気楽に読んで頂きたい
昼休みの陽光がグラウンドを照らし、静かな空気が流れている。
そのの一角で、桂小太郎は足を止めた。目の前に立っていたのは、高杉晋助。
彼の制服がひるがえり、片目が冷たく光っている。その姿に、桂の表情がわずかに険しくなった。
「……高杉。」
桂が低く問いかける。
高杉は口元に不敵な笑みを浮かべ、軽く肩をすくめた。
「ヅラ、お前は相変わらずだな。国に強い恨みを持ちながら、今でもこんな学校にのこのこ通ってるらしいじゃねぇか?」
桂は背筋を伸ばし、毅然とした態度で言い返す。
「ヅラじゃない、桂だ。」
そして一歩前に踏み出し、高杉を鋭い目で見据える。
「お前こそ、今や誰でも知っている反社会的犯罪者集団、鬼兵隊のリーダーでありながら、こんなところで何をしている。」
高杉は飄々とした態度を崩さず、壁に寄りかかる。
「な〜に。今日は祭りがあるってんで、花火を見るついでに、アイツにも挨拶をしに来たのさ。」
「アイツ?」
桂の眉がさらに寄る。その言葉にはどこか嫌な予感を感じさせるものがあった。
高杉は答えず、懐から煙管を取り出して火をつける。紫煙がゆっくりと空中に漂い、その奥で彼の目が怪しく光る。
「お前には関係ねぇ話だ。」
「……祭り好きも大概にしておけ。」
桂は鋭い声で言い放つが、すでに高杉は廊下をゆっくりと歩き始めていた。
「おい、待て。どこへ行く?」
高杉は振り返らず、肩越しに笑みを浮かべたまま言う。
「言っただろ?挨拶に行くってな。」
その不気味な笑い声が廊下に響き、高杉は悠々と歩み去っていった。
高杉の姿が視界から消えても、桂はその場から動けなかった。彼の中には、どこか拭いきれない不安が広がっていた。
「……………」
彼の隣に、いつの間にかエリザベスが戻ってきていた。エリザベスは無表情な顔でプラカードを掲げる。
『どうした?』
桂はその文字に気づき、顔を上げる。
「エリザベス、戻ったか!」
『はい、トイレから戻ったが、何か?』
桂は険しい表情を浮かべながら、エリザベスの肩を軽く叩く。
「話は後だ。銀時の元へ急ぐぞ。」
『何があったのか?』と書かれたプラカードを掲げるエリザベスを無視して、桂は早足で廊下を進んでいく。
その背中からは、いつもの飄々とした雰囲気ではなく、明確な焦燥感が滲んでいた。
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昼休み、図書館の一角に上杉、四葉、三玖、一花、新八、神楽、銀時が集まっていた。四葉が嬉しそうに話題を切り出す。
「はぁ?花火大会?」
上杉が眉をひそめ、四葉を見つめた。
「はい!今日の夜、私たちが毎年行っている花火大会があるんですけど……」
四葉はバッグをゴソゴソと漁りながら、パンフレットを取り出して皆に見せる。
「ほら!」
新八がパンフレットを見て驚いたように声を上げた。
「あぁ、それ知ってますよ!僕たちも毎年行っていて、今日も僕は姉上と一緒に行く予定ですよ!」
四葉は勢いよく手を挙げて言った。
「そこで……皆さんも一緒に行きませんか!!」
神楽が団子を頬張りながら、驚いた顔で尋ねる。
「えぇ!いいアルか?」
四葉は満面の笑みで頷いた。
「もちろんです!!」
神楽はその言葉に目を輝かせ、すぐに銀時を振り返った。
「銀ちゃんも行くアル!」
銀時はやれやれと肩をすくめる。
「え?いや、今日視聴予約していたドラマが……」
だが、神楽、新八、四葉、さらには一花までがじっと銀時を見つめる。無言の圧力がかかる中、銀時は渋々態度を改めた。
「あ……あぁ、そういえばドラマは来週に鞍替えしたんだったな……はい行きます。」
一花が銀時の返事を聞いて満足げに微笑む。
「良かったねぇ~三玖?」
三玖は少し顔を赤くして、小さく頷いた。
「………うん////」
その時、図書館の扉がガラガラと音を立てて開いた。そこには二乃が立っていた。
「遅れたわ。」
四葉が二乃に駆け寄り、嬉しそうに声をかける。
「二乃!!ちょうど良かった。今、みんなで花火大会に行こうって話をして……」
しかし、その言葉を遮るように、上杉が冷たい口調で言った。
「俺は反対だ。」
二乃も腕を組み、険しい顔で言う。
「こいつらが行くなら私も反対!」
四葉は驚いて声を上げる。
「ど、どうしてですか?」
上杉は真剣な顔で続けた。
「どうしてって?それは1学期期末試験も近いのに、祭りなんて行ってる暇があるわけないだろ!!勉強だ勉強!!」
四葉は肩を落として悲しそうに呟く。
「そ、そんなぁー。」
一花が優しい声でフォローするように言う。
「風太郎君、今日くらいは……」
その時、三玖が静かに口を開いた。
「………人の上に立つ対象となるべき人間の一言は、深き思慮をもってなすべき。軽率なことは言ってはならぬ。」
上杉は少し戸惑った表情を浮かべる。
「それは……」
三玖は真っ直ぐに上杉を見つめながら続けた。
「上杉謙信の言葉……軽い気持ちで発した言葉が、他人の心を傷つけたり、思わぬ波紋を広げてしまうことがある。それは、上に立つ者なら、なおさら………」
三玖は静かに、けれど確信を持って告げる。
「もう少し考えてから話して……」
上杉は言葉に詰まり、黙り込む。
新八と神楽、そして五月の説得
そんな空気を壊すように、新八が柔らかい声で口を開いた。
「上杉さん。今回は、三玖さんのいう通りだと思います。」
「新八、お前まで……」
新八は穏やかに笑みを浮かべながら続けた。
「焦る気持ちも分かりますけど、卒業まではまだ2年近くあります。だから、今日は生徒にとっても僕たちにとっての休暇にしましょうよ。」
それでも納得しない上杉に、神楽が助け舟を出す。
「そこのガリ勉やろうの妹らいはちゃんの話を聞いてみるアル!そこでこの中でらいはちゃんに唯一会った事があるらしい五月!どう答えるか考えてみるネ」
五月も頷き、上杉を見つめる。
「そ、そうですね……多分志村君の意見に賛同して、らいはも祭りに行きたいと言うと思います。」
上杉はその言葉に目を閉じ、深く息をついた。
「確かに……らいはならそう言う。」
一花はその瞬間を見逃さず、明るい声で宣言する。
「よし!風太郎君の参加も決定!あとは……」
全員の視線が、黙っていた二乃に集まる。
「な、何よ!私は絶対……」
神楽がニヤリと笑いながら銀時を呼ぶ。
「銀ちゃ〜ん。」
銀時は飄々とした声で返す。
「はいはーい。もしもし沖田君?」
その瞬間、二乃が慌てたように叫ぶ。
「わぁーダメ!!それだけはダメェェェ!!」
図書委員に叱られる一同
「コホン!」
静かだった図書館に響いたのは、図書委員の咳払いだった。全員が一瞬にして黙り込む。
図書委員が厳しい表情で言い放つ。
「図書館ではお静かに。」
一同は頭を下げて小さく謝る。
「すいません……。」
二乃は溜息をつきながら、渋々と答えた。
「さ、参加するわよ。」
四葉が両手を挙げて喜ぶ。
「やったぁぁぁぁぁ!」
「しーーー!!!」
図書委員の再度の注意に、四葉は慌てて口を押さえる。
「はっ、すいません……!」
昼休みの図書館の静寂を破るように、扉が勢いよく開け放たれた。
「銀時!」
声を上げながら入ってきたのは桂小太郎だった。
「ん?ヅラか?」
銀時はパンフレットを手にしていた四葉から目を離し、廊下から図書館に入ってきた桂を見上げる。
「どうしたそんなに急いで、あっ、好きな女でも見つけて尻でも追いかけてたんだろ?」
銀時がからかうような口調で続ける。
「残念ながらお前が好きそうな未亡人教師はここに……」
その瞬間、桂は銀時の腕を掴むと強引に立ち上がらせ、廊下へと引きずり出した。
廊下に出た桂は銀時の胸倉を掴み、真剣な顔で低く唸るように言った。
「それ以上武士を愚弄してみろ、たとえお前でも切り捨てるぞ。」
銀時は冷めた目で桂を見下ろしながら問い返す。
「そんなに本気になるなよ……で、結局誰が好きなんだ?」
桂はぐっと息を飲み、やがて声を張り上げた。
「俺が好きなのは人妻でも未亡人でもない……」
「NTRだァァァァァ!!!」
その瞬間、桂の叫び声は廊下だけでなく、図書館の中にまで響き渡った。
図書館の中で話を聞いていた新八が立ち上がり、頭を抱えながら叫ぶ。
「オイィィィィ!!何のために廊下に移動したんだよアンタァァァァ!!!」
周りの生徒たちが静かにざわつく中、新八はさらに続けた。
「武士としてアンタが一番恥ずかしい性癖暴露してますよ!それにそんな声で話してるから廊下どころか図書館の中まで響き渡ってますって!!」
上杉は冷ややかな視線を桂に向ける。
「……桂、お前そんな趣味があったとは……いろいろあったんだろ。」
四葉は首をかしげながら新八に問いかける。
「NTRって何ですか?」
一花は慌てて笑顔を作り、四葉の肩に手を置く。
「………よ、四葉にはまだ早いかな〜。」
二乃は顔を赤くしながら溜息をつく。
「聞いた私も恥ずかしいわ……ん?」
二乃の目に、何やら様子がおかしい三玖の姿が映った。三玖はうつむきながら、ぼそぼそと呟いている。
「……あの人から……銀ちゃんに……良い……////」
二乃は眉をひそめ、三玖をじっと見つめた。
「三玖?三玖ゥゥゥ?」
その声にハッと気づき、三玖は顔を赤らめながら慌てて言い訳を始めた。
「し、してない……」
新八はそのやり取りを見て、額に手を当てる。
「あの三玖さん……どんな妄想を……」
その時、図書委員が静かに咳払いをした。
「コホン!」
全員が振り返り、図書委員の厳しい視線を浴びる。
「桂さん!!そのような内容はもう少し離れた場所でお願いします!!」
桂は仕方なく頷き、銀時を引き連れながら図書館を出ていく。
「仕方ない。ここで話すのはまずい。ひとまず談話室で話そう。」
去り際、桂は悔しげに呟いた。
「くそ!図書委員め、この恨みは必ず……」
銀時は後ろを歩きながら冷めた声で応じる。
「完全にお前のせいだけどな。」
談話室に入ると、桂は真剣な表情で椅子に座り、銀時を見つめた。
「突然だが、銀時。今日の花火大会には参加しない方がいい。」
銀時は驚きながら椅子に座り、煙草をくわえる。
「何だよ、お前の性癖がバレるのを警戒してんのか?そんなことしなくても、お前の性癖は十分……」
言い終わる前に、エリザベスが桂から受け取ったスマホを掲げ、音声を再生した。
(音声:高杉と桂の会話)
音声が終わり、部屋の空気が重くなる。
「…………」
銀時は目を細め、無言で煙を吐いた。
「これが真実だ。」
桂が厳しい声で続ける。
「奴は俺たちと違って過激派だ。何をしでかすか分からんぞ。だから今回は――」
銀時は桂を遮り、椅子を大きく揺らして立ち上がった。
「ヅラ。」
「……何だ。」
銀時は軽く笑みを浮かべながら答えた。
「悪りぃが、俺は祭りに参加する。」
「なぜだ。」
「俺が行かなくても高杉は祭りに来るし、アイツの狙いはこの俺だ。だったら、会場に俺がいないほうが問題が起きるに決まってんだろ。」
桂は険しい表情を崩さない。
「それにしたって、あいつの標的になる必要は――」
銀時は桂を軽く叩き、笑ってみせる。
「俺は万事屋部の部長だ。依頼じゃなくても、約束だけは絶対に破らねぇのさ。」
桂は短く息をつき、椅子から立ち上がる。
「……そうか。なら後は好きにしろ。忠告はしたからな。」
銀時が肩をすくめ、片手をひらひらと振りながら談話室を出ていく。その背中を見送りながら、桂は腕を組み、静かに呟いた。
「……銀時め。いつだって自分一人で背負い込む。昔から変わらんな。」
エリザベスが無言でプラカードを掲げる。
『一声かけてほしいよね。』
桂は頷きながら、少し険しい顔で答えた。
「全くだ。あいつのやり方はいつも単純すぎる。強がっているのか、それともただのバカなのか……。」
エリザベスが新たなプラカードを掲げる。
『どっちもだろ?』
桂は一瞬無言になり、溜息をついた。
「……まぁ、否定はできんがな。」
銀時の姿が廊下の向こうに消えると、桂は視線をそらさずに続けた。
「あいつが何を考えているのかはわかる。だが、だからと言って放っておけるほど俺は冷たい人間じゃない。」
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一旦休憩としてこちらをどうぞ
職員室の一角、、坂田銀八は窓辺の椅子に座り、うんざりした顔でうちわを仰いでいた。隣には、満面の笑みを浮かべた坂本辰馬が座っている。
「どうしたんじゃ?そんなつまらなそうな顔しよって。花火大会やぞ、祭り!祭りといえば飲んで食うて踊って、大いに楽しむもんやないか!」
銀八は軽く目を閉じ、うちわをパタパタと動かしながら溜息をつく。
「お前なぁ……教師がそんな無責任に楽しんでどうするんだよ。しかも俺たちは見回り係で、夜中まで仕事だっつーの。楽しむ余裕なんてあるわけねぇだろ。」
「おぉ、それはいかん!先生が祭りを楽しめんっちゅうのは、この世の損失やぞ!」
辰馬は楽しそうに笑いながら、銀八の肩をポンポン叩いた。
「いやいや、何が損失だ。俺は別に祭りなんてどうでもいいんだよ。ただ、祭りの最中にバカやらかすガキ共を追い回すのがめんどくせぇだけだ。」
「ほんなら、ワシが代わりに祭りを全力で楽しんで銀八に報告するけん!どうせ金八先生の代わりに――」
「だから俺の名前は銀八だって言ってんだろがぁぁぁ!!」
銀八は立ち上がり、辰馬の襟元を掴んで揺さぶる。
「お前、何回同じ間違いしてんだよ!金八先生と一緒にすんな!俺はな、もっとこう、自由で、適当で、ロクでもない教師なんだよ!」
辰馬は揺さぶられながらも笑顔を崩さない。
「そりゃ他の先生もおんなじようなもんじゃろ?なんや、銀八もツンデレなんか~?」
「デレねぇから!俺のどこにデレ要素があんだよ!」
そんな言い争いをしながら二人が廊下を歩いていると、化学室から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「へっへっへ、これが今回の力作だ……。」
銀八と辰馬が中を覗き込むと、そこには理科教師兼発明家の源外の爺さんが得意気に巨大な筒のようなものを磨いていた。
「おいおい源外の爺さん、何作ってんだよ。どう見ても爆発しそうなシロモノじゃねぇか。」
銀八が眉をひそめて指摘すると、源外は振り返り、にやりと笑った。
「銀八か。こいつはな、明日の夏祭りで打ち上げる特製の花火砲だ!」
辰馬の目が輝く。
「花火砲!?それは最高やないか!ぜひとも見てみたいのぉ!」
銀八は呆れ顔でため息をついた。
「いやいやいや、どこが最高なんだよ。どう見ても規格外だろ。これ、打ち上げたら祭りどころじゃなくなるぞ。」
「ほれ、試しに一発放ってみるか?」
源外は嬉々として花火砲をセットしようとするが、銀八が慌てて止める。
「やめろォォォォ!職員室が吹っ飛ぶ!俺らの給料も吹っ飛ぶゥゥゥ!!」
しかし、辰馬は笑顔で手を叩いて大賛成する。
「いやいや銀八、それがええんよ!試しに撃ったら話題になるで!ワシがボタン押したろか?」
「やめろぉぉぉ!!」
銀八が必死に止めようとするが、源外と辰馬はノリノリで準備を進める。
その時、化学室のドアが勢いよく開き、飛び込んできたのは陸奥だった。
「全員その手を止めやんかバカ教師ィィィィ!!」
陸奥の鋭い声が響いた瞬間、彼女は宙を舞い、辰馬の背中に強烈な飛び蹴りを食らわせた。辰馬は吹き飛ばされ、花火砲の近くに転がる。
「痛ったいのぉ!陸奥、お前何すんのじゃ!」
陸奥は冷たい目で辰馬を睨みつける。
「何って?祭りを台無しにする気か、このバカ船長が!あっ間違ったバカ数学教師が!」
銀八は安堵の表情を浮かべるが、源外が未練がましく呟く。
「いやぁ、せっかく作ったんだから、一発くらい撃ってみたくてなぁ……。」
陸奥は源外を振り返り、さらに冷たく一言。
「撃ちたいなら山奥でやれ。」
銀八は陸奥に肩を叩かれながら深く息をつく。
「ほんと、お前がいて助かったぜ。こいつら放っといたら本気でやらかしてたぞ。」
陸奥は冷静に頷きながら言った。
「はぁ、このバカがもっとしっかりしてくれれば、私もこんな苦労しなくて済むんじゃがな。」
辰馬は笑いながら立ち上がり、花火砲を見上げる。
「まぁ、また次の機会に撃とうや!楽しみは取っといた方がええやろ?」
陸奥が反省の色の見えない坂本をもう一度蹴る
「だからそれがいかんと言っとるじゃろが!」
銀八は額に手を当て、再び溜息をついた。
「やれやれ、これだからお前らは……夏祭りが無事に終わる気がしねぇ。」
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課題を終えた五つ子たちが花火大会の会場に到着した頃、まだ夕暮れが続いていた。
四葉は両手を大きく広げて声を上げる。
「やっと終わったー!」
らいはもにこやかにみんなを労う。
「みんなお疲れ様〜。」
二乃は腕時計を見ながら呟く。
「花火って何時から?」
三玖が控えめに答える。
「確か、19時〜20時。」
その言葉に、一花が楽しそうに提案する。
「じゃあまだ1時間あるし、屋台行こー!」
上杉は呆れた顔で、五つ子たちの様子を見つめる。
「ったく、あいつらこういう時だけやる気出しやがって……。」
そんな彼にらいはがぷくっと頬を膨らませて抗議する。
「お兄ちゃん!せっかくの花火大会なんだから勉強の話は禁止!」
その時、ふと別の女性の声が割り込んだ。
「そうよ。風ちゃん、祭りの時くらい羽目を外さないと。」
上杉は声の主に振り返り、目を丸くする。
「そうだな……って、アンタ誰だ?」
その女性は優雅な笑みを浮かべながら言った。
「あら?初対面でしたか?私は志村妙、新ちゃんの姉です。いつも新ちゃんがお世話になってます。」
上杉は思わず背筋を正して挨拶した。
「い、いえ、こちらこそ俺の方こそ毎回助けられてばかりで……どうぞよろしく……。」
彼が握手をしようと手を差し出した瞬間、背後から鋭い声が響いた。
「妙ちゃんに触るな。」
誰かが上杉の手を強く掴み、力任せにねじり上げた。
「痛デデデ!!」
上杉は痛みに顔を歪めながら、腕を振りほどこうとする。
志村妙は驚いて声を上げた。
「九ちゃん、やめて!」
上杉が必死に叫ぶ。
「い、痛かった〜なんなんだアンタ?」
片目は眼帯をつけた小柄の男性?は冷静な口調で名乗った。
「僕は柳生九兵衛、妙ちゃんの婚約者だ!」
その言葉に上杉は愕然とし、大声を上げた。
「こ、婚約者だとォォォォ!!」
妙は顔を赤くしながら九兵衛を制止する。
「九ちゃん!勝手なこと言わないで!」
そのやり取りを見ていた銀時が肩をすくめながら呟いた。
「おいおい、お前女だろ?こんなとこで百合発動させてどうすんだよ。」
そう、銀魂を知ってる人からしたら当たり前であるが、九兵衛は女である。
らいはが首をかしげながら銀時に問いかける。
「ねぇ百合って何?」
神楽がその場に割って入り、説明を始める。
「それはね――」
「ダメェェェ!!神楽ちゃんそれ教えちゃダメェェェ!」
新八が必死で神楽を止める。
上杉も力強く叫ぶ。
「らいはには純粋なまま育ってもらうんだ!特殊性癖については断じて教える事を禁ずる!!」
その時、さらに声が響いた。
「おいおいお前らさっきからギャーギャーやかましいんだよ。発情期ですか?コノヤロー。」
新八はその声を聞き、振り返る。
「そ、その声は――」
一同が驚きの声を上げる。
「銀八先生!」
銀時は銀八を見て険しい顔を向けた。
「テメェ、ここに何しに来やがった。」
銀八は平然とした様子で応じる。
「そのセリフそのまま花火と一緒に打ち上げてやるよ。」
銀時も負けじと返す。
「そのセリフを更に花火と共に打ち上げてやるよ。」
「そのセリフを――」
二乃が苛立った声で叫び、二人を止める。
「あぁもううるさいわね!いつまで続けるつもりなのよその会話!」
神楽が銀八の隣を指差す。
「あれ?よく見たらツッキーも一緒にいるアル。」
一花がからかうように微笑む。
「ホントだ。もしかしてデート中でしたか?熱々ですね〜。」
月詠は顔を真っ赤にして否定する。
「い、いやこれは……。」
その時、別の方向から怒声が響き、シュタッと現れたのは猿飛あやめだった。
「何ですって、銀八とデート!!」
「あんた……私を差し置いてデートなんて……許せない!」
らいはは兄の袖を引っ張り、目を伏せる。
「お兄ちゃん……あれ……。」
上杉は額に手を当て、溜息をつく。
「見ちゃダメだ。」
五月が困惑して尋ねる。
「誰ですか?あの人。」
新八が説明する。
「あれはですね、銀八先生のことを好きすぎて、自他ともに認めるストーカー教師――猿飛あやめことさっちゃんです。。」
「保健体育の先生ですけど……授業の内容がほとんど夜の知識ばかりで。」
三玖はその話を聞きながら、またもや妄想の世界に突入する。
「夜の……銀ちゃん……////」
神楽が肩を叩いて現実に引き戻す。
「三玖ちゃ〜ん、戻ってくるアル。」
三玖「はっ……何でもない………何でもないから」
さっちゃんは大声で訴える。
「銀八ひどいわ!私たち……一夜を共にしたこともある仲だってのに!!」
その言葉に一同が驚愕する中、月詠は苦無を手に取り、銀八に詰め寄る。
「銀八……それは本当か?」
一花は興奮気味に声を上げる。
「おお!!火花散る三角関係、これは面白そうだね〜。」
新八は半ば呆れながら溜息をつく。
「面白がってる場合じゃないですよ。」
二乃が軽蔑した表情で言う。
「ふん、所詮は男ってことね。」
らいはが困惑した表情で上杉の袖を引っ張る。
「お兄ちゃん……一夜を共にって……。」
上杉はすぐにらいはの頭に手を置いて、優しく目を伏せさせた。
「もう何も聞くな。」
一方で、少し離れたところで三玖がまたもや妄想の世界に突入していた。
神楽が三玖の様子に気付き、肩を軽く叩く。
「ダメネ……三玖ちゃん、また妄想の世界に入っちゃったアル。」
三玖はうっすらと赤面しながら静かに立ち尽くしている。
「…………。」
銀時がその様子を見て、軽く手を振りながら声をかける。
「おーいヘッドホン、おーい。」
その呼びかけに、三玖ははっとして我に返る。
「はっ……今日は多い。」
銀八の釈明と新八のツッコミ
混乱する場を見かねて、銀八が大声で叫びさっちゃんを突き飛ばした。
「いい加減しやがれ!!」
「キャッ……銀八、大胆ね。」
その場の空気がさらに歪む中、新八が冷静に指摘した。
「いやアンタただ普通に突き飛ばされただけですけど……小説だから誤解されるような言い方やめてくれません?」
神楽が腕を組みながら新八に軽く睨む。
「新八、お前のメタ発言混ぜたツッコミもやめるアル。」
銀八は顔をしかめながら、勢いよく指を猿飛に向ける。
「誰がこいつとデートしてるって言ったよ!!俺はこいつと祭りの監視だって職員会議で話し合っただろうが!!」
続けて、大きな溜息を吐きながら猿飛を睨む。
「それに、一夜を共にしたって言ったって、単に俺が寝てる時にお前が屋根から俺の上に落っこちて来ただけだろうが!!」
銀時はその説明に納得がいかない様子で舌打ちする。
「チッ……何だよ教師同士の禁断の恋じゃねぇのか。」
その言葉に神楽が肩を落としながら嘆く。
「がっかりアル。」
銀八は眉間に皺を寄せて、拳を握りしめる。
「テメェら後で花火と一緒に打ち上げてやろうか。」
月詠が腕を組みながら猿飛に問いかける。
「そういえば、猿飛。ペアの全蔵はどうした?そもそもここの担当ではないじゃろ?」
猿飛は特に気にする様子もなく、あっさりと答える。
「あいつ穴が痛いって……鬱陶しかったから………。」
花火大会会場から少し離れた場所、服部全蔵が荒い息を吐きながら地面に倒れていた。
「あっ……あっ……猿飛のヤツ……後で覚えておけよ……。」
その尻には、深々と苦無が刺さっており、勢いよく血が吹き出していた。
「ブシャァァァァァ……。」
再び会場に戻って
猿飛が何事も無かったかのように言い放つ。
「治してあげた。」
新八は目を見開きながら全力でツッコミを入れる。
「治せてねぇよ!むしろ悪化してるよ!!」
銀八は深い溜息を吐き、肩を回しながら全員を見渡した。
「はぁ……さぁ行くぞ。」
そして、視線を猿飛に向けると、言い放つ。
「おいメス豚、お前もついて来い。」
猿飛はその言葉に興奮しながら頬を染める。
「はい銀八!!どこまでもついて行きます!!」
「よし、さっさと仕事に戻るぞ。」
銀八は月詠に声をかけ、立ち去ろうとするが、最後に振り返って銀時たちに一言。
「お前ら、祭りをぶち壊すなよ。じゃなきゃ全員まとめて花火にくくりつけて打ち上げてやるからな」
そう言い残して去っていく銀八。その後ろ姿を見ながら、銀時は肩をすくめる。
「いやお前らが一番厄介な奴なんだけど。」
五月が周囲を見回しながらふと気付く。
「そういえば四葉は?」
上杉もらいはがいないことに気付き、眉をひそめる。
「あれ?らいはもいねぇ!」
九兵衛が妙の姿を探して叫ぶ。
「お妙ちゃんもいない!!」
新八が肩をすくめながら説明する。
「あー、大丈夫ですよ。さっき――」
その時、遠くかららいはの笑い声が聞こえた。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん!四葉さんとお妙さんが取ってくれたの……!」
らいはが嬉しそうに見せてきたのは、たくさんの金魚が入った二つの袋だった。左手の袋には中くらいの金魚がいくつか、右手の袋は倍以上の大きさで、金魚がぎっしりと入っている。
上杉は袋を見て絶句した。
「おいこれどうしたんだ?」
らいはがニコニコしながら説明する。
「えっとね、左のが四葉さんが取った金魚で、右が……お妙さんが取った金魚!」
さらに興奮した様子で続ける。
「四葉さんも凄かったけど、お妙さんの方がもっと凄くてね!!お妙さん、一瞬でお店の金魚全部捕まえちゃったんだ!!」
上杉は目を見開いて驚く。
「なっ!」
五月も驚きながら呟く。
「四葉より金魚を取れる人がいるなんて……。」
一花は感心したように微笑みながら言う。
「新八くんのお姉さん、すごいね。」
新八は慣れた様子で頷く。
「もう慣れました。」
四葉の反省とお妙の自信
四葉は悔しそうに拳を握りしめながら叫んだ。
「くっ……中野四葉一生の不覚です!」
一方、お妙は金魚の袋を見ながら腕を組み、首をかしげた。
「うーん……やっぱ腕が落ちたわ。昔は1秒であと10匹は捕まえられたもの……。」
ゴリラ発言の代償
上杉が険しい顔で新八に尋ねる。
「おい、新八のお姉さん……ゴリラじゃないのか?」
銀時が鼻をほじりながら相槌を打つ。
「そうだよね〜。俺もいつもそう思って――」
ドカァァ!! ドカァァ!!
銀時と上杉の言葉が終わるよりも早く、お妙は二人の頭を掴み、勢いよく地面に叩きつけた。
「誰がゴリラだって?アァァァン!!もう一度言ってみな。」
地面に沈みながら、上杉は必死に答える。
「い、いえ……。」
銀時も弱々しく手を挙げながら答える。
「何でもありません……。」
らいはの感謝
そんな騒動の中、四葉が笑顔でらいはの頭を撫でていた。
「えへへ……。」
上杉がらいはを見て、優しく問いかける。
「全く。四葉お姉ちゃんにちゃんとお礼言ったのか?そして新八くんのお姉さんには土下座してでも感謝するように!」
「四葉お姉ちゃん」と言われた四葉はどこか感動したような表情を浮かべ、じんわりと目を潤ませている。
一方、お妙はじっと上杉を見つめながら、冷たく言った。
「風ちゃん?私のことを何だと思ってるのかしら?」
その圧に負けそうになりながら、らいはは明るい声で感謝を伝える。
「四葉さん、そしてお妙さん、ありがとう……!大好き……!」
らいはの満開な笑顔に、四葉とお妙はどこか恥ずかしそうに微笑む。
お妙は軽く頭を撫でながら言った。
「いい子ねぇ……風ちゃんと違って。私も新ちゃんより妹が欲しかったわ。」
新八が抗議の声を上げる。
「姉上、酷いですよ!!」
四葉もらいはに向けて興奮気味に言う。
「らいはちゃん可愛すぎます!私の妹にしたいです!」
四葉はふと顔を赤くし、真剣な表情で呟いた。
「待ってくださいよ……もし私が上杉さんと結婚すれば合法的に姉と妹に……!」
その言葉に二乃がツッコむ。
「アンタ自分で何言ってんのか分かってんの!?」
顔を真っ赤にしながら正気を取り戻した四葉は、慌てて首を振る。
「わ、わかってますってば!!」
二乃が上杉に詰め寄り、厳しい声で忠告した。
「言っておくけど、四葉に変な気起こさないでよね!」
二乃は次に銀時を見て、冷たい目を向ける。
「そして、天パ……!アンタも……。」
銀時は鼻をほじりながら死んだ魚の目で応じた。
「……何だよ。」
その様子を見て、二乃は呆れたように手を振った。
「やっぱいいわ。」
銀時はその言葉に反応し、怒ったように叫ぶ。
「何だとクソ尼!!」
上杉が歩みを速める。目の前を行く二乃に追いつき、問いかけた。
「二乃、お前どこに行こうとしてるんだよ。」
二乃はちらりと振り返り、涼しげな顔で答える。
「お店の屋上を貸し切ってるから、そこに行くのよ。」
その言葉に、銀時が神楽と顔を見合わせ、ニヤリと笑う。
「へぇ、聞きました?神楽さん。」
神楽も団子の串をくるくる回しながら頷いた。
「聞いたアルよ。貸し切りだって……。」
銀時は興味津々に声を上げる。
「お父さん、もしかして石油王なんじゃね?石油近くにあるんじゃね?」
その言葉に、上杉が半ば呆れたように反論する。
「残念だが日本に石油があるのは秋田県の八橋油田と近江神宮の胎内市にある黒川、そして越の国(現在の福井県から新潟県にかけての地域)くらいしかないぞ。」
銀時は舌打ちして、つまらなそうに目をそらす。
「チッ……夢のねぇ奴だな。」
上杉は額に手を当てながら言い返す。
「何だよ!!」
そして、五つ子たちを見渡しながら話題を戻した。
「それよりさっさと行こうぜ。人が多すぎて溜まったもんじゃない。」
銀時も肩をすくめながら同意する。
「まぁな。移動もめんどくせぇし、上がるとするか。」
その時、二乃が上杉と銀時の袖をぐいっと引っ張り、彼らを止めた。
「待ちなさい。せっかくお祭りに来たのに、アレも買わずに行く気?」
銀時と上杉は顔を見合わせ、不思議そうに口を揃える。
「アレってなんだ?」
そこに突然、一花が軽快な足取りで戻ってきて、割り込むように声を上げた。
「あっ、そう言えばアレを買ってないねー!」
その後ろから、上杉と銀時が同時に声を出す。
「アレってなんだよ。」
「せーの……!」
一花「かき氷!」
二乃「りんご飴!」
三玖「人形焼き。」
四葉「チョコバナナ……!」
五月「焼きそば!」
五つ子全員が楽しそうに揃って声を上げる。
「全部買いに行こーっ!」
上杉は額に手を当てて呆れたように嘆く。
「お前らが本当に五つ子か疑わしくなってきたぞ……。」
その様子を見ていた新八が苦笑しながら
「あはは……確かにそう言うのも無理はないですけど…」
銀時は片手を和服に突っ込みながらぼそりと呟いた。
「まぁ五つ子といえど、やっぱり一人一人違う人間ってことだな。同じ方が気持ち悪りぃだろ。」
その時、少し前を歩いていた神楽が振り返り、大声で呼びかけた。
「銀ちゃ〜ん、新八〜!何してるアルか?」
らいはも小さな手を振りながら笑顔で声を上げる。
「早く来ないと置いてくよ〜!」
銀時はため息をつきながら頭を掻き、歩き出す。
「ったく、行くとするか……。」
上杉も仕方なさそうに肩をすくめて続く。
「本当に騒がしい連中だな……。」
新八は苦笑しながら彼らの後ろを追い、花火大会のにぎやかな夜が進んでいく――
た。四葉が笑顔で五月の肩を叩きながら宥める。
「機嫌直しなよー。」
一方で、お妙が少し眉をひそめながら尋ねた。
「どうしたの?ひどく機嫌が悪いじゃない。」
五月は人形焼きの袋を手に不満そうに吐き捨てる。
「思い出しても納得がいきません。あの店主、一花には『可愛いからオマケ』と言って、私には何もなしだなんて!同じ顔なのに!」
新八が苦笑しながら二人の様子を見て呟く。
「複雑な五つ子心……って奴ですか……。」
銀時は五月の袋をちらりと見て肩をすくめる。
「まぁ、店主がショートカットの女が好みだったのか、単に一花のコミュ力の高さに釣られただけだろ。深く考えんな。」
五月はさらに頬を膨らませて反論する。
「それが許せないんです!私はただ公平にしてほしいだけなんです!」
その時、新八がふと気付いて一花に声をかける。
「一花。お前は何やってんだ?」
一花は少し驚いたように振り返り、スマホをポケットにしまいながら笑顔を浮かべた。
「え?何でもないよ〜。で、どうしたの?」
四葉がすぐに口を挟む。
「さっき一花と五月が行ったお店で、一花だけ贔屓されたことに五月が怒ってるんだよ。」
一花は慌てたように手を振り、話題を逸らそうとする。
「ま、まぁまぁ、そんなこともあるって。それよりほら、あっちで何か面白そうなことやってるよ!」
そう言って指さした先を見ると、神楽と誰かが射的をしていた。
神楽と沖田が、射的の台に向かって銃を構えていた。しかし、彼らの狙いは普通の商品ではなく、店員の持ち物だった。
マダオこと長谷川が必死の形相で二人を制止する。
「おい!撃って落としたのはもらっていいとは言ったけど……店員の持ち物は禁止だから!!」
その声に新八が気付いて駆け寄る。
「長谷川さん!」
長谷川は半泣きになりながら新八に訴える。
「あぁ新八くん……ちょうどいいところに来た……。」
長谷川は頭を抱えながら続ける。
「さっきからこの二人が俺のグラサンとか腕時計とかばっかり狙ってくるんだけど、何とかしてくれない?」
新八は慌てて神楽とだれかに向き直り、手を振りながら注意した。
「神楽ちゃん、それに隣の……!射的の目標はあの棚にある商品だけにしてくださいよ!」
沖田は涼しい顔で銃を片手にくるくる回し、新八を冷たく睨む。
「うるせぇなぁ〜。公務執行妨害で生徒指導するぜ?」
その言葉に、新八が驚きの声を上げる。
「なっ!?」
二乃は眉をひそめ、鋭い目つきで沖田を睨みつけた。
「何よそれ!ここで公務執行妨害って、どういうこと!?ただの射的じゃない!それに何でアンタがここにいんのよ!!」
沖田は片手で銃をくるくる回しながら、余裕の笑みを浮かべた。
「おいおい、俺ァ一応風紀委員ですぜ?祭りの巡視をしてるに決まってるじゃねぇか。」
二乃は呆れたように声を張り上げる。
「アンタが今やってんのは巡視じゃなくて遊んでるだけでしょ!?その顔、巡視ってよりただの不良じゃない!」
沖田はニヤリと笑い、再び銃を構えると引き金に手をかけた。
「射的ってのはルール無用の戦場だからなぁ。それよりお前もいたのか。後で生徒指導室でゆっくり話そうぜ?」
二乃は目を見開き、体を震わせながら叫ぶ。
「絶対にいや!!」
新八が慌てて間に割って入る。
「沖田さん、本当にやめてください!これはただの祭りなんですから!神楽ちゃんもこれで終わり!!」
神楽は銃を降ろしながら不満げに顔をしかめる。
「つまんねぇアル……こういうとき、銀ちゃんがいりゃもっと騒げるのに。」
新八は辺りを見回しながら、焦った様子で声を上げる。
「そういえば銀さんは?どこ行ったんだよ!」
四葉も手を挙げながら報告する。
「三玖も一花もいません!!」
その言葉に二乃が驚き、声を張り上げた。
「何ですって!?三玖も一花もいないですって!?」
一同がざわつく中、柳生九兵衛が冷静な声で全員を制した。
「落ち着くんだ、みんな。」
新八は九兵衛の頼もしげな様子にほっとしたように呟く。
「九兵衛さん……。」
九兵衛は軽く咳払いをして、冷静に状況を分析する。
「こんな人混みの中で連れがいなくなって混乱する気持ちはわかるが、このままでは何も解決しない。冷静に行動するべきだ。」
お妙が提案を口にする。
「そうね。ここは何人かに分かれて探すのが一番よ。」
九兵衛が頷きながら、手早くペアを決めていく。
「それじゃあ、ペアを組んで手分けして探そう。」
ペア分け
ペアは次のように決まった。
神楽 & 五月
お妙 & 九兵衛
上杉 & 二乃&新八
四葉 & らいは
沖田は手をひらひらさせながら、涼しい顔で口を挟む。
「まぁ旦那(銀時)がいなくなったってのは問題になりそうなんで、俺ァ本部にでも戻って探しますでさぁ。」
その態度に二乃が再び苛立ち、睨みつけた。
「アンタ、さっきからなんなのよ!役に立つ気ゼロじゃない!」
沖田は肩をすくめて、ニヤリと笑う。
「そんな怒んないでくだせぇ。旦那探しのためなら、俺も指一本くらいは動かしてやりますよ。」
新八が沖田の言葉を聞いて呆れ顔でため息をつく。
「指一本って……やっぱり役に立つ気ないやつじゃないですか。」
九兵衛が全員を見渡して号令をかけた。
「よし、それじゃあペアごとにエリアを分けて行動開始だ!何かあったらすぐ連絡を取り合おう!」
お妙が背筋を伸ばしながら、微笑みを浮かべて声をかける。
「らいはちゃん、怖がらずに頑張りましょうね。」
らいはも負けじと笑顔を見せ、四葉と手をつなぐ。
「うん!四葉さんと一緒だから大丈夫!」
二乃は上杉の隣に立ち、不機嫌そうに顔をしかめたまま呟く。
「……なんであんたとペアなのよ。」
上杉はため息をつきながら肩をすくめた。
「俺だって好きで組んでるわけじゃない。とにかく、行くぞ。」
新八が不満そうに
「あの僕もいるんですけど……」
神楽と五月は少し離れた場所で、屋台の方を指差しながら盛り上がっている。
「神楽ちゃん、あっちに行ってみませんか?」
「そうネ!迷子になってるなら絶対おいしいものの匂いに引き寄せられてるアル!」
「オイィィィィ!!オメェらも探す気あんのかァァァァ!!」
と新八がキレる
九兵衛は全員がそれぞれの方向に散っていくのを見届け、最後にお妙と二人で別のエリアへと向かった。
一方その頃
銀時は人混みの中で何度も周囲を見渡しながら、肩を落とす。
「なぁヘッドホン、ここはどこだ?」
三玖は冷静に答えた。
「花火大会会場。」
銀時は苦い顔をしてさらに尋ねる。
「他の奴ら見かけたり……」
三玖は小さく首を振る。
「……してない。」
銀時の顔がみるみる青ざめる。
「迷子だァァァァ!!」
銀時の心の中
銀時の頭の中は大混乱だ。
「(どうすんのこれ?どうすんのォォォォ!? これ、同級生の女の子と二人きりって、しかも祭りって! なんか色々誤解されそうなんですけどォォォォ!!)」
ちらりと三玖を横目で見る銀時。相変わらず無表情だが、何か言いたげな顔をしているように見えた。
「(待て待て、何で俺がこんな状況に巻き込まれてんだ!? 普段だったら、適当に新八に押し付けて逃げるのに、今回は相手が五つ子の一人だろ!? 大丈夫かこれ、俺、無事で済むのォォォォ!?)」
ふと銀時が足を止め、ポケットに手を突っ込んだまま三玖を見下ろす。
「なぁ、ヘッドホン。」
三玖は立ち止まり、彼を見上げた。
「そういえばお前ら、今日は妙に宿題片付けるの早かったよな。この花火大会に、何か特別な思い出でもあんのか?」
三玖は一瞬目を伏せ、少し考えるように口を閉ざした。
「…………」
だが、しばらくして、ぽつりと静かな声で話し始めた。
「花火は……お母さんとの思い出なんだ。」
銀時は少し驚いたように眉を上げたが、口を挟むことなく彼女の話を聞く。
「お母さんが花火好きだったから、毎年揃って見に行ってた。お母さんがいなくなってからも、毎年揃って……」
三玖の声は少しずつ小さくなったが、その目には遠い記憶を懐かしむような光が宿っていた。
「私たちにとって花火って、そういうもの。」
銀時は黙ったまま、彼女の言葉の重みを噛み締めるように首を縦に振った。
「なるほどな……だからあのツンデレも頑張ってたのか。」
三玖は小さく頷く。銀時は空を見上げ、少し遠くを見るようにため息をつきながら言葉を続けた。
「お前らにとって、いい母親だったんだな……。俺には、……」
その言葉を遮るように、三玖が静かに言った。
「親がいなかった………」
銀時の目が驚きに見開かれる。
「!?」
銀時は思わず彼女を見つめた。
「お前……どうしてそれを?」
しかしその瞬間、銀時たちの背後から勢いよく声が飛んできた。
「銀さァァァァん!!探しましたよ!!」
振り返ると、人混みの中をかき分けながら新八が走ってくるのが見えた。
「新八!」
銀時は思わず声を上げた。
「やっと見つけました!さっきからずっと探してたんですよ!」
三玖は安堵したように小さく笑みを浮かべた。
「新八……良かった、合流できて。」
新八は息を整えながら、銀時を指差して咎めるように言った。
「それにしても銀さん、なんでこんなとこで三玖さんと二人で迷子してるんですか!」
銀時は肩をすくめ、気まずそうに答える。
「仕方ねぇだろ!人混みが多すぎて見失ったんだよ!」
新八は呆れたようにため息をつきながら、さらに続ける。
「……まぁいいです。それより銀さんも一緒に探してくださいよ。」
銀時は眉をひそめ、新八の言葉に疑問を投げかけた。
「はぁ?誰をだよ。」
「それが一花さんもどっか行ってしまって……それに二乃さんから話を聞いたんですけど……。」
銀時は鼻で笑いながら言い返す。
「その話ならさっきこいつから聞いた。」
三玖は少し驚いたように銀時を見上げるが、銀時はそれには目もくれず、軽く手を振った。
「ったく。俺が一花のやつを探してきてやるから、お前はヘッドホンと一緒にいろよ。」
三玖は心配そうに銀時を見つめた。
「銀ちゃん……大丈夫?」
銀時は自信満々にニヤリと笑い、彼女を安心させるように言った。
「大丈夫だっつうの。俺も高校生だぜ?迷子になんてならねぇよ。」
新八がすかさず突っ込みを入れる。
「さっきまで三玖さんと一緒に迷子になってたことを都合よく記憶から抹消しないでください!」
銀時はそれを軽く無視しながら、新八に背を向けた。
「ま、そんなわけでまたな。」
数分後
銀時は人混みの中を歩きながら、視線を彷徨わせていた。
「おいおい……どんだけ人が多いんだよ。こんな人混みから一人探すなんて……。」
ボヤきつつ歩を進める。すると、不意に背後から冷たい声が響いた。
「苦労したぜ。なぁ銀時?」
その声に銀時は反射的に木刀を抜こうとする。しかし、次の瞬間、腰のあたりに冷たい刃が押し当てられる感触が走った。
「動くなよ……」
銀時はその言葉にわずかに顔をしかめた。
人混みの喧騒が遠くなる中、銀時はわずかに眉をひそめたまま、状況を静かに見極めていた――。
愚痴り屋ミニ
上杉「ようやく俺の出番が多くなる回だな」
銀時「いや始めの部分は俺が登場するし、お前が登場するの中番あんま変わんねえだろ?」
新八「それより……僕たちより、五つ子さんたちの方が多く出てません?」
上杉・銀時「あっ確かに」