お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン 作:今井綾菜
☆10評価が緑色になって困惑と同時に笑みが溢れた作者です。
今回はアーキタイプ・アース(第三再臨)とのお話です。
若干……?かなり……?エミュ終わってる可能性ありますが、生暖かい目でご覧ください。
カルデアに復帰して数ヶ月、以前のように司令室に籠るわけではなく戦力としての割合が多くなった僕はサーヴァントたちとの交流を深めることも多くなっていた。
7つの異聞帯を越えたカルデアは人理漂白を解決する最後のピースである南極へ向かおうとするも、エクストラクラスを濫用したことで人理の壁に阻まれた。
エクストラクラスへの理解と決別のため、課せられた命題である『オーディールコール』をこなすために白紙化された地球の上を飛行しているストームボーダーの中で現在、束の間の休息を各々楽しんでいたのだ。
現在、数百を超えるサーヴァントと契約しているカルデアではすれ違う人々の全てが誰もが聞いたことある英雄から始まり特定の地域で有名な英雄まで様々だ。
もちろん、聖剣の担い手としてたくさんのサーヴァントに話しかけられるし、手合わせを願われることや雑談をすることも決して少なくない。
しかし───
「一度あなたと話してみたかったのです。異聞の聖剣使い」
圧倒的な存在感。
僕たちのような星から生まれた妖精や精霊なら誰もがその存在を認知して、畏怖してしまうような絶対的な存在。
かくいう僕も、彼女がこのカルデアにいるとわかってからは出来るだけ遭遇しないようにしていたのだが……今日が運の尽きという訳だ。
「こ、これは姫君」
「そう畏ることもありません。星から遣わされた聖剣を持った妖精の王たる貴方ならば、私と対等……とまではいかなくてもそれなりの力を持っているでしょう?」
馬鹿を言え、と言葉に出さなかった自分を褒めたい。
地球の意思である彼女と異聞世界ブリテンで妖精を統べる王として生まれた妖精を一緒にするなと声を大にして叫びたかった。
「しかし……聖剣使いの亜麗と話すには少し場所が相応しくありませんね。私たちが話すにはもう少し相応しい場所があるでしょう、どうぞ私のマイルームへ。ちょうど先日、美味しい茶葉を特異点で手に入れたので」
「光栄です、姫君からお茶のお誘いとは」
胃がキリキリするなんて生ぬるい話ではない。
誘われるまま彼女の部屋に足を進めていく中で幾人かよく話す英霊たちとも顔を合わせたのだが……。
「あっ…………(察し)」
一番最初に出会ったモルガンにすら何も見なかったと言わんばかりに視線を外されてしまった。
アルトリアに関しては僕に声をかけようとして隣にいた姫君を見て綺麗に回れ右をしたのだ。
助けてトネリコ、僕は生まれて初めて妹である君に助けを求めたいよ。
かれこれたくさんの英霊や身内に見捨てられること数分。
彼女が使うマイルームにたどり着いた訳だが、これがもう凄かった。
一面に広がる眩いばかりの青い花畑。
それは彼女が宝具として扱う『
千年城の存在する花園に僕は足を踏み入れていた。
「貴方にも馴染みのあるものでしょうけれど、すこしだけ奮発してみました。こうして千年城に招くのは特別なことなんですよ?」
「は、はは……光栄です」
真祖の姫君の空想具現化と力のある妖精が持つ妖精領域を一緒にしないで欲しい。
しかし、いつまでもこうしていたって仕方ない。
真祖の姫君が自らお茶をしたいと誘ってきてそれを受けたのならば相応の受け答えはするべきだろう。
少し歩いたところに用意されていたテーブルと椅子。
その上にはアフターヌーンティーのセットが並べられていた。
「それでは、楽しいひと時を過ごしましょう?」
「ええ、是非」
彼女の対面に用意された椅子に座る。
規模感が凄まじすぎて頭が痛くなってくるが、決して無礼だけはすまいと気を引き締めてティーカップを手に取った。
しかし、ティータイムとはいざ始まって仕舞えばあっという間で。
気がつけば僕も彼女もだいぶ砕けた話し方に変わっていた。
「……なるほど、一見変わった聖剣だとは思っていましたがそういう理由があったとは」
「僕も、この剣の起源を知った時は気恥ずかしいような苦しいようなそんな気持ちでした」
「ええ……それもそうでしょう。しかし、楽園の妖精は恵まれていますね。貴方のような殿方が父となってくれるのですから」
「そうであったなら、いいのですが」
「ところであの代行者とは……?」
「ああ、彼女とはなんというか腐れ縁といいますか……。どちらかといえばアルクェイドとの縁が深いというか。そういうあなたこそ、こちらの聖剣使いとはそれなりに縁が深いと思いますが?」
「アルトリア・オルタとアルトリア・ランサー……いや僕にもどうしてあんなに関わってくれるのかはあまりよくわかっていなくて」
脳裏にチラつくのは人理修復後のアルトリア・オルタとの会話。
『親戚の叔父さん、というのはあまりにも哀れなので従兄弟というところだろう』という彼女の言葉。
間違ってはいない、決して間違ってはいないのだが……
「世界は違えども、親類……になるのですよね?」
「…………いちおう、そういうことに、なりますね」
「ギリギリ認めるという反応ですね」
「同じ顔の親族が増え続けるというのはなかなか……」
ただでさえオークニーのトネリコに救世主のトネリコ。
僕の娘たるアルトリアに、アヴァロンのアルトリア。
自称従兄妹を名乗るアルトリア・オルタにしれっと会話に交ざってくるアルトリア・ランサー。
正式に聖剣使いとなったことで、聖剣の使い方を習いにくるようになったアルトリア・リリィに彼女たちの総括と言ってもいいモルガン。
「ただでさえ妹と娘だけで側面込みで5人いるのにこれ以上増えられると……」
「それは、なんというか」
「僕の親族で唯一顔が違うのは姪のバーヴァン・シーだけで……」
「あなたも苦労しているのですね」
「すいません、姫君相手にこんな親類の悩みを……」
「ふふっ、構いません。私とこうして話す相手がそもそも少ないのでどんな話でも私は楽しめていますので」
柔らかく微笑む姫君だが、僕の脳裏にあるのはつい先日のこと。
雨のトネリコと救世のトネリコが衣装を交換してきた時は焦った。
もちろん見分けはつく、つくけれど兄として決して間違えるわけにはいかないあのプレッシャーは二度と味わいたくはない。
「なるほど……あなたが持つのは空想具現によるものではなく妖精領域という特殊なものなのですね」
「亜麗として強力な力を与えられたのもありますが、僕のものは最盛期の故郷を再現して引き摺り込むものになりますね」
「是非とも今度はそちらに伺ってみたいものです」
「はは……機会があれば是非」
「貴方の故郷は、確かオークニー諸島でしたか」
「ええ、異聞世界でのオークニーは常雨の国で雨が上がるのは年に数回というような場所で、雨が上がった日は軽いお祭りになっていたんですよ」
「きっと、素晴らしい国だったのでしょうね」
「はい、あの国と民は僕の誇りです」
その後も他愛のない話をいくつも交わし。
気がつけばゴルドルフ新所長からのメッセージが幾度となく入っていたころには茶会を始めてから数時間が経過していた。
「……すみません姫君、新所長からの呼び出しが」
「仕方ありませんね、もう少し話していたかったのですけど……ふふっ、人気者を独り占めしていては怒られてしまいますね?」
「姫君を怒れる人なんて…………あの代行者くらいのものですよ」
「そうでしょうか、あなたも気軽に声をかけてくれて良いのですよ?」
「善処はします」
「つれませんね、ここまで話した仲でしょう?」
思わず見惚れてしまうような妖艶な笑みを浮かべる。
真祖の姫君はそのまま立ち上がり美しい花の中を少しだけ進んで。
「私たちは同じ視座を持つもの。星の触覚と星から遣わされた聖剣の王、同じように人を超越した存在として生まれ、世界を守護するもの」
「───是非、末長く親しい友でありましょう」
その言葉と共に花が舞い上がる。
視界を覆い尽くすような花吹雪が収まった時には僕はあの千年城の花園ではなく、無機質なストームボーダーの廊下にいた。
「流石は真祖の姫君だ。お茶会相手の空間移動までお手のものとは……」
大きくため息を吐く。
ひとまず目の前のタスクをこなすことを考えながらも頭の端にあるのは確実にくるであろう“次回”のお茶会の予定。
「お茶会のために千年城に招かれたからには僕も妖精領域に招待しないとダメかぁ……新所長にどうやって説明するかなぁ」
問題が積み上がっていくことに頭を抱えながらも、そう遠くない次回のために思考を巡らせるのであった。
「次は楽園の妖精を招いてもいいですね」
また、頭を抱える原因の姫君は次回のお茶会に想いを馳せていたのだった。
番外編書きてぇー!
姫君かきてぇー!
エミュ終わってて草(笑えない)
でも書きたかったんだ、許してください。
次回の話はログレス陛下とお兄様のお話です。
約束された聖剣の王と異聞世界の聖剣の王のお話になります。
エミュ終わってたらごめんなさい。
たぶんアヴァロン・ル・フェ本編中、陰鬱な空気に耐えきれなくなったらこんなお話を時々挟むので本編も番外編も楽しんでもらえると嬉しいです。
それでは次回、また増えたアルトリア顔(約束の王)に困惑するお兄様でお会いしましょう!
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