お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

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本作は劇場版ソロモンとゲーム版ソロモンを織り交ぜたなんかやべー話で進行していきます。
と、言うのも藤丸&マシュは劇場版通りにゲーティアの元へ。
レインは原作通りに魔神柱の刈り取りに向かう予定です。


第三節『反撃の狼煙』

「全く、お互いに嬉しくない再会だな。レインフォート」

 

「お前がいるだろうってことはわかっていたけど、真っ先に出迎えてくれるとは思っていなかったよ」

 

「私の失態、唯一の仕事のやり残しがお前たちの排除だ。カルデア、ローマ二度の失態を我らが王はお赦しくださった。あまつさえ、挽回の機会としてここでお前たちを迎え撃つ使命まで下さってな」

 

「そうか、だったらここでまた倒れろ。この子たちを止める役を担うものとして、お前には荷が重い」

 

「貴様……!」

 

今までなら、いや……ローマでならここで自分の手の内を見せていただろう。

だが、今の彼は違う。

自分の陣地にいるからか、その身に纏う魔力も余裕も圧倒的に違う。

 

「レフ教授!貴方は……!貴方は最初から人類を滅ぼすために来たのですか……!」

 

「勿論だとも、全てはソロモン王の時代から始まった計画だ。魔術の王から別れた魔術師はこの時代のためにあらゆる時代まで生き延びた。魔術師の家系に伝わる原初の指令、そうあれかしと定められた絶対の教え。冠位指定……グランドオーダー、カルデアにとっては人理の保障であり……我らにとっては人理の焼却だった」

 

「3000年も前から……ずっと、その教えを守ってきたっていうの……?」

 

「私は2015年……最後の担当だった。私がソロモンの残した種であり、それを自覚した瞬間、諸君らの未来は終わりを告げた。回収する熱量(資源)はここまでと決まっていたからね」

 

だが、と彼は強く言い放ち杖を大地に叩きつける。

それに呼応して現れるのは無数の魔神柱たち、彼を囲うように僕たちを警戒するように蠢くそれに僕は注意を払いながら、それでもレフを見つめた。

 

「私の失態だったのか?いや違う、それは私の観察眼をすり抜けたものかいたからだ。そうだろう、ロマニ・アーキマン!それともそうなるように私の前では道化を演じていたのかな?だとしたら残念だ!私は君に対して友情を感じていたのにねえ!!」

 

それは怒り、ではあったのだろう。

明らかな敵意、自身の計画の破綻に直結してしまった人間への明確な憎悪。

だが、それでも……彼が感じていたと言うそれは……

 

「『お前に(キミに)ロマニの人間性を見抜けるわけがないだろう』」

 

『何しろこの男は私が召喚されるまで誰1人として信用していなかったんだから』

 

「何かに取り憑かれるように、ただひたすらに学んだ10年だっただろう。人ではない僕には瞬きほどの時間だが……それでも彼にとっては誰も信用せず、誰もアテにせず、誰にも相談できない。それでも、きっとこの時のために走り続けた10年だったはずだ」

 

『1分たりとも休息のなかった、自由の地獄だ。そんな男が……たとえ学友であろうとも、その本性など見せるものか』

 

「少なくとも、一緒にサボって菓子を食べたり夜通し馬鹿騒ぎしたことはないだろう?お前はそもそも、信用なんてされていなかったのさ」

 

思い返せば、カルデアに来てから真っ先に友になったのはロマニだった。

千里を見通すこの眼で、彼のことは何度も見ていた。

ただひたすらに、学び、学び、学び、学び続けるだけの人生だった。

あの甘い和菓子を好きになったのも、最初はただの栄養補給だった。

脳に糖分を回すために効率的だったから、それがいつしか好みの味に変わり、それを好きなものとして食べるようになった。

アイドルの応援だってそうだ、耳に残った音の一つ、それがいつしか彼が応援したいものに変わっていった。

マーリンが中の人だったと言う残念な結果に落ち着いてしまったが、それだって彼を構成する人としての感情だった。

 

「私とてその男の不審さには注意を払っていたとも。だからこそ、管制室の爆破で死ぬように動いたと言うのに……」

 

レフの杖に、風が集う。

おそらく、収束した風による斬撃だと即座に判断して借り受けた聖剣を展開し、打ち出されたそれを叩き落とした。

 

「己の不始末は、ここで片をつける」

 

「……出来るものなら、やってみせろよ」

 

「……我が名はフラウロス!72の魔神のうち、情報を司るもの!貴様らがどれだけ成長したか、楽しませてもらおう!」

 

彼を囲んでいた魔神柱たちが一斉に起動する。

無数に付いているその瞳の一つ一つが一斉に攻撃魔術を展開し始める。

 

「立香ちゃん、やつへの攻撃は任せる。その簡易召喚もここで使いすぎないように!」

 

「わかりました……!マシュ!」

 

「はい!先輩!!」

 

魔術回路に雨を落とす。

妖精紋様へ激流が流れる。

 

体内を魔力()が流れる感覚に満たされて、僕は即座に目の前へゲートを作る。

 

跳んだのは一つ目の柱の目前。

 

いつか、アルトリア・オルタがやっていた聖剣の簡易開放。

宝具の真名解放をすることなく純粋な魔力の斬撃を放出する魔力放出による光の斬撃。

 

ああ、魔力放出のやり方なんてとっくの昔に会得している。

 

エクスカリバーに魔力を流す、蒼く揺らめく魔力をそのままに、巨大な魔力の斬撃として放出する……!

 

「これで……一つ目ッ!!」

 

青い光に包まれた漆黒の斬撃は最も容易く魔神の一柱を呑み込んで消し去っていく。

消費した魔力はそこそこ多い、今使える魔力をしてあと20発程度。

そんな程度では全然足りないと理解してはいるが……

 

「レフを倒すまでには十分な火力だろう……!」

 

聖剣の光ばかり使ってなどいられない。

使える魔術の中から、火力に特化したものを検索する。

指定するものは範囲攻撃が出来て、火力が高いもの。

 

検索、検索、検索、該当。

 

第六特異点で会得した『ティア・フェイルノート』。

 

「装填、24門並列展開……!」

 

光り輝く涙の幻弓、それが魔神の宙域へと展開される。

 

「レインフォート……貴様っ!」

 

「だから言っただろう!出来るものならやって見せろと!」

 

魔神柱が僕に殺到する。

ああ、それでいい……僕の狙いは最初からそれだ。

こっちを見ろ、レフ・ライノール。

お前にとっての死神はずっと後ろにいるぞ……!

 

「───告げる!」

 

「汝の身は我が元に、我が命運は汝の剣に!」

 

「聖杯の寄るべに従い、人理の轍より答えよ!」

 

カルデアによる召喚術式、それを礼装に落とし込んでこの宙域での召喚を可能とした立香ちゃんによる英霊召喚。

 

「汝は星見の言霊を纏う七天!」

 

「切り裂くは乙女の涙、大地を濡らせ……!ティア・フェイルノート!」

 

「抑止の輪より来たれ……!天秤の守り手よ!!!」

 

天から降り注ぐ無数の水の斬撃と地の底から雷が立ち上るのは同時だった。

人理の守護者として召喚したのは赤き征服王、その成り立ち。

跨る愛馬はそれ個人が確固たる英霊、名馬ブケファラス。

彼の纏う雷こそかの主神のイカズチ。

万物を焼き払う絶対の理……!

 

「さあ行こう!ブケファラス!!!」

 

突撃するその光景はまさに雷の如く。

魔神柱の隙間を駆けていくその姿は彼の大王の如し。

 

「チッ!英霊召喚だと……!」

 

迫り来る水の刃を避け、降り注ぐ雷を避けながらレフはその理論を見破る。

 

「装着者の神経を使い捨てにした礼装での簡易召喚とはね!だが、無理なシステムには欠点が存在する……!」

 

風の刃、再びそれが放たれるが、それは立香ちゃんが装備している礼装による守護によって弾かれる。

それはカルデアに召喚されたキャスターのサーヴァントたちが彼女を守るためにその技術のありったけを詰め込んだ礼装だ。

無詠唱の風の魔術程度弾けなくてどうする……!

 

「一端の真似を……!」

 

「検索、該当……28門多重展開!」

 

「だが出し惜しんだな!いくら貴様が頑張ったところでたった2人では……」

 

ああ、そうだ。

たった2人?バカを言うな。

こっちにいるのは7つの特異点を超えてきた歴戦のマスターだ。

数多の英霊と絆を結んできた、人類最後のマスターだ。

 

「…………っ!」

 

レフに宿る第六感が警鐘を鳴らす。

瞬間、刃が自分の首のあった位置を通りすぎる。

後一瞬、反応が遅れていたら自分の首は胴体から分たれていただろう。

暗殺者のサーヴァント、気配遮断による完全に気配を殺しての暗殺行為。

ほんの数回、剣を交えて暗殺者……シャルル・アンリ・サンソンは後退する。

 

「流石に一筋縄では行かないか」

 

「任せなよ!暗雲よ、雷よ、父よ、見るが良い!始まりの蹂躙制覇(ブケファラス)!!」

 

暗殺者による不意打ち、それに続く宝具の解放。

宝具として放たれた雷撃は魔神の柱を砕き、レフへと落ちていく。

 

「この程度の火力で……!」

 

だが、それでもレフは動じない。

砕かれたのなら弾き返す、当然の行動だ。

しかし、それでも相手は若き征服王。

その一瞬の隙を、視界が遮られるその瞬間を見逃さない……!

 

ブケファラスを乗り捨て、その剣を構えて飛び込む。

雷を纏い、誰よりも速くその一閃をレフの胸へと叩き込んだ。

 

だが、それだけでは終わらない。

 

「地獄の具現こそ、不徳の報いに相応しい……」

 

次いで現れたのはワラキア公国の領主、『串刺し公』の名で恐れられたヴラド3世。

その宝具はまさに正義の一撃、対象の不義や堕落の罪に応じてその痛みを増す呪いと鉄槌の拷問魔城(ドラクリヤ)

 

串刺城塞(カズィクル・ベイ)!!!」

 

真名解放、その瞬間に現れたるは串刺しに相応しい無数の槍。

不義を働くもの、暴力を働くもの、逃げるものを決して逃さない断罪の槍。

 

「逃がすものか……!レイン・クラレント、一斉掃射……!!」

 

後退するレフを逃さないように、蒼き雷の雨が降り注ぐ。

魔神柱を串刺しにしながらレフへと至ったそれはその身を拘束して……

その直後、大地から巨大なギロチンが現れた。

 

「ハ、ハハッ!ハハハハハッ!これが宝具か……!いいぞ……やるがいい!」

 

その言葉を最後に、彼の首が処刑台の刃によって落とされた。

 

死は明日への希望なり(ラモール・エスポワール)……執行終了」

 

彼の首を落としたことで、呼び出した全てのサーヴァントは英霊の座へと帰還した。

 

「レフ・ライノール……レフ教授の消滅を確認しました」

 

立香ちゃんのその言葉と共に、僕も彼女の近くへと降り立つ。

まだ近くに蔓延る魔神の気配は消えてはいないが、それでも一つ目の段階をクリアしてもいいかと考えていると……

 

「うぐっ……!」

 

排気音と共に立香ちゃんが膝をつく。

原因はわかっている、礼装による英霊召喚の代償だろう。

神経を擬似魔術回路として使用している以上、召喚が終わればその代償が来るのはわかりきっていた。

 

「大丈夫かい、立香ちゃん」

 

「だ、大丈夫です……!まだ全然、大したことありません!それにこれで、終わりましたもんね」

 

マシュが立香ちゃんを立たせて先へ進もうと一歩踏み出したその時。

 

「残念だが、それは早計だ」

 

遠くから、再びあの声が響いた。

 

「奥の手のうちの3本を使っての勝利、おめでとう!心底頭に来たが、そこは評価しよう。良く成長したものだ、藤丸立香君!だが、無意味だ。無意味なのだよ、我々は無尽蔵なのだから」

 

「チッ…………!」

 

その言葉にどうもイラつき、手に持った聖剣に魔力を流す。

簡易開放、光の斬撃を受けて斬り裂かれても、何食わぬ顔で新しい柱となって出現する。

 

「全く、短気だなレインフォート!だが、これでわかっただろう?いくら倒したところで我々は倒せない。さあ!現れよ、同胞たちよ!!」

 

切り倒した、雷で焼かれた、串刺しにされた魔神柱達が再び建ち上がる。

それは悪夢のような光景、いくら倒しても復活する。

それは僕たちカルデアを嘲笑っているかのようにすら思える。

 

「我々は無尽蔵、72柱の魔神柱とは個体名ではなく存在そのもの。常に72の魔神でいると言うことが我々なのだ……!」

 

嘲笑うように、柱の一つからその肉体をこちらに出してレフは語る。

 

「わからないかなカルデアの諸君、要は72の御柱全てを殺さなければ私は殺せないということさ!」

 

フィンガースナップと共に大地が揺れる。

通信先のカルデアから衝撃音と共に慌ただしい音声が飛んでくる。

カルデアの崩壊、それは僕たちの敗北を意味する。

たった5分、カルデアの崩壊までに全ての魔神を倒すためには圧倒的な火力が必要だが……

 

「ハハハハハッ!不可能だ!それだけの火力、それだけの軍勢、我ら全ての魔神を刈り取るだけの力が何処にある!?貴様達は自ら墓場に飛び込んだのさ!」

 

「…………っ!」

 

思わず、手に持った聖剣を握りしめた。

今ここで、聖剣の解放をしたとしても一撃で全ての魔神を消しとばすことは叶わない。

 

「第一特異点、溶鉱炉ナベリウス」

 

「第二特異点、情報室フラウロス」

 

「第三特異点、観測場フォルネウス」

 

「第四特異点、管制塔バルバトス」

 

「第五特異点、兵装舎ハルファス」

 

「第六特異点、視覚星アモン」

 

「第七特異点、生命院サブナック」

 

これまでカルデアが乗り越えてきた特異点。

その全てに対応した魔神柱の領域が存在する。

 

どうやったってこの戦力では突破できない。

聖剣を解放したって彼女達を守りながらではその先へは行けない。

 

「最後のマスター、藤丸立香よ。お前の戦いは実に愉快だった。ここまできた徒労を無意味に終わる惨めさを、私たちは評価したとも。ありがとう!そして、さようならだ。カルデア諸共、燃え尽きた人類の跡を追うがいい」

 

状況は、この上なく絶望的だった。

切り返すための作戦なんてこの後に及んで存在しなかった。

ここで終わり、これでおしまい。

一年に及ぶ人理修復の旅は、何の意味もなく終わる。

 

レフの笑い声だけが、この宙域(ソラ)に鳴り響く

 

 

 

「いいえ、その証左こそが今この場に立つ彼ら……あなた達魔神が不要と、辿り着くはずがないと蔑んだか弱き人間」

 

誰かの声が、この宙域(ソラ)を貫いた。

そして、すぐ側にその声の正体は降り立つ。

 

「あらゆる生命が、一瞬のうちに燃え尽きたとしても……結末は誰の手にも渡っていないと、空を睨んだ」

 

その姿は見覚えがあった。

カルデアにも彼女は確かに召喚されていた。

 

「ジャンヌ……!」

 

「バカな!バカなバカな!!!」

 

蒼き光が、このソラを埋め尽くす。

そのどれもが、彼女が縁を繋いだ英霊達。

時代も時空も何もかもを超えて、百以上にも及ぶ英霊達がこの領域に集っていく。

 

「さあ、顔を上げて、藤丸、マシュ。これは私たちによる、未来を取り戻す物語だったでしょう?」

 

ありとあらゆる世界から集った英霊達。

それは誰かに強制されたわけではない。

誰かに喚ばれたわけではない。

 

彼ら自身の意思で、この場に集ったのだ。

 

「聞け!この領域に集いし、一騎当千、万夫不当の英霊達よ!!!」

 

「本来相容れぬ敵同士、本来交わらない時代のものであっても、今は互いに背中を預けよ!」

 

「我が真名はジャンヌ・ダルク!主の御名の元に貴公らの盾となろう!!!」

 

声は高らかに、この領域に集うすべての英霊達へ問いかける。

誰もが、その言葉に頷く、誰もがここに集った意味を知っている。

救国の聖女、ジャンヌ・ダルク。

彼女のその言葉と共に反撃の狼煙が上がった。

 




作者、このジャンヌのセリフ見た時震えが止まらなくてですね。
だって、これを聞いたのはFGOのトレーラームービーだったわけで、最終決戦のこのタイミングでこのセリフを言うとか当時全く思ってませんでしたね。
今年で終局特異点から9年の年、時間が経つのは早いものですね。

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お兄様とモルガンが再開するのを楽しみに待ってるそこの読者のあなた、高評価ポチッと押してくれるとやる気がめちゃくちゃ上がるのでよろしくお願いします。
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