「嫁魂~騒がしすぎる青春模様篇~」   作:時代に遅れている

5 / 14
三年z組銀八先生

「はーい三年z組銀八先生でーす。今回は質問というよりこの作品の時系列についてですが……五等分は二学期からなのを一学期からにしてまーす。」

「まぁテストの回数は変えないし、夏休み篇も、銀魂である戦闘シーンのある話も組み込む変な感じになるかもだけど作者が出来るだけ辻褄合わせるんでお願いしまーす。」


第五講 料理は真心、テストは真剣

教室は夕陽に染まり、窓の外には赤く染まった雲が広がっている。古びた木製の机や椅子には幾つもの傷跡があり、いかにも年季が入った教室の風景だ。部屋の隅には風紀委員たちが不気味に立ち並び、無言でこちらを見下ろしている。その視線は明らかに威圧的で、まるで逃げ出す者を許さない鉄壁の壁のようだ。

 

銀八が机に足を投げ出し、背もたれに深くもたれかかっている。彼の目は気だるそうに生徒たちを見渡し、その手には一冊の適当な漫画雑誌がぶら下がっていた。軽薄な態度だが、どこか本質を見透かしているような鋭さが感じられる。

 

「うーす、よく逃げずに来たなお前ら。」

 

教室の中央に立つ一花が、腕を組みながら微かにため息をついた。背後の窓から差し込む夕陽が、彼女の落ち着いた表情を照らし出す。

「いや、逃げようにも逃げられないでしょ。」

 

四葉は机に手をつき、驚いたように声を上げた。

「さっきまでの二乃の姿と、周りを囲んでる風紀委員を見たら……。」

 

視線は沖田が縄を引いて現れた時の記憶を彷彿とさせる。沖田と土方が黙って廊下から監視しているからだ。

 

銀八はニヤリと笑い、四葉の言葉を軽く受け流す。

「へぇ~、お前らにも状況判断能力ってのがあったのね?」

 

その一言に、五月が眉をひそめながら声を張り上げた。

「そこまで私たちを舐めないでください!」

 

彼女の強気な発言に、一瞬だけ風紀委員たちがざわついたが、銀八は相変わらずの余裕ある態度で肩をすくめた。

「へいへい。それじゃあ……」

 

すると、机の端で黙っていた二乃が、突然立ち上がる。その目は怒りに燃え、握られた拳が震えているのがわかる。

「待ちなさい!……アンタね! 今日、私にあのドS(沖田)とマヨラー(土方)に調教させたの!?」

 

その瞬間、教室内の空気が一変する。沖田はニヤリと満足げな顔で腕を組んでいる。

 

銀八は二乃の言葉を聞きながら、少しばかり真剣な顔を作るが、すぐに軽薄な口調で返した。

「ん? なんか問題でも?」

 

二乃は怒りを爆発させ、机を力強く叩いた。その音が教室全体に響き渡る。

「問題大アリよ!!おかげで私、もうお嫁に行けない……!」

 

銀八は腕を組み、ふと考え込むような仕草を見せる。教室の他の生徒たちは、突然の発言に目を丸くして二乃を見つめていた。やや間を置いて、銀八は不敵な笑みを浮かべた。

「お嫁に行けない? 大丈夫、大丈夫。お前、何年か前に進◯の巨人の主人公さんとこにお嫁にいったじゃねぇか。」

 

「全然大丈夫じゃないしそれ中の人!! この世界の私はまだ学生で、結婚なんてできるわけないでしょ!!」

二乃は真っ赤になりながら叫び返すが、その声にはどこか焦りが含まれている。

 

銀八は面倒くさそうに肩をすくめた。

「はいはい、わかったわかった。それ以上ギャーギャー喚くなら……」

 

沖田がその隙を狙ったように横から口を挟む。

「もう一度俺が調教してやってもいいですぜ?」

 

彼の言葉に、二乃は顔を青ざめさせて振り向いた。

「しなくていいわよ!」

 

教室の後ろで新八が頭を抱えてため息をついた。

「……なんでこの人たち、こんな状況で軽口叩けるんですかね。」

 

銀八が手を叩き、場を戻すように声を上げた。

「おーい、話を戻すぞ。テメェらの実力ってやつを、今ここで証明してもらう。」

 

夕陽の光が一層強まり、教室内の影が長く伸びていく。風紀委員たちは静かにその場を囲み、まるで緊張感を煽るような雰囲気を醸し出している。

 

「証明って、どうやって?」

四葉が首をかしげながら尋ねる。

 

銀八は机の上に数枚の紙を叩きつけた。その音が教室内に鋭く響く。

「これだ。あのガリ勉野郎(上杉)と同じ学年一位のヅラ(桂)が作ったテストだ。こいつの合格ラインを超えたら、俺たちはお前らに勉強を強要しねぇ。それどころか、勝手に卒業して行ってもらって構わねぇ。」

 

二乃は眉をひそめ、不満げに呟く。

「なんでそんな面倒なことをやらなきゃいけないのよ……。」

 

すると、意外にも五月が手を挙げて前に出た。彼女の顔には迷いがなく、むしろ覚悟がにじんでいる。

「分かりました。受けましょう。」

 

「は!? 五月、本気なの?」

一花が驚きの声を上げる。

 

五月は真剣な目で銀八を見据えたまま言葉を続ける。

「合格すればいい話です。それでもう、関わらなくて済むんですから。」

 

銀八は軽く鼻を鳴らしながら呟いた。

「おいおい……なんかフラグが立った気がするんだけど?」

 

四葉が元気よく手を挙げた。

「そういうことなら、やりますか!」

 

三玖も静かに頷いた。

「合格ラインは?」

 

銀八は面倒くさそうに目をこすりながら答えた。

「60点……いや、50点あればいいや。」

 

四葉が信じられないというように叫ぶ。

「えぇ!? そんな低いラインでいいんですか?」

 

神楽がカレーを頬張りながら、隣で笑う。

「補修回避するネ!」

 

一花が彼女を見ながら、不思議そうに問いかける。

「……ごめん? どうして家庭教師の神楽ちゃんが私たちと一緒にテストを受ける流れになってるの?」

 

銀八は呆れたように溜息をついた。

「こいつは俺のクラスで唯一の赤点野郎だ。家庭教師なんて務まるわけねぇだろ?」

 

四葉がさらに驚きの声を上げる。

「えぇ!? そうだったんですか?」

 

その瞬間、部屋の空気がピリッと引き締まった。

「別に受ける義理はないけど……あんまりあたしたちを侮らないでよね。」

二乃が挑発するような目つきで銀八を睨みつけた。

 

銀八はニヤリと笑いながら、手を振った。

 夕陽の光が廊下を赤く染め、床には窓枠が長い影を落としている。廊下には土方、沖田、山崎の姿もあった。特に土方は壁にもたれかかり、手元の指示書を確認しながら銀時たちを鋭い目つきで睨んでいる。

 

月詠が鋭い声で真選組の二人をたしなめる。

「お主たち、少しやりすぎではないか? 彼女たちはまだ若い娘じゃ。」

 

月詠の冷静な声には、どこか含みのある鋭さがあった。沖田はその言葉に一瞬だけ動きを止めるが、すぐに笑みを浮かべて反論する。

「いやいや、月詠さん。俺たち風紀委員の仕事は、規律を守らせることっすよ。ガキだろうが何だろうが、規則を破ったら容赦しませんぜ。」

 

「規則規則って、んなもんクソくらえだっつの。」

銀時が鼻で笑いながら肩をすくめた。

「お前らみたいに杓子定規な奴らが学校仕切ってっから、生徒たちも息苦しくなるんだろうが。」

 

土方が銀時の言葉に一瞬だけ眉をひそめたが、すぐにいつもの冷静な表情を取り戻す。

「息苦しい? はっ、そんなガキみたいな甘えで規律が崩れるくらいなら、最初からそんな学校潰れてもいい。」

 

新八が慌てて銀時を制止しながら、土方に反論を試みる。

「でも、規律を守らせるにしても方法があるでしょ!? あんなやり方じゃ、ただ生徒たちの反感を買うだけですよ!」

 

上杉が静かに新八に賛同する。

「そうだな、規則を守らせるだけではなく、生徒たちがその意味を理解し、自発的に行動できるようにするのが教育の本質のはずだ。」

 

沖田が上杉の意見を茶化すように、軽い調子で言う。

「おやおや、さすが上杉先生。相変わらずお上品なご意見で。」

 

上杉は沖田の挑発には動じず、ただ冷静に言葉を返す。

「上品であるかどうかではなく、正しいかどうかを考えるべきだろ。」

 

月詠は再び冷静に口を開く。

「これ以上争う必要はないじゃろう。あの教室の中で、彼女らが結果を示す。それで全てが決まるはずじゃ。」

 

――教室内では、五つ子たちが真剣な表情でテスト問題に取り組んでいた。五月が集中して問題を解き、二乃がペンを握りしめながら苦戦している。三玖が静かにノートを見直し、四葉が何かを思い出そうと天井を見上げる。一花は問題を解き終わったのか机で寝ている。神楽は、片手に酢昆布を持ちながらテストを受けている。いつもの賑やかな空気は消え、緊張感が漂っていた。

 

銀時は軽く伸びをしながら、教室のドアに寄りかかった。

「まぁ、どう転ぶか知らねぇけどよ。あいつらがどうするか、ちょっと見ものだな。」

 

ーーーーーー

銀八「はーいテスト終了回収しまぁ〜す。」

 

銀八「…………」

 

銀八が額を押さえながら呟いた。

「……五人合わせて100点。しかもこの赤点ゲロインが一番マシってどういうことだ?」

 

銀時が横で鼻をほじりながら、肩をすくめた。

「だから言ったろ?あの五つ子に期待すんなって。勉強よりもラブコメと家庭内ドタバタのが得意そうな面してんだしよ。」

 

上杉がため息をつきつつ銀時に反論した。

「それを言うなら、教える側にも問題があるだろ。神楽なんて酢昆布片手にテスト受けてるんだからな。」

 

神楽がその言葉に即座に反応する。

「何ネ!成績だけ見ればわたしが一番じゃないアルか!やっぱり家庭教師向いてるアル!」

 

銀八が苦笑しながら頭を掻く。

「おいおい、俺のクラス唯一の赤点生徒と一緒に赤点争いしてどうすんだよ……。で、どうすんだよ。これ、全員の赤点回避させねぇといけねぇんだろ?」

 

銀時は飄々とした態度で返す。

「いやいや、ここは一回地獄を見せた方が早いんじゃねぇか?」

 

その言葉に、沖田がすかさず乗った。

「いいっすねそれ。地獄巡りとか、ちょうど俺が得意な分野っすよ。」

 

二乃が沖田を睨みつける。

「何よアンタ、その嫌味ったらしい顔!」

 

沖田は無言で二乃をじっと見つめ、ふっと笑みを浮かべた。

「……ハッwww」

 

二乃が瞬間湯沸かし器のように沸騰する。

「なーに草生やして笑っとんじゃコラァァァァ!!」

テーブルを飛び越えそうな勢いで沖田に掴みかかろうとするが、四葉が慌てて彼女を押さえた。

 

「二乃!ダメだって!キャラ崩れちゃうよ!」

 

「キャラなんて関係ないわよ!こいつ絶対シメないと気が済まない!」

 

「逆に締められるの間違いだと思いますがね」

 

上杉が冷静に割って入る。

「おい、落ち着け。ここで喧嘩したって点数は上がらないぞ。」

 

銀時が吹き出しながら、適当にフォローを入れる。

「ま、喧嘩もいいけどよ。これ以上キャラ崩壊すると誰が誰だかわかんなくなるからやめとけ。」

 

銀八が面倒くさそうに手を振った。

「おいおい、そこ。内輪もめはその辺にしとけ。まぁ、成績は散々だったけど、一応テスト受けただけマシだろ。」

 

新八が真剣な顔で抗議する。

「マシって!こんなんじゃ卒業どころか、補修地獄確定じゃないですか!」

 

銀八は肩をすくめた。

「いいんだよ、こういうのは経験ってやつだ。何か得るものがあるかもしれねぇだろ?な?」

 

神楽が誇らしげに答案用紙を掲げる。

「ほれ見ろネ!やっぱりわたしが一番じゃないアル!銀ちゃん、これで家庭教師続けて良いネ!」

 

銀時が神楽を軽く小突きながら言った。

「お前が家庭教師続けたら、こいつら全員不良委員に捕まるレベルでバカになんぞ。」

 

銀時「まぁそんなわけで漏れなく全員指導しないといけなくなったんだ全員明日から勉強開始な」

 

二乃は憤然として立ち上がり、銀八に向かって叫ぶ。

「ちょっと待ちなさいよ!なんで私たちがこんな目に遭わなきゃいけないのよ!あんたなんかに教わっても結果は変わらないわ!」

 

銀時は、いつもの無気力な顔で肩をすくめた。

「俺が教える?悪いな、それ無理だわ。俺、勉強よりもジャンプ読むのと昼寝の方が得意だから。」

 

四葉が楽しげに手を挙げる。

「確かに、坂田さん、昼寝コンテストがあったら優勝しそうだよね!」

 

一花が小さくため息をつきながら静かに呟く。

「優勝しても意味ないと思うけど……。」

 

 

一花が椅子にもたれかかりながら笑顔で言う。

「でもさ、これって逆に考えると、みんなで一緒に頑張れるチャンスじゃない?」

 

 

沖田がニヤリと笑って口を挟む。

「へぇ、じゃあ俺も追加で参加してスパルタ式で鍛えてやりましょうか?泣きながらでも成績上がるかもですぜ。」

 

二乃が怒りに震えながら叫ぶ。

「絶対お断りよ!アンタみたいな人に教わるくらいなら自力でやるわ!」

 

土方が壁にもたれながら冷静に言う。

「まぁ、自力でやるのもいいが、今の成績じゃどうにもならねぇだろうな。とりあえず、まず基礎から叩き込まねぇと。」

 

銀時が面倒くさそうに鼻をほじりながら言った。

「まぁまぁ、こうなったら全員で一緒に地獄を見るしかねぇだろ。勉強会でも合宿でもなんでも来いって感じだな。」

 

神楽が元気よく酢昆布を掲げながら叫ぶ。

「なら、わたしが勉強会のおやつ係するアル!酢昆布食べながらなら頭も働くアルよ!」

 

上杉が冷静に指摘する。

「いや、酢昆布はいいけど、ちゃんと集中して勉強しないと意味ないだろ。」

 

こうして、銀時中心にした無謀な勉強会が始まることになった。

夕陽がすっかり沈み、教室の外には夜の帳が降りている。これから始まる彼らの奮闘の日々が、果たしてどんな結末を迎えるのかは誰にもわからない。

 

銀時が最後に一言つぶやいた。

「ま、何とかなるさ。だいたい、そういうもんだ。」

 

 

 

五つ子の一花と四葉は最初からそのつもりだったのか、ニコニコとしており、三玖は顔を真っ赤にして俯いていた。二乃は不満ありまくりな表情を浮かべ、五月は悔しそうな顔を浮かべ、

一日が終了した。

 

次の日の朝のリビングには、五つ子と銀時たちの声が交錯していた。柔らかい陽光が大きな窓から差し込み、リビング全体を明るく照らす。

 

四葉はスポーツバッグを肩にかけ、明るい声で叫ぶ。

「おはようございます!私は準備万端ですよ!」

爽やかな笑顔が印象的な彼女は、緑色のリボンを軽く揺らしながら活発に動き回っていた。

 

一花はソファの肘掛けに腰掛け、優雅に足を組みながら静かに言う。

「私も見てるだけにしようかな。」

彼女の表情は穏やかだが、どこか疲れた様子も見え隠れしている。

 

五月はテーブルの一角で教科書を広げており、ペンを動かしながら顔を上げる。

「私はここで自習してるだけなので、勘違いしないでください。」

真面目な性格を反映するその言葉に、しっかりとした決意が感じられる。

 

二乃は窓際に立ち、腕を組みながら小さく鼻を鳴らすように言い放つ。

「やっぱり来たんだ。前みたいに途中で寝なきゃ良いけどね?」

彼女の赤いリボンが微風に揺れ、その言葉には少しだけからかいの色が混じっていた。

 

銀時は部屋の隅でソファに寄りかかり、片手にスマホを持ちながら適当な口調で言う。

「もしもーし、ああ沖田くん?実はねぇ~」

スマホの画面は真っ暗で、どう見ても演技でしかない。

 

二乃はその様子に反応し、驚いたように声を上げる。

「ッ!?……じ、冗談よ!ちょっとしたジョークだっての!それくらい察しなさいよ!」

 

銀時は肩をすくめ、わざとらしく謝るように笑う。

「……なーんだ。それなら良いんだよ。察しが悪くてすまんのー。」

 

そんな光景を見ていた上杉は、困惑した表情を浮かべながら口を開く。

「ど、どうだ二乃も一緒に……」

 

二乃は冷たく言い放つ。

「それも死んでもお断り。」

 

そのやり取りを見ていた神楽が、テーブルの上に肘をつきながら提案する。

「仕方ないアルな。今日は6人でやるアルか。」

彼女のコンビニ袋から見えた肉まんが、湯気を立てて美味しそうな香りを放っている。

 

ドタバタが始まる

銀時は新八と神楽に向けて手をひらひらと振り、半ば投げやりに宣言する。

「よ~し、後は任せたぞ、ぱっつぁん、神楽。」

 

しかしその言葉にすぐさま反応した新八と神楽が、声をそろえて叫ぶ。

「ふざけんなぁァァァァ!!」

 

二人の怒声とともに、ドロップキックが銀時の背中を直撃する。

「ドカァッ!」

鈍い音がリビングに響き渡り、銀時が床に倒れ込む。

 

新八は額に手を当て、ため息をつきながら銀時を見下ろす。

「任せたじゃねェよ!!アンタが引き受けた依頼でしょうが!!最後まで責任持ってやってください!」

 

神楽は銀時の頭を軽く蹴りながら促す。

「さっさと立ち上がるヨロシ。」

 

銀時は苦しそうに呻きながら、渋々立ち上がった。

「は、はいそうします……。」

 

それぞれの動き

すると突然、二乃が四葉に話を振る。

「……そうだ四葉。バスケ部の知り合いが大会の臨時メンバーを探してるんだけど、あんた運動できるんだし、今から行ってあげれば?」

 

四葉は驚いた様子で戸惑いを見せる。

「い、今から……!?で、でも……」

 

二乃は腕を組み、真剣な表情で続ける。

「5人しかいない部員の一人が骨折しちゃったらしくて、このままだと大会に出られないらしいのよ。頑張って練習してきたのに、かわいそう。」

 

その言葉を聞いた四葉は、目を輝かせて決心する。

「……お二人ともすみません!困ってる人を放ってはおけません!」

 

上杉は呆然とした顔で呟く。

「嘘だろ……。」

 

さらに二乃が一花に向けて話を続ける。

「そうだ、一花。あんた、2時からバイトじゃなかった?」

 

一花は思い出したように顔を上げる。

「あー、忘れてた。」

 

二乃は五月に目を向け、軽く笑いながら言う。

「五月も、こんなうるさいとこより図書館とかに行ったほうがいいんじゃない?」

 

五月は少し考え込みながら答える。

「……それもそうですね。」

 

しかし神楽がコンビニ袋から肉まんを取り出し、五月の目の前に置く。

「取引するアル。私たちと勉強しろとは言わないネ。ただ、ここで勉強してれば良いネ。そしたら、こいつはお前のもの。肉まんと引き換えのギブアンドテイクアル……!」

 

肉まんの湯気が、五月の心を揺さぶる。

「神楽さん……良いでしょう。取引成立です!」

 

この瞬間の五月の真剣な表情は、まるで重大な契約を交わしたようだった。

 

五月が湯気を立てる肉まんを手に、ほんのり頬を染めながら机に向かうと、二乃が不満げにその様子を睨むように見つめた。

 

「くっ……そうだ、三玖。」

二乃は座っている三玖のほうへと目を向け、挑発するような口調で言い放つ。

「あんた、間違えて飲んだアタシのジュース、買ってきなさいよ。」

 

三玖はその言葉に、特に動揺することもなく静かに目を上げた。柔らかい髪が肩にかかり、無表情なその顔はどこか冷静さを感じさせる。

 

「もう買ってきた。」

 

三玖が差し出した小さな袋の中には、二乃が想像もしなかった代物が入っている。それを受け取った二乃は袋を覗き込むと、困惑した表情で眉をひそめた。

 

「え……って、これあんたの好きな飲み物じゃない!?」

二乃の声がリビングに響き、周囲の視線が彼女に集まる。

 

その様子を見ていた神楽は、肉まんを手に取りながら肩をすくめた。頬張った肉まんから立ち上る湯気が、彼女の顔を少しだけ赤らめている。

 

「心配することはないアル。」

神楽は軽く笑いながら、机に肘をついて言う。

「肉まんは大した出費じゃない。とりま、二人残っただけでも良しとするアル。」

 

神楽の言葉に新八が同調するように手を振った。

「いや全然話が噛み合ってないんだけど…仕方ないですね…よし、切り替えていこう。」

 

そのやり取りを横目で見ていた銀時は、ソファに背を預けながらゆっくりとジャンプを広げる。ズンボラ星人の体操着に和服を着た彼の姿は、完全にやる気のない大人そのものだ。

 

「だな……よ~し、テメェらァ!」

銀時は大げさな声を出しながら、ジャンプを読み始めた。

 

「家庭教師相手が二人になったんだァ~。人数余るから俺ここでジャンプ読んでっから後は頼んだぞ~。」

 

しかし、その言葉を聞いた新八と神楽の表情が一瞬で険しくなる。

 

「頼んだじゃねェェェェよ!!」

 

二人の叫び声が響いた次の瞬間、二人のドロップキックが銀時の背中に炸裂した。

 

「ドカァッ!」

鈍い音とともに銀時はソファから転げ落ちる。床に倒れ込んだ彼は呻き声を上げながら背中をさすっていた。

 

「ほんと、頼むからちゃんとやってくださいよ!」

新八が眉をひそめながら銀時に詰め寄る。

「アンタが中心にならないと話が進まないんですから!」

 

銀時は額をさすりながら、やれやれといった様子で立ち上がる。

「はいはいわかったよ。やりゃいいんだろ、やりゃ。」

 

そんな銀時の姿を、腕を組んで見ていた上杉は、どこか疑いの目を向けながら呟いた。

「本当に大丈夫なのか?……この人たち、逆効果に見えるんだが。」

 

三玖はそんな上杉の言葉に小さく頷いた。

「大丈夫……私が近くにいればいい。」

 

彼女の落ち着いた口調に、銀時がニヤリと笑みを浮かべる。彼の目はどこか挑発的で、いたずらっぽい光を放っていた。

 

「おお、ヘッドホン、自分からそんなこと言っちゃう?お兄さんちょっと期待しちゃうよ?ていうか俺、こう見えて勉強の才能だけはあるからね!ほれ、ジャンプ読破したからな!」

 

その発言に新八がすかさずツッコミを入れる。

「それ勉強じゃねぇよ!まず読書とも言わねぇから!」

 

二乃が銀時を指差しながら冷たく笑う。

「へぇ……三玖。いつの間にそんなに仲良くなってたの、その腐れ天パと。」

 

銀時は胡座をかき直し、わざとらしい態度で言い返す。

「ん?俺か?いやいや、俺そんなお手軽に仲良くなるタイプじゃねーから。高貴な存在だからさ。」

 

その言葉に二乃は鼻で笑い、皮肉を込めた口調で続ける。

「死んだ魚の目をした顔の男が高貴な存在って笑わせるわね。」

 

三玖は無表情のままぽつりと言った。

「……銀ちゃんは冴えない顔じゃない。冴えないのはメガネ(新八)とフータローのほう。」

 

その発言に上杉は慌てて立ち上がる。

「おい!お前ら俺らに酷いこと言ってる自覚あるか!?」

 

銀時は上杉の肩を叩き、笑顔で励ますように言う。

「上杉く〜ん、強く生きろよ。人は、顔だけじゃないから。」

 

その言葉に新八はため息をつきながら肩をすくめた。

「あんたには言われたくないと思いますけど……」

 

銀時、新八、神楽、上杉がそれぞれツッコミを入れたり交わしたりする中、二乃は不意に視線をリビング全体に巡らせ、ふと話題を変えた。彼女の表情は得意げで、何か企みがあるのが一目で分かる。

 

二乃が口を開く。

「ところで、キミらお昼食べた?」

 

その質問に、新八は軽く手を挙げて答える。

「僕は食べましたけど。」

 

続いて、上杉が首を傾げながら何かを思い出そうとする。

「……そういや、まだ食べてない……」

 

その瞬間、上杉の腹が鳴り響く。

「グゥゥゥ…」

 

リビングが一瞬静まり返り、その音が際立つと同時に、二乃の目が鋭く輝いた。彼女は待っていたかのように机に手を叩きつけ、小さく笑う。

 

「じゃあ三玖の言う通り、中身で勝負しようじゃない。どっちが家庭的か、料理で勝負よ!」

 

 

二乃の言葉に、三玖は静かに目を伏せて考えるような仕草を見せる。

「……料理勝負。」

小さな呟きだったが、その声には静かな闘志が宿っているのが分かる。

 

一方で銀時はソファに体を沈めたまま、大げさな声で反対する。

「えぇ……そこまでやる~?てか、俺たちにそんな余裕あると思うの?この後何回かの話挟んだら期末テストだよ~悠長に料理対決してる場合じゃないだろ。」

 

銀時の無責任な口調に、神楽が冷たく言い放つ。

「銀ちゃん……その『次の話数』とか言い出すメタ感がウザいネ。いいから黙って見てるヨロシ。」

 

新八もため息をつきながら肩をすくめ、銀時を睨む。

「銀さん、こういう時くらい真面目にやってくださいよ。僕ら審査員なんだから。」

 

銀時はふてくされたようにジャンプを閉じ、仕方なく体を起こす。

「ったく……俺だって真面目にやりたいときはあるんだぞ。でもよ、ダークマター生まれたらマジで胃袋壊れるからな。」

 

神楽が肉まんを頬張りつつ、銀時に冷たく一瞥をくれる。

「それでもここにいる生徒より、銀ちゃんのほうがダメダメアルよ。」

 

銀時がムキになって叫ぶ。

「うるせぇな!俺だって料理くらいできんだよ!よし、俺が教えてやる!……いや待て、俺が作るのが一番早いか?」

 

新八がすかさずツッコミを入れる。

「絶対やめてください!それだと料理対決の意味なさいから!」

 

そんなやり取りを余所に、二乃と三玖はお互いを見つめ合っていた。二乃が軽く顎を上げ、挑発的な笑みを浮かべる。

「いいわね。アンタ、私に勝てると思ってるわけ?」

 

三玖は無表情のまま静かに答える。

「……勝つつもりでやる。」

 

その静かな決意に、二乃は笑いながら腕を組んだ。

「へぇ……じゃあ見せてもらおうじゃない。」

 

新八が腕を組みながら二人を見つめ、審査員として声を上げる。

「よし、テーマを決めましょう。銀さん、ここは公平にお願いしますよ。」

 

銀時は仕方なさそうに首をかしげ、思いついたように手を叩いた。

「そうだな……テーマは『お昼ごはん』だ。簡単で、栄養バランスが良いのが一番だろ。」

 

その言葉に二乃が小さく笑い、すぐに準備を始める。

「いいじゃない。あたしが作ったら、アンタたち全員私の勝ちを認めるしかなくなるわね。」

 

一方で三玖も冷静にエプロンをつけ、必要な調理器具を確認し始めた。

 

銀時はそんな二人の様子を見て、口元を緩める。

「おいおい、もう始める気満々じゃねーか。こりゃあ面白いことになりそうだな。」

 

神楽が冷静な表情で言い放つ。

「銀ちゃん、笑ってる場合じゃないアルよ。審査するなら真面目にやるヨロシ。」

 

銀時は肩をすくめながら答える。

「はいはい、わかったよ。」

 

リビングからつながるオープンキッチンでは、二人がそれぞれ調理台に向かって立っている。二乃は野菜や肉、卵を手際よく取り出

 

 

リビングは、いつもの賑やかさが嘘のように静まり返っていた。

二乃と三玖がキッチンのカウンター越しに向かい合い、それぞれに準備を始める。二乃の目には自信が宿り、勝利を確信しているような笑みが浮かぶ。一方の三玖は無表情ながらも、静かな闘志がその佇まいににじみ出ていた。

 

神楽は五月と肉まんを食べ終えると、立ち上がって三玖の肩に手を置いた。

「三玖ちゃん、いいアルか。銀ちゃんは甘いものが好きだから、コイツを作るといいアル。」

 

神楽が三玖に手渡したのは、一枚の紙だった。そこには、あんこと抹茶を使った「宇治銀時丼」の作り方が書かれている。

 

三玖はそれを手に取ると、少し戸惑ったような顔を見せた。

「これ?……あんこ乗せただけの丼ものだけど……」

 

神楽は自信満々に頷きながら言う。

「一緒に仕事してきた私たちが言うから間違いないアル!銀ちゃんの心掴むなら料理から……ここで気持ちを鷲掴みネ!」

 

三玖は少しだけ考え込んだが、やがて静かに頷いた。

「……うん。わかった。」

 

一方、二乃は冷蔵庫から必要な材料を手際よく取り出し、鍋やフライパンを準備し始める。彼女は鼻歌を歌いながら、包丁をリズミカルに動かして野菜を切り、まるで自分の勝利が当然だと言わんばかりの余裕を見せていた。

 

「ふふ、家庭的な女がどれだけ料理で差をつけられるか、思い知るがいいわ!」

 

その挑発的な言葉に、三玖は何も言わず、調理器具を揃える手を止めなかった。

 

新八と神楽はダイニングテーブルに座りながら、二人の様子を見守っていた。新八が目を輝かせながら二乃の鍋を覗き込む。

「おお、二乃さん、いい匂いですね。これは普通に期待できそう……。」

 

神楽は一方で、三玖が準備している食材と紙をちらりと見てニヤリと笑った。

「大丈夫アル。三玖ちゃんの宇治銀時丼、絶対に銀ちゃんのハートを射抜くアルよ。」

 

銀時はカウンターに肘をつきながら、三玖の手元を横目でちらりと見た。

「……それにしてもヘッドホンは、大丈夫かねぇ?変なもん作るなよ~。」

 

その言葉に神楽が振り返り、銀時を鋭く睨む。

「何言ってるアルか。信じるネ。銀ちゃん、三玖ちゃんの料理で感動する準備するアル!」

 

銀時はその熱意にたじろぎながら、そっぽを向いてぼそっと呟いた。

「……まぁ、あんこが乗ってりゃ大体なんでも美味いけどな。」

 

キッチンの緊張感がさらに高まる中、二乃が手を止め、挑発するように三玖を見た。

「さぁて、そっちの準備はどうかしら?」

 

三玖は一切動じることなく、静かに野菜を洗い、手元のレシピを確認していた。

「……大丈夫。もうすぐできる。」

 

二乃はその冷静な態度に少しだけ苛立ったように舌打ちをする。

「ふん、最後までその余裕が続けばいいけどね。」

 

二人の背後で、銀時が手を叩いて声を張り上げた。

「よーし、準備は整ったな!ここからが本番だぜ!」

 

神楽が銀時に目を細めて睨む。

「銀ちゃん、審査員は静かに見守るネ。」

 

銀時は慌てて口を閉じ、再び肘をついて二人の様子を見守った。新八が腕を組みながら呟く。

「……どっちが勝つんでしょうね。」

 

その問いに、神楽が満面の笑みで答える。

「三玖ちゃんが勝つアル!宇治銀時丼は最強アル!」

 

銀時は苦笑しながら呟いた。

「……それ、審査員の俺が一番知ってるけどな。」

 

こうして、二乃と三玖の料理対決がついに火蓋を切った。

 

調理開始――二乃の自信満々なビーフシチュー

キッチンに響く包丁の音が、リビングに小さく反響している。二乃は、冷蔵庫から取り出した野菜を手際よく切り分け、鍋に放り込む。トマト、ニンジン、玉ねぎ、そして肉。彼女の動きには迷いがなく、まるで料理番組の一幕のようだ。

 

鍋から立ち上る香ばしい匂いが、リビングに漂い始める。彼女は満足げに鼻歌を歌いながら、次々と調味料を加えていく。

 

「完璧ね。これ以上ない仕上がりになるわ。」

 

二乃は一瞬手を止め、カウンター越しにちらりと三玖を見た。三玖が無表情で黙々と作業を進める様子に、再び余裕の笑みを浮かべる。

 

「さぁ、家庭的な女の本気を見せてあげる。」

 

 

一方、三玖は無駄な動きを一切見せず、淡々と準備を進めていた。手元には神楽から渡された「宇治銀時丼」のレシピ。あんこと抹茶アイスを使ったそのシンプルな一品を見つめ、彼女は一瞬だけ迷ったような表情を見せる。

 

「……これでいいのかな。」

 

だが、すぐにその迷いを振り払い、あんこの缶を開ける。彼女の指先は慎重ながらもスムーズで、一つひとつの動きに集中が感じられた。抹茶アイスを取り出し、小さな器に盛り付けながら、彼女はふとリビングを見やる。

 

神楽が満面の笑みでサムズアップしていた。

「それでいいアル!自信持つネ!」

 

その言葉に三玖は小さく頷き、再び手元に集中する。

 

観客席の反応

新八は二乃の鍋を覗き込み、思わず感嘆の声を上げた。

「おお、二乃さんのシチュー、いい匂いですね……これは期待できそう。」

 

一方、神楽は三玖の宇治銀時丼に視線を送りながら満足げに頷く。

「ほら見ろアル。三玖ちゃんの作るものは絶対に銀ちゃんに刺さるアルよ。」

 

銀時は少し呆れたようにそのやり取りを聞き流しながら、二人の様子をじっと観察していた。

 

「まぁな、どっちも良い勝負だろうけど……甘党の俺には結果が見えてるけどな。」

 

新八がその発言に眉をひそめる。

「銀さん、審査員なんだから公平にやってくださいよ。」

 

銀時は気まずそうに視線をそらし、あくびを隠すように手を口元に当てた。

「わかってるって。俺ァ常に公平な男だからよ。」

 

二乃は火を止め、鍋から湯気を立てながらシチューをよそる。真っ白な皿に彩り豊かなビーフシチューが盛られると、それはまるで絵画のように美しかった。彼女は自信たっぷりに皿を持ち上げ、銀時たちに見せつけるように振り返る。

 

「さぁて、できたわよ!これが家庭的な女の料理よ!」

 

三玖も宇治銀時丼を静かにテーブルに運び、その場に立ち止まる。緑色の抹茶アイスとあんこが絶妙に盛り付けられ、どこか銀時の雰囲気を感じさせる個性的な見た目だった。

 

銀時は二人の料理を見比べながら、手を擦り合わせて笑う。

「よし、じゃあ俺の胃袋でジャッジするぞ。まずはこっちからだな。」

銀時はスプーンを手に取り、二乃のビーフシチューを一口すくい、ゆっくりと口に運んだ。柔らかく煮込まれた牛肉と野菜が口の中でとろけるようだ。

 

「おお、これは意外といけるな。ちゃんと肉の旨味も出てて、手間かかってる感じだ。」

 

二乃は自信満々に腕を組み、勝ち誇ったような表情を見せる。

「当然でしょ!家庭的な私の勝ちに決まってるじゃない!」

 

次に銀時は三玖の宇治銀時丼にスプーンを入れる。抹茶アイスがほんのり溶け、あんこと絡まり合うその一口を口に運んだ瞬間、銀時の表情が一変する。

 

「お、おい……これ……!」

 

新八が驚いて声を上げた。

「どうしたんですか銀さん?」

 

銀時は目を輝かせながら、器を見つめる。

「これ、俺がいつも食ってるやつにアレンジが加わってるじゃねぇか!」

 

二乃が困惑した表情で問い詰める。

「はぁ!?いつも食べてるって、どういうことよ!」

 

銀時は嬉しそうに頷きながら語る。

「俺、いつも学食でもコイツ食ってんだよなぁ。完璧な組み合わせだ。もう俺のソウルフードだな。」

 

銀時は満足げに両手を広げ、宣言する。

「というわけで、勝者は俺の好みを見事に当てたヘッドホン!宇治銀時丼の勝ちだな!」

 

二乃はテーブルを叩きながら立ち上がる。

「ズルいわよ!甘いものが好きって分かってたなら、そんなの勝てるわけないじゃない!」

 

三玖は淡々と答えた。

「……作戦勝ち。」

 

その一言に、二乃はさらに怒りを募らせ、銀時を指差して叫ぶ。

「アンタも審査員としてどうなのよ!」

 

銀時は椅子にもたれかかりながら涼しい顔で答えた。

「いやいや、俺ァ甘いものには正直なだけだからよ。」

 

二乃はそのまま憤慨しながら部屋へと向かい、扉を閉める音がリビングに響いた。

 

 

リビングには静けさが戻り、銀時は満腹そうにお腹をさすりながら言った。

「いやぁ、いい勝負だったな。これで昼飯も済んだし、今日はこの辺で勉強終わりってことでいいだろ?」

 

新八がすかさず反論する。

「良くないです!これからが本番なんですから!」

 

こうして、波乱含みの料理対決は終わりを迎えたが、テスト勉強という本題はまだ始まってすらいなかった――。

 

 

リビングは料理対決の余韻でどこかゆったりとした空気が漂っていたが、その静けさは長くは続かなかった。新八が真剣な表情で参考書を開き、上杉に目を向ける。

 

「上杉さん、そろそろ本気で始めませんか?このままじゃテストまでに間に合わないですよ。」

 

上杉は深いため息をつきながら銀時を見る。

「それは分かってる。けど……ここで本気出す気になるか?」

 

銀時はソファに体を沈め、もう一度ジャンプを広げていた。

「おいおい、俺にそんな顔向けるなよ。俺ァ家庭教師らしく、もう一仕事終えたんだからな?」

 

新八が目を細めて冷たく突っ込む。

「何が『一仕事』ですか。審査員として甘いものを食べただけでしょうが!」

 

そのやり取りを聞いていた神楽が口を挟む。

「銀ちゃん、こういうときこそ本気出すアルよ。次はどう勉強させるか、しっかり考えるヨロシ。」

 

銀時は面倒くさそうに頭を掻きながら答えた。

「仕方ねぇな……分かったよ。じゃあ問題を出して、正解したやつから自由時間にしてやるってルールでどうだ?」

 

その提案に、五月が教科書を抱えて立ち上がる。

「坂田さん、それではまた脱線してしまいます!きちんとしたテスト対策に沿った問題でお願いします。」

 

銀時は五月の真面目な態度に一瞬たじろぐが、すぐに適当な笑みを浮かべる。

「わーってるよ。ちゃんとした問題出すからよ~。ほら、神楽、新八、適当に問題考えてくれ。」

 

新八は怒りを堪えながら顔を真っ赤にして叫ぶ。

「自分で考えろよ!」

 

一方、神楽はニヤリと笑いながら言った。

「いいアル、銀ちゃん。こんなときのために準備してあるネ。」

 

彼女が取り出したのは、どこかのクイズ番組を参考にしたと思われるカードだった。それには、大きな文字で「バカでもわかる超基本問題」と書かれている。

 

銀時がそれを手に取って目を細めた。

「おいおい、これ勉強っていうか……ただの知識ゲームじゃねーか。」

 

新八は顔を覆いながら嘆く。

「もう何でもいいです……早く始めましょう。」

 

銀時はカードを手に取り、テーブルに立つと大げさに腕を広げて宣言した。

「よーし、じゃあ今からクイズを始めるぞ!正解したやつには、銀さん特製ポイントをやる!」

 

二乃が部屋から戻ってきて、腕を組みながら呆れたように言う。

「……その『特製ポイント』って何よ。」

 

銀時は得意げに笑いながら指を一本立てる。

「それはだな、10ポイント集めたら……そうだ、俺が奢ってやる。」

 

一同はその発言に目を見開くが、神楽がすぐに冷静なツッコミを入れる。

「銀ちゃん、奢るとか言ってもどうせうまい棒一本とかアル。」

 

銀時は苦笑いを浮かべながら言い返した。

「おいおい、俺だって奢るときゃ奢るんだよ。それに、こういうのがあればやる気も出るだろ?」

 

三玖が静かに手を挙げた。

「……とりあえず、やってみる。」

 

その言葉に、新八や上杉も観念したように頷いた。

 

銀時はカードを一枚取り上げ、読み上げる。

「よーし、第一問!『1+1は?』」

 

リビングに静寂が訪れる。

 

二乃が不機嫌そうに答えた。

「……2でしょ、そんなの。」

 

銀時はわざとらしく拍手をしながら笑う。

「おぉ~正解!1ポイントゲットだ!」

 

新八が怒りを抑えながら冷静に言う。

「銀さん、それ小学生一年生の問題ですよね?本当にこれでいいんですか?」

 

だが、銀時はカードをめくり、次の問題を読み上げた。

「第二問!『リンゴとミカンを足したら?』」

 

神楽が即座に答える。

「ジュースネ!」

 

銀時は感心した様子で頷く。

「おぉ、なかなかクリエイティブな答えだな。でも正解は『フルーツ』だ。」

 

新八が頭を抱えながら叫ぶ。

「そんな抽象的な答え、誰がわかるんですか!」

 

そんな混乱の中、上杉が静かに立ち上がると、銀時からカードを奪い取った。

「もういい。俺が出題する。これで少しはマシな勝負になるだろう。」

 

銀時は不満そうに顔をしかめたが、特に抵抗もせず椅子に座り込んだ。

「おいおい、そうやって仕切るならちゃんと面白い問題出せよ?」

 

上杉は教科書を開き、日本史のページを指差して問題を読み上げた。

「じゃあ問題だ。『厳島の戦いで毛利元就を破った武将を答えよ』。」

 

リビングが再び静まり返る。

 

二乃が苛立ちを隠せず声を上げた。

「はぁ!?いきなり本格的すぎない!?」

 

五月は意気揚々と答えようとしたが答えが分からず顔を膨らませてるのに対して、三玖が小さな声で言う。

「……答えは……陶晴賢。」

 

彼女が正解を口にすると、銀時が椅子から転げ落ちるほど驚いた表情を浮かべた後思い出したかのように、

「おいおい、ヘッドホン、本気出しすぎだろ!ってそういやお前戦国武将が好きだったな」

 

神楽は正解した三玖の肩を叩きながら

「やったアルな三玖ちゃん!」

 

新八も感心しながら

「僕も驚きましたよ。」

 

 

三玖は頷きながら

『銀ちゃん……私の話覚えててくれた』

と心の中で喜んだ。

 

こうして、一同は予想外に本格的な問題に挑むことになり、銀時の適当な提案は再び上杉の管理のもと軌道修正された。

 

しかし、期末テストの本番に向けた道のりはまだまだ長そうだ――。




次回

「裁判所って不公平だよね?」

「給料の渡す場所を考えないと取られるよ!!」

のできたら二本立てにしまーす。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。