機動戦士ガンダムSEED THE GATHERING   作:えいじぇんと

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衝動 前編

 

 

C.E.70 6月16日 L3宙域アルテミス

 

特務部隊X―スエズ攻防戦での大敗を受けて、モビルスーツ開発及び運用する為の特殊部隊の設立をユーラシア連邦軍上層部は承認。

L3宙域にある軍事要塞アルテミスの司令官ジェラード・ガルシア少将が責任者に命じられ、新部隊の設立に伴い必要となる機材の搬入、人員の再編成、艦艇の改造、あらゆる処置を講じる事になる。

メンデルから徴集されたコーディネーターの実験体、カナード・パルスとリリー・ザヴァリーの二人もアルメリア研究所からの転属を要請されこれを受けた。

 

 

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モビルスーツ用に改装された整備デッキ、それに正対するキャットウォークの上に黒髪を背中まで伸ばした少年兵―カナード・パルスはいた。

 

「これがザフトの《ジン》か」

コンテナから降ろされた灰色の巨人を見つめてカナードが呟く。ユーラシア連邦初となるモビルスーツ部隊設立に際して各地で鹵獲したジンの中から使える物が基地に運びこまれていた。けたたましいアラートの中、作業員が慌ただしく動きながら、次々に流れてくるコンテナを開けてデッキに機体を降ろしていく。しかし五体満足の機体がそうそう手に入る訳もなく、中にはパーツ取りにしか使えないような機体も混ざっていたりする。

 

「へぇもう届いたんだ!ね、動かして良い?」

カナードの元に飛び込むようにして現れたオレンジ色の髪の少女、リリー・ザヴァリーが声を弾ませる。カナードの隣に立つと、キャットウォークから身を乗り出すようにして搬入されたモビルスーツ《ジン》を眺めている。

 

「搬入が終わるまで待て」

「やる事なくて暇なんですけど」

 

リリーが頬を膨らませて文句を言ってくるが、カナードは無視する。アルテミス基地着任にあたり、カナードとリリーには特務兵という役職が与えられた。部隊内では自分とリリーは同格だが、リリーはカナードに指示を仰ぐ事が多い。

 

《第3デッキ開放、作業員は退避せよ。繰り返す第3デッキ―》

 

丁度その時新しいコンテナが運ばれて来た。ドックレベラーの上を滑り降りて来たモビルスーツを見て、カナードは眉根を寄せる。

 

「なんだあれは?」

コンテナから運び込まれたのは、黒いジンと赤紫に塗られたジンだった。二機とも見慣れない武装を付けており明らかに通常機と異なるカスタマイズが施されている。黒い方のジンは腰に二本のサーベルを下げており、いずれもジンの通常規格の物ではない。対照的に赤紫の方は腰と肩のホルダーにナイフを差していた。

 

「カナードは何か聞いてる?」

 

「・・・いや、メリオル・ピスティスなら何か知っているかもしれないが」

リリーに応えながらカナードは腕を組み思案する。

 

「なぁちょっと聞きたいんだが、司令室まではどう行けば良いんだ?」

カナードとリリーが慌てて声の方に振り向くと、そこにいたのは二人の男女だった。

いつの間にか、キャットウォークに繋がるエレベーター昇降路を上がってきたらしい。

 

「誰だ?お前達ユーラシア軍の人間じゃないな」

応えながらカナードは二人を観察する。一見して奇妙な組み合わせだ。片方は黒いスーツにゴルフバッグを肩に掛けた白髪に眼鏡の大男。邪魔にならない程度の口ひげを蓄えている。もう片方は赤い服を身にまとった、薄いグリーンの髪の少女だ。

 

「俺の名はダンテ・ゴルディジャーニ。傭兵をしてる。こっちは相棒のエルザだ」

 

「傭兵だと?一体何のよ―」

カナードが眉根を寄せて問い掛けるが、それをリリーが遮った。

 

「ユーラシア連邦特務隊所属リリー・ザヴァリー特務兵です。小官がご案内致します」

カナードを押し退ける形でリリーが前にでる。目上の人間だろうとお構い無しに尊大な態度を崩さないカナードに、客人の相手をさせる訳にもいかない。要らぬトラブルを引き起こすからだ。

 

「同じくカナード・パルスだ」

リリーが目線で圧をかけるとカナードも不承不承名乗る。

 

「俺達はモビルスーツ部隊の教導を依頼されて来たんだが・・・なる程な。あんたらがユーラシア連邦の戦闘用コーディネーターか」

ダンテの一言にカナードとリリーが喫驚して目を見開く。だがお構い無しにダンテは話を続ける。

 

「俺もコーディネーターだ。ちなみにここにいるエルザは俺が作った戦闘用コーディネーターだ」

 

「作った?どういう意味だ」

反射的に聞き返す。だがカナードの問いに答えたのはダンテではなくその隣にいた女だった。

 

「そのままの意味よ。無論父親って意味じゃないわ。私を設計したのが彼という事よ」

今まで一度も口を開かなかった赤い服の少女―エルザが口を開く。

 

「ダンテと言ったな。お前はメンデルの研究者なのか?」

 

「あぁ、まぁ。元が付くけどな」

若干歯切れが悪そうにダンテは答える。研究はダンテの本職ではないが、かと言って他に適当な言葉も見当たらなかった。

 

「俺とリリーは元はメンデルの―大西洋連邦の研究所にいた。だがお前達の事など知らないぞ」

カナードは胸の前で腕を組むとダンテとエルザを睨め付ける。

厳密に言えばカナードはGARM R&D社の廃棄実験体で、生後間もなく大西洋連邦の研究施設に移された。カナードは同時期に生まれた戦闘用コーディネーター達と幼少期を共に過ごした過去がある。

 

「それはそうかもな。俺が設計したのは二人だけだ。言うなればエルザはあんた達の先輩に当たる」

ダンテはカナードの疑問に答えながら口髭を軽く撫でる。

 

「俺は傑作を作ったつもりだが、上の連中はそれに納得しなくてな。別の研究所でも戦闘用コーディネーターを育てていた。それがあんた達だ。全く因果な話だよな」

今までカナードとダンテに面識がなかったのは、所属する部署が違ったからだ。大西洋連邦はコーディネーターとナチュラルを使った複数の計画を同時進行で走らせていたが、ダンテも全ての計画の仔細を知っている訳では無い。メンデルにいた頃はカナード達の存在も知らなかったのだ。

 

「傭兵と言ったが、大西洋連邦軍ではないのか?」

「あぁ違う。俺は勿論エルザもな。もしそうだったら呑気にユーラシアの要塞になんぞ来れないさ」

 

ダンテが大仰に肩をすくめる。過去にダンテ達は施設に潜入してきたユーラシア連邦のスパイを殺害したりもしたが、その事で両者に遺恨はない。

本来であればエルザは大西洋連邦の所属になる筈だったが、ダンテ共々脱走し今に至る。考えてみれば大西洋連邦の作った戦闘用コーディネーターの殆どが脱走ないし別陣営にいるのも奇妙な話だ。

カナードは鼻を鳴らして組んでいた腕をほどくと、再び口を開いた。

 

「お前に聞きたいことがある―キラ・ヒビキを知っているか?」

 

 

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その他・補足

>赤紫のジン
黒い方がダンテ専用機でこっちはエルザ専用機です。カラーリングはデスティニーインパルスRを意識した感じです。

・鹵獲ジンを使ったモビルスーツ部隊について
特務部隊Xは本来はハイペリオンとメビウスで構成された部隊でしたが、今回は設立時期を大幅に早めた形です。大西洋連邦が組織した鹵獲ジン部隊が元ネタと言えば元ネタです(ガンダムSEEDエクリプス)。

・そもそもダンテはユーラシアの依頼受けるのかという問題
アメノミハシラ攻落戦に参加していたしまぁいいかなと。

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