お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン 作:今井綾菜
作者、色々な無理が祟って右脳から出血し左半身の麻痺となり入院生活を送っております。
今回のお話も麻痺前に8割ほど書いていたものを気合いで加筆し投稿するような形となりました。
ケルヌンノス戦以降は作者の体調がかいふくしてからの再開となります。
ちなみに皆様からの感想を読み返して元気をいただいておりますので応援や作品への感想をいただけると涙を流して(割と本気)療養に努められますのでお待ちしております。
ベリルを討伐したレインフォートが甲板に現れ、ホームズの案内のもとブリッジに向かう。
未来的な艦内に若干の興味をそそられながらもたどり着いたブリッジには見慣れた面々とほんの少しの恐怖と畏怖の混じった瞳で見つめてくるゴルドルフの姿が目に入る。
「久しぶりといっていいかな、レインフォート臨時所長」
「勘弁してくれ、ロマニとゴルドルフ氏の繋ぎとしてほんの少し責任者をやっていただけだよ。君たちの敵として一度でも立ちはだかった時点でカルデア職員としての肩書は相応しくないさ」
まるで旧友にあったかのように冗談めかした挨拶を交わす。
そして、レインフォートの視線はトネリコとアルトリアを経由してチームA'の面々を経てゴルドルフへ向く。
「人理保障機関ノウム・カルデアの所長、ゴルドルフ・ムジーク氏。改めて自己紹介をさせていただく」
一歩、二歩。
ゴルドルフの目の前に立ったレインフォートは真っ直ぐに彼を見つめ、そして一礼と共に今の自分の立場を名乗った。
「異聞世界ブリテンの王、レインフォート・アーデルハイト。この歴史における聖剣使い、そして厄災を祓うものとしてご挨拶申し上げる」
「……異聞帯の王はモルガン、キミの妹なんじゃないのかね???」
「私はあくまで代理ですので、本来ならばこのブリテンを統べる資格があったのは他でもないお兄様です」
「そうだったのか……報告は上がっていないが当人がそういうのならそうなんだろう。改めてノウム・カルデア所長、ゴルドルフ・ムジークだ。南極基地では痴態を晒したがこうして再会できたこと嬉しく思う」
差し出されたゴルドルフの手をレインフォートが握り返す。
「カルデアの新所長と最果ての賢者が握手するなんてあの時じゃ考えられなかったよな」
「……最果ての賢者?」
ムニエルが溢した言葉にアルトリアが反応する。
トネリコがレインフォートを二度見してそのまま訳知り顔で頷いた。
「おや、言っていなかったんですかレインフォートさん」
キリシュタリアが悪戯っぽい笑みのままレインフォートへ問いかけてマシュがそれに続くように説明を始めた。
「レインフォートさんは汎人類史においても優れた魔術師でして、過去には時計塔に在籍していた時期もあり、籍を外してからはオークニーの森に住んでいたことからついた異名、それが『最果ての賢者』とお聞きしました。森から泉に辿り着くまでに高度な認識阻害の魔術がかけられていることからレインフォートさんやそのお家族とお会いできた人は大変名誉なことだと…………」
「マシュ頼む、その辺りにしてくれ。娘と妹に1番聞かれたくない話を美談のように語るのは本当にやめてくれ」
片手で顔を隠して懇願するが時すでに遅し。
アルトリアは満面の笑みでレインフォートににじり寄り、トネリコは“流石はお兄様です”と言わんばかりの後方腕組み妹面をしていた。
「ふぅん……?カッコいい異名持ってるんじゃん??」
「やめてくれ、第一僕はその呼び方を認めてないんだぞ」
「いいじゃん、最果ての賢者」
「……ほんとうにやめてくれ」
恥ずかしさで顔が赤くなりそうになりながらレインフォートは話を元に戻そうと目の前の問題へと話を振る。
「ひとまずムニエルは給料50%カットの方向で頼むよムジーク氏」
「検討はしておこう」
「嘘だろ!今は外部のレインフォートにその権限あるのかよ!?」
「ケルヌンノスを討つための最高戦力を相手に喧嘩を売るんじゃありません!」
そんな一喝と共にブリッジの雰囲気が少し緩む。
自身の知っているカルデアとは違うもののそれでもこれまで乗り越えてきた世界の数だけ彼らの絆は深くなっていたのだと納得する。
「おほん、では厄災討伐に向けた最後のブリーフィングを開始する!本作戦がブリテンにおける最終決戦と予想される。もうこの後の戦闘を考慮する必要はない、持てる全ての力……切り札とかそういうのは出し惜しまずに全力を尽くしてもらいたい!」
「しかし、あの呪いを正面から受けるのは無理だ。1度目はコヤンスカヤのおかげでどうにかなったが……どうするつもりだ?」
「ストーム・ボーダーの防御兵装では心もとないのは確かだね。マシュの防御とアルトリア・キャスターの対粛清防御でもおそらくは……」
カドックとキリシュタリア、2人の言葉にブリッジに沈黙が流れる。
1度目の顕現の際にケルヌンノスの呪いでカルデアは事実上一度全滅している。
コヤンスカヤが身代わりとなって呪いを受けたからこそ今こうして作戦会議という名の生存を許されている。
「それに関してはオレに任せな。この船の防御はオレが受け持つ、仮にも智慧の神だからな。本気を出せばこの船そのものを聖域に出来る」
「ミーミルの泉、またはそれに関連するスキルですか。確かにそれならばケルヌンノスの呪いを跳ね返せるでしょうが……」
「ああ、完全には無理だ。オレも多少の呪いは覚悟してる」
「まあ、グリムですから呪いの一つや二つなんとでもなるでしょう」
「相変わらずオレへの扱いは雑だこと。実践的な魔術の師に少しは敬意とか払えないもんかね」
「必要ですか?グリム先生?」
「やめろよ気持ち悪い」
あーやだやだと肩をすくめるグリムとクスクスと笑うトネリコ。
しかし、そんなグリムの肩をガッシリと掴む何者かの手。
「僕の聞き間違いかな?いま僕のトネリコに向かって“気持ち悪い”と言ったような気がしたけれど」
「………………」
「返答によってはケルヌンノスの次に首を落とすことになるけど」
「お前の保護者こんなにヤバいやつだったの?」
冷や汗を滝のように流しながらグリムがトネリコへ問いかける。
しかし当の本人はニコニコとどこ吹く風、グリムの首の心配など一ミリもしていないのである。
「まあケルヌンノスの呪いはオレに任せな。本体を叩くのはお前たちに任せる、聖剣使いに楽園の妖精2人……それに妖精騎士1人いれば神が相手だろうと戦えるだろうよ」
「大穴まで残り十分!ケルヌンノスが視角に入るよ〜!」
「いや、その必要はないさ。マリーンそのまま直進だ。賢人グリム、準備を。相手は祭神ケルヌンノス、ブリテン最後の厄災祓いを開始する!」
ホームズの号令でブリッジにいた全員がそれぞれの配置に向かう。
マシュと立香、そしてカルデアに復帰したA'チームのマスターたち。
決戦前の十分、その時間を…………。
「お兄様、それにアルトリア。ほんの少し時間をもらっても?」
「ああ、もちろん」
「わたしも、大丈夫です」
「看板に向かいながらでいいので、少し話しましょう。3人で話せるのは……これが最後になりますから」
そう口にしてトネリコがブリッジから退出する。
アルトリアとレインフォートもそれに続いて甲板へ移動していく。
****
ストーム・ボーダー 通路
「ケルヌンノスを倒すためには私とアルトリア、そしてお兄様の全員が全力の一撃を同時に放つ必要があります。ケルヌンノスの外皮は何重にも重なった強力な呪層で構成されていて……」
「ちょっと待って、わたし陛下やレインみたいな強力な魔術なんて持ってないよ?」
「ええ、私にはこの選定の槍が、お兄様にはお前が鍛造した聖剣がある。確かに今の貴女にはケルヌンノスに届く魔術はないでしょう。あくまでアルトリア・キャスター単一では、という話で」
含みのあるトネリコの言葉にレインフォートはトネリコがなにを言いたいのかを察した、アルトリアだけではケルヌンノスに届かないのなら届くだけの武器を使えばいい。
ブリテンにおける最強の武器はレインフォートの手にある聖剣だけではないのだから。
「……キャメロットに接続された聖槍か」
「そのとおり、私は甲板で“戦力を喚びだして”戦う。アルトリアにはキャメロットに向かって聖槍を使ってもらいます。キャメロット城門に設置した聖槍十二門、その威力を持ってすればあの呪層の外皮を突破できるはず」
「で、でも聖剣ならともかく聖槍の使い方なんて……」
自信なさげにアルトリアが俯く。
キャメロットに設置された聖槍の魔術。
それは目の前にいる天才が作り出し、その天才が扱うことを前提に組み上げられた最果ての槍を魔術に収めた霊脈閉塞型兵装。
それが対ケルヌンノスのために用意されたこのブリテンの切り札。
それを自分が扱えることが出来るとは思えなかった。
「アレは私が使うことを前提に作られていますが……」
「ほらやっぱりそうじゃん!なら最初から陛下が使った方が……」
「楽園の妖精とお兄様も使えるように作っている。正式には資格を持つものが扱える、という話ですが……今の貴女なら問題なく扱えるでしょう」
キャメロットのロンゴミニアドはアルトリアでも使える。
トネリコが核心を持って、いや制作者ゆえに絶対の自信を持ってそう答えた。
「…………わかりました。もとから最後の力を振り絞るためにここに戻ったのです、先代の楽園の妖精が……敬愛すべき救世主がそう告げるのならやってみせましょう」
「ええ、それから……お兄様」
トネリコが、アルトリアが2人揃ってレインフォートへ自分の身体を向けた。
「私もアルトリアも、互いに聖槍を放ったらそこでこの身体は終わりを迎えます。アルトリアは最後の魔力を振り絞ってキャメロットのロンゴミニアドを撃ち、私はこの命を全て使って選定の槍を扱う。なので、最後の一撃は聖剣の王でありこの異聞帯を統べるものであった貴女に託します」
「……そうだね。わたしも、全力で頑張るからさ。みんなが見惚れちゃうくらい眩しい聖剣の一撃でケルヌンノスの呪いを祓ってあげて」
「ああ、まかせてくれ。君たちの兄であり父として、君たちが胸を張れる男で居られるようにその責務を果たそう」
「だから、ふたりとも、最後に……おいで」
両手を広げて二人の少女を待つ。
一人は六千年待たせた大切な妹、もう一人はつい最近自分の道を歩き始めた大切な娘さん。
胸の中に二人の体が鎮まる。
もう、この戦いを終えたらこの温もりを感じられることも無くなってしまう。
「トネリコ、アルトリア……君たちを愛してる。心の底から失いたくないとギリギリの今でも思う。出来るならオークニーの湖のほとりで3人で静かに暮らしていたいとずっと思ってる」
「それは素晴らしい夢ですね、私もそうあったならどれだけ幸せだったでしょう」
「わたしも本当に思うな。お父さんとトネリコ姉さんと静かに暮らせたらずっと笑っていられたと思う」
「アルトリア……貴女……」
「えへへ、先代の楽園の妖精だもん、わたしのお姉さんでいいでしょ?」
「……まあ、いいでしょう。汎人類史では実際に姉妹なのです。私を姉と呼ぶことを許します。存分に呼びなさい」
「ふふ、じゃあ……最後まで頑張るから妹を信じてよねトネリコ姉さん!」
「ええ、優秀な妹ですもの必ずやり遂げると信じていますよ」
「……うん!」
「……それではお兄様、これを」
そしてトネリコが差し出したのはモルガンとしての彼女が手にしていた黒の魔槍。
「私は選定の槍を使い、最後の一撃を持ってこの肉体は消滅します。もとより命を喰らうものと化してしまった槍を無理やり調伏して受かっているのです。あの規模の宝具として扱えば吸い取られる生命力もパーシヴァルの比ではありません。アルビオンで一度、ケルヌンノスで後一度使えば流石の私でも限界です」
「…………そうか、それじゃあ僕は妹の1番かっこいい最後を見送れるというわけだ」
「ええ、任せてください。聖剣使いの王の妹として相応しい有終の美を飾って見せますよ」
胸を張って応えるトネリコとそれを見てほほ笑むレインフォート。
「じゃあわたしの杖も役割を終えたらレインのところに向かうように魔術を……」
「私が掛けてあげましょう」
トネリコがアルトリアのヤドリギの杖に触れる。
淡い光が杖を包み込んですぐに杖とレインフォートに繋がりができた感覚があった。
「ふふ……これで楽園の妖精と妖精騎士たちの想いは全てお兄様が連れていってくれますね?異聞世界ブリテン……いいえ、妖精國ブリテンの誇りはすべて真の王である聖剣の主人へ……私たちの愛は重たいですよ?」
「ああ、それでもこの身で全て受け止めてみせるさ。いずれどこかでまた会えたら全力で抱きしめよう。
「……アリトリア、最後に姉としてひとつ。貴女が進む道は辛くて厳しい孤独な旅になるでしょう。でも、どうか忘れないで、貴女が目指すたった一つの星への道はただ一人で進むものではないのだと……その先を歩く者がいて、きっと守ってくれるものも貴女の背を押してくれる者もいるのだと」
「うん!」
心強い姉からの言葉にアルトリアが頷く。
なら、もう不安はない、あの星のように今度は自分が大事なひとを照らせる星になるのだと決めて。
『グリムの結界展開!決戦要因は甲板に集合だ!』
「……行こう、二人とも」
「ええ」
「うん!」
「アーデルハイト一家出撃です!!!」
そして、このブリテンにおける最後の厄災払いが幕を開ける。
その裏で戦いの結末を思い描いて嗤う竜がいることもまだ知らずに。
急にハートフル雰囲気を出してきたなと思いました???
この作品のテーマは元から愛ですよ????
皆様からの昨晩への感想やこの作品を追いかけてくれている理由なんか教えていただけると嬉しいです!
ふぅ……金曜日からのレイドどうしようね()
アヴァロン・ル・フェの更新について
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今まで通り月に3〜4話見れればいい。
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待ってもいいからストックして放出
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別に気にせんでええねんで(^ω^)