なんで…俺にはできなくてあんたにはできるんだよ   作:棒棒鳥

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続きではありますが続きではありません。前日譚みたいなものです


前日譚
今日は厄日だな


 

 

 強さこそ正義。強さこそ絶対。弱者は淘汰され、強者の養分となる。

 

 俺の掲げる信念であり、この世の摂理。そう……思っていた。あの人に会うまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寂れた廃墟を歩く。一歩間違えれば崩れてしまいそうな脆い床に注意を払い、一歩一歩。

 

 暫く進めば、微かにだが声が聞こえてきた。さらに進み、声の出処が分かる頃には、凡その人数も把握ができた。

 

 声の種類からして恐らく七、八人程度。そして、ついに出処である部屋の前へと辿り着く。

 

 一呼吸置いた後、扉を蹴破り突入する。予想通り八人。まず、扉の近くに居た一人を落とす

 

「!? だ、だれ……ガハッ!」

 

 鳩尾に拳を叩き込めば、簡単に意識を刈り取れた。

 

「な、何が……いや、誰だテメェは!」

 

 声を荒らげてくるが、全員未だ動揺が抜けきれておらず、傍にある銃をまだ手に取っていない。今のうちに二人はやる。

 

 壁際に居る二人に向けてワイヤーを投擲し、それぞれに絡ませる。

 

「なっ……グエッ」

 

 そのまま全力で引っ張り、双方の頭を衝突させる。ヘイロー持ちは頑丈だからな。頭も硬いから衝撃も相当な物だろう。

 

 あいつらの目が回っている内に頭へと銃弾を放ち、意識を落とす。

 

 これで三人。

 

 ここまで来ればようやく事態を把握……は、できていない様だが、俺を敵だと認識し、手元の銃を取り、こちらに向けてくる。

 

 が、その間に先程のワイヤーを回収し、固まっている四人の足元へと放ち、転ばせる。

 

「うおっ!」

 

 転んで無防備になっている内に銃弾を連射し、頭に当てる。特注品の弾丸だからな。頭に当たれば大体意識を落とせる。

 

 あと一人。

 

「く、クソっ! なんなんだよお前! ヴァルキューレか!? それとも最近できたあのシャーレって奴か!?」

 

「シャーレ……? そんな物は知らない。ただ、お前達が気に食わなかっただけだ」

 

 そう、ただ気に食わなかっただけ。

 

「な、なんだよそれ! ただ物を盗んだだけだぞ!? "ブラックマーケット"じゃ日常茶飯事だろ!」

 

「ああ、そうだな。この場所ではそんな物しょっちゅうだ。ただまあ……お前らみたいな弱者が、強者のフリをして養分を得るのが気に入らない。それだけだな」

 

「は……」

 

 会話に気を取られている内に照準を定め、正確に頭を穿つ。間抜けな顔をしながら、目の前の弱者は倒れ伏した。

 

 これで八人……っと。

 

「さて…………あ、もしもし! ヴァルキューレの方ですか!? 実は、雨宿りをしようとした建物に、指名手配中の不良達が眠っていまして……至急来て頂けませんか!? ……はい、はい! ありがとうこざいます! 場所は○○地区の××ビルです! お願いします!」

 

 そこまで言い、電話を切る。後はヴァルキューレがやってくれるだろう。

 

「……ふぅ。なら、後はこれか」

 

 そう言いながら、奴らが奪っていた……なんとも言えない人形を手に取る。

 

「まだ居るか……? いや、一先ず行ってみよう」

 

 先程まで一緒に居た、この人形に異常なほどの執着を持っていた少女を思い出す。……まあ、居なかったら居なかったで、学園は分かっているんだし、届ければ良いだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん。……あ! さっきの方! 大丈夫ですか?」

 

 先程まで居た地点へと戻れば、辺りを見回していた少女と目が合う。良かった、まだ居たみたいだ。

 

「はい。少しお腹が痛くなってしまって……ああ、そう。もしかして、先程まで探していた人形っていうのは、これですか?」

 

「え? ……! これ、これです!」

 

 差し出せば、とんでもない勢いでそれを受け取り、まじまじと見た後、安堵の息を吐いていた。

 

「はっ……す、すみませんでした。実はこれ、期間限定のコラボ商品でして、失くしたらもう手に入らないんです。だから、見つけてくれて本当にありがとうございます!」

 

「いえいえ。お気になさらず。大事なモノが無くなるのはつらいですから。もう盗まれたりしない様に気をつけて下さいね?」

 

「はい! ……あ、そういえば、盗んだ人達とかって見ましたか?」

 

「……いえ、たまたま路地に落ちていたので。恐らく逃走の際に落としたのでしょう」

 

「なるほど……」

 

「では、お……私はこれで」

 

「あ、お名前を聞かせてくれませんか!? 今日は無理ですが、いつかお礼がしたいので!」

 

 ……名前、か。

 

「……天城ユウヤと言います。お礼等、気にしなくて大丈夫ですよ。私の自己満足ですので」

 

「いえ! させて下さい!」

 

「……そうですか。では、いつか」

 

 そう言い残し、その場を去る。……なぜ、態々俺に関わろうとするのだろうか。あの場だけの関係なのだから、あの場で終わらせた方が良いだろうに。……まあ、ああいう者は皆に対してそうなのだろう。優しい少女だ。

 

 さて……これからどうするか。成り行きでこんな所まで来てしまったが、今日はここに来る予定は無かった。どこか別の場所に行くか……? いや、ただ行きたい場所も特には……

 

「うわー! な、なんで追ってくるんですかー!?」

 

 ……どうやら、今日は運がないらしい。……いや、本当にないのは彼女の方か。

 

「あ! さ、さっきの人! す、すみません〜! ちょっと退いて下さいー!!!」

 

「おい! あそこにもう一人居るぞ!」

 

「仲間か? まあ良い! あいつも纏めてやっちまえ!」

 

「えーっ!?」

 

 どうやら仲間だと思われた様だな……。まあ良い。あんな奴らすぐに片付く……

 

「し、仕方ない! 逃げましょう!」

 

「え」

 

 そう言いながら、彼女は俺の手を引いて走り出す。えぇ……

 

「ま、巻き込んでしまってすみません!」

 

「ああいや……別にそれは良いんだ……良いんですが。とりあえずこの手を……」

 

「も、もうあんな所まで!? 急ぎましょう!」

 

 ……あ、話聞かないタイプね。どうしよ……でも無理やり手を払ったら怪我するかも……いやヘイロー持ちだし大丈夫か? ……いやでも少女を振り払うのも……

 

 そう考えていると

 

「ちっ、めんどくせぇ! おい、足狙え!」

 

「りょーかい!」

 

 追いかけながら足を狙い銃弾を放ってきた。マジか。そこまでする? 

 

「うわわっ! うぅ、どうしましょうか……」

 

「ええと……っ、前見て前! 人居る!」

 

 少女の前に人影があるが……このままだと間違いなく

 

「え? ……いたっ!」

 

 ぶつかるよな……

 

「うぅ……ご、ごめんなさい!」

 

「大丈夫……な、訳ないか。追われてるみたいだし」

 

「そ、それが……」

 

「おい! こっちだ! 二人とも居る! ……あ? なんだお前らは。どけ! アタシたちはそこの二人組に用があるんだよ!」

 

「あ、あうう……わ、私の方は特に用はないのですけど……」

 

「……」

 

 俺巻き込まれただけだし。

 

「……ん、ちょっと下がってて」

 

「え? ……分かりました」

 

 小さな声でそう言われたため、指示に従い彼女たちの後ろへと下がる。すると、今尚身代金がどうだとか言っている奴らの前へ、銀髪の少女とブロンド髪の少女が躍り出る。そしてそのまま殴り倒した……えぇ……

 

「あ……えっ? えっ?」

 

 見ろ、困惑してるぞ。……いや、にしてもこの少女達の制服、どこかで見た様な……

 

「いやー、ウチの子たちは大分アグレッシブでしょ?」

 

「えぇ。そう……で、すね?」

 

 おっと……この声、聞き覚えがあるぞ。

 

「……」

 

 いや、気のせいかもしれない。多分気のせいだ。きっとそうだろう。ほら、声の方を向けば知らない人が……

 

「久しぶりだね〜? ユウヤ」

 

「……」

 

 顔見知り……ですね。はい。逃げられねぇ

 

「……そう、ですね。小鳥遊さん」

 

「いやだなー? 前みたいに『ホシノ』って呼んでよ」

 

 小鳥遊ホシノ。俺の知り合いであり……苦手な人間の一人だ。

 

「"あれ、ホシノの知り合い? "」

 

 俺が固まっていると、小鳥遊の後ろから一人の……男性? 女性? どっちだ? ……まあ大人が出てきた。……大人ね。小鳥遊が大人と居るのは意外だな

 

「うん。そうそう。天城ユウヤ。元アビドス生だよ」

 

「……ど、どうも〜」

 

「"え……そうなの? "」

 

 そう、目の前の大人が周りに目配せすれば……

 

「えぇ!? いや、会ったことない人、ね。聞いたこともなかったわ」

 

『わ、私も同じです』

 

「ん、私も知らない」

 

「私は何度か会ったことがありますよ〜☆」

 

 ……ははっ。気まず。今日は厄日だな

 

 

 

 

 

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