明けましておめでとうございます。
蟹の巣窟からアビドスへ、新品のスクーターをかっ飛ばす。
「これ、もっと飛ばせないの?」 ダメです!
ホシノを後ろに乗せて。
ホシノを確保した後、その場のノリでキャンドルを渡してしまった。
言葉が通じなかった頃も、なぜかこちらの意図を大まかに理解したり、滅茶苦茶強かったりと、何かと扱いに困っている生徒だった。会話可能になった瞬間、やれアビドスに戻れだ、やれもっと飛ばせだの、注文が多い奴だこと。そもそも、お前がアビドスを離れてたのが悪いだろうが。
……まぁいいや。どっちみちアビドスに戻る予定だったし。ただ重い荷物を持ち帰ってるだけ。
都市部辺りまで戻ってきたのだが、蟹共と対策委員会の縄張り争いが繰り広げられていた。
「シロコちゃん……!クソッ、私が居なくなったからついに攻めて来たのか!?」
いや、お前が離れてたからだろ。蟹に知性を求めるんじゃない。
「うるさい!そんなこと分かってる!だから早くして!」
蟹の群れにいたロボットの股下を通り越し、ホシノはスクーターから飛び降りた。
「「「ホシノ先輩!?」」」
「ごめんみんな!心配かけて!」
「小鳥遊ホシノ!?貴様はPMC基地にいたはずでは!?」
「それがあの基地、不慮の事故に見舞われてさ。命からがら逃げだしたんだよねぇ。」
「事故だと!?まさかあのビナーとやらに襲撃されたのか!?」
親玉らしき蟹はスマホでどこかに連絡する。
「私だ!今すぐ状況を伝えろ!」
通話から聞こえるのは、プエプエ、パッポ、ピィピィ。星の子の鳴き声のみ。
「グッ……ふ、ふざけるなぁぁぁ!!」
「あの害虫共め、どれだけ私の計画を崩せば気が済むんだ!」
おーブチ切れてる。あんだけ激昂してても赤くならないのが不思議だ。
『ホシノ先輩、基地で一体何があったのですか?』
「さっき言った通り、不慮の事故だよ。」
「事故……もしかして星の子の仕業?」
「アッハッハッハ!それじゃあ仕方ないよね!アイツらの好奇心を湧きたてるようなの作ったのが悪いし!」
「はい!これは不可抗力☆借金の信用を落とす口実にはなりませんね!」
神妙な顔をしていた対策委員会連中。ここでガラッと笑顔になった。
「……だから何だというのだ……!アビドス生徒会の最後の副会長は既に退学!この戦いは我々カイザーの正当な権利の下で行われている!」
”それは違うよ。”
「……貴様はシャーレの先生!?」
ここで先生登場。よく分からないが、面白いことになった。
”ホシノはまだ、アビドス高等学校を退学していない。”
”顧問である私が、退部届を認可していないからね。”
「そんな紙切れが……今更通用するかぁぁぁぁ!」
親玉が乗ったロボットがこちらに攻めてくる。
だが、最強のホシノがいる対策委員会の敵ではないだろう。
巧みな連携によってロボットは一瞬でスクラップになった。
「グッ……一度撤退だ!戦力を立て直すぞ!」
「し、しかし理事……基地はもう……!」
住処を奪われた蟹共へ残念なお知らせです。巣窟から帰ってきた集いのメンバーがこちらに向かってきているようです。
”あれは……”
「ゴリアテだとぉ!?」
戦車、ヘリコプター、そしてロボット。基地にあったアイテムは既に多くの星の子の手に渡っている。対策委員会との戦いで消耗した状態で相手取るのはダメみたいですね。
「ま、待て!金ならある!だからその物騒なものを私に向けるな!」
「対策委員会の貴様らも何か言ったらどうだ!奴らの言葉が分かるんだろ!?」
「違う。」 「そんなことないわよ。」 「無理です☆」 「しーらない。」
「畜生めぇぇぇぇ!」
憎悪の混じった蟹の叫びは、星の子の集中砲火でかき消された。
太陽は沈み、辺りは暗くなっていく。だが、アビドスは光と高揚に包まれていた。
広場には多くの星の子が持ち寄せた家具が並び、それぞれが自由に遊ぶ。そう、集いの打ち上げパーティーである。
対策委員会の連中は、チャットテーブルを介して星の子との会話を楽しんでいた。
「うわぁ賑やか。昔にあった砂祭りってこんな感じだったのでしょうか?」
「うーん……ちょっと違うんじゃないかなぁ?見た感じ、祭りというよりかはテーマパークで遊んでるみたいだし?」
「ホシノ先輩……なんか甘くない?元をたどれば、あいつらがカイザーPMCの基地に行かなければ先輩が退学しかけることもなかったんだし!」
「まぁまぁ落ち着いてセリカちゃん。こういうのは、終わりよければすべてヨシってことで済ませるのが一番だよ!」
「ユメ先輩まで……まぁ、今回の騒動があったおかげで連邦生徒会が重い腰を上げたから、一概に責められないのは分かってるけどさぁ……。」
おーい諸君。我々を忘れて難しい話をするんじゃないよ。
「……ていうか、テーブルを挟めば、キャンドルを貰わなくても話が出来たんですね……。」
Exactly。会話の為にキャンドルを消費していたら、懐がスッカラカンになるからねぇ。
「これもしかして、あなた達の住んでる王国について教えてくれる?」
「あっ!だったら、どうして二年前に失踪したユメ先輩がいきなり戻ってきたのですか?ヘイローが浮かんでなくて、金色に光ってるのと関係あるのですか?」
回答。戻ってきたというより、散らばった記憶を集めて解放したって言った方が正しい。金色に光ってるのは、我々が星キャンを渡して羽をもらったから。ヘイローについては知らん。
「記憶を集めた……ですか。ヘイローがないのは、星の子さんの介入によって私たちとは別の何かに変化したからでしょうか?」
転生なら、王国では日常茶飯事だ。原罪で光を失った子に羽を渡し、そのまま死んだ後に新しい命を貰ってを繰り返している。
「うわぁ……これ絶対踏み込んじゃいけない領域だわ。」
「見た目の割には結構シビア。銀行強盗したのにも納得できる。」
「いやぁ流石に銀行強盗とは関係ないと思いますよ、シロコちゃん?」
「ん……。私も銀行強盗したかった。」
宝探しならいつでも歓迎だ。次またやる機会があれば誘うよ?
「いやいや!銀行強盗は完全に犯罪だから!宝探しとか優しく言い換えてもアウトには変わりないから!」
関係ない。我々が世界のルールだ。
「何言ってるのコイツ……?」
賑やかに談笑をしていたら、屋上にいる星の子が杖から花火を打ち上げ始めた。
「うへぇ。こりゃあ大盤振る舞いだぁ!」
「うわぁ!綺麗ですね☆」
ここにいる皆は花火を一斉に見上げる。困難を乗り越えた者たちに対する褒美のようだ。
対策委員会よ。この関係がこの先二度と崩れることがないよう、心の中で少し願うとしよう。
読んでいただきありがとうございました。
アリスコラボイベにいるマナティが滅茶苦茶かわいい。