───褪せ人よ、おお褪せ人よ
───破片の君主、デミゴッド共を
───神たる女王に呪われし、火の巨人を
───運命の死の、守り手を
───蛮地を統べし、最初の王を
───黄金律、ラダゴンを
───大いなる意思の眷獣を
───彼らを殺し、そして異界へ旅立った王たる者よ
───行くが良い。狭間の外、『影の地』へ
───そして、見えるとよい。
───神獣獅子舞に、双月の騎士に
───狂い火の王に、串刺し公に
───泥濘の騎士に、影樹の化身に
───猪乗りの宿将に、指達の壊れた母に
───蕾の聖女に、ギザ山の暴竜に
───そして、最後にお前は出逢うだろう
───無垢なる黄金、その世紀と、彼の王、蘇った赤獅子に
「やあ。久しぶりだな、先生」
こうして彼が私の仕事を手伝いに来てくれたのは、果たして何度目だろうか。
彼の名前は『星見ユウ』、外の異世界、『狭間の地』からやって来た、廃校寸前の砂漠の学校、アビドス高校の一年生だ。ちなみにここ『学園都市キヴォトス』における唯一の男子生徒にして不死の魔法使いである。
「"ああ、また来てくれたんだ!ありがとう!"」
「何、礼には及ばないさ」
彼は私の仕事がちょっとヤバ目の時、私のオフィスのある『連邦捜査部シャーレ』にこうして手伝いに来てくれる。勿論、あくまでも手伝いの範疇だ。ちょっとした書類の整理とか、データの入力なんかをお願いしている。
「……それで、今日は何をすれば?」
「"ええっとねぇ……今日はこの書類を……"」
「失礼します、先生」
暫く二人で作業していると、不意に声を掛けられる。振り返って見ると、ちょっと信じられない位の量の書類らしきナニカを持つ『七神リン』───現在失踪中の連邦生徒会長の代理を務めている生徒だ───の姿が。
「"えっと……リンちゃん、それはまさか「ええ、追加のお仕事です、先生。それと『リンちゃん』ではありません」Oh……"」
目の前の机に、『ドサッ!』と凄まじい音を立てて積まれる山の如き紙の山。
「"……ねえ、これ本当に全部お仕事なの?"」
「ええ、そうです。期限は明後日まで、大変お忙しいとは思いますが……」
「"ゔゑァッ!?"」
「まあ、やればいずれ終わるだろう。……根気強く、取り組もうじゃないか」
「星見さん、いらしていたのですか。また、先生の手伝いに?」
「ああ、そうだな」
「"……ほんとに、いつもありがとうね…………。"」
違法な兵器の取り引きに関する、近年の傾向や発生数の推移について。それが、リンが持ってきた書類の内容だった。
連邦生徒会長の失踪、まさにその日を境に発生数が跳ね上がっている。……具体的には、2000%位に。
「……そこまで、犯罪が増えているのか」
「"……うん"」
「そうか……。ここキヴォトスは、私に取っては楽園の様だと思っていたのだがな。……いや、確かに爆発が日常茶飯事な上に小競り合いもよく起こるが、しかし狭間に比べれば楽園のようだよ」
「"……そうなの?"」
……そういえば、私は彼の出身地について殆ど知らないなぁ……。
「ああ。……狂った住人や兵共が殺しにかかって来ない、人外の怪物も居ない、血の指や背律者に侵入される事も、大地が腐敗に蝕まれる事も、死角から不意打ちで殺される事も無い。……まさに、ここは私にとっては楽園の様だよ。実際、向こうではここまで長く生き長らえる事は無かったな。こうして数日、数週間、数ヶ月生きるなど……本当に、初めての事だ」
「……」
「"……そっか"」
「……まあ、話はひとまずここまでだ。作業に取り掛かろうか」
お……終わった……
「……お疲れ様です、2人共」
「"お疲れ様……星見君……それじゃ、今日はここまでで……"」
「ああ……貴公も……」
何とか作業を終わらせたのは、あれから何時間も経った夕方だった。
「さて、それでは私はアビドスに……いや」
「……どうかしましたか?」
「狭間の地に用事があった。……すっかり忘れていたよ」
「"そっか。……その、どんな用事?"」
「ああ、矢などの消耗品が尽きかけているので、買いに行かなければ。……では、行ってくる」
「"うん、気をつけてね!"」
彼はどこからか手のひらサイズの紋章を取り出すと、左手に三又の槍みたいな光が灯って───
こうしてここにワープするのは何度目か。
『───』
使用した『純血騎士褒賞』の効果でいつものようにこの場所に訪れた訳だが、しかし今回は何かがおかしい。
『───』
例えるならば……そう、何かに呼ばれている様な、そんな感覚。
『───』
方向は……恐らく、血の君主と死闘を繰り広げたあの場所。枯れた腕の繭の置かれた、あの場所だ。
目的地とは違うが……まあ、良いだろう。行ってみようか。
あなたは祝福へのワープを用いて、その場所に向かった。
目的地に現れたあなたは、人影を発見した。自身を呼んだのは、この人物だろうか。あなたは内心警戒をしつつ、その人物に話しかける。
「……誰だ?……私を呼ぶのは、君か?」
「……呼ぶ?いや、それは私では無い。……ああ、君も、ミケラ様に導かれたのだね」
「…………ミケラに?」
「ああ。私はレダ。君と同じように、導きに従い、あの方の足跡を追っている。そこの枯れた腕に触れれば、君も導かれるだろう。ミケラ様が向かわれた、影の地に。……そこには、同志がいる。私たちと同じように、ミケラ様に導かれた者たちが。もし彼らと出会うことがあれば、君に協力するだろう」
「影の地……同志……?」
「ああ、いきなりの事で困惑するのも無理は無い。……準備ができたら、そこの枯れた腕に触れ、向かうが良い。ミケラ様の向かわれた、彼の地で再び見えよう」
「……分かった。すまない、消耗品を補充して来る」
───褪せ人よ、おお褪せ人よ
───夜の律の王よ、黄金樹に導かれる者よ
───その力を、示すがよい
───立ち塞がる強者共に、そして新しい律の誕生に
と言う訳で、影の地編の始まりです。
……本当に申し訳ないのですが、ラニ様はアビドスでお留守番で、ブルアカ要素もうっっっすくなります。
筆者の三週目のDLCを、星見君ロールでプレイしたものをベースに執筆しています。当然作中世界は一周目の設定ですので、取得できるルーンの量や受けるダメージの描写が原作と矛盾する場合がございます。ご了承ください。