お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

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ええ、何度も言って参りました特異点攻略。

めちゃくちゃ進みましたとも。


第七湖 『現状と黒き騎士王』

それから、カルデアによる人理修復は五つの特異点の攻略を終えた。

 

始まりは西暦1431年のフランス。

記録名【邪竜百年戦争オルレアン】

僕の知る限りの本来のこの時代は百年戦争における休戦期間であり、救国の聖女と呼ばれた【ジャンヌ・ダルク】が火刑に処されてからほどない時期。

束の間の休息が与えられたフランスを襲っていたのは邪竜、ワイバーンによる蹂躙が行われていた。

 

邪竜を率いていたのは憎しみのまま殺戮を愉しむ「竜の魔女」ジャンヌ・ダルクだった。

 

マスター・藤丸立香と彼女の正規サーヴァントとして契約したマシュ・キリエライトは特異点の攻略を開始。

裁定者のサーヴァントであるジャンヌ・ダルクと共に歪んだ歴史を正す旅に出た。

 

復讐者でありながら裁定者という矛盾を抱えた竜の魔女がその軍門に加えていたのは既存のクラスにありながら強制的に狂化を施されたバーサク・サーヴァントに加えて邪竜と名高いファヴニール。

 

一度は撤退を余儀なくされたものの、数々の聖人や竜殺しの逸話をもつサーヴァントをはじめとしたサーヴァントたちの協力を得て彼女たちは邪竜ファヴニールを突破、竜の魔女を聖杯によって召喚していたサーヴァント、ジル・ド・レェ元帥を討ち果たして特異点の攻略を終えた。

 

 

それからというもの次々と攻略をこなし、立香ちゃんとマシュは大きな壁が立ち塞がろうとも現地で得た絆や経験を活かした柔軟性で軽い怪我こそするものの大きな傷を負うことはなかった。

 

カルデアの特異点攻略レポートとして記された記録は現在5つ。

始まりの【邪竜百年戦争オルレアン】

第二特異点の【永続狂気帝国セプテム】

第三特異点の【封鎖終局四海オケアノス】

第四特異点の【死界魔霧都市(ミストシティ)ロンドン】

第五特異点の【北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナム】

この五つの特異点を超えたことで、人類史の焼却という大犯罪を犯した犯人の特定も終えた。

と、いうよりも黒幕本人が出てきたのだ。

 

魔術王ソロモン。

 

第二特異点で現れたレフ・ライノール。

いいや、魔神フラウロスを騙る肉柱が現れたことからその黒幕についての考察はすでに存在していた。

続くオケアノスで現れた海魔フォルネウス、そしてロンドンでマキリが変貌した魔神バルバトス。

 

しかし、その可能性は低いとあくまで僕は読んでいたわけだけれど。

 

実際問題としてソロモンの肉体でそれは現れた。

圧倒的な呪詛、脅威的な霊基、そして付き従える無数の魔神柱はいやでもその正体をソロモンだと認識させてきた。

 

思わずロマニに「どういうことだ!」と怒鳴りつけてしまえば「そんなのボクにもわかるわけないだろう!?」と困惑混じりの怒声が飛んできた。

 

結果としてはほぼ全滅に近い状況にまで追い込まれたものの、魔術王ソロモンを騙るサーヴァントが撤退したことで難を逃れた。

 

僕とロマニ、そしてレオナルドを含めた3人での議論の結果としては『肉体はソロモン王で間違いないがソロモン王ではない』という結論に落ち着くこととなる。

 

続く第五特異点ではまさかまさかの北米大陸を横断するという大舞台となり、特異点の規模もこれまでのものとは比べ物にならないくらい大きなものとなった。

 

記録名【北米神話大戦】とはこの特異点で起きた戦いのログからレオナルドがつけたものだが神話の再現と呼ぶべき戦いが幾度も起きたのだからその名は伊達ではない。

カルナとアルジュナの戦い、クー・フーリン・オルタと影の国の女王スカサハの戦い、離別の呪いによって分たれた二人、女王の愛と愛に応えた狂王にその旅を共にした鋼鉄の白衣の天使。

 

数多の戦いと苦難を乗り越えて第五特異点までの攻略をカルデアは……いいや、マスター・藤丸立香とそのサーヴァントであるマシュ・キリエライトは切り抜けてきた。

 

 

そしてほんの少しの休息を今のカルデアは過ごしているわけだが……

 

「もきゅ……もきゅ……」

 

「…………」

 

「はむ、もきゅ……」

 

「………………」

 

山のように積まれたハンバーガー。

そしてそれを決して下品ではない程度にものすごい勢いで消費していく漆黒のドレスに身を包んだアーサー王。

カルデアの昼下がり、エミヤやブーティカを始めとする食堂の手伝いをしてくれるサーヴァントのおかげで質の高い食事を出してくれる食堂にて熱々の鉄板ハンバーグ定食をいただいていたわけだが。

突如山のような量のハンバーガーをこれでもかとトレイに乗せた漆黒の騎士王が僕の前に座り込んだ。

 

初めこそ僕の方も自分の食事をとっていたわけだが、特に会話をすることもなくかの騎士王相手に席を立つわけにも行かないと思っていたわけだが……

 

無我夢中でハンバーガーを食べ続ける彼女に話しかけることなど出来ずに気がつけば10数分の間ハンバーガーを食べ続ける彼女を眺めているという不思議な空間が出来上がっていた。

 

「……そのように熱烈な視線を向けられては仕方あるまい。一つ食べるか?」

 

「あっ、いや……食べたくてみていたわけじゃなくてね」

 

「む、そうなのか。では少し雑談としよう」

 

僕に差し出したハンバーガーの包装紙を剥いて、そのままその小さな……小さな?口でハンバーガーに齧り付く。

 

「カルデアに召喚されて二つほど三つほどの特異点の攻略に参加したわけだが、お前が攻略に参加しない理由はあるのか?」

 

「僕はマスターではなく、サーヴァントではないからね。ただの魔術師が一人増えたところで足手纏いにしかならないさ」

 

「……よくいう。その身に宿る妖精の力は少なくともこの時代に発生したにしては強すぎる。下手をすれば亜麗クラスの力を持っておきながら足手纏いとは笑わせるな」

 

話しながら先ほどのハンバーガーを食べ終えた彼女は山の中からまた一つハンバーガーを手に取って包装紙を剥いて齧り付く。

 

「特異点に向かわない理由は興味はないが、お前個人にはそこそこ興味があってな」 

 

「……騎士王に興味を持たれるようなことをした覚えはないけれど」

 

「そう謙遜するな。なんでも冬木の私には同じ縁があると言われたそうだな。同じブリテン出身で同じ縁ともなれば一つしかなかろう」

 

手にした最後の一口を口に放り込んで飲み込む。

彼女はおもむろに自身の黒く染まった聖剣を取り出して自身の横に立てかける。

 

「妖姫モルガン、ブリテンにおける私の敵であり……私に聖剣を託した湖の乙女でもある」

 

「彼女と僕に縁があるのはおかしいと思わないかい?僕がこの世界に発生したのはほんの1000年ほど前だよ。君達が活躍した時代からはだいぶ先の話だ」

 

「何か勘違いしているようだが、確かに私の時代にはお前は居なかったな。もし居たのならマーリンが放っておくわけがない。なによりモルガンそのものが放っておかなかっただろう」

 

新しい包みを開けて再びハンバーガーに齧り付く。

もきゅ、もきゅ……と数度齧り付いて再びその口を開いた。

 

「だから私とお前ではモルガンという同じ縁がありながらその縁を結んだ場所は違う……というよりは縁を結んだ世界が違うというべきか?」

 

「妖精郷でその縁を結んだのかどうかまでは知らないが、この私がお前にあの女の影を感じるのだから間違いはないだろう」

 

金色の瞳が、僕を射抜く。

ここで誤魔化すことはできるが、それをすることのメリットを感じられない。

ならば、本当のことをほんの一部だけ明かせばいいだけのことだ。

 

「確かに、僕はヴィヴィアンに縁があるさ。君のように湖の乙女から聖剣を賜ったわけでも湖の乙女の加護を得たわけでもない。ただの半妖精の魔術師さ」

 

「ふん……まあ今日はその辺りでいいだろう。モルガンという女はな、我が姉であり母、そして鏡でもある。人を呪わねば生きてはいけない女だが、王としての気質は私よりも上だろう。円卓の騎士どもの前では決して口にはできないが、私よりもブリテンに愛された女だ」

 

そう口にした彼女は最後の一つの包みをくしゃっと潰した。

 

「お前があの女とどのような関係であったか、問い詰めるつもりはないが……そうだな、たまには私との雑談にも付き合え。同じ縁者を持つもの同士話せることもあるだろう」

 

大量の包装紙の乗ったトレイを手にして彼女は席を立つ。

 

「それに、お前がどうしてあの女の縁者だと気がついたかだが。水鏡を使うだろう?あれはあの女にしか使えない魔術だ。気がつくなという方が無理がある」

 

それだけを言い残して彼女はトレイを厨房に帰して食堂を後にした。

 

「…………こちらのモルガンが水鏡を使ってるとか知るわけないじゃないか」

 

そんなことで僕がモルガンと関係者だとバレるのあんまりじゃないかな。




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今回は第五特異点までスキップしましたがこの後もスキップしていく予定です。
セイバーオルタとの会話を挟みましたがこの後も円卓の騎士をはじめとしたメンバーとの会話を挟んでいけたらなと思っています。
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