機動戦士ガンダムSEED THE GATHERING   作:えいじぇんと

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星が落ちる時
星が落ちる時 プロローグ


 

 

何処かから声が聞こえる。

 

「ここから逃げ出したいと思わないか?」

そう切り出すと少年は自身が考えたという脱走計画を話し始めた。

 

「そんなの、できっこないよ」

その話を聞いた時、脱走なんて上手く行く筈がない。途中で捕まってしまうのではないかと危惧したのを覚えている。

 

これはいつの記憶だったか。

すぐに思い出す。コロニーメンデルがテロリスト達に襲撃される少し前だ。

 

「無理なものか。ここの大人達が話しているのを聞いたんだ。俺たちよりもずっと前に生まれた実験体の一人が脱走したことがあるって。そいつは今も捕まっていない」

「でも」

「"腰抜け"は黙っているんだな。俺は一人でも実行してみせるぞ」

まるで自分の考えを見透かしたように黒髪の少年、カナード・パルスが言った。

 

腰抜け―

幼かった頃の自分は、周りからそう呼ばれ蔑まれていた。コーディネーターを殺す、その為に生み出された。

だが実際に人を殺せるかどうか、或いは人を殺して平気でいられるかは、その資質に掛かっている。人間の心の奥底、魂と言い換えても良い。

幼かった自分は、その重圧に耐え切れず逃げ出したのだ。

 

「カナード、一人でなんて無茶だよ・・・私も協力する。みんなでここから出よう」

最初に賛同したのは自分の姉だった。

 

「ね、シャルの事は私が守ってあげるから一緒に逃げよう。このままここにいても私たちはきっと・・・」

姉が自分を見つめながらそう言う。

 

きっと、死ぬ?

きっと、殺される?

 

「・・・」

あの時自分は何と応えたのだろうか。思い出せない。

 

「僕はその計画に賛成だ。先に居なくなった仲間たちのように僕らも処分される可能性がある」

計画を聞かされた仲間の一人、グゥド・ヴェイアも賛同する。

 

「決まりだな。ヴェイア、お前は俺と一緒に―」

仲間の中でリーダー格だった少年、カナードが役割分担を決め始めた。カナードはいつも自信に満ちている。誰にも自分の希望を砕くことは出来ないとでも言いたげに。自分はそれをどこか遠い所の出来事のように黙って聞いていた。

 

あの時、皆と逃げていなかったら自分はどうなっていたのだろう、と考える。

あの時、脱走に失敗して捕まっていたら?

あの時、殺されていたら?

あの時、カナードが囮になってくれなかったら?

 

同じ夢を繰り返し見る理由―。

 

自分はきっと、過去をやり直したいのだ。

無理だと分かっていても、自分はその結末を変えたい、変えたかった。

変えなくては―。

 

「シャルル」

自分の名前を呼ぶ姉の声。

 

「ねえ、シャルル」

いや姉さんとは違う、この声は―。

 

「起きなさい。シャルル・ヴァイス」

 

 

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