お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン 作:今井綾菜
病床はあまりにもやることがなく隙を見ては書き始めどうこうと相成りました。
いつも感想は新話投稿時にお返ししているのですがすみません、
とょっと余裕のある時に少しずつお返しさせていただきます!
『戦える人員は甲板に揃ったな!これよりケルヌンノスに接近する!一度きりの大勝負だ!各員、気を引き締めるように!』
ネモの号令に頷くのはレインフォートとトネリコ、アルトリアにマシュだった。ブリテンの深くでずっと蓄えてきた呪いの厄災それを祓うため戦力はたった4人といえば少ないかもしれない。
───だが、それだけな訳がなかった。
トネリコを中心として大きな魔力反応が観測される。
「なんだ!?トネリコの周りに英霊召喚の反応!?」
「このブリテンでも英霊召喚はできないはずじゃないのかね!?」
そう、その理屈はこのブリテンでも変わることはない。
半人類史の英霊ではこの異聞たるブリテンに介入できない。
だが、それは汎人類史の英雄でであればの話だ。
ここにいる魔術師はこのブリテン六千年分の歴史の生き証人。
たとえ、この世界の誰もが英雄なんてものを信じなくても、ただひとりだけは彼らの輝きを知っている。
そう、救世主トネリコ、彼女こそがこの歴史における境界記録帯の証人である。
「───告げる。
汝らの身は我が元に、我が命運は汝らの輝きと共に。
救世の呼びかけに従い、この意、この理従うのなら応えよ……!
誓いを此処に、我は常世全ての善となったもの、我は常世全てに悪を敷いたもの。
汝ら、最果ての祝福を纏う七天、輪廻の輪より来たれ、護国の守り手よ───!」
トネリコの周囲に現れたのは3本の光の柱。
その中から姿を現したのはかつて、救世主トネリコとともに厄災を祓い続けたこのブリテンにおける英傑たち。
「『勇者』ライネック、我が友の呼びかけに応じ参上した」
「『黒騎士』エクター我が主の呼びかけに応じ参上した」
「『人王』ウーサー、君の声で再び目覚めた」
そう、かつてロンディニウムを平定した救世主一行が現代に蘇ったのである。
トネリコを持ってしてたった一度の奇跡。
対ケルヌンノスに対する彼女の切り札の一つ。
「よくぞ再び集まってくれました!我が救世の友達よ!これが私たち最後の厄災祓い!祭神ケルヌンノスの討伐です!!」
「───ハ、いきなり呼び出したと思えば神が相手とは、相変わらず度胸が座っているな!」
「そういうなライネック、このような大一番、よばれただけマシというものだろう!
ライネックが駆け出し、エクターがその後に続く。
「……アルトリア、言った通りだったろう」
「……ぁ、うん!」
通り過ぎるその瞬間、かつて道を託した英雄と今を歩き続ける少女の道は再び交わったのだった。
「いっけぇ!エクター!」
少女も英雄の背中を見つめるだけではない。
走り去る英雄の背中を押すためにありったけの支援魔術を彼に託した。
ケルヌンノスから放たれた呪いの放射を英雄が持った大槌が弾き飛ばす。
「アルトリア!行きなさい!」
トネリコがアルトリアの背後に水鏡を展開する。
その行き先はキャメロット城内、玉座の間に繋がる通路だった。
背後に現れたそれにあるトリアは迷うことなく飛び込む。
覚悟は決めていた、もう一度会いたいと思っていたひとにも会えた。
トネリコや英傑たちの猛攻、それに加えてレインフォートのアルトリア・オルタ仕込みの聖剣からの魔力放出によってケルヌンノスの外皮は確かに剥がれ落ちつつあった。
『ケルヌンノス魔力反応が停止した直後に外皮即時回復!ダメだ見た目はともかく全くダメージ受けてないぜそりゃ!』
マシュの目算では、少なくとも四回はケルヌンノスを活動停止まで追い込んでいた。それはカルデア側も同じ、だが……それ以上にかの神に与えているダメージは少なかった。
「……そろそろでしょう」
「……トネリコさん?」
「オレたちの役割は最初から楽園の妖精を玉座に送り届けることだ」
「……ぇ?っ!?いません!アルトリアさんがいません!」
「アルトリアならいまはあそこに」
トネリコが指差した先、それはキャメロット城門に設置された聖槍十二器を使用するための座、つまり女王モルガンの玉座である。
****
再び訪れたキャメロットは死の城に変わっていた。
妖精はいない、人間もいない。
死体もなく、モースもいない。
ありとあらゆる灯りが全て消え去った通路を、彼女は走る。
「はぁ……はあ、……はぁ───」
水鏡に飛び込み、勢いよく飛び出て、いまはこうして玉座の間へと走っている。
「多分こっち、きっとこっち!」
幾度も通路を曲がって彼女は走る。
「玉座の間なら何度もきたしたぶんあってる!」
息を切らせて走る。
あまり当てにならない感覚とは別に壁を隔てた先から静かに登ってくるあの圧倒的な呪いだけははっきりとわかった。
残された時間は少ない。
幾ら空でみんなが頑張っても呪いの本体が這い上がってくるまでにわたしがあの外皮を吹き飛ばさないとトネリコ姉さんもレインも撃つ手が無い。
女王モルガンが作り上げた玉座の仕組みを解析し、自分用に作り替えてつかう。
自分に課せられたのはそんな大きな役割だった。
『優秀な妹ですもの』
彼女にそう言われたのだからやりきって見せる。
いや、あの剪定の場からもどったわたしは半分以上空想の存在。
いつか聖剣を抜き、ブリテンを次の時代に導くひとりの王。
その概念に組み込まれているのがわかる。
「世界の中心じゃなくて、その端っこ。最果ての灯台で、どんな時の終わりだろうと───」
そこまで口にしたところで見覚えのある十字路に出た。
底を曲がれば玉座が見える。
「───ぁ」
その玉座の奥に見える“ただそこにいるだけの祭神”
妖精たちの罪の証である腐肉が聳え立っていた。
息が詰まる。
その姿の禍々しさ。
その無言の意味に萎縮する。
視座が変わったからこそ理解できた。
神の怒りは正しい。
神の呪いは正しい。
───でも、
「それでも、あなたは間違えているのです。たとえ、あなたの怒りが正しいものでも、あなたの感じた責務が正しいものでも……犯した罪を許すための仕組みを……赦されるための時間を決めるべきでした」
それが、楽園の妖精が目の前に立つ神に向けたたった一つの感情だった。
意識を玉座に繋げる。
キャメロット城門に並ぶ、十二の聖槍の一つとなる。
それと同時に感じる稲妻じみた速度で這い上がってくる呪い。
一万四千年の呪いがその終わりを察して這い上がってくる。
しかし、アルトリアの中にあるのは焦りではなくトネリコへの賛美だった。
「すごい、やっぱり本当の天才だったんだ」
妖精としての性能だけではなく、キャメロットという城そのものを礼装とするその発想、そしてこれほど巨大な仕組みでありながらもその回路には一切の澱みが存在しないこと。全ての魔術回路が美しく結びつき、魔力の循環も何の支障もない。
まさに神域の天才。
歴代の楽園の妖精のなかでも納得の最高位の人物だ。
問題は、この仕組みがその『天才』が扱うことを前提として作られている、ということで。
「っ───っあ、ぁ───」
全身に走る痛み。
12もの清掃を扱うには回路が足りず、過剰な魔力は彼女の肉体を内側から蝕んでいく。
今まで生きてきた中で1番の痛み、いつもなら逃げ出しているくらいの激痛。
それはそうだ。血管が、神経が、筋肉が全て無理やり広げられているのだから。
でも、今度は逃げない。
いける、と彼女は確信していた。
「対厄災大儀式、開門───!救世の槍よ、罪を流す
極大の礼装から十二の聖槍が生成される。
これこそ女王モルガンがその生涯をかけて作り出した至上礼装。
最果ての神秘を魔術へ叩き落とした究極の兵器。
その全てが射出され、ケルヌンノスへ殺到する。
「ぁ……、まだ……」
十分な火力、十分な威力だった。
キャメロット城跡でさえ灰燼に帰すほどの威力だった。
しかし、それでも足りない。
積み重なったあの呪いを貫通するには弱すぎた。
例えばここに妖精がいたなら笑っただろう。
“モルガンの用意した礼装では神殺しには至らないのだと”
「そんな、わけ、あるか……!」
そうじゃない、これは使い手が使いこなせていないだけ!
この後に及んでまだ
なにが、まだ帰りたいだ。
あの鍛治師が最後に時間をくれたのは何のためか!
全てを出し切るためにここに来たんだ!
聖槍のロンゴミニアドはモルガンの術式だ。
それを全力で扱えないのは当たり前だった。
元からこの身に許されたのはたった一つだけ。
聖槍を撃ち出す機能があるのなら、その砲弾を変えればいいだけ。
幸いにも今の自分は『聖剣の概念』だ。
ならば、、回線を玉座からこの心臓に。
使用魔力をキャメロットからアヴァロン・ル・フェに
身体中の細胞が燃え盛るような痛み。
まるで惑星が燃え上がるようなそんな熱と痛み。
呪いの手が、、夥しい怨嗟の手が玉座のテラスに到達する。
瞬間、痛みによって加速した思考は、彼女であったものの記憶を、確かに振り返った。
たくさんの思い出、沢山の後悔。
その果てに、それでも歩き続けられたのは……
ひとえに、あなたに《愛》をもらえたからなのでしょう。
「───聖剣、抜刀!」
それは奇しくも最も愛するあなたと同じ掛け声で。
「祭神よ、我らが罪を赦したまえ!」
先ほどとは比べ物にならない火力の聖剣がケルヌンノスの外皮を打ち破る。
そして、それを待っていたかのように天空からは青い光が撃ち落とされ、
ストーム・ボーダーの甲板からは眩い聖剣の光が祭神の核を撃ち抜いていた。
「
蒼き光に飲み込まれ、祭神の肉体が大穴に没していく。
キャメロットから放たれた聖剣の一撃を見送り、上空で放たれた光の槍が放たれたその時、この世界から大切な二人が消えたことを悟った。
剣を握る手が震える。
別れの苦しみには慣れてきたつもりだった。
自身の武器翼に追加された新たな杖の重み。
残ったものはただひとつ、少女が残したヤドリギの杖がそっと父に寄り添うように追加されていた。
「ケルヌンノス、討伐完了。空も黄昏の空に戻って……」
『まって!何かおかしい!なんだこれ!ブリテン島そのものがどこかに落ちてる!』
『崩落だ!このままじゃ地球そのものがまずい!』
「どうして!?厄災は全て祓いました!もうブリテンを脅かすものはないもないはずなのに!?」
「あるとも、初めから見えていたからそう認識できなかっただけ。ロンティニウムの壁画をほぼ覚えているかい?どれほど強固なものでも小さな虫に噛まれればそれまで……」
「オベロン!?」
「ああ、、久しぶりだね藤丸。それとももう気が付いてた?それならそれでちょっと恥ずかしいんだけど、まあいいやそもそも君には初めから隠し事なんてしてなかったんだ」
そんなふうに吐き捨てるような言葉と共にオベロンの手に大きな蚕が止まるがその姿は無惨なモース毒の染みまみれだった。
「おや、どうしたんだいブランカ。素敵な触覚がぴくりとも動かなくなって……ああ、死んでしまったのか。ブリテン中から僕に向けられた毒を僕の代わりに受けてくれていたのかい?」
その声は慈愛に満ちたものに聞こえた、しかし、それ貼り付けたような笑みと共にすぐに剥がれ落ちる。
「まあ、どうでもいいけど」
彼に寄り添うように身を寄せていたその虫の妖精をオベロンは躊躇うことなくストーム・ボーダーから放り投げた。
「僕が誰か、か……今頃完成室は大慌てだろう。なにせ、僕を観測するものは
いつもの王子様のような笑みで、それでもどこか影を感じさせる表情で虫の王は笑う。
「お前は……誰だ!」
「あはは!いいよ、答えてあげるよ、なあ
その言葉と共にブリテン北部から島を飲み込みながら現れる巨大な虫。
「ブリテン島を終わらせるための厄災。あのケルヌンノスが自分の肉体を蓋にして封じ込めていたこのブリテン異聞帯の終末装置……」
「汎人類史においてはアーサー王の聖槍によって敗れたブリテンの『白き龍の化身』ヴォーディガーン」
「そんな……まさか……」
ヴォーディガーン。
それはアーサー王伝説において知らぬものはいない聞き馴染みのある名だ。
そんな存在が厄災を退けた後に出てくるなど誰が予想しただろうか。
「ああ紹介ありがとう。俺は神代の終わりと共に自らの破滅を願ったこのブリテンの意思の具現。名をヴォーディガーン。オベロン・ヴォーディガーン。君たちと共にこのブリテンを滅ぼした『奈落の虫』さ」
純白の王子から漆黒の王に変わった妖精王があらためてその名を口にした
もし、この世界線でケルヌンノス戦をやるとどうなるの?
A.次パーティ編成戦とは別にお兄様&トネリコ(フル強化済み)の強制出撃戦があります。
詳しい戦闘内容やギミックは余裕のある時にまたあとがきや完結後のマテリアルのようなところでご紹介します
アヴァロン・ル・フェの更新について
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今まで通り月に3〜4話見れればいい。
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待ってもいいからストックして放出
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別に気にせんでええねんで(^ω^)