃないってちょっと!!」
——バン!!
エリザベスがプラカードを掲げた。
『1297年 勝手にひと(1)づ(2)まイ(1)カ(9)せて殺されちゃったね三代将軍』
——ズゥゥゥゥン……
一同が沈黙に包まれる。
あまりにも強烈な語呂合わせに、全員の脳内が一瞬フリーズしたのだった。
桂「まずはこれからだ。それじゃ復唱していくぞ、せーの!」
——ドカッ!!
銀八「せーのじゃねぇよ。」
銀八の鋭いツッコミと共に、桂の頭に木刀が炸裂する。
桂「何をするのだ銀八先生! これで鎌倉の素晴らしい知識が積もっていくというのに!」
銀八「オメーの教え方だとな、人妻に対しての知識しか増えねーんだよ。」
神楽「ヅラ、お前の頭もそろそろ捨て時アル。」
銀八「ってことで人妻引っ張るヅラは一時病院に連れていくから、続きは俺が担当するぞ。時間がねぇから連続していくぞ。」
——バン!!
銀八が黒板にバババッと年号を書きなぐる。
銀八「まずはこれだ!」
銀八「人妻(ひとづま)をNTRのに、見(3)つ(2)かったら御成敗式目!(1232年)」
銀八「人妻(ひとづま)、いつ(12)も(7)シ(4)よ!文永の役!(1274年)」
銀八「人妻(ひとづま)、いつ(12)もハ(8)イ!(1)って手を出して痛い目を見る 弘安の役!(1281年)」
銀八「ってことで鎌倉時代はこれで完璧だ!」
——ザシュッ!!
月詠「それどこの歴史ですか?殺せんせー。」
——カランカラン……
教室に響く、クナイが黒板に突き刺さる音。
月詠の目が鋭く光り、銀八を静かに威圧する。
銀八「あっ、間違った。これ世界史の勉強だった……。」
通りがかった全蔵「そんな歴史、ジャンプにもジャンプスクエアにもねぇよ。」
何気なく横を通りながら、世界史の教師の全蔵がサラリと突っ込む。
もはや教室全体が一つのコント劇場と化していた。
月詠「これ以上歴史を歪めるのはやめろ。何を教えておるんじゃ貴様は。」
銀八「落ち着けよ。要はニュアンスさえ伝わればいいだろ?」
銀八「年号と事象さえ頭に叩き込めば、もうまんたい(問題なし)だろ。」
銀八「細かーいことより、まずは授業に興味を持たせることが重要なんだよ。」
五月がそっと手を挙げた。
五月「先生、質問があります。」
銀八「おっ、なんだ? わかんねぇことはどんどん聞けよ。」
五月「これ……本当にテストに出るんですか?」
銀八「いや、全然。」
——バァァァン!!!
その瞬間、教科書が銀八の顔面に炸裂した。
夕暮れのオレンジ色が、学校の屋上を静かに染めていた。
微かに吹く風がシャツの裾を揺らし、遠くからは部活終わりの掛け声が微かに聞こえる。
その場には、二人の男。
どちらも、成績も性格も異なるが、不思議と同じ方向を見つめていた。
銀時は、屋上のフェンスにもたれながらぼんやりと街を眺めている。
一方で、上杉は腕を組み、彼に問いかけた。
上杉「なぁ銀時」
銀時「ん?」
上杉「あいつら、どうなると思う?」
銀時「どうなるって? あのビジュの良さに個性の強さ。サンデー漫画の看板を担う大人気キャラになるんじゃーー」
上杉「そんなことを聞いてるんじゃない。今回の件についてだ」
上杉はため息混じりに銀時を睨む。
だが、銀時は相変わらず気の抜けた顔で空を見上げている。
上杉「俺は、あいつらが今回のテストで赤点を回避するのは無理だと思っている」
「何故なら、成績ってものは一朝一夕で上がるもんじゃないからな」
「……でも、確実に成長はしている。それは、お前のおかげでもあると思ってる」
銀時「……………」
上杉の言葉は続く。
上杉「俺みたいな真面目なやつが付きっきりで勉強を教えたところで、あいつらは疲れて勉強が嫌いになるだけだ」
「だけど、お前みたいなやつが場を和ませてくれるから、緊張が解けていい感じで勉強ができている」
「……自分で言うのもなんだが、アイツらには今の環境が合ってると思ってるんだ」
「だが、このままじゃーー」
上杉が言い終える前に、銀時がふっと鼻で笑った。
銀時「…………」
相変わらず、彼は外を見ている。
上杉「おい、聞いてるのか?」
銀時「ああ、聞いてる聞いてる」
「つまり美女五人に囲まれた今の環境が最高だから、ハーレム生活を堪能したいって」
上杉「一ミリも聞いてねぇじゃねぇか!!」
「何だよ。俺が恥ずかしいのを我慢して真面目な話したってのに」
銀時「安心しろよ」
銀時は、ゆっくりとフェンスから体を離し、和服に手を突っ込んだまま、上杉を横目で見る。
銀時「今の環境をあいつらが望んでんのなら、俺はそれを守ればいい」
「相手が、お父さんだろうが、編集者だろうが……俺たち自身の剣で守ればいい」
その言葉に、上杉は一瞬目を見開く。
上杉「銀時……お前、何か案があるんだな?」
銀時はニヤリと笑い、空を見上げた。
陽はほぼ沈みかけ、残された空は赤と紫が混ざったような美しいグラデーションを描いていた。
銀時「ここは俺に任せておけよ」
「頼まれりゃ何でもやる、何でも屋の部活」
「万事屋部 部長・坂田銀時が、あいつらの居場所を守るって依頼、確かに貰い受けた」
その言葉は、まるで夕陽に誓うように、力強く響いた。
上杉は一瞬、言葉を失う。
目の前の男がどこまで本気なのか、正直測りかねる。
だが、確かなことが一つだけあった。
この男は、ふざけながらも、決して揺るがない覚悟を持っている。
上杉は小さく息を吐くと、少しだけ口元を緩めた。
上杉「……頼んだぞ、銀時。」
銀時は軽く上杉の肩叩いて、にやりと笑う。
銀時「へっ、俺の依頼料は高いよ?払えないならお前の給料から差し引きな」
上杉「何でだよ!」
上杉・銀時「………」
「フ……ふははは」
二人の笑い声が、屋上に静かに響いた。
そのオレンジ色の空の下で、彼らの"戦い"はすでに始まっていた――。
新八「銀さん!!次回はついに……」
銀時「ああ、テストだ。みんな嫌いなテストだ」
新八「そうですけど!!大丈夫なんですか?このままじゃーー」
銀時「安心しろってちゃーんと手は打ってあるから」
次回 期末テストって悪くても帰ってくる時ドキドキするよね。
帰ったら地獄だけど……
ーーーーーーーーーーーー
補習授業……その後、は銀魂の原作と同じように進んでいきました。
知らない方は銀魂47巻をお買い求めください