お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

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はやくアヴァロン・ル・フェ書きたい。


第四湖『おわりのはじまり』

オルガマリーが新所長として任命されてから一年と少し経ったころ。

カルデアはある一つの重大な任務を遂行するための準備に入っていた。

 

いいや、現時点ではもう準備の段階は終えた、というべきだろうか。

 

カルデアにて人理の保障を観測し続ける擬似天球『カルデアス』。

文明を100年先まで観測してその明かりが灯っている以上はその先100年の人理は保障されるというもの。

その明かりが、消えてしまったのだ。

 

カルデアは消失してしまった未来を取り戻すための過去への介入。

 

正確には正しい歴史から外れてしまった特異点の修復を行うためにレイシフトを行い、未来を取り戻す作戦を決行することになった。

 

「…………」

 

なった、のだが。

 

なぜ廊下で少女が倒れて……いや、寝ているのだろう。

そしてそんな少女の前で起こすべきかどうか悩んでいるマシュを見つけて思わず足が止まる。

 

「あっ、レインさん」

 

「……その子は、えっと?」

 

「見たところ48人目の候補の方のようです。確か寝ている方を起こす方法は以前レインさんに教えて貰いましたから完璧なはずです」

 

「そ、そっか。その子を起こしたらブリーフィングルームまで案内してあげて、今日のマリーは緊張して機嫌が悪いから遅刻なんてしたら一大事だ」

 

「はい、先輩のご案内はこのマシュ・キリエライトにお任せください」

 

しっかり者のマシュが付いているなら遅刻はしないだろうと安心してそのまま足をブリーフィングルームへ進める。

手元に持った資料はアドバイザーとしてオルガマリーのために作成したものでいざという時の補足説明を追加した演説文の雛形だ。

要領のいいあの子のことだからこれだけ用意すればあとは自分の言葉で何とかできる。

 

 

とはいえ、全てを彼女に丸投げするのはアドバイザーとしてどうかと思うので気分転換にドライフルーツも一緒に用意しておく。

 

「やあマリー、調子はどうだい?」

 

「レイン……見てわかるでしょう、最悪よ最悪。48人のマスターは何とか揃ったけど、これから特異点修復の総指揮を取るのよ?ああもういや、あの癖の強い魔術師たちの指揮を取るなんて悪い冗談でしょう」

 

「うーん、これはなかなか重症だ。とりあえずこれ、簡単に今日の演説で使えそうな文の雛形。あとは気持ちを落ち着かせるためのドライフルーツ」

 

「……ありがとう。あと30分で始まるけどこれだけあれば纏められるわ」

 

渡した資料に即座に目を落とす彼女のために手にしてきたドライフルーツ───今日持ってきたのは柑橘系のもの、オレンジやレモンだったりするわけだが───を資料の隣に置いておく。

 

「今日は言わないのね」

 

「何を?」

 

「どうして君はいつもそうなんだ、ってやつ」

 

「別にいつも言っているわけではないだろう。君が何度言っても才能に対する自信を持たないから呆れて口にしていただけで」

 

「それをいつも言っている、というのよ。最果ての賢者様?」

 

「なるほど、覚えておくよ」

 

いつもの軽口に苦笑しながら応える。

 

「先ほど最後のマスター候補の少女が入館した。極東……日本から招かれた少女ということだが資料を見る限りではかなりの逸材だよ」

 

「見たわよ。レイシフト適性脅威の100%、でもそれだけでしょう?魔術の素養はほぼ無し、魔術回路があるだけの一般人。まあ、レイシフト適性が100%の子を一般人と定められるかは置いておくとしてもね」

 

「入館チェックの仮想戦闘でのマスター適性もそれなりだとも。少なくともマスター適性のない僕よりは使い物になるね」

 

「神域の天才魔術師より使い物になる?冗談はやめて、このカルデアで本気の魔術戦闘をさせたら貴方かキリシュタリアのどちらかっていう次元の話よ?それを一般人の……それもたまたま見つけられただけの学生が賄えるはずがないわ」

 

「そうかな?案外こういう子が作戦を引っ張る鍵になるかもだ」

 

先ほど廊下に倒れていたオレンジ色の髪の少女を思い出して笑う。

少し気になってマシュと一緒にいるだろう彼女を覗いてみたがマシュも笑っていることから悪い子ではないのは間違いないだろう。

 

「……貴方いま、千里眼で覗き見していたでしょう」

 

「おっと、バレたか」

 

「瞳の色が違うのよ。貴方が世界を見通す時は海の底のような深い青色が煌めくの、知らなかったでしょう」

 

「それは初耳だ。教えてくれてありがとうマリー」

 

「どういたしまして、それじゃあそろそろ準備しましょう。ほら、みんなが入ってくる前に自分の席についていて」

 

オルガマリーに押されるまま自身のために用意された席に座って待つことにする。

それにしてもそうか、千里眼を使っている時の僕の瞳は深い青色に輝いているのは知らなかった。

自分にとっての負担が大きいから普段は妖精眼(グラムサイト)で安定させているが、負担が大きいからと普段から意識して観ていないのはあまり良くないのかもしれない。

 

まあそれもおいおい解決していけばいいだろう。

 

なんて、この時の僕は悠長に思っていたわけだ。

 

 

 

 

 

ああ、そしてこの時ほど千里眼を常時使用していなかったことを後悔したことはない。

 

このカルデアをしっかりと観ていなかったことが僕の今生において取り返しのつかない大失態であるとは……この時は思ってもいなかったのだ。

 




前回いただいた感想欄がほぼ運対案件に……
ガチャ報告だけはダメですよと言ったのに……

それはそうと次回からファーストオーダーですね。
どうにもやりたいところではないせいで文字数が伸びないのが玉に瑕ですが、この作品でやりたいのはあくまでアヴァロン・ル・フェとその後のオークニー兄妹や妖精騎士、アルトリア・キャスターとの絡み、そこまでの過程は端折って端折りまくるワケです。

皆さんのおかげでもう少しで評価総数が100件に届きそうです!
どうか評価をまだ押していないそこのあなた!是非是非高評価お待ちしてます!

「私がお兄様と再会するためにも頼みましたよ、我が臣下たち」


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