機動戦士ガンダムSEED THE GATHERING   作:えいじぇんと

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本編開始前
三人の午後


 

 

C.E.54年 某日

 

 

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「おっ、ドクターカイドゥ。こっちだ」

「げっ」

 

アウラがギルを連れ立って入った喫茶店には先客がいた。それも顔見知りの。

 

一応、アウラ・マハ・カイドゥが所属するGARMR&D社の研究施設内にも食堂はある。

だが殆どの社員はそれが口に合わないようで、アウラ達のように近くのレストランやカフェテリアまで足を運んでいた。そしてそれは他社の人間も同様らしい。

 

「まるで待ち合わせてたみたいに言うのヤメてくれる?」

 

アウラは苦虫を噛み潰したような表情で、こちらに向かって手招きする軍服姿の男を睨み付ける。

 

「相変わらず食えない女だ」

 

それに対して男の方は大袈裟に肩をすくめた。鋭い双眸に度が薄いメガネをかけた、精悍な顔つきの男だ。邪魔にならない程度の口髭を蓄えている。

 

「そう邪険にすることは無いだろ、傷付くだろうが」

「お前がそんな繊細な男か?」

 

目の前の男が繊細だと言うなら、世の男性の大半は繊細過ぎてとっくに息絶えている。

 

「こっちにはお前と顔を突き合わせてコーヒー飲む趣味はないわ」

「手厳しいな。俺も付き合うにしてもアンタは願い下げだが」

「眼鏡割るぞ貴様!」

 

13歳で成人扱いされるコーディネーター社会において、結婚適齢期を過ぎたアウラには腹の立つ嫌味である。

憤然として吐き捨てながらも、アウラはテーブルを挟んで男とは向かい合わせの席に腰掛ける。必然的にギルバートはアウラの隣に座る事になった。

 

「二人はお知り合いなんですか?」

 

アウラが感情を剥き出しにするのは珍しい、と思いながらギルバートは尋ねた。

理知的なアウラが子供のような応酬を繰り広げるとは、普段の彼女からは想像し難く、新鮮ですらある。

 

「この色男は誰だ?紹介してくれ」

「この子はギル、うちに新しく入った研究員よ」

「ギルバート・デュランダルと言います。はじめまして・・・えっと」

「はじめましてだな。俺の名はダンテ・ゴルディジャーニ。こう見えて博士号を持っている」

 

ダンテが差し出してきた手を握り返しながら、ギルバートは内心で驚く。人は見掛けによらないと言うが、どう見ても目の前の無骨な雰囲気の男と自分の中での博士のイメージが結び付かない。

 

「それなら私もギルも持ってる。何の自慢にもなりゃしない」

「全く手厳しいな」

 

注文を取りに来たウェイトレスにコーヒーとサンドイッチを頼み付けるとアウラは鼻を鳴らす。

 

「この男も私達と同じ遺伝子工学の専門家なのよ」

「アウラとは昔同じ研究室にいた、腐れ縁というやつだな」

 

先刻のギルバートの質問に応えながら、ダンテが口髭を撫でる。

 

「ギルも聞いたことくらいあるでしょ?大西洋連邦がやってる戦闘用コーディネーターの研究を。コイツがそれを作ってるのよ」

「噂程度なら。戦闘用コーディネーターなんて本当に存在するんですか?」

 

ギルバートは思わず目を見開く。都市伝説の類だと思っていたからだ。

 

「あぁ。一人目を作ったのはもう何年も前の話だ。二人目は二年前に生まれたばかりだがな」

「二人目は女の子なんでしょ?アンタみたいなオッサンにレディの世話が務まるのかしら」

「よしてくれ、世話といっても俺がするのは戦闘訓練だ」

 

アウラが戦闘用コーディネーターの情報を把握している事にも驚いたが、それ以上にダンテの話は看破できない。

 

「ち、ちょっとまってください、戦闘用コーディネーターで大西洋連邦は何をするつもりなんですか?」

 

ウェイトレスが運んできたコーヒーには口を付けず、ギルバートはダンテに尋ねた。

傍らにいるアウラは気にした様子もなくサンドイッチを頬張っている。

 

「何だヤブカラボウだな・・・まぁ、戦争が起こるにしても俺は当分先になると踏んでいるが」

「黄道同盟だって人型機動兵器の開発を進めているだろう?お互い戦争の準備をしている状況なわけだ」

 

秘密結社が秘匿している筈の機密情報を、何でもない事のように話す眼前の男に、若干の得体の知れなさを感じつつもギルバートは尋ねた。

 

「ゴルディジャーニさんは何とも思わないんですか?戦争が起きようとしているのに」

「ダンテで良い。戦争をどうにかしたいのならそれこそ政治家になるしかないだろう。俺だって世の行く末は気になる。だが俺みたいな一個人は流れに身を任せる以外何もできないからな」

 

目の前の少年が聞きたかったのは、おそらく別の事なのだろうとダンテは思った。

飲んでいたコーヒーをコースターに置きながら呟く。

 

「勘違いしないでくれ、別に俺はコーディネーターの敵じゃない。トモダチってわけでもないが」

 

ギルバートの責めるような視線をダンテは真っ向から受け止める。

 

「自分の欲を満たす為なら何だってする、そういうバカなのよ」

「それはアンタもだろ」

 

アウラの憎まれ口に応えながらも、ダンテの視線はギルバートに向けられたままだ。

 

「ギルくんは、俺やアンタが手放しちまったモノを持っていると見える」

「手放したもの?一体何の話です?」

 

ダンテの言わんとしている事に見当が付かないギルバートは尋ねる。

 

「敢えて言うなら、純粋さ、かしらね。それは一度失くしたら二度と手に戻らない」

 

コーヒーを口に運びながらアウラが静かに目を閉じる。

 

「あぁ。床に零しちまったコーヒーが二度とコップに戻らないのと一緒だ」

 

コーヒーを飲み終えたダンテが席を立つ。

 

「さて、もう行くよ。ついつい話し過ぎちまった・・・またなアウラ、ギルくん」

 

そう言って去っていくダンテを見送った後で、ギルバートはダンテが飲んだコーヒー代は誰が支払うのか気になった。

 

 

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登場人物・その他

 

ギルバート・デュランダル

13歳(C.E.54年)

C.E.55年までパトリック・ザラの依頼でコーディネーターの出生率低下の解決策をコロニー・メンデルで研究していた。

遺伝子工学の専門家で、GARMR&D社L4コロニー・メンデル研究所、カイドゥ研究室に赴任してきた天才。

 

アウラ・マハ・カイドゥ

29歳(C.E.54年)

C.E.25年生まれ。コロニー・メンデルにあるGARMR&D社の研究者。ユーレン・ヒビキの同僚でライバル。

カイドゥ研究室の責任者。アンチエイジングの研究と並行してコーディネーターを超える種を作り出す研究に従事していた。

C.E.55年にオルフェ、ラクス、イングリットが誕生。

 

ダンテ・ゴルディジャーニ

30歳(C.E.54年)

コロニー・メンデルにある研究所で戦闘用コーディネーターの開発に従事している男。

C.E.52年に世界初のモビルスーツ戦闘に特化した戦闘用コーディネーターを生み出す。

 

 

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なんとなくメンデルの喫茶店で3人がばったり出くわしてこういう会話してたら面白いなと思い、前後関係などはガン無視で書いてしまいました。アウラとダンテとは歳近いし知り合いだったんじゃないかという妄想です。
オチはありません・・・。

ネットで設定とかを色々調べてるとギルはパトリックの依頼で55年頃までメンデルで研究していて、いや若過ぎないか?って思ったんですが。
プラントの成人年齢は13歳って書いてあるサイトもあって、あ、ならいいのかと。

時系列的にもギルとアウラはオルフェ達が生まれる1年前、受精卵に処置を施す段階で既に出会っていたのではないかなと思ったりしたので54年の出来事として脳内で処理してます。

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