お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン 作:今井綾菜
決戦の終わりはそれから幾分も経たないで終わった。
時間にして1時間とかからないくらいだろうか、立香ちゃんが英霊を総動員して挑んだゲーティアとの決戦は、魔神王の敗北という形で幕を下ろした。
だが───
「我が王の敗北あれど、ソロモンの消滅があろうとも、我らの責務は変わらぬ。最果ての賢者アーデルハイトの足止めと排除、その為に終わりのその時まで抵抗を続けよう」
廃棄孔アンドロマリウス。
僕は未だその領域から抜け出せないでいた。
全ての英霊が魔神の領域から立ち去り、72の魔神柱は全て僕が相手取ることとなっていたわけだが……
「任せろ、と口にした手前なんとしてもカルデアに戻らないといけないわけだけど」
眼前にて蠢く無尽蔵の魔神柱を前にして、カルデアに帰還するという選択肢は存在しなかった。
カルデア本体がレイシフトしてきている以上、ここで僕がカルデアに帰還すれば魔神柱がそちらに向かう可能性が高いのは目に見えている。
立香ちゃんは既に帰還を始めている、せめて彼女が帰還したという報告がないと僕だってカルデアまで水鏡を使用して帰るわけにはいかない。
「まったく、こういう後始末こそお前の役割だと僕は思うぞロマニ」
大きくため息を吐く、多勢対無勢なんて生易しい状況ではない。
相手にしているのは間違いなく魔神と名のつく魔術式なのだ。
ソロモン王の遺産、72の魔神……現代では知るものの多くなった架空の存在と思われているそれらを僕は1人で足止めしなければならない。
魔力は妖精炉に繋いでいるから供給が途切れることはない。
だが、それを排出する為の回路は既に焼き切れる寸前だった。
今までこんなに魔術回路を酷使したことなんて無かったし、何よりここまで酷使する原因が星の聖剣の連射なんて流石に想像すらしていなかった。
戦闘衣として着用してきた礼装も大分ボロボロになっている。
それもそうだろう、なんせ水鏡で迎撃しきれない程の魔術が飛んでくるのだから無被弾なんて到底無理な話だった。
魔術回路が焼き切れそうでも、妖精紋様の輝きが少しだけ霞んでも。
それでも、戦うことをやめられない理由がある。
聖剣を握る手に力を入れる。
なんとしても帰らなければならない理由はここにも一つある。
あと何回、聖剣の輝きを放てるだろうか。
魔術回路が焼き切れるその瞬間まで戦うことに迷いなんてない。
だが、そこまでの猶予がどのくらい残されているかは───
「───まったく、
知らないはずの声なのに、どこか聞き覚えのある声が聞こえた。
「仮にも
それは確かに、僕の知らない人物だった。
なんの縁があって彼女がここに居るのかなんて、理解ができなかった。
しかし、この状況でなんの縁があって……なんて一つしか存在しなかった。
「───サーヴァント・ルーラー。妖精妃モルガン、湖の乙女を縁として参上しました」
汎人類史に生まれ変わって、幾度となく僕に付き纏ってきた縁。
僕が扱う水鏡をこの汎人類史にて唯一使えるという神域の天才。
その姿はまさに絶世の美女、いいや傾国の美女と言い換えてもいい。
「聖剣使いの貴方のために戦うのは心底気に入りませんが、アルトリアだけにいい顔をさせるのも果てしなく気に入りませんので」
「いいや、それでも助かるよ」
彼女の人格が今落ち着いているところを見ると、おそらくはヒトの人格。
人間としてのモルガンが表に出てきているのだろう。
妖精としての彼女は慈悲深い乙女、そしてブリテンの意思としての彼女は……言うまでもないだろう。
「それにしても、少しばかり数が多いのでは……?エクスカリバーを手にしておきながらこの程度も掃討できないとは何事ですか」
「これでも回路が焼き切れるくらいは焼き払っている筈なんだけどね。無尽蔵とは本当に厄介な話だよ」
「……なるほど、ならばその根底を破戒すればいいのですね?」
そう口にして、彼女は軽く手を振る。
行っているのは至極単純、この領域のすべてのスキャン。
簡単に言って仕舞えば魔術式を構築している根底の検索。
「ほう……?確かに彼の魔術王の術式というだけある。複雑かつ芸術的、まったく無駄のない召喚式です……ですが、
妖精妃が不敵に笑う。
展開されるのは術式破戒のための膨大な魔術。
それを許す魔神柱ではないが、彼女へと攻撃を当てないために僕がいる。
聖剣による迎撃は得策ではない、何よりいつ焼き切れるかわからない聖剣の解放はその先を考えれば使えない。
ならば、やることは一つ。
水鏡を使用した魔術の反射。
反射というよりは相手にそのままお返しするだけなのだが。
モルガンに迫り来る無数のエネルギー砲。
その全てを的確に水鏡に通過させ、魔神たちの周りにゲートを展開してそのままお返しする。
モルガンを排除しようとした超高火力のエネルギー砲は的確に魔神柱を焼き払っていく。
「水鏡の応用が上手いようですね。飛来する魔術を相手に返す手段として使うとは、それにやけに手慣れているようにも見えました」
「あ、あはは……君にそれを言われると少し複雑な気分になるよ」
思い返すのはトネリコが新しい魔術を覚えるたびに僕に撃ち込んできたこと。
その度に水鏡で遠くの山に着弾させていたのを思い出して懐かしさと共に彼女にそれを言われることがほんの少しだけ複雑な心境を生む。
「なんです……?その目は?」
「いや、なんでもない」
本当に、不思議な気分だった。
初めて会うのに、今までずっと一緒にいたような安心感がある。
初めて肩を並べて戦うのに、今まで一緒に戦ってきたかのような気分になる。
「私の役割はこれらの術式を破戒するまででしょう、その後は……貴方がその剣で出来ますね?」
「ああ、任せてほしい。期待を裏切らない輝きを見せることを誓うよ」
「別にエクスカリバーの輝きに期待などしていませんが、そこまで言うからにはしっかり見せてもらいましょう。聖剣に選ばれた亜麗が見せる輝きというものを」
モルガンの手に淡い光が満ちる。
それは彼女の持つ術式破戒の魔術。
それが、標的を定めて全域に放たれる。
ガラスの割れたような音と共に明確に何かが壊れた感覚。
それは無限の生命を得ていた魔神たちへと与えられた明確な死の概念。
これならば、やれる。
この領域に立ち入ってから一度も感じなかった絶対の確信。
今この状態なら、確実に焼き払えるという感覚。
なればこそ、その手に宿る星の輝きを証明する。
───束ねるは星の息吹。
───輝ける命の奔流。
蒼く輝く最果ての星。
遠い世界で世界を導く筈だった星が魔神たちの前に輝く。
───大地を濡らし、光を放て。
───我が罪を手に、“それでも”と光の示す路を開け!
聖剣、抜刀───
最果ての国、雨の降り頻る人間と妖精が手を取り合って発展していた夢の国。
彼が生きたその証こそ、その輝きの真価。
───レインフォート様!
誰かが笑いながら彼の名を呼んだ。
───レインフォート様!!
誰かが困りながら彼の名を呼んだ。
───レインフォート様!!!
みんなが、街を歩く彼の名を呼んだ。
(───なるほど、
モルガンの目に映ったのは彼の背を押す無数の手。
その手の正体は語るまでもなく、何かわかってしまう。
(貴方も難儀な男だ。その背にどれだけの命を背負っているのだ)
聖剣の光、彼がその輝きを振るう後押しをしているのは……
(確かに、その輝きは貴方自身のものだ)
「
蒼く輝く星の光が、この
汎モル出しちゃった(土下座)
これにてお兄様による魔神柱討滅戦《EXTREME》は終了です。
いやぁ、手強い相手でしたね(白目)
まさか汎モルガン出てきちゃうなんて驚きだなー(棒)
話は変わりまして皆様のおかげで☆9評価がもうすぐ赤の一歩手前まで来てます(チラッ)
☆10ももう少しで色変わりそうだったりします(チラッチラッ)
感想も貰えたりするとニッコニコで次話生まれたりします(ガン見)
第一部終了までもう少し、第二部はブリテン以外まともにやりません(断言)
作者ページにあるブルースカイのリンクに飛ぶとこの小説についての補足説明とかお兄様とモルガンのバレンタイン短編とか置いてたりするのでもしよければ覗いてみてください。
読者の皆様にお聞きします。僕の文章は楽しめていますか?(文字数を多くする場合この先の投稿頻度が落ちる可能性がありますが、参考程度にお聞きしたいです)
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この調子でモルガンに会いに行って(満足)
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まあそこそこ?(やや満足)
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文字数を増やしてほしい(やや不満)
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モルガンの話だから見てる(不満)