お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

111 / 115
第九星 『境界〜炎の厄災〜』

 

 

カルデアにおける最大戦力。

それは誰がどう答えようともマシュ・キリエライトだと答えるだろう。

古今東西、あらゆる時代のサーヴァントがカルデアには所属している。

しかし、基本的に異聞帯において汎人類史の英霊は召喚できない。

世界の抑止力として現地に召喚されたもの、または特別にその土地と縁のある英霊以外は異聞帯という歴史において異物と判断され弾き出される。

 

このブリテンにおいてもその規則は基本的に適用される。

 

それゆえにカルデアの戦力はアルトリア・キャスターと賢人グリム。

そして、カルデア所属のマシュ・キリエライトの3名。

 

ありとあらゆる旅をしてきたマシュはその身に宿る英霊の縁でブリテンの土地に訪れるたびにその力を増してきた。

今となってはトップサーヴァントに名を連ねる英霊たちに比肩するほどの出力を得ている。

 

【妖精騎士ギャラハッド】

 

このブリテンにおいて2000年前に得たその名前が今のマシュをより強力な騎士として構成している。

 

艦首に立つパーシヴァルを守護しつつマシュの盾や拳がアルビオンに届く。

グリムのルーン魔術、アルトリアの強化魔術の支援を受けながらカルデアはアルビオンにダメージを与え続けていく。

 

しかし、その程度の攻撃で堕ちるのなら厄災などと呼ばれず。

その程度で死ぬような生命なら竜種の冠位などと呼ばれない。

 

最初こそマシュの攻撃が届く範囲での戦闘だったものの数分と時間も経たぬ間にアルビオンは盾の届かぬ距離を保つようになった。

超高速飛行をしながらストーム・ボーダーとアルビオンはブリテンの空で激闘を繰り広げる。

アルビオンから繰り出されるブレスや雷の魔力放出が次々とストーム・ボーダーを襲い、その度にアルトリアの対粛清防御とマシュの盾が被害を最小限に抑えていく。

 

あまりにも、あまりにも決め手が足りない。

空を自在に跳ぶアルビオンを相手に足場がなければまともな攻撃ができないカルデアには決定的な一手が存在していなかった。

 

それはケルヌンノス出現までの時間に追われているカルデアにとって致命的な時間のロスであり、ほんの数分の時間すら惜しい状況の中で考えられる最悪の状況であった。

 

現に召喚する英霊の検索を行っているブリッジでもこの状況下で召喚できる英霊がいないことに焦りを覚えていた。

先ほどネモが告げた考えられる中で最大の戦力。

それがマシュとグリム、そして後方で機関部を守護するアルトリアの3人しかいないのだから。

 

アルビオンは一定の距離を取り、雷撃とブレスでストーム・ボーダーに攻撃を続ける。

ストーム・ボーダーが近づけばその分距離を取り明確に、理的に、確実に撃ち落とすための戦い方を選び続ける。

 

『距離を詰めたらその分離される!攻撃武装がないストーム・ボーダーからは攻撃できないぞ!』

 

「わかってます!でも、こちらからも攻撃が届きません!」

 

今のマシュには決め手になる武器が存在しない。

【ブラックバレル】を持たない今のマシュでは超高速飛行をするアルビオンへ届かせるための武器がない。

 

「オレの魔術だって流石にこの状況でバカスカ撃てるほど便利じゃねぇぞ!」

 

まさに、詰み。

そう表現するのが正しい状態だった。

そうなればあとは一か八か、アルトリアを甲板に移動させて艦首を守護しながら強力な聖剣魔術を叩き込みアルビオンを撃墜するしかない。

しかしそうなれば時折狙われる機関部の守護はできない。

 

立香が、ゴルドルフが、ホームズが頭を抱える。

この一戦を越えなければブリテンどころか世界に未来がない。

それに、燃料の残量だけ見てもそこまで長く戦うこともできない。

このまま呑気にアルビオンとフライトを楽しむ訳にはいかないのだ。

 

「っ!アルビオン更に速度を上げて離れていきます!」

 

『まずい!アルビオンに強力な魔力反応!!艦首にブレスが飛んでくるぞ!』

 

ストーム・ボーダーを置き去りにするほどの速度で飛び去り、数十キロ離れたところで急旋回、ストーム・ボーダーを正面に捉える。

腹部から超高密度のエネルギーを収束し、その矛先がストーム・ボーダーへと向けられた。

 

『マシュ!宝具!!!』

 

「っ!了解!宝具展開します!」

 

最強の幻想種から放たれるストーム・ボーダーの装甲すら切り裂くブレス。

それを更に収束した冠位の宝具とも呼べる一撃を防げるか。

本能的な恐怖が全身を襲い、盾を持つ手がほんの少し震える。

しかしそれを奮い立たせて盾を甲板に叩きつけ───。

 

『アルビオンのエネルギー臨界!!マシュの宝具間に合わないよ〜!』

 

マリーンの泣き言がブリッジと甲板に響く。

 

 

 

 

 

───ホロウハート・アルビオン

 

 

 

 

 

 

アルビオンの心臓のある位置が強く輝き、ブレスが放出され───。

 

 

 

 

 

射出の直前、アルビオンの身体がガクッと大きく揺れた。

 

 

 

発射されたブレスはストーム・ボーダーの真下をギリギリ通り過ぎていき、辛うじて直撃を免れる。

 

『なんだ!アルビオンに何があった!?』

 

ブリッジから響くネモの声、しかしそれに答える前にブリッジのモニターと甲板の上にいる3人の視界にその正体が視認できた。

 

 

アルビオンの背に漆黒の剣を突き立てた少女がいた。

金の髪、水色のメッシュ。

アルトリアにそっくりな顔に白を基調とした旅装束。

その目はアルトリアと違って水色の輝きを放っている。

 

「おいおい、マジか」

 

グリムが驚愕の声をあげる。

 

「…………トネリコさん?」

 

マシュが信じられないものを見たような声をあげた。

アルビオンの背に現れた少女はかつてこのブリテンで救世主として活動していた楽園の妖精。

つい先日まではキャメロットで女王としてこの國を統治していた氷の女王。

あの戦いで死んだと思われていた先代の楽園の妖精がアルビオンの背に突如として現れたのだ。

 

背中に突き刺された剣とその使用者を振り落とそうとアルビオンが飛翔する。

加速、旋回、ロール。

ありとあらゆる機動を持って背中に乗る存在を落とそうとする。

 

「この暴れ竜……!いったん大人しく……!」

 

アルビオンの上空に水鏡を展開、そこから覗くのは彼女とその兄がよく使う魔力雨による直接的な魔力による攻撃。

 

「雨よ、汚れを祓え!!!」

 

その詠唱の言葉と共にアルビオンの背から飛び降りる。

飛び降りたその瞬間、アルビオンの背を翼を強力な魔力の雨が焼いていく。

背中から飛び降りた彼女はその背後に水鏡を展開、ゲートの出現先をアルビオンの上空に設定してそこから飛び出し、次の魔術を展開していた。

 

「落ちろ!アコーロン・クラスター!!」

 

普通の妖精なら直撃しただけで即死を免れない規模の魔術が翼を焼かれたアルビオンを襲う。

凄まじい轟音、そして爆発。

核爆発を思わせるような破壊力の魔術をまともに喰らったアルビオンが速度を失い落ちていく。

 

カルデアが数十分かけて与えられなかったまともなダメージ。

それを水鏡という反則もいいところな空間移動魔術を使うことで成功させた彼女は墜落していくアルビオンを見ながら再び水鏡を展開。

ストーム・ボーダーの甲板にその姿を現す。

 

「あなたがついていながら情けない。何をしているんですかグリム」

 

「言い返す言葉もねぇ。だが……」

 

「どうして生きている、ですか?」

 

「まあ、死体が確認できてない時点で絶対とは言い切れなかったが」

 

「娘と忠義の騎士に命を繋がれた。それだけのことです」

 

「……そうかよ」

 

そっけない、なんてことのないような会話。

まるで旧知の友にあって『元気だった?』と問いかけるようなそんなトーンでの会話であったが、カルデアにとってはそれどころではない。

 

『なんだ……?いま甲板にいるのはどこの誰だ!?』

 

ネモの声が甲板に響く。

甲板に現れた少女はブリッジのある方向に視線を向けた。

 

「はじめまして、というべきでしょうか。私はトネリコ・ア(・)ー(・)デ(・)ル(・)ハ(・)イ(・)ト(・)。あなた達の知るレインフォート・アーデルハイトの妹であり……このブリテンではモルガンと呼ばれていたもの」

 

『も、モルガンだって!?』

 

『報告ではキャメロットで倒したはずじゃないかね!?』

 

返された言葉にブリッジは焦る。

たった今目の前でアルビオンを叩き落としたとはいえ、目の前にいるのは異聞帯の王と推測されていた稀代の魔女モルガン。

そんな彼女が今この瞬間……いいや、アルビオンを倒した瞬間にこちらに刃を向ければひとたまりもないことは分かりきっていたからだ。

 

「厄災が解き放たれた以上、私がやることは昔から変わりません。アルビオンと戦うのにいい足場があったのでこうして借りていますが……ちょうどいい、どうせなら協力してもらいます」

 

トネリコの目に甲板にいる3人が映る。

グリムにマシュ、そしてもう死にかけの少年。

 

「戦力として扱えるのは2人ですか」

 

「……モルガン、陛下」

 

艦首でアルビオンからの視線を受けていた少年がトネリコに歩み寄る。

『選定の槍』の使用により肉体がすでにボロボロの彼をトネリコは冷たい目で見つめていた。

 

「…………『楽園の妖精』をアルビオンが狙っている以上、あなたはもう不要です」

 

「力になれないのは……わかっています。でも、この身にはやらなければならない役割がある」

 

生前はついぞモルガンへの謁見が叶わなかった少年。

これが最後の戦いになるからと覚悟を決めて囮になることを選んだ少年。

そして、目の前の女性が治めていた國を壊した元凶でもある少年。

 

「どうか、最期まで戦わせてください」

 

「……私には貴方の願いを聞き届ける理由がありません。もはやこの身は女王ではなく、ただ厄災を祓う役割だけをこなす『救世主』なので」

 

「ですが……私を『陛下』と呼んだのなら。私の國を壊した罪人には罰を与えなければなりません」

 

トネリコがパーシヴァルの真正面に立つ。

彼の持つ『選定の槍』に触れた。

 

「このブリテンの光景はお前達が引き起こしたもの、その顛末を誰も見届けることなく終わることは許しません。円卓の騎士パーシヴァル、ブリテンを救うためと立ち上がり私に反逆したその末路を……お前は、お前だけは見届けるように」

 

「その代わり、お前が最後に歩くための道は私が作りましょう」

 

パーシヴァルの手から『選定の槍』を取る。

パーシヴァルには槍を握る力も、もうほぼ残っていなかったのだ。

 

「トネリコさん……でもその槍は……!」

 

「……元の持ち主が自分の槍を扱えないわけがないでしょう」

 

トネリコが手に持った槍に莫大な魔力を流し込む。

妖精を呪うものとしての変質をしてしまったからあの大聖堂に封印したというのにこうして持ち出して人の寿命を吸い取る悪魔の槍と化してしまったそれを無理やり調伏する。

 

アルビオンの核を貫くのなら、生半可な武器では太刀打ちできない。

自身が持ち得る魔術の数々であれば持久戦に持ち込めばいずれは討伐できるだろうが、それでは時間が足りないのは明確だった。

 

持久戦に持ち込めないのなら確実に貫ける攻撃で一撃で沈めるしかない。

 

だからこそ、この場所に『選定の槍』があったのは幸運だった。

 

「この槍もそろそろ役目を終える頃でしょう。私もこの槍もあまりにも長い時間を過ごしすぎた」

 

選定の槍を握りしめ、トネリコは艦首へ向かって歩き出す。

 

「この妖精國で生まれた子で救世主の厄災祓いを見るのはお前が1人目です。世界が終わるその間際ではありますが、土産話の一つにはなるでしょう」

 

「…………」

 

パーシヴァルは『選定の槍』を手にした救世主の背中を見送ることしかできなかった。

姉が変質したアルビオンと呼ばれるあの厄災を自分の手で討ち取ることがせめてのも手向けになると信じていた。

しかし、それも結局は逃げでしかなかったのだ。

自分の小さな信念が、ブリテンの崩壊のきっかけになった。

それをずっと見て見ぬ振りをしていたのだ。

 

『選定の槍』を手にした時点で、パーシヴァルにとって救世主トネリコという英雄は憧れの人物であった。

女王歴がはじまる前の妖精歴において『選定の槍』を手に厄災を祓いつづけたブリテンの救世主。

いくつか残された彼女の冒険録を幼い頃のパーシヴァルは何度も読み返しては『自分もこうなりたい』と憧憬の念を胸に抱いていたのだ。

 

自身が打倒しようと立ち上がった相手が憧れの英雄でした、なんてどれだけの皮肉だっただろうか。

 

「次にアルビオンが浮上してきたその瞬間に勝負を決めます。おそらく私に対抗するために先ほどのブレスを撃ってくるでしょうが……」

 

トネリコの言葉がそこで止まる。

アルビオンの神造兵装級のブレスを受け止めるものが必要になってくる。

先ほどはトネリコの奇襲で射線をズラすことで難を凌いだが、今度は真正面から受け止める必要がある。

マシュの宝具なら受け止められるだろう、しかし……マシュの宝具は他人を守るための宝具であって自身を守るための宝具ではない。

たとえ、マシュの後ろは守ることができてもストーム・ボーダーの装甲を容易く切り裂くほどの攻撃を受けたとして……。

 

「───わたしがやる!」

 

その言葉に全員の視線が向く。

甲板に現れたのはいまは機関部を守っているはずのアルトリア。

急いで走ってきたのだろう、肩を大きく揺らして荒く呼吸をしていた。

 

「陛下とこの艦を守るのはわたしがやる。次の一撃で決着がつくならここに全てのリソースを割くべきだと判断しました」

 

「───いいでしょう。では、アルトリアは私とこの艦の防御を。ギャラハッドの霊基を持つ貴女はもしもの時のためにすぐに宝具を展開できるように待機、グリムは……」

 

「パーシヴァルに肩でも貸しとくわ。救世主の厄災祓いを見せるんだろ?なら、その目に焼き付けれるようにな」

 

「……まったく、そういうところは変わりませんね」

 

呆れ半分、嬉しさ半分といった気持ちだった。

昔とあまり変わらない賢人……いや見た目はともかく中身がという話で。

そんな彼に笑みすら浮かべそうになってしまう。

 

そして、本来ならどのような歴史であっても手を取り合うことができない少女が“自分を守る”と豪語したこともトネリコにとっては気持ちが上がっている理由であった。

 

『アルビオン再び浮上!モルガン……ええと、トネリコ?とアルトリアを狙ってる!』

 

「……では、はじめましょう。アルトリア、私の守護は任せましたよ」

 

「……っ!はい!」

 

右手に『選定の槍』を持ち変える。

元から手に持っていた魔槍はグリムに預けた。

開いた左腕でアルトリアの細い腰を抱き抱えて水鏡の中へ飛び込む。

そして2人の身体が投げ出されたのはアルビオンの遙か上空、2人の楽園の妖精が雲の遙か上から自由落下していた。

 

「えっ!?守るっていったけどわたしも一緒に!?!?」

 

「当然でしょう、どちらかがあの艦の上にいれば狙いが分散する。なら、2人同時に空から落ちるのが1番効率的です」

 

「た、確かにそうだけど……ちょ、ちょっと待って!本当に無理!」

 

アルトリアの支えになっているのはトネリコが回した左腕だけ。

少しでも力が抜ければ手に持った杖だって空の彼方に手放してしまいそうな風圧に自然と身体に力が入る。

 

「まったく、大事な局面だというのに緊張感のない。下ばかり見るから怖く見えるのです……ほら、ほんの少し前を見なさい」

 

「そ、そんなこと言ったって……」

 

アルトリアはトネリコに言われるまま視線を地面から逸らす。

恐怖心に駆られる心持ちのまま首を少しだけ上に向けて見た景色に、アルトリアは思わず感嘆の声を漏らした。

 

「…………綺麗」

 

見渡す限りの黄昏の空。

大地は見渡す限りの炎に包まれているというのにいま自分のいる世界だけは眩いばかりのオレンジ色の世界。

とても綺麗な空だった。

そして……とても孤独な空だった。

この世界にいまたった2人しかいないような錯覚に陥りそうになるような感覚すら覚える空に自分の中にあった恐怖心が消えていくような気がした。

 

「……もう、大丈夫」

 

「そう……なら、私から離れないように」

 

アルトリアを抱えているトネリコの左腕。

それに倣うようにアルトリアは自身の右腕をトネリコの腰にまわす。

 

眼下に視線を向ければストーム・ボーダーを無視して上昇してくるアルビオンの姿が目に入った。

その口内には魔力が収束をはじめていて、幾分もしないうちにふたりを貫くためにそのブレスを放出してくるのだろう。

 

トネリコ1人なら、あのブレスと相討ちになる覚悟で討滅できる。

アルトリア1人なら、あのブレスだけは絶対に防げる。

 

どちらか1人では出来ないのなら、2人でやれば犠牲を出さずに越えられる。

 

 

 

 

「───聖槍、抜錨」

 

トネリコの凜とした声がアルトリアの耳に届く。

命を吸い上げるものとなってしまった『選定の槍』。

その槍にかつてと同じように……いや、それ以上の力を使おうと魔力を流せば、トネリコであってもその代償は高く付く。

トネリコの中からごそっと何かが燃え尽きた感覚がある。

しかし、それがなんだというのか。

地上では敬愛するべき兄がたった1人で魔犬を食い止めているはずだ。

空を担当するとここに来たからには何がなんでもあの機竜を叩き落とさなければならない。

 

「私は赦す、私は救う、私は導く───!」

 

それはかつての始まりの夜明けの再来。

いつかのように、『選定の槍』が臨界を迎え光の槍となって黄昏の空に輝く。

 

「黄昏の空に、いま一度……救世の輝きを!!!」

 

6000年前のあの時のように。

天空から大地へ向けて青い光の槍を放つ───!

 

 

「最果てに輝ける救世の槍(ロンゴミニアド・アーデルハイト)!!!!」

 

 

あの日と同じ最果ての輝きが、流星のようにアルビオンへ落ちていく。

それに対抗するように、まるで星を迎え撃つようにブレスが放たれた。

 

流星とブレスは互いに干渉することなく横を通り過ぎ、互いの標的に向かって進んでいく。

 

「……絶対に届かせない!」

 

攻撃をしたのなら、次は防御の番。

槍を撃ち出したトネリコの身体をほんの少し自分の後ろに回して杖を構える。

 

「『きみをいだく希望の星(アラウンド・カリバーン)』!」

 

世界滅亡級の攻撃すら防ぐ絶対の守護がここにはある。

ストーム・ボーダーの装甲すら容易く切り裂くそのブレスを真正面から受け止め、アルトリアとトネリコは眼下に撃ち出した槍を見つめる。

 

自分たちにブレスが着弾したのなら、相手にだって同じことが起きている。

 

 

そう、アルビオンの胸に大きな穴を穿ち……光の奔流が自分たちの目の前まで立ち昇って来たのだ。

 

「うわっ!陛下やばい!!あれやばいって!」

 

「そんなに騒がない!」

 

思わずトネリコの腰にまわしていた手の力を強くしてしまい「うぐっ」なんて声が聞こえて来たが、すぐに自分たちの真下に水鏡が展開されたことでことなきを得た。

 

ストーム・ボーダーに戻ったアルトリアとトネリコの視界に入ったのは胸を穿たれ、墜ちていくアルビオンの姿。

その翼は力なく、このブリテンで最強と謳われた騎士の成れの果てが大地に沈んでいく光景だった。

 

 

 

「───さようなら、メリュジーヌ。貴女がいてくれたから私は希望を捨てずに生きていられた」

 

 

 

自身に仕えた最強の騎士に向けて、ただ一言言葉を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

ヒカリが落ちてくる。

 

いつか見たあの流星が竜骸の胸を貫く。

 

竜骸は力を失い、落下していく。

 

最後までこちらを見つめる救世主の姿が、竜骸の視界に入る。

 

 

ああ、そうか。

 

きみが、きてくれたんだ。

 

ずっとむかしにこのむねをやいたあのりゅうせい。

 

もう、みることはかなわないとおもっていたけど。

 

───ああ、よかった。

 

焼けた大地に落ちていく竜骸の視界に少年の姿がうつる。

それと同時に押し寄せる安堵の感情。

この胸を穿った槍を使ったのが彼ではなかったことへの安堵の中、竜骸はその意識を手放した。

 

 

空洞の心臓(むね)に走る痛み(ねつ)。

青い輝きの中に没していく風切り音は、涙の音のようだった。

 




本当に申し訳ない、作者にはこれが限界でした。

元から、アルビオンを討つのはトネリコというのはもう半年以上前から決まっていました。
しかしいざこの場面に来ると思ったように書けないものですね。
なんだか、このようなお話を見せるのが申し訳なくなっています。
戦闘描写を書くたびに「こんなんで読者の皆様満足するか?」と思いますが……これ以上は作者には無理というクソッタレなジレンマ。
できるだけアツい展開と描写でお楽しみ頂きたいと思っていますがうまくいきませんね。

アヴァロン・ル・フェの更新について

  • 今まで通り月に3〜4話見れればいい。
  • 待ってもいいからストックして放出
  • 別に気にせんでええねんで(^ω^)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。