「嫁魂~騒がしすぎる青春模様篇~」   作:時代に遅れている

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《三ヶ月も待たせてすいませんでしたァァァァァ!!!》


第十四訓 期末テストって悪くても帰ってくる時ドキドキするよね。 帰ったら地獄だけど……

夕暮れが濃くなり、空が群青へと色を変える頃。

五つ子たちの部屋には、どこか緊張と倦怠が混じり合った空気が流れていた。

 

リビングのテーブルには問題集とノートが散乱し、誰かの開きかけたペンケースが放り出されたまま転がっている。

そんな中、声を張り上げたのはニ乃だった。

 

「はぁ!?今日も泊まり込みで勉強するの!?この間したばっかりよ!?」

 

その声は、まるで怒りを込めたハリセンのように空気を打ち据えた。

眉を吊り上げ、リモコンをテーブルに叩きつけるように置いたニ乃は、完全に反発モードに突入していた。

 

対する上杉は、少し額に汗をにじませながらも譲らない表情で立ちはだかる。

 

「明日が試験なんだ!効率度外視で一夜漬けだ!」

 

声には焦りと決意、そして彼なりの覚悟がにじんでいた。

この短期決戦に賭けるしかないという、追い詰められた者の静かな叫びだった。

 

その横で、ソファに寝転がっていた一花が、大きく伸びをしながら、面倒くさそうに言葉を滑らせる。

 

「えぇ〜今日は銀ちゃんたちも用事で来れないらしいし〜、もう休んでもいいんじゃない〜?」

 

その気だるげな声には、どこか“やる気スイッチ失踪中”とでも書かれているような緩さが漂っていた。

 

一方、ヘッドホンを首にぶら下げていた三玖が、小さく呟く。

 

「ギントキ来ないなら、私あんまりやる気出ない……」

 

その声は、うっすらとした失望と寂しさを含んでおり、心なしかヘッドホンの片耳をいじる手つきも元気がない。

 

「ちょっとみんな〜」

 

四葉が苦笑交じりに手を叩いて場をまとめようとするが、ニ乃の怒気は収まらない。

 

「五月、あんたも何か言いなさいよ!」

 

矛先が向けられたのは、静かにノートをめくっていた五月だった。

皆の注目が集まる。誰もが、彼女の“いつもの正論”を期待していた。

 

だが――

 

「今日くらい、いいじゃないですか」

 

その穏やかだが、はっきりとした声が部屋に響いた瞬間、

 

『『『『『え』』』』

 

と、場の空気が一瞬で凍りついた。

 

まるで誰かが急に電源スイッチを切ったかのように、皆の動きが止まり、時間が数秒だけ固まる。

 

いつもなら最も真面目で厳格な彼女が、まさかの“肯定”を口にしたことに、

その場にいた誰もが軽く脳内でエラーメッセージを表示させていた。

 

ーーーーーーーーーーー

 

夜明けの光が教室の隅まで降り注ぐころ、静寂を切り裂くように響いた時計の秒針。

五つ子たちは、それぞれ机に額を預けて眠りに落ちている。徹夜の勉強を乗り切った証のようだった。

 

背筋を伸ばし、上杉はその光景を見渡しながら呟く。

「ついに当日か……」

声は、喜びと不安が入り混じった小さな吐息だった。

 

目を落とすと、壁にかけられた時計に視線が滑り込む。

「!?」――瞬間、その顔が青ざめた。

 

五月が伸びをしながら気だるげに応じる。

「ふぁ〜あ、上杉くん、早いですね。」

それでも、彼女の瞳はどこか静かな焦りを湛えていた。

 

「五月、確認だけど……うちの学校、8時半登校だったよな?」

「はい、そして15分後には試験開始です。間に合わなかったら、生徒不覚悟で切腹だったはずです。」

 

刹那、時計の針は8時5分を刻んでいた。

「うん、この時計、壊れてたりしない?」

五月が答える前に、彼の心臓の鼓動が音を立てて響いた。

 

「いやぁァァァァァ!!」――咄嗟に、二人の声が重なった。

 

――ギリギリの時間、まるで線路に落ちた列車のごとく、五人は一斉に立ち上がる。

制服のボタンを押し、ネクタイを緩め、リュックを背負い……

 

鬼気迫る五人は、寝癖を直す時間さえ惜しく、

バタン、バタンと廊下を転げ出される人形のように、全員が試験の戦場へ向かって飛び出していった。

 

登校への道を駆け抜ける――だが、

全員が体育会系というわけにはいかなかった。

 

 

四葉だけが軽やかに学校への道を駆け抜ける

「みんな〜遅いよ〜?」

 

「上杉さん、さっき行っちゃいますよ!」

言い終えるとそのまま先を急ぐ。

 

 

「つかお前ら……車で登校してなかったか?」

 

 

 

 

三玖は息を整えながら、ハァハァと肩を揺らす。

「江端さんは、お父さんの秘書だから……」

かすれた言い訳に、淡い希望を重ねて呟いた。

 

一花も慌て急ぐ。

「お父さんたちが、うちに居たら良かったのに……」

その声には、少し不安とそれを抑える強がりが窺えた。

 

「そ、そうだな」

 

 

そのとき、朝の道路を見知った人影が疾駆して行った――

「おいおい、高校生ともあろう方々が朝からダッシュとは……時間の管理ぐらい出来ねぇとこの先やっていけねぇよ」

 

朝の空気を切り裂くように、スクーターのエンジン音が静寂を打ち破った。

校門前の路上を疾走し、息を切らしながら銀時が颯爽と停車する。

 

三玖は思わず目を丸くし、頰を朱に染める。

「!///////」

四葉も言葉を失い、他の三姉妹はただ無言で見つめるだけだった。

 

その沈黙を突き破るように、上杉の声が教室の前に響いた。

「って! そういうお前は何でスクーターに乗って登校してんだよ!!」

拍車がかかった指摘は、まるで朝日の眩しさみたいに鋭く突き刺さる。

 

銀時は軽く肩をすくめながら答えた。

「はぁ!? 何言ってやがる。テメェらだっていつも上品に車で送迎してもらってるじゃねぇか。使えるもんは使って使い倒す。」

彼の言葉は、まるで冷たい水をかけられたように涼やかだった。

「世の中を上手く渡るっていうのはな、時にこういう悪どいこともやっていかなきゃなんだよ」

それは砂利道を巧みに進む旅人のように、自信に満ちていた。

 

上杉が再び叫ぶ。

「おい、主人公として吐いてセリフなのかそれが!」

 

銀時は眉をひそめながら、スクーターのグリップに手をかけた。

「とにかく、テメェらみたいな影分身に付け合ってらんねぇから……」

「おばよ」

 

そう言い放つと、エンジンをかけようとしたその瞬間——

 

「ん?……お前ら……何してんの?」

銀時の問いかけに、姉妹が即座に反応した。

 

ニ乃が不機嫌そうに眉間にシワを寄せ、唇を尖らせた。

「アンタだけ乗り物なんてずるいわ!」

 

一花は驚きと冷やかしを混ぜた声で言った。

「そうだね~、お姉さんが頑張ってるのに1人だけズルなんて……」

 

三玖は優しく瞳を伏せたまま呟く。

「いくら銀ちゃんでも許されない……」

 

銀時は焦れったそうに頭を抱える。

「ふざけんな! どんだけ切羽詰まってるか分かるゥ!?」

彼の声は、まるで溢れる水が堤防を破るごとく熱を帯びていた。

「切腹なの! お前らは何とかなるかもだけど、男は遅れたら切腹なの!? 試験受けて開放的に天に昇る前に、物理的に天に登っちゃうの!! 分かったらいい加減離せェェェ!」

 

上杉が身を乗り出し、怒鳴る。

「おい!」

 

五月が冷静な声で制止した。

「皆さん、前!!」

 

銀時は振り返り考える。

「ん? 前?」

 

だが視線の先には、間近に迫る校門の塀が広がっていた。

 

「ウォォォォ!!」

叫びが反響し、銀時はアクセルを開ける。

 

――ドカァン!!

爆音を伴ってスクーターは小石を巻き上げ、塀を乗り越える。

五人はその勢いを受け止め、校庭へと飛び出した。

 

立ち止まり、銀時はゆっくりと息を吐いた。

「………さてと。何とか間に合ったな……」

 

上杉は額に手をあて、険しい表情に戻る。

「間に合ったじゃねぇだろォォォ!! 何事故のどさくさに紛れて学校に入り込んでんだ!! ある意味完全犯罪だろ!!!」

 

銀時は微笑むように肩をすくめた。

「うるせ~な。何はともあれ学校に無事着いた。これで一応みんなの目的は達成したんだよ。」

 

まだ動揺を隠せぬ上杉に、銀八先生が近づいてきた。

「おい、銀時、」

 

銀八は銀時を睨む。

「お前、テストいいからこれから生徒指導室な。勝手にスクーターに乗って来たこととあの“事故”についてだ。」

 

銀時は青ざめながら驚愕する。

 

「な!?」

 

上杉は呆れ顔でつぶやいた。

「バカだな」

 

ニ乃は唇をとがらせて言う。

「バカね」

 

五月は小さく首を横に振った。

「バカですね。」

 

その声は、真冬の澄んだ空気のように凛と響いていた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

銀八は教卓に出席簿をゆっくりと置き、だるそうな表情を浮かべながら顔を上げた。

「さてと、今日は待ちに待った一学期期末テストだぁ。今度こそキノコと校則違反ヅラ男から首位奪還してくださぁい。」

 

桂はむくりと顔を上げ、痒いところを掻くように抗議する。

「先生、ヅラ男じゃありません桂です。」

 

新八は肩をすくめ、声を潜めるように言った。

「いやぁ、さっきはびっくりしましたね。突然学校前でスクーターが塀を飛び越えるなんて……」

 

上杉は教室の窓外をじっと見つめ、反芻するように小さく呟いた。

「あ、ああ……そうだな……」

 

彼らの声はどこか引きつるように静かで、先ほどの騒動が影を落としていることを物語っていた。

 

神楽は首をかしげ、大きな瞳で教室内を見回した。

「そういえば銀ちゃんがいないネ。銀ちゃんはどうしたアルか?」

 

五月は小さく息を吞み、慌てるようにまばたきを繰り返す。

「さ、さぁ? ど、どうしたんでしょうね〜」

 

時間が止まったかのように静まり返る教室で、五月と上杉の顔色には動揺の色が濃く見て取れた。

二人とも、先ほど起きた“スクーター事件に巻き込まれたことが明るみになるのではとドキドキしている。

 

神楽はその異変にかすかな違和感を覚えつつ、戸惑いの声を漏らす。

「?」

 

五月は深呼吸をし直し、気丈に言い切るように声を張った。

「とにかく! テスト頑張りましょう!!」

 

その声は、紛れもなく、一瞬でもこの場の緊張を断ち切るための、精一杯の呼びかけだった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

社会 (三玖)

 

三玖の額には薄く汗がにじみ、眉間に皺が寄っていた。

(難しい問題ばかり……でも、歴史なら分かる……)

彼女の瞳は確かな手応えを求めるように用紙を滑っていた。

(高得点取れたら銀ちゃん褒めてくれるかな…?)

ふと、彼女の胸に小さな期待が揺れた。

 

国語 (四葉)

 

四葉の肩が微かに緊張で浮き、唇を噛む。

(うーん……)

記憶の中で上杉の声が、すっと蘇る――

「選択問題は正解を探すんじゃなくて、間違ってるものを消していく戦法もある。え?それでも分からなかったら…好きな数字を選べ」

そして、銀時の言葉が重なる――

「そうそう、人生はいつもギャンブルなんだよ。」

新八の慌てた声も耳をかすめる――

「オイィィィィ!!部活活動費をパチンコに突っ込みながら言うなァァァァァ!!」

四葉はペン先を握り直し、心の中で囁いた――

(銀さんに上杉さんもそう言ってましたし、"4"で!)

 

英語 (二乃)

 

二乃は眉根を寄せて考え込んでいる。

(討論……分かんないわ。次に……)

記憶の中で上杉の声が鋭く響く――

「デバテと覚えるんだ!」

二乃は息を整え、覚悟を決めたように横線を引く。

(……ふん)

 

数学 一花

 

一花は深呼吸し、丸をつけると筆を休めようとした瞬間、隣席から響いた咳払いが胸に跳ね返った。

記憶の中、上杉の声が再び響く――

「一花、お前は計算ミスをする時が度々ある。見直しは忘れるなよ。」

一花の目がそっと問題用紙に戻る。

(……見直そっと)

 

理科 (五月)

 

五月の手が微かに震え、シャーペンを握る指に力がこもる。

記憶の中では、父の厳しい声が響いていた――

「1人でも赤点を取ったら辞めてもらうと、先日は伝えたんだ。」

五月はその言葉に胸が締めつけられるようだった。

(本当ですか、お父さん……)

しかし彼女は心を奮い立たせ、紙の上へ言葉を紡ぐ――

(あなた達を辞めさせません!上杉君に辞められるとらいはちゃんが悲しみます!坂田君は……そ、そう!神楽ちゃんとご飯を味わえなくなる可能性があります!念のため!)

 

そして、最後のシャーペンが止まる――

長くも短かった時間が終わり、深い静寂と安堵が教室を包んだ。

 

風太郎 はゆっくりと立ち上がり、その目は彼女たちを確かめるようだった。

「よお、集まってもらって悪いな」

その声には、重責と覚悟が滲んでいた。

 

一花 は首をかしげ、肩のリボンが揺れる。

「どうしたの?改まっちゃって?」

その明るさに、一瞬だけ空間が光を取り戻す。

 

四葉 は不安げに息をのむ。「水臭いですよ!」と声に張りを加えた。

三玖 はそっと手を重ねて言う——

「中間試験の報告…。間違えたところ、また教えてね?」

 

新八 と 神楽 は揃って黙り込む。言葉にならない思いが沈黙を満たしていた。

 

三玖の声が小さく響いた。

「ところでギントキがまだ来てないみたいだけど……」

新八は咄嗟に喉を詰まらせた。

 

神楽は優しく微笑んで答える——

「銀ちゃんは用事があるって先に帰ったアル!!」

 

三玖は眉を寄せて、「そ、そうなんだ……」とまるで風が止んだ後のように小さくつぶやいた。

 

風太郎 はうなずき、静かに告げる——

「まずはともかく、答案用紙を見せてくれ」

 

その言葉は、彼女たちの心臓を鋭く突いた。

 

五月 は背筋を伸ばし、断固とした口調で応じた。

「見せたくありません。テストの点数なんて他人に教えるものではありません。個人情報です。断固拒否します!」

 

その言葉に、一瞬全員が息を呑んだ——いまも彼女は、自分の責任を胸に抱いていた。

 

一花がかすかに顔をゆがませる。

「…五月ちゃん…?」

 

しかし、風太郎は眉を曇らせずに頷く。

「……ありがとな。だが覚悟はしている。」

 

新八は震える声で懇願した。

「教えてくれまれんか?」

 

結果発表

四葉さん:国語が山勘で拾った34点以外は赤点…

三玖さん:社会72点。それ以外赤点…

一花さん:数学43点以外赤点…

二乃さん:英語54点以外赤点…

五月さん:理科62点以外赤点…

かつて五人の合計で100点取った時に比べれば確かに芽吹いた成長もそこにあった。

 

風太郎 は重い口を開く。

「ったく…。短期間とはいえあれだけ勉強したのにたった30点も取れないとは……。お前達の頭の悪さがよーく分かった……」

 

その言葉に二乃は眉をひそめるが、どこか誇らしげに言い返した。

「うるさいわね。まあ合格した科目が全員違うって私達らしいけどね」

 

四葉はほっ、と息をつく。

「あっ、そうかも」

 

三玖は目を伏せながら、小さく言った。

「それに五人合わせて100点の時よりも確実に成長してる…」

 

風太郎はうなずく。

「三玖、今回の難易度で72点は大したものだな。まあ偏りはあるけどな。今後は姉妹に教えられる箇所は自信を持って教えてやってくれ」

三玖は驚きとともに、胸の奥がじんわり温まるのを感じた。

 

風太郎は四葉に目を移し、厳かに伝える。

「四葉、イージーミスが目立つぞ。勿体ない。焦らず慎重にな」

四葉ははきはきと答えた。「了解です!」

 

次に一花へ視線を向ける。

「一花、お前は一つの問題に拘らなさすぎだ。最後まで諦めんなよ」

一花はためらいながらも「はーい」と答えた。

 

風太郎の声は、次第に鋭さを失い、やわらかくなる。

「二乃。最後の最後は言うことを聞いてくれたが、それまでは本当に何も聞いてくれなかったな。きっと他のバイトで来られなくなる。俺が、俺達がいなくても油断するんじゃないぞ?」

二乃は口元だけがわずかにゆがんだ。

 

三玖が不安気に呼びかける。

「えっ?フータロー?他のバイトって、来られないってどういうこと…?私は…」

五月がそっと肩に手を置き、諌めるように囁いた。

「三玖、今は聞きましょう」

 

そして五月を見据えた風太郎の鋭い声が教室に響いた。

「そして五月。お前は本当に馬鹿不器用だな!!」

五月は顔を強張らせた。

 

風太郎は続ける。

「一問に時間をかけすぎて最後まで解けてないじゃねえか!!」

五月は俯きながら、悔しさと覚悟を両方抱えてうなずいた。

「反省点ではあります…」

 

風太郎の声は、柔らかな励ましへと包み込む――

「自覚してるならいい。次から気をつけろよ」

五月はしっかり声を発した。

「はい。でもあなたは……」

 

その時、五月の携帯が震えた。着信が入る——父からのものだ。風太郎は覚悟を決めるように深く息を吸った。

 

風太郎 が電話を取る。

「どうも、上杉です」

声は震えない。

 

電話の向こうで父親の声が静かに響く。

『ああ、五月くんと一緒にいたのか。個々に聞いていこうかと思ったが、君の口から結果を聞こうか。嘘は分かるからね』

 

風太郎は一瞬、言葉を選んだ。

「つきませんよ。ただ…、次からコイツらにはもっといい家庭教師をつけてやって下さい」

 

父の声が一瞬、静まる。

『……ということは?』

 

その瞬間——

 

パシッ

 

突然の効果音のように、教室の時間が止まった。

 

二乃の決意

 

二乃が冷静に立ち上がり、風太郎の手から携帯を奪った。

「パパ?二乃だけど、1つ聞いていい?どうしてこんな条件を出したの?」

その声は、冷たい刃のように響く。

 

父の返答は静かだった。

『僕にも娘を預ける親としての責任がある。高校生の上杉君と坂田君がそれに見合うか計らせてもらっただけだよ。彼らが君達に相応しいかどうか…』

 

二乃は目を細めるようにして、微笑んだ。

「私たちのためってことね。ありがとうパパ。でも、相応しいかなんて数字だけじゃ分からないわ」

 

父の返事は短い。

『それが1番の判断基準だ』

 

二乃は深呼吸し、明るく答えた。

「あっそ。じゃあ教えてあげる」

そして、声を強く揃えて——

 

「私達五人で五科目全ての赤点を回避したわ」

 

「!?」

 

上杉は驚愕し、新八 と神楽は思わず顔を見合わせ、目を見開いた……

 

**父親の声(電話口)**は抑揚を失い、低く静かに響いた。

――『…………それは本当かい?』

その問いは、まるで深い井戸に小石を放り込むように静かだが重い。

 

二乃 は一歩前に出て、声を震わせながら答える。

「嘘じゃないわ」

その言葉は、闇夜に星が瞬くかのように、確かにこの場に光をもたらした。

 

数秒の沈黙。

――『…………』

 

上杉 が口を開こうとする——

「おい、ニ乃……」

しかし、新八 がすかさず制した。

「し、上杉さん。ここは黙っておきましょう。」

その声には、冷静と覚悟の両方が滲んでいた。

 

再び電話口の声が響く。

――『なるほど……彼の言う通り、彼らは君たちにとっていい教師だったようだね。』

 

二乃は眉を寄せ、困惑した声で言う。

「え?」

そして、震える唇が想いを呑み込みながら続けた——

「それってどう言う……」

 

―――――――――――――――――

 

昨夜の回想シーン(お父さん視点)

暗い執務室、照明のまばゆい光に照らされ—

ピッピッピ と鳴る着信音。

 

**父親の声(電話口)**は抑揚を失い、低く静かに響いた。

――『…………それは本当かい?』

その問いは、まるで深い井戸に小石を放り込むように静かだが重い。

 

二乃 は一歩前に出て、声を震わせながら答える。

「嘘じゃないわ」

その言葉は、闇夜に星が瞬くかのように、確かにこの場に光をもたらした。

 

数秒の沈黙。

――『…………』

 

上杉 が口を開こうとする——

「おい、ニ乃……」

しかし、新八 がすかさず制した。

「し、上杉さん。ここは黙っておきましょう。」

その声には、冷静と覚悟の両方が滲んでいた。

 

再び電話口の声が響く。

――『なるほど……彼の言う通り、彼らは君たちにとっていい教師だったようだね。』

 

二乃は眉を寄せ、困惑した声で言う。

「え?」

そして、震える唇が想いを呑み込みながら続けた——

「それってどう言う……」

 

―――――――――――――――――

 

昨夜の回想シーン(お父さん視点)

暗い寝室、テレビのまばゆい光に照らされ—

ピッピッピ と鳴る着信音。

画面には「坂田銀時」と表示されていた。

 

「誰からだろうか……」視線が揺らぐ。

 

電話を取る。

「もしもし。」

 

――『おやおや、これは五つ子のお父たまではありませんか〜?てっきり秘書さんに……』

 

――「御託はいい。私に話があって電話をかけたのだろう?」

 

――『……そうだな、俺も周りくどい言い方は嫌いでな。はっきりと言わせてもらう。』

 

画面の光が滲む。

その声は、かすかに銃の引き金を引くようにじわじわと迫ってきた——

 

――『アンタの出したこの一学期の期末テストで…赤点を回避出来なかったら俺たちをクビにするって話だが——アイツらの話を聞いてからにしてくれねぇか?』

 

父親は、静かに息を吸った。

「ほう。つまり君は全員を赤点から回避させることが出来ないと。そういうことかい?」

 

――『ああ、そうだよ。俺たちみてぇな素人にゃこんな短期間で全ての教科で赤点回避させることなんて出来ねぇよ。』

 

言葉はざらついた砂のように重かった。

 

――「それで君たちはそれでも仕事を続けたいと?」

 

――『いんや、俺ぁは万事屋として依頼人の意向には必ず従う。だがな——』

 

声が少し柔らかくなる。

――『俺たちに依頼して来たのはアンタじゃなくてアンタの娘さんたちだ。アイツらが全員辞めろと言わねぇ限り俺たちはやめねぇよ。』

 

父親の指が震えた。

「坂田銀時くんそれは少々横暴ではないのかな?親として…成績を上げられる先生を頼むのも当然だと思うが?」

 

――『そうだな、アンタにとっちゃ娘たちが上手くいってるかなんてテストの点でしか分からねぇもんな。』

 

静寂の中で、父親は苦悶の声を飲みこんだ。

 

――『だが、本当に娘たちの事を思うなら実際の現場とアイツらの意見を聞くべきじゃねぇのか?』

 

父親の呼吸音がわずかに大きくなる。

 

――「何?」

 

――『おそらくアンタは何らかの理由から娘さんたちとの交流を避けてんだろ。それもアイツらの事を思っただ。』

 

夜風がカーテンをさらい、室内に忍び込む。

 

――『だがな、アンタからも一歩歩んで行かねぇとアイツらとの溝が深まるだけじゃねぇの?』

 

その問いは、胸を切り裂くようだった。

 

――「…………」

 

――『そんなこと、娘のことを大事に思ってるアンタからしたら絶対避けたいことだろ。』

 

言葉の隙間に、愛情の断片が見えた。

 

――「…………………」

 

――『別に気に病むこたぁねぇよ。』

 

――『アンタは娘のことを大事に思ってる。それが違う方向に進んでたってだけだ。』

 

――『俺も欲しかったよ。アンタらみたいな家族が』

 

父親の視線が揺れ、息が止まりそうになる。

 

――「君は……」

 

――『皮肉なもんだなぁ。ほんとにだいじなもんてのは、持ってるやつより持ってねぇやつの方が知ってるもんさ』

 

父親は言葉を呑みこんだ。

 

――『まぁ、俺から言いたいのは以上だ。じゃあな』

 

回線が切れる——静寂だけがそこに残された。

――『…………』

 

現在に戻る

携帯を握りしめた二乃は、息を整えつつ静かに声を震わせた。

「ちょっと、パパ!」

 

父親の声が遠くから聞こえる——

――『これからも上杉君と坂田君たちと励むといい』

 

電話口の声が少し震え——

ブチッ

 

受話器が静かに置かれ、部屋には小さな静寂が落ちた。

 

 

画面には「万事屋部銀ちゃん」と表示されていた。

 

 

電話を取る。

「もしもし。」

 

――『おやおや、これは五つ子のお父たまではありませんか〜?てっきり秘書さんに……』

 

――「御託はいい。私に話があって電話をかけたのだろう?」

 

――『……そうだな、俺も周りくどい言い方は嫌いでな。はっきりと言わせてもらうわ。』

 

画面の光が滲む。

その声は、かすかに銃の引き金を引くようにじわじわと迫ってきた——

 

――『アンタの出したこの一学期の期末テストで…赤点を回避出来なかったら俺たちをクビにするって話だが——アイツらの話を聞いてからにしてくれねぇか?』

 

父親は、静かに息を吸った。

「ほう。つまり君は全員を赤点から回避させることが出来ないと。そういうことかい?」

 

――『ああ、そうだよ。俺たちみてぇな素人にゃこんな短期間で全ての教科で赤点回避させることなんて出来ねぇよ。』

 

言葉はざらついた砂のように重かった。

 

――「それで君たちはそれでも仕事を続けたいと?」

 

――『いんや、俺ぁは万事屋として依頼人の意向には必ず従う。だがな——』

 

声が少し柔らかくなる。

――『俺たちに依頼して来たのはアンタじゃなくてアンタの娘さんたちだ。アイツらが全員辞めろと言わねぇ限り俺たちはやめられねぇ。』

 

父親の指が震えた。

「坂田銀時くんそれは少々横暴ではないのかな?親として…成績を上げられる先生を頼むのも当然だと思うが?」

 

――『そうだな、アンタにとっちゃ娘たちが上手くいってるかなんてテストの点でしか分からねぇもんな。』

 

静寂の中で、父親は苦悶の声を飲みこんだ。

 

――『だが、本当に娘たちの事を思うなら実際の現場とアイツらの意見を聞くべきじゃねぇのか?』

 

父親の呼吸音がわずかに大きくなる。

 

――「何?」

 

――『おそらくアンタは何らかの理由から娘さんたちとの交流を避けてんだろ。それもアイツらの事を思ってだ。』

 

夜風がカーテンをさらい、室内に忍び込む。

 

――『だがな、アンタからも一歩歩んで行かねぇとアイツらとの溝が深まるだけじゃねぇの?』

 

その問いは、胸を切り裂くようだった。

 

――「…………」

 

――『そんなこと、娘のことを大事に思ってるアンタからしたら絶対避けたいことだろ。』

 

 

――「…………………」

 

――『別に気に病むこたぁねぇよ。』

 

――『アンタは娘のことを大事に思ってる。それが違う方向に進んでたってだけだ。』

 

――『俺も欲しかったよ。アンタらみたいな家族が自分のことを大事に思ってくれる親が』

 

父親の視線が揺れ、息が止まりそうになる。

 

――「君は……」

 

――『皮肉なもんだなぁ。ほんとにだいじなもんてのは、持ってるやつより持ってねぇやつの方が知ってるもんさ』

 

父親は言葉を呑みこんだ。

 

――『まぁ、俺から言いたいのは以上だ。じゃあな』

 

回線が切れる——静寂だけがそこに残された。

――『…………』

ーーーーーーーーーーーーー

現在に戻る

携帯を握りしめた二乃は、息を整えつつ静かに声を震わせた。

「ちょっと、パパ!」

 

父親の声が遠くから聞こえる——

――『これからも上杉君と坂田君たちと励むといい』

 

電話口の声が少し震え——

ブチッ

 

電話が切られ、部屋には小さな静寂が落ちた。

 

ガラガラガラ

 

教室の引き戸が、喧騒を裂くように音を立てて開いた。

 

ガラガラガラ──

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

空気が一瞬にして凍りつく。その静寂を、だるそうな声が切り裂いた。

 

朝っぱらからの騒ぎに、銀時は眉根を寄せ、苛立ち交じりに低くつぶやいた。

「ったく、朝っぱらからギャーギャー言いやがって、更年期かっつーの」

 

「銀時!」

 

だが、すぐに響くのは温かな呼び声。

「銀さん!」「銀ちゃん!」

 

銀時はにやりと口を裂けさせ、教室の中央へ歩み寄る。

「よぉ、テメェら。テストは無事終わったみてぇだな」

 

三玖がほっと安堵の笑みを浮かべながら答える。

「うん、銀ちゃんは大丈夫だった?」

 

銀時の笑顔はすぐに影に変わる。

「全然大丈夫じゃねぇよ。反省文書かされるわ、切腹させられそうになるわで、生きた心地がしなかったよ!」

 

二乃が銀時に鋭い視線を投げる。

「ねぇアンタ?」

 

「……ああ? なんだよツンツン。」

 

「人をツムツムみたいに言うな!」

 

鋭く睨む二乃だが、すぐにその表情を引っ込めるようにして問う。

 

「まぁそれはいいとして、アンタ昨日パパになんかしたんじゃないの?」

 

銀時の笑みが、一瞬だけ止まった。

 

「………………」

 

それでも、彼はそっと肩を竦めて、手でパチンコを撃つ仕草を見せながら答えた。

 

「いいや、俺ぁ息抜きに回してただけだよ。こうやってな。」

 

「銀さんまたですか? いい加減僕たちにも給与払ってくださいよ。」

 

新八の声は、どこか切実さすら帯びていた。

 

「そうアル! 早く酢昆布一年分渡すネ!!」

 

神楽も負けじと訴える。

 

二乃は諦め顔で言った。

「ま、そういうことにしとくわ。」

 

その一言に、三玖の目が輝く。

 

「銀ちゃん…………」

 

「ん? どうした? ヘッドホン。耳が遠くなって補聴器でも欲しいのか?」

 

「んなわけねぇだろ! テストだよ、テストの結果!!みんな頑張ったんですよ!!」

 

新八のツッコミをよそに、三玖がそっと一枚の答案用紙を差し出す。

 

「見て、社会72点。」

 

その紙を見た銀時の目が、わずかに見開かれた。

 

「おお!? 頑張ったじゃねぇか。後705点あれば当たりだったんだが……」

 

「パチンコの話はもういいだろォォォ!! どんだけ失礼なんだアンタは!!」

 

三玖はそのやり取りを聞きながら、銀時に褒められた喜びを胸の中で静かに噛み締めていた。まるで冬空の下に咲いた一輪の花のように、その笑みは儚くも美しかった。

 

「さてと、テストも無事終わった事だし、駅前でパフェ食って帰るとしますか〜。キノコ頭の金で。」

 

「なんで俺が支払う形になってるんだ!! お前も払えよ!」

 

「おいおい、お前依頼料まだ支払ってねぇだろ? 今回はパフェ代で手を打つって言ったのにな〜。」

 

「ぐっ!」

 

四葉がふと思い出したように口を開く。

 

「そういえば新八さんは何点だったんですか? 上杉さんはどうせ100点だし、神楽ちゃんは……」

 

「「「「……………」」」」

 

神楽の目が泳ぐ。

 

「何アルか!? 哀れみな目を向けないで欲しいネ!!」

 

「まぁ…そうね。いつも偉そうにツッコミに勉強を教えてんだから見せなさいよ!!」

 

「ちょっ、ちょっと!」

 

二乃が答案を強引に覗き見ると──

 

「な、何よこれ!!」

 

答案の上には赤字で鮮やかに書かれた「88」の数字。

 

すべての教科で──88点。

 

四葉が声を弾ませる。

 

「全部88! 順位も八位です!!」

 

「「「「「えぇぇぇ!!」」」」」

 

銀時はすかさず口を挟んだ。

 

「残念だったな、新八は人気ランキングでもなんでも八位から落ちねぇんだよ。」

 

神楽が肩を竦めて言った。

 

「逆にいうと頑張っても八位から上がらないアル。」

 

「逆を言うなァァァァァ!!」

 

教室は再び、笑いと驚きの渦に包まれていた。期末試験の緊張は解かれ、いつもの温かな空気がそこに戻っていた。誰かがいるだけで、ただの日常が少しだけドラマになる──そんな奇跡のような日々は、きっとこの先も続いていくのだろう。

 

 




次回予告

「メアド交換しましょォォォォォォ!!」

メアド交換はほどほどに
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