お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

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第九湖 『銀の騎士と雨の魔術師』

カルデアはその後、第六特異点の攻略を終了した。

記録名【神聖円卓領域キャメロット】

砂漠に鎮座するエジプト王、神王オジマンディアスとニトクリスの率いる神獣の軍勢。

山岳地帯の民と共に生きる山の翁と住民たち。

そして、聖地エルサレムを占拠して聖都キャメロットへと作り変えた《獅子王》と彼女に付き従う円卓の騎士たち。

獅子王によって行われていた聖都への門戸を潜るための『聖抜の儀』

それは魔術王ソロモンによる人理焼却を乗り越えるための聖槍による《人類》の保管。

清く、正しく、純白で一切の間違いを犯さない魂のみを選別し彼女は聖都キャメロット……正確には聖槍ロンゴミニアドへと招き、管理する。

そうして、彼女に……いや、ロンゴミニアドに選ばれなかった人間たちは『聖罰の儀』と呼ばれる虐殺によってその命を刈り取られるのだった。

 

それが、この特異点における概要。

 

僕たちカルデアが乗り越える1番最初の大きな壁だった。

 

それまでの特異点が楽だったわけではない。

 

ただ、問題だったのは獅子王による《ギフト》を与えられた円卓の騎士たち。

【不夜】のガウェイン

【反転】のトリスタン

【暴走】のモードレッド

【凄裂】のランスロット

ただでさえ一騎当千の円卓の騎士。

それが、本来の性格とは相反する……またはその性格をより苛烈にするギフトが与えられていた。

 

……ああ、本当にこの時だけは僕も出撃していて良かったと心の底から思ったよ。

 

《水鏡》の魔術がなければ本当に全滅もありえる状況だったからね。

 

太陽の騎士ガウェイン、彼に与えられた【不夜】のギフトはあまりにも強力だった。

彼を最強のセイバーたらしめる聖者の数字と呼ばれるスキル。

午前9時から正午までの3時間、午後3時から日没までの3時間が彼の力が3倍になるという破格のスキル。

彼に与えられた【不夜】のギフトはそれを常時発動させるものだった。

 

円卓の騎士ガウェイン、彼のいる戦場こそ太陽の顕現する場所である。

 

そして、ここでの逃避で使用した《水鏡》が原因で彼ら円卓の騎士に僕が狙われる原因にもなってしまったわけだが……

 

どうやら僕の使う魔術のほとんどが汎人類史におけるモルガンと酷似……いや、あの反転したアーサー王曰く同じものらしい。

なにそれ知らない……とも言ってられる状況ではなく、その後も円卓の騎士を相手に壮絶な戦いを繰り返すことになる。

 

山の翁が守護する山間部にある村への『聖槍』による攻撃。

 

モードレッドを相手にする防衛戦。

 

トリスタンを相手にした迎撃戦。

 

ランスロットと手を組むための交流戦。

 

円卓の騎士たちを相手にするために初代の山の翁が鎮座する霊廊へと赴き、ファラオ・オジマンディアスに協力を仰ぎ、アトラス院の遺産でこの先に必要な情報を得た。

そうして、作戦決行前の最後の夜。

僕は白銀の騎士と夜空を見つめていた。

 

「……レイン、貴方が彼の魔女との縁者であることは円卓の騎士たちは気づいているでしょう。おそらく、我が王を前にした時、我が王は一目で貴方がモルガンの縁者であることを見抜くはずです」

 

「そうだろうね、カルデアにいる反転した騎士王にも言われたよ」

 

「そうでしたか、ですが……使う魔術や雰囲気だけ、というわけではないのです。貴方に宿る魂、半妖精とは言いますが貴方の妖精としてのランクは亜麗のそれに近い。その妖精としての部分が、かの湖の乙女に近しいのです」

 

……私が妖精に詳しいわけではなく、ある魔術師の受け売りですが。

と、ルキウス……ベディヴィエールは笑う。

 

「妖精が神秘による事象の具現化をするのではなく、その類まれなる知識の方向性を魔術に向ける。私たちの時代におけるモルガンはマーリンと並ぶ魔術における天才でしたが、貴方は確かに……彼らに肩を並べるほどの天才なのでしょう。でなければ、この数回の戦闘経験のみで円卓の騎士たちの宝具を魔術として落とし込むなど出来ませんから」

 

円卓の騎士に対抗するために編み出した四つの魔術。

 

レイン・クラレント。

 

ティア・フェイルノート。

 

ルクス・アロンダイト

 

プロミネンス・ガラティーン

 

どれも作り出したばかりでまだまだ調整が必要だが、並みのサーヴァント相手ならば戦えるだけの魔術である自負はある。

しかし、相手は円卓の騎士。

セイバーやアーチャークラスに付与された対魔力スキルのせいで魔術に対する耐性があるのは厄介だった。

 

「彼らの宝具を魔術に落とし込んだなんて、そんな大それたことはできないさ。あくまで彼らの宝具を真似ただけの擬似宝具とも言える魔術を構築したにすぎないよ。武器は多い方がいい、君のその腕は……真似ようにも真似できないようだけど」

 

「……この右腕は、私の贖罪の証なのです。私の背負ってしまった最大の罪を償うために、私はここにいる。私は……我が王に会うためにキャメロットに向かわなければならないのです」

 

「…………そうか。君のその右腕の光がなんなのか、僕には大体予測はついてる。君がどんな結末を辿った末にそうなってしまったのかも、理解はしているつもりだ。だから、聞かせてほしい」

 

彼の右腕、その光を幾度と見たからこそ……

 

「君は3度目を躊躇ったのに、どうして4度目のチャンスを望む?」

 

「………………」

 

その光を、理想の王を失いたくないという過ちだったはずだ。

だったら、その選択をした彼はなぜ長きにわたる旅の果てに4度目の奇跡を掴もうとしているのか。

 

「答えは単純なことなのです」

 

ただその質問に、彼はただまっすぐに澱みなく答えた。

 

「私は……我が王が人でないものになることが耐えられなかった。私の過ちのせいであのお方は聖槍の女神と化してしまった。叶わぬ過ちであった聖剣の返還をもって……あのお方を人に戻せるのなら。私の身が砕け散ろうともその責務を果たすために、最後まで歩き続けるでしょう」

 

輝けるアガートラム、その忠義は……ただ一度の過ちの清算のために。

 

最後まで、騎士王をただ1人の『人間』として認め……たった一度だけ見たあの微笑みを取り戻すために、すでに朽ち果てる寸前の肉体をもって最後の忠義を果たすために歩き続ける、清廉なる騎士の姿だった。

 

「あなたは……強いね」

 

「そうでもありませんよ。ただ、そうですね……私の事を知ったのだから。貴方の話も聞かせて欲しい。レインフォート卿、貴方のブリテンの話を」

 

異なる世界の同じ大地、辿った歴史が違う人の世界と妖精の世界。

 

妖精にはできなかった過ちの清算のために歩き続ける彼へと僕は口を開いた。

 

せめて死に征く異世界の友人への手向けとなれればと願いながら。




キャメロット編は次回で終わります。
バビロニアもサクッと終わらせて1.5部はカットカット……


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