お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

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月末から禁足地入りしてました。



第四節 『今は遠き常雨の剣(エクスカリバー・ヴィヴィアン)

これまで踏破してきた特異点。

その全ての領域に縁のあるサーヴァントが集った。

それを振り払うように、拒絶するように魔神の瞳に魔力が収束する。

 

収束、充填、増大、拡張。

 

先ほどとは比べ物にならない破壊力のエネルギーの放射がこちらに向けて放たれる。

 

だが、しかし……この場には絶対の守護を誇る聖女がいる。

 

「我が旗よ、我が同胞を護り給え。我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)!!!」

 

展開されるのは絶対の守護。

あらゆる攻撃から味方を守る主の奇跡を以て展開される絶対の聖域。

ありとあらゆる奇蹟を弾く救国の聖女にのみ許された護るための宝具が魔神柱が放つ魔術など初めからなかったかのように弾き飛ばす。

 

「……さあ。進んでください!」

 

その声と共に立香ちゃんとマシュを乗せるための黒馬が現れる。

それはつい先ほどまでアレキサンダーと共に駆け抜けた名馬ブケファラス。

名馬・ブケファラスもまた英霊の一騎である。

“彼”のその特別なあり方があってこそ、主たるアレキサンダーが居なくても現界を維持できていた。

 

「2人はあの門の方へ……!僕は英霊たちと魔神狩りをしながらそっちへ向かう!」

 

「わかりました……!」

 

「レインさんも、お気をつけて!」

 

「2人こそね、君たちなら絆を繋いだ英霊たちと共に勝てると信じているよ」

 

残り、3回の簡易召喚。

だが、最後に呼び出すサーヴァントはそれだけ強力な英霊になるのはわかっている。

だから、魔神たちの王と戦うまでにその切り札を切らせるわけにはいかない。

2人は頷いて、宇宙にも似たこの宙域(ソラ)を走り去っていく。

 

「あなたは、向かわなくていいのですか?」

 

「相手は仮にも魔術王ソロモンを騙るものだ。君たちが彼女たちとの縁を辿ってこの領域にたどり着いてくれたけれど……」

 

「なにか……問題が?」

 

「いくら君たちが自分たちでここにやってきたとしても、その手段は英霊召喚という手段に他ならない。だったら、それがいつ破却されてもおかしくないというわけだ。もしそうなった場合、この領域で魔神を足止めするための戦力は……あった方がいいだろう?」

 

「なるほど、確かにそれなら彼の魔術に左右されない戦力は必要ですね。それに……カルデアでは所持しているのを見たことのない武器も持っているようです」

 

ジャンヌ・ダルクの視線が右手に握られた聖剣へと向けられる。

黒き騎士王、アルトリア・オルタから借り受けた星の聖剣たる《約束された勝利の剣(エクスカリバー)》。

今は限定的に僕が担い手として扱わせてもらっているが、この作戦が終わったら間違いなく返却しなければならない代物でもある。

 

「私は聖剣のことはよくわかりませんが、それでも馴染んでいるように見えますね」

 

「よしてくれ、僕に聖剣使いとしての資質なんて……いや、それはこの剣と託してくれた彼女に失礼だな。救国の聖女にそう言われるのは照れ臭くてね」

 

「なるほど。では、今のは聞かなかったことにしておきます。それでは、雑談はここまでです。私たちは各々に縁のある特異点を対象に連鎖召喚されています。だから、次の領域に出ることができません。なので、レインフォート……現代において賢者と呼ばれる貴方にはそれぞれの魔神の領域を巡っていただきます」

 

「もとよりそのつもりさ。しかし、それでは君たちとローマ皇帝たちの立ち位置が逆のようだが……?」

 

「そこはちょっと反則というか、何事にもルールを破ったと言いますか」

 

裁定者(ルーラー)のキミがルール違反をするんじゃない……」

 

思わずついてしまったため息。

しかし、張り詰めていた緊張の糸はほんの少しだけ緩んだ。

心強い味方がいることが、こんなにも余裕と安心感を得られることだとは知らなかった。

本当に、少しだけ頬が緩む。

聖剣を握る手に力が籠った。

身体をめぐる魔力が安定している。

妖精紋様が今までにないくらいに隆起している。

今ならば、今のこの安定した状態ならこの剣だって使いこなしてみせる。

 

「あらゆる生命が、一瞬で燃え尽きた。ああ、そうだとも……例え未来がなくとも、それでも僕は前へ歩き続けることが出来る妖精と人間(ひとたち)が居たことも知っている」

 

思い返すのは領民であった雨の氏族と人間たち。

トネリコを受け入れた時、僕たちは自分たちの滅びを悟った。

原初の罪によって、赦されない呪いを受けていることを知った。

 

それでも、あのオークニーにいた生命は。

 

妖精と人間の全てが終わりへ向かうことを受け入れた上で。

 

誰かを愛することを、その先の未来をつなぐことを選んだ。

 

それが僕たち雨の氏族が選んだ結末。

 

たった一つの希望を残すために滅びを受け入れた氏族のお話。

 

だが、これは違う。

 

雨の氏族は滅びを受け入れた上で前へ歩き続けたが、立香ちゃんは滅びを受け入れることなく未来へと歩き続けている。

 

顔も知らない数億の人類のために、泣きながらでも前に進み続けている。

 

だから、彼女の背を押すためにここにいる僕たちは。

 

一度でも、生を終えた僕が出来ることは……始めからわかっている。

 

 

 

 

 

 

 

「妖精炉、接続。聖剣、抜刀……!」

 

 

 

 

 

汎人類史に生まれ直したその時に、新しくこの肉体に得られた器官。

普通の妖精として生まれただけでは得ることができないはずの“星の触覚としての器官”へと接続する。

 

どくん、と魔力が鼓動するように波打つ感覚。

まるで濁流のように魔力が溢れるのに、それが心地よく全身に巡るような感覚。

 

なにより、手にした星の聖剣が眩いばかりの蒼き燐光を放っている。

 

「さあ行こう、ヴィヴィアン」

 

手にした聖剣へと声をかける。

それに応えるように、聖剣が蒼き光を放つ。

未来を取り戻す物語、“今を生きる人類”の代表を送り出した英霊と妖精が一気に動き出した。

 

「束ねるは星の息吹、輝ける生命の奔流。大地を濡らし、光を放て……!」

 

それはまさしく宝具の解放。

英霊たちが自身の誇りとする神秘の具現化。

 

そしてその中でも星の輝きを手にした剣の真名を今、解放する。

 

「我が罪を手に、“それでも”と光の示す路を開け!」

 

他の誰でもない、レインフォート自身を示す蒼く輝く光の剣が振り下ろされる。

 

今は遠き常雨の剣(エクスカリバー・ヴィヴィアン)!!!!」

 

放たれるヒカリは眩いばかりのイノチの奔流。

星の光を体現する究極の斬撃。

彼が背負った数千の妖精や人間たちの想いをのせた光の剣。

瞬きの間に圧倒的な熱量に巻き込まれた魔神柱たちが抵抗する間もなく消え去っていく。

 

その熱量、そのヒカリ、その斬撃はまさに聖剣使いとしての資格を示す。

 

遥かなる遠き世界にて聖剣使いとしての資格を唯一得ていた妖精。

聖剣の原型となる霊剣シャスティフォルに選ばれた雨の氏族の妖精。

 

汎人類史にて、黒き騎士王にて見出された星の聖剣に選ばれた者。

 

亜鈴(亜麗)特種・常雨の聖剣使い】レインフォート・アーデルハイト。

 

本来ならば汎人類史ではなく異聞世界ブリテンに於るエクスカリバーの担い手である。

 




どうも作者です。
あと数話でソロモン終える予定ですが、第二部どうしようねと思ってます。

前話の投稿後皆様のおかげでランキングに5日ほど滞在させていただいたりとニッコニコでございました。

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