お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン 作:今井綾菜
とはいっても詳しい描写なんてまだされてないガバエミュなのでそこまで長くはないです。
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人理漂白の事件を解決し、カルデアのスタッフたちはカルデアに来る前の時間に戻された。
……のだが、なんの因果かカルデアは新体制として再始動。
僕たちは記憶もあの時の地続きのまま新たな脅威に立ち向かうためオルガマリーを所長として舵を切り始めたのだ。
「あっ、わたしの役割終わったみたい」
アルトリア・キャスター。
僕の娘としてこのカルデアに所属する彼女は突然そんなことを言い始めたのだった。
「……役割が終わったというと、聖剣の騎士の概念としてですか?」
「うん、カルデアに約束の王が召喚されたっぽい?」
「正真正銘のアーサー王がついに召喚されたわけか」
などと話していたのは1ヶ月ほど前。
『役割も終わったし、自由に生きるぞー!』と張り切っていたアルトリアを微笑ましく見守っていた僕と雨のトネリコだったのだが、問題はそこではない。
そう、僕は現在スタッフの立場よりもマスターとして立香ちゃんと特異点に向かうことが多くなったのだが、契約しているサーヴァントは変わらずに妖精國由来のモルガンとアルトリアとメリュジーヌにバーヴァン・シーの4騎。
立香ちゃんが新たに契約したサーヴァントのことは一応チェックはするものの、今回はアルトリアの言っていたこともあってオルタやランサーではない正真正銘のアルトリア・ペンドラゴンが召喚されたのだろうと思っていたのだ。
たった今、この瞬間までは。
「エクスカリバーの気配を辿って来てみれば、まさか亜麗の聖剣使いと巡り会えるとは」
「───スッウゥゥゥゥ」
違った。
思っていたのと違った。
おのれゲーティア、いやレフ。
冠位選定の時に僕を見て薄ら笑いを浮かべていたのはこれを見越してか。
『これくらいの意趣返しは許容したまえ』
黙れイマジナリーソロモン。
なんの紹介も無しにいなくなって許されると思っているのか。
目の前にいるのは青きドレスのアルトリア・ペンドラゴンではなかった。
白きドレスに身を包んだまさに淑女と呼ぶに相応しい聖剣の王。
その手に持つ聖剣もアルトリア・オルタのもつエクスカリバーとは違うさらに上位の聖剣。
「はじめまして、ではありませんね。彼の王に召喚された時にひと目見ることができましたから。ですが、同じ聖剣の王として自己紹介を」
彼女はドレスを摘み、完璧なカーテシーと共に自身の名を告げた。
「私はロード・ログレス。詳しいことは私のマテリアルからご覧ください。お会いできて光栄です、異聞世界ブリテンの聖剣の王」
「こちらこそ、お会いできて光栄です。約束の聖剣使いの王、貴女が召喚されたことは我が娘から伺っていたのにご挨拶が遅れ申し訳ございません」
彼女に倣うように、僕も彼女に挨拶を返す。
形式的な挨拶を終えてお互いに顔を合わせるとまず思ったのは他の彼女たちよりも合わせる視線が高いこと。
どちらかといえばアルトリア・ランサーに少し近い視線の高さだ。
「ふふっ、召喚されてから実はずっとあなたを探していたんですよ?」
「それは……本当に申し訳ない」
「いえ、お気になさらず。私も本腰を入れて探せばすぐに見つけられたのにそれをしていなかっただけですので」
くすくす、と控えめに笑う。
今までにないタイプのアルトリア……もとい、ロード・ログレスの態度に若干困惑をしつつも話題を広げようと思考をフル回転させる。
しかし、何よりも先に訂正しなければならないことがひとつ。
「聖剣の王、と呼んでいただきましたが……僕はブリテンの王ではなかったのです」
「……?そうなのですか?エクスカリバーを持った聖剣使いがブリテンの王になるのはどの歴史でも同じだと思っていましたが?現に異世界の私は男性であるようですし」
「ええ、僕は“聖剣を持って妖精たちを統べる者”として生まれましたが僕のブリテンには聖剣がなかったので」
「…………なんと」
聖剣がなかった。
正しくいうのならば“そのように設定されていた”と言った方が正しい。
空想樹セイファートによって演算された僕たちのブリテン。
異聞帯の作成方針は『童話/幻想によるメリー・バッドエンド』だったか。
思い出すだけで吐き気がするが、それはそれ。
今目の前にいる彼女には関係のないことだ。
「事情は紆余曲折ありましたが、ブリテンを治めていたのは僕の妹のモルガンでした。貴女に分かりやすくいうのならばヴィヴィアンが治めていた、といったら分かりやすいでしょうか」
「───なるほど」
すぅ……と彼女の目が細くなる。
しかし、彼女の口から出たのは恨みや貶すような言葉ではなく。
「彼女の国は、どうでしたか?」
「───そうだな」
思い出すのはあの崩壊が起きるまでのブリテン。
彼女が滅びの運命から必死になって存続させた悲劇の大地。
「……美しい国ではあったように思う。僕が言っても身内贔屓にはなってしまうかもしれないけれどね」
「いえ、貴方がそういうのならきっとそうだったのでしょう。結果がどうであれ、その優しい瞳を見れば分かります。それに───」
彼女は何かを思い出したかのように優しく微笑んだ。
まるで、なにかいいものを見たというようなそんな瞳で。
「“あの”モルガンが……姉上があのように優しい笑みを浮かべていたのです。それだけで、ここにいるあのひとがどのような人物なのかは理解しているつもりでしたから」
その言葉を最後に、ロード・ログレスは『今度はゆっくりお茶でも楽しみながら話しましょう』と言い残して立ち去ってしまった。
思わぬ邂逅というか、完全に予定外の出会いだったけれど他の汎人類史のアルトリアと同じように従兄妹宣言して来なかっただけ良かったというか。
いや、彼女にまでそんなことを言われたら頭痛で4〜5日寝込んでしまってもおかしくなかった。
「レーイーンー!」
背後から聞き慣れた声と振り返った瞬間に飛び込んでくるお転婆娘の姿。
咄嗟に抱き止めて着地させると満面の笑みを浮かべていた。
「急に飛びついてくるんじゃないと何度も言っているだろう!」
「えー!いいじゃん減るもんじゃないんだし。それに絶対落とさないでしょー?」
「それはそうけど危ないといつもいつも……」
「まあまあ!それよりも、今のログレス?」
歩き去っていった白いドレスの彼女の背を見つめてアルトリアは首を傾げる。
ログレス、と随分と気安い呼び方をしているなと思いながらもその問いかけに頷いた。
「ああ、召喚されてから一度も会っていなかったからね。彼女に声をかけられる形で挨拶をしてたところだよ」
「ふーん?どうだった?彼女」
「どうだったもなにも……キミは言わずもがなアヴァロンのアルトリアよりもお淑やかな王様だったね」
「あー!そんなこと言うんだ!可愛い愛娘と理想の王様を比べるなんてただの村娘のわたしが可哀想だと思わないの!?」
「アルトリアからお転婆をとったらうじうじアルトリアしか残らないじゃないか……そんな可哀想なこと僕は言えないな……」
「はぁー!?今はラッパも吹けますけどー?あの夏で芸術にも目覚めたの忘れた?」
「いや、覚えているけども……」
「……っていうか、ログレスが召喚されてから1ヶ月も経ったのにまだ会ってなかったんだ?」
「ああ、まあね。避けていたわけではないけど積極的に会おうとは思っていなかったかな」
「なんで?レインならログレスとだって対等に話す権利あるでしょ?」
同じエクスカリバー使いなんだし、とアルトリアは続ける。
確かに僕はこの子の造った聖剣を手にしている。
しかし、この子は忘れているのだろうか。
「それは構わないんだけど、キミは僕の剣にどんな記憶を詰め込んで造ったか忘れたのかい?おいそれと見せびらかすものじゃないと僕なりの気遣いもあってのものだったんだけど」
「───ぁ」
「いや、いいんだよ?キミがそんなに僕が聖剣を使うところも帯刀してるところも見たいのなら常時帯刀しておくのもやぶさかではないけどね」
「だ、だめ!恥ずかしいから今まで通りの方向で……!」
「いやぁ、しかし愛娘がどうしてもと言うのなら僕も聖剣を帯刀することも検討しなければならないかな?ふむ、どうしたものか」
「ダメだって言ってるだろー!聞こえないふりするな!」
「ふふっ、どうしようかな?」
「うわー!レインが意地悪するんだ!トネリコ義姉さんにいいつけてやるー!ついでにバーヴァン・シーと陛下にも!」
「まて、待つんだアルトリアそれはまずい」
トネリコのところへと走り去るアルトリアを追いかける。
揶揄っていたつもりが気がつけば自分の首を絞めることになっていたことに気がつくのが若干遅れたせいで取り返しのつかないことになるところだった。
「ふふっ……羨ましいですね。私にもあのような可能性があったなんて」
約束の白き女王はカルデアの中を駆ける2人の姿を見て微笑んでいた。
ログレス陛下あまりにも描写が少なすぎる問題。
公式は早くログレス陛下のテキスト書いて公開してください。
それはそれとして今回は邂逅という形でのお話でした。
これからこの人がおもしれー人なのかどうかわかったらまた書くと思います。
エミュが終わってる?こんなの俺たちのログレス陛下じゃない?
そんなの僕が一番わかってます(絶望)
陰鬱とした本編に次回から戻りますが、また作者の心が死んだら番外編を書くのでよろしくお願いします。
それではまた次回、今度は本編でお会いしましょう。
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