お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

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皆様のおかげで9評価の色が緑色になっております。
すごいね、評価バー3周目って本当にあるんだ……


今回は宣言していた通りダイジェスト形式でのお送りとなります。
このあとブリテン異聞帯まではこんな感じになるのでよろしくお願いいたします。


第六湖 『旅の始まり』

最悪の形で幕を開けたファーストオーダーの幕引きはそれも最悪の形で幕を閉じた。

レフ・ライノールの裏切りによって引き起こされたカルデアの爆破。

所長であるオルガマリーの確定してしまった死亡。

職員の8割を損失した状態での人理修復の開始。

 

その中でもなんとか生き残った十数名のスタッフの心に残ったのは所長であるオルガマリーの死だった。

 

特異点F、2004年の冬木の地にて生き残った最後のマスターである藤丸立香とデミ・サーヴァントとしてその力を譲り受けたマシュ・キリエライト。

そして合流したのが爆発に巻き込まれてしまったはずのオルガマリーだった。

 

初めは僕もロマニも彼女が生きている可能性に賭けた。

だってそうだろう?

マシュが向こうにレイシフトしていたならオルガマリーだってその可能性はゼロではない。

しかし、通信を切ってすぐに残ったスタッフが確認しに行き……

 

「……ダメです、やはり所長は」

 

「……そうか」

 

冬木の街を探索し、懸命に特異点の修復に挑む彼女を僕やロマニを始めとするスタッフたちは何もいうことができなかった。

 

そして行われる幾たびのシャドウ・サーヴァントとの戦闘。

ライダー、ランサー、アサシン。

強敵たちとの戦いに参戦してくれたキャスター・クー・フーリン。

宝具が使えないと悩むマシュに発破をかけて仮展開する事を可能にしてくれたことはこちらにとってもありがたいことだった。

擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)】オルガマリーがマシュの為に命名したその宝具は確かに彼女とそのマスターを守る鉄壁の盾となった。

 

そしてほんの少しの小休憩を挟み続くアーチャー戦。

これはクー・フーリンが受け持つことで藤丸立香たちの消耗を抑えて冬木の大聖杯の元へ彼女たちはたどり着くことに成功する。

 

そこに現れたのは漆黒の騎士王。

 

思わず声を上げてしまいそうになる程“彼女”に似ているその顔立ち。

一眼見ただけで本来の属性から反転してしまっていることがわかるほどの禍々しい漆黒の魔力放出を合図に戦闘が開始された。

 

観測される魔力の波形からおおよそジェットエンジンじみた魔力放出が攻撃の一撃一撃に込められていることがわかる。

マシュがなんとかその剣を押し留め、幾度となく迫る漆黒の魔力放出を防ぎ切っていることがよくわかった。

 

しかし、それだけではどうにもならない。

護るだけでは、かの騎士王を倒すことなどできない。

 

レイシフトという手段が現状使えない今、彼女たちを手助けすることは出来ないのが悔やまれるが……

 

「……娘。貴様、面白い盾を持っているな」

 

漆黒の騎士王が攻撃の手を緩め、その盾を見つめる。

軽く笑った次の瞬間、なんとか生き残った計器からいくつものアラートが鳴り響く。

 

「ならば、我が聖剣を受け止めてみせろ。お前がその騎士に認められたならばこの一撃にも耐えられるだろう!」

 

「っ!マシュ!宝具使える!?」

 

「……やって見せます!絶対に……!」

 

黒き光が、その剣に収束する。

 

 

───卑王鉄槌。

 

 

───旭光は反転する。

 

 

───光を呑め。

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!!」

 

その黒き光はまさに闇の奔流。

自身の魔力を制御することなく叩きつけられる暴虐の光。

 

しかし、それは騎士の盾に防がれる。

 

歯を食いしばって立ち向かい、その闇を1人で受け切る。

 

いいや、1人ではなかった。

 

非力でありながら歯を食いしばって立ち上がった少女が、彼女の肩を支えていた。

 

「令呪を持って命ずる!」

 

少女の手に宿った三画の魔力リソース。

本来の聖杯戦争で扱われるものよりもスケールダウンしたカルデア式令呪による彼女のサポートは今は儚い少女の盾をほんの一回だけでも闇の奔流に耐えうるだけの宝具へと引き上げた。

 

そして、その少女の作り出した一瞬の隙が勝敗を分けた。

 

「よくやったな嬢ちゃん!そらっ!こいつで終わりだ! 灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)!!!」

 

聖剣を撃ち切ったセイバーを突如現れた細技の枝で出来た巨人が掴みあげ自身の空洞の胸の中に放り込み、そのまま炎上。

セイバーをそのまま丸焼きにし始めるというとんでもない宝具で勝敗は決まった。

 

「……全く、つくづく上手くいかないものだ。まさか“お前”に叛逆されるとは流石の私も読めなかった」

 

「カルデアの魔術師、いや……ブリテンの賢者よ」

 

「貴様とはいずれ私ではない私が縁もあるだろう。なにしろ、私とお前には共通の縁があるからな」

 

「冠位指定、グランドオーダー。その道の先に貴様たちの答えが待っているだろう」

 

最後のサーヴァントであるセイバーの退去と共に、2004年の聖杯戦争は幕を閉じ、キャスターの退去を持って特異点の修復は終わるはずだった。

 

そう、あの男が最後に現れた。

現れてすぐに彼が解説したのはカルデアスに起きた異常の原因。

彼が仕えるものによる人理の焼却、七つの時代におけるターニングポイント毎に歴史を改竄し燃やすことで大事業のための礎にしたということ。

 

そして、彼の口から語られたカルデアの爆破。

 

「全く想定外だったよ、君の足元には念入りに爆弾を仕掛けていたんだからね」

 

「なに、を言ってるのレフ……?」

 

「キミはとっくに死んでいる。よかったじゃないかオルガ、キミが欲しかったレイシフトの適性は死した後にようやく手に入ったのさ!」

 

「うそ、嘘でしょう!?レイン!嘘よね!?」

 

「嘘なわけがないだろう!レインフォートもロマニもキミがもう無事ではない事を知っていて黙っていたのさ!」

 

「だって……!やっとここまで来たのよ!?何回も何回もレインに助けてもらってこれから始まるってところだったのよ!?」

 

冬木の大聖杯の間にオルガマリーの声が木霊する。

 

「まだ、私は何も成せてないのに……!」

 

ここで何を言っても、未来がない彼女にはなんの救いにもならないと。

全ての生き残ったスタッフがわかっていたけれど。

 

『それは違うと何度も言っただろう』

 

『マリー、キミに人がついてきたのはキミが努力をしたからだ。キミが何かを成していないというのは違うと、僕は今度もキミに言っただろう』

 

この先に未来がないとしても、それは彼女の頑張りがなかったことにはならない。

 

先任が亡くなってから必死にまとめ上げたカルデアを否定することには繋がらないのだ。

 

だからこそ───

 

 

「最後までヒステリックになってちゃダメよね」

 

あまりにも穏やかな声で彼女はそう口にした。

 

「……気でも狂ったか?まあいい、最後にキミの宝物へ触れるといい」

 

オルガマリーの身体が宙に浮く。

特異点とカルデアスにつながるゲートが開き、彼女の身体がそこへ近づいていく。

 

「生き残ったカルデア職員全員へ告げます」

 

ゆっくりと彼女の身体がカルデアスに近づいていく。

どうしようもない死がもう目の前まで来ている。

 

「私が不在の間、人理の修復はあなた達に任せます。カルデアの職員としてあなた達に課せられたその役割をしっかりと果たしなさい」

 

「カルデアの臨時所長としてロマニ・アーキマンを任命します。レインフォート特別アドバイザーと……あとはどうせ工房にいるレオナルドと協力してその任を全うするように」

 

「あと、藤丸。大変だと思うけどあとは頼んだわよ」

 

「マシュも、色々とごめんなさい。この冬木でたくさん話せて嬉しかったわ」

 

肉体が、カルデアスに触れた。

触れたその先から分解されていくその痛みに耐えながら、彼女は最後に僕の方を向いた。

 

「頼んだわよ、レイン」

 

「任された、マリー」

 

手を伸ばした。

 

必死に伸ばせば届く距離だった。

 

けれど彼女は最後の最後にその手を払いのけて。

 

「絶対に負けないでね」

 

そう言い残してカルデアスの中へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、特異点Fでの出来事。

そうして始まるのは七つの特異点を駆け抜ける少女たちの物語。

 

聖杯探索───【冠位指定(グランドオーダー)】。

 

その旅の序章はあまりにも苦く、忘れられない記憶となった。




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早くブリテン行きたいなぁ……モルガンとお兄様早く会わないかなぁ……
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