エタっていました。
シャーレの部室。そこには等身大サイズの精霊人形がソファーに座らされていた。
どこぞのアフヨ団が、ミレニアムの廃墟から掘り起こしたとされる人形。彼らが呼び起こそうと手掛かりを探していたが見つからず、とうとう諦めてここに放置された。
今となってはコーディネート好きな星の子が着せ替え人形として利用している始末だ。放置された当初は全裸だったこともあり、どこかで調達したワンピースとカチューシャを着せられている。おまけにイベントから取ったと思わしき『アリス』という名前も付けられた。髪色は黒だけど。
”ただいまー。って、流石にみんな帰っちゃったか。”
部室の扉を開け、屋主の先生が帰ってきた。ここ数週間はアビドス砂漠によく発見されていたのだが、ようやく仕事が終わったか。
”……ユウカから話は聞いてたけど、やっぱりいるよね、星の子。”
アビドスでの騒動に関する噂は我々の間でも聞いている。食卓が爆破されたり、カイザーコーポレーションとやらの基地が同胞に爆破されたりと。まぁ派手にやっていたようだ。その渦中にいた先生の顔にはいかにも疲れが見える。飛ぶこともできない、ワープも出来ないキヴォトスの精霊にとっては体力を使うのも無理はないだろう。
”まぁ、こっちから関わらなければ特に害はないか。”
”一応、ホシノが助かったのは星の子のおかげでもあるし。逆でもあるけど。”
先生の目撃情報から取れる特徴は、生徒とは少し違いがある。まず、生徒の頭上にあるヘイローがない。二つ、武器を持たず直接戦闘に参加しない。三つ、体格や服装が男に近い。戦闘中は生徒の後ろに隠れ、後方から何かを指示している。おそらく、彼は後方指揮がメインなのだろう。敬礼する隊長みたいに。
これは推測クラスだが、先生には銃弾が当たらないという情報も回っている。銃器を入手した星の子の数人かは試しに先生に撃ってみたが、どうにも弾道が先生を逸れるらしい。それも当たる直前にグワン、と。
あと、戦闘指揮のときには何やら白い板を見ている。これも星の子がコッソリ内側を除いていたが、青い髪とリボン頭のリトルが映っていた、という情報がある。それが指揮に関係するのかどうかはサッパリ分からん。
”……いや、ちょっと待て。”
先生がこちらに向かって来た。我々は先生に向けてお辞儀をする。
”……なにこれ、女の子!?”
どうやら先生の目的は我々ではなく、アリス人形のようだ。彼なら、ソレについて何か知ってることがあるのだろうか。
”……ねぇ君たち、この子について何か知ってること……………あ、そうだった。キャンドルを貰ってない子とは話せないんだった。”
”だったら……”
先生は例の板を取り出し、青リトルに何かを話し出した。
”アロナ、ここにいる星の子のスマホにアクセスできる?”
リトルが何かを言った後、我々が持っているスマホに何かメッセージが届いた。
『君たちは、この子について何か知ってることってある?』
……成る程、板はスマホの大きいバージョンということか。それにしても、我々のスマホを通してコンタクトを取るとは、考えたな。
とりあえず、『知らん。とりあえず我々はこの人形を『アリス』と呼んでいる』と返信した。
”いや人形って!?まぁ、そう言われたら見えなくもないけど……。”
先生は人形の顔に触れ、まじまじと見つめる。
”息をしてない……?”
返事がない、ただの人形のようだ。
”い、いやいや!ここまで人っぽいのに人形なわけないよ!お洒落な服を着てるし!”
あ、そういえば。『ちなみに服は星の子が着せました。』と伝えてなかったね。
”星の子ぉぉぉぉぉ!”
『経緯については、アフヨ団がミレニアムの廃墟から掘り起こした』と送信。
”アフヨぉぉぉぉぉぉぉ!” バタン。
あ、先生が倒れた。
額を突っついても反応がない。どうやら気絶したようだ。
……丁度良い。先生が持ってる大型スマホにいるリトルについて調べたかったんだ。
お体に触りますよと、懐から大型スマホを取り出し、表面を見つめる。しばらくすると、表面が光り、例のリトルが出て来た。
『うわぁぁぁ!先生!先生は何処に行ったのですかぁぁぁ!?』
青リトルがヘイローをぐちゃぐちゃに変化させながら叫んでいる。その背後には青空、床が水浸しの教室で天井が崩壊している。
……なんか行けそうな気がする。ホームに戻る感覚で目を閉じ、瞑想してみた。
……目を開ければ、シャーレの部室だった。駄目みたいですね。
”……ハッ!?私は一体……むぎゅ。”
先生が目を覚ますが、時すでに遅し。野良リトルが頭の上に座っていた。地べたに寝っ転がっていたお前が悪いということで我々は手を出さないでいた。
夕暮れにより空は朱色に染まっている。意外にも、王国で昼夜の概念があるのはホームと花鳥郷、それとプラスアルファぐらい。こうやって日が沈む光景を眺めるのもまた一興である。
(ピピッ、ピピピッ)
何だこの音は。鳥の鳴き声と一見思ったが、それにしては音が硬い。
音の方向に顔を向けると、そこにはアリス人形が置いてあった。
『状態の変化、及び接触許可対象を感知。休眠状態を解除します。』
確かに聞こえた。プエと。人形からはっきりと。
蟹ですら多少の鳴き声と光を感じるというのに、コレからは一切の鼓動を感じなかった。まさか生き物だったのかコレ。我々のキャンドルに一切反応がなかったというのに。
この世界の心理に一歩近づけたと感じて憤慨と歓喜と恐怖で混沌を極めていた中、人形改め精霊?アリスは瞼を開け、空色の瞳が我々を注目させた。
「状況把握、難航。会話を試みます......説明をお願いできますか。」
再びアリスがプエと喋る。
おっ、よく見たら四角のヘイローがあるじゃないですか。
ならば答えは一つ。精霊に、キャンドルを、渡そう。
読んでいただきありがとうございました。
実はもう二か月ぐらいブルアカ起動してないのは内緒