お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン 作:今井綾菜
お久しぶりでございます。
皆様方に置かれましては箱イベやレイド戦など沢山の素材と引き換えに林檎や虹林檎を砕いたことと存じ上げます。
FGOも10周年の年、かくいう作者もリチャード神引きと引き換えに福袋は惨敗という悲しき結果の末、ようやく落ち着いてきたところでございます。
新年も三が日に一本くらい……と思っていたらすでに8日、もう1週間経ってるってマジ?という感じですが今年も更新再開でございます。
今回は女王歴2000年のキャメロットから、その一部をすこしだけ。
妖精國ブリテン、女王モルガンが2000年近くに亘る統治を行う決して赦されぬ罪を背負った罪禍の大地。
2000年前、最果てのオークニーからたった1人の騎士を連れてブリテン全土に戦争を仕掛けて勝利した彼女は罪都キャメロットの玉座の間にて自身の騎士からの報告を受けていた。
「……なるほど、状況は理解した。ガウェインは引き続き任務を継続せよ」
「承知致しました」
「ランスロット、トリスタンはガウェインのサポートにあたれ。状況次第ではアーデルハイトも状況の対策に当たらせる」
「それは構わないけれど、彼の出る幕はないよ。なんだったら僕に任せてくれるだけで解決してみせるけれど」
「は?ランスロットテメェ何様だよ。モルガン陛下の決定に文句か?」
「ランスロット、トリスタン、そこまでにしておけ。女王陛下の御前だぞ」
やいやい、といつものような口喧嘩が始まりそうな流れを察してモルガンは自身の隣に立ち尽くす“妖精騎士アーデルハイト”に問いかける。
「お前はどう思う、アーデルハイト」
「……モースの増加という意味ではやはり厄災が近いのも影響はしているかと。今年は陛下の統治が始まってから2000年目……あの大厄災から20回目の厄災の年でもあります」
「……お前もそう思うか。ならばほぼ間違いはないだろう。モースは全て消し飛ばせばいいだけだが、そのために我が騎士たちを逐一遠征させるのも手間がかかる。此度の厄災がどのようなものかいまだに把握できないのはいささか骨が折れるが……厄災の討滅くらいならばお前がいれば問題ないだろう」
「陛下にご信頼いただけるのは身に余る光栄で御座いますが……1番被害が少ないのは陛下による《水鏡》でありましょう」
「大厄災が近い。その兆候がある以上あまり蓄積した魔力の放出はしたくないのもあるのだ」
これまで幾度となく行われた女王と妖精騎士のブリーフィング。
あの女王モルガンが“唯一、意見を求める”存在。
妖精騎士アーデルハイト。
モルガンがオークニーから侵略戦争を仕掛けた際に彼女の右腕として支え続け、2000年経った今もこうして隣にいる。
女王モルガンがこの国で唯一、絶対的な信頼を向ける相手だった。
「いざとなれば《水鏡》の使用も検討している……してはいるが」
「出来るだけこの時代で対処してしまいたい、というわけですか」
「……お兄様の生きたあの時代にできるだけ厄災は跳ばしたくない、といえばお前は笑うか?」
「滅相もありません。であるならば、私も全霊を尽くしましょう」
「霊剣シャスティフォル、お兄様から託されたその剣の価値をこのブリテンに示してみせるがいい」
「御心のままに」
結局、過去のブリテンに厄災を跳ばしたところで対処するのは過去の自分。
救世主と呼ばれたトネリコと仲間たちが祓うことになるのだが、それはそれ。
氷の女王と呼ばれるモルガンにも感情というものはある。
もちろん、ある程度の厄災は過去へ送り出して自分のスキルアップを目指してはいるが送りすぎてあの土地が壊れてしまうのは忍びなかった。
と、いうよりは。
(……万が一、オークニーやあのログハウスが壊れてしまったら困ります)
彼女の中に残る、暖かく優しい思い出と唯一残った帰る場所を如何なる理由であっても壊したくない、という個人的な理由ではあるのだが。
それはそれとして、それ以外にも理由はある。
この時代における厄災への対応能力が低いことも彼女の懸念点ではあった。
長い間共にいるアーデルハイト、そしてガウェイン、ランスロット、トリスタンの4人の妖精騎士。
個々の力は強力だが、協調性がなく、アーデルハイトの指揮がなければ各々やりたいことをやってしまう。
……正確にいうならばランスロットとトリスタンがガウェインの言うことを聞かない、と言うことでもあるわけだが。
「会議はここまでだ。我が騎士たち、その役割を果たすがいい」
「妖精騎士ガウェイン、女王陛下の御心のままに」
「妖精騎士ランスロット、陛下の御心のままに」
「妖精騎士トリスタン、女王陛下の御心のままに」
モルガンが玉座から立ち上がる。
立ち去る彼女の後をアーデルハイトが付き添い、その後ろ姿が見えなくなってから妖精騎士たちも立ち上がった。
「ひとまず、私は任務を続行する。情報の共有は騎士を走らせよう」
「……しょうがないな。陛下の命令なら今回はキミの言うことに従おう」
「……まあ、仕方ないわね。いつまで経ってもモルガン陛下とアーデルハイトにおんぶに抱っこじゃカッコもつかないし」
話し声と共に甲冑とヒールの音が玉座の間から離れていく。
妖精円卓会議、先程まで騎士と女王の声が響いていた冬の玉座はイヤなほど静まり返っていた。
***
「……それでは私はここで、何かあればすぐにお呼びください」
「ああ、ありがとう」
モルガンの私室、その部屋の前でアーデルハイトはモルガンに別れを告げる。
彼女が部屋に入るのを見届けて妖精騎士アーデルハイトは踵を返す。
静かな廊下に“彼”の足音だけが響く。
「…………」
妖精騎士“アーデルハイト”
妖精円卓に於けるモルガンから与えられた騎士のギフト。
その“名”の重みを“彼”は何よりも理解している。
かつて、救世主トネリコが名乗っていた名。
そして、かつての主が名乗ることのなかったもう一つの名。
“彼”はかつての主……雨の国の王子であったレインフォートの名を騎士としての銘として賜っている。
かつて敬愛し、絶対の忠誠を尽くすと決めた主だった。
「…………」
このブリテンを侵攻するとモルガンが決めた時、それに付き添うことになったのが始まりだった。
以来、2000年に及ぶ忠誠をかつての主の妹君に誓っている。
その手に持つのはレインフォートが手にしていた霊剣。
この妖精國において並ぶほどのものがないほど神秘を重ねた決して朽ちることのない限りなく聖剣に近い霊剣。
この剣を託されたその時から……この身の使い道は……
「おーい!アーデルハイト!」
廊下の先から駆け寄ってくるヒールの音とつい先程まで他の騎士たちに悪態をついていた声が、機嫌良さそうに自身の名を呼ぶ声に音が聞こえた方へ振り向けば、階段からこちらへ勢いよく上がってくる妖精騎士トリスタンの姿があった。
「……トリスタン、どうしました?」
「どうしました……?じゃないわよ。今日は女王の後継者としての授業をするって言ってたの貴方でしょ?お母様のお付きの時間が終わったならこっちに付き合ってよね」
「そういえばそうでしたね。陛下に似て勤勉なのはいいことです」
「そ、そう?少しでもお母様に相応しい騎士と後継者にならないとだし……ま、まあ……当然と言えば当然よね?」
どこか照れたような、そんな表情を浮かべるトリスタンへアーデルハイトは笑いかけた。
「では、今日は少しだけ難しい話をしましょうか。なに、貴方の母君……陛下も兄であった方から教わった内容です」
「なにそれ!昔のお母様と同じことを教えてくれるの!?サイッコーじゃん!それじゃあいつも通りに図書館に行きましょう!ほらっ!はやく!」
「そう焦らないで……全く、そんなところまで昔のあの方に似なくても」
妖精騎士アーデルハイト。
女王モルガンに仕えるはじまりの妖精騎士であり。
このブリテンにおいては女王モルガンの権威の象徴であり。
女王モルガンに唯一、絶対的な信頼をおかれた騎士でもあり。
そして、妖精騎士トリスタンにとっては“兄”のような存在でもある。
新キャラクター……もとい、この小説における“あり得ざる妖精騎士”が登場した回でした。
妖精騎士アーデルハイト、女王モルガンに絶対的な信頼を向けられている妖精騎士。
彼女と彼の詳しいお話はもう少し後にお待ちください。
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新年ですし、お年玉と思って高評価と感想くれてもいいのよ?
あっ、でも福袋の結果だけの感想はダメですよ?
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せっかくの感想が運営対応されて見れなくなるので!