お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

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第二間奏 『円卓の騎士と最果ての賢者with白百合の騎士姫』

ふわり、と心地よい風が汗が滲んだ身体を吹き抜ける。

草原に突っ伏した僕を前に笑うのは湖の騎士ランスロット。

そして、次の手合わせの準備をしている太陽の騎士ガウェイン。

それだけに留まらず、叛逆の騎士モードレッドに嘆きのトリスタン、銀腕のベディヴィエールとカルデアに召喚された円卓の騎士が勢揃いしていた。

 

カルデアのシミュレーションを使ったレイシフト。

僕たちは今、フランスの草原にいた。

 

 

 

 

「いやぁ!しっかし今のは惜しかったなあ!ついにレインのやつがランスロットから一本取れるかと思ったけど、ちょっと大人げねぇんじゃねぇの?」

 

「そう言うなモードレッド。剣の指南を、と言われれば私だって真摯に相手をする。それに、気を抜いたら地に膝をついていたのは私だったかもしれないとなれば……彼の師の1人としてはまだ負けるわけにもいかないのだ」

 

「実際、レインフォートの腕前は大したものです。我々が稽古をつけ始めてから半年程度ですが、目に見えて剣の腕が上達してるのも確か、このまま鍛錬を続ければ我々に並ぶ騎士となれるでしょう」

 

「純粋な剣術だけではなくこれに魔術を重ねてくると言うのだから厄介極まりないでしょう。それに、我々の宝具をアレンジした魔術を使うといいますし、そちらも大変興味深いですね」

 

「確かに、彼の地で即興で創り出した魔術とは言っていましたが、時も経ちその練度も更に洗練されていることでしょう」

 

円卓の騎士たちがゾロゾロとこちらに集まり、各々言いたいことを口にし始める。

その格好はいつもの騎士甲冑ではなく皆ラフな稽古服といったところ。

かくいう僕も動きやすい伸縮性と通気性の良いシャツやスラックスなのだから剣の稽古という意味ではかなりやりやすい服装でもあった。

 

「いや、しかしまだまだ君には一本取れないな。流石は円卓最強の騎士ランスロット卿だ」

 

「単純な技量ではまだ一本取られるわけにはいかないからね。しかし、先ほどもガウェイン卿が口にした通り初めの頃よりは身体の使い方や剣の技も上達している。いずれ我々と肩を並べて戦うという日も近いかもしれない」

 

「そうなれるように努力はするさ、いくら聖剣使いの資格があっても技量が足りてないんじゃ笑い物だからね」

 

訓練用に用意した木剣はランスロットの剛剣に叩き折られてしまって真ん中からへし折れてしまっている。

時間にしてもすでに数時間、彼らに稽古をつけてもらってしまっていることもあるし、それに……次の稽古を待つ子もやって来たようだ。

 

第六特異点終了後から彼らに稽古をつけてもらっている白百合の騎士姫。

セイバー・リリィことアルトリア・リリィ。

その手に持つ選定の剣はブリテンの王となるための証、そしてかつての円卓の騎士たちがその剣を持つ王のもとに集った錦の御旗とも言える聖剣。

 

今日の彼女の対戦相手はガウェインとモードレッドのようで順番待ちをするように並んではトリスタンとベディヴィエールが審判役につく。

訓練用に何本も用意された木剣の撃ち合う音が響き渡るのはその直後だった。

 

 

 

 

「しかし、流石は未来の騎士王だ。今はまだ素直な剣筋だけど、基礎となる部分はやはり定まっているように見える」

 

「確かにそれは言えるかもしれません。今はまだ未熟とはいえ、我が王であることは変わりありません。英霊として座に刻まれた以上、この経験を次に引き継ぐことはできませんが……それでも、何よりも強くありたいと、我らに忠義を誓われるような騎士になりたいと仰る彼女の言葉に我らが首を横に振れるはずもありますまい」

 

眩しいものを見るような瞳で、ランスロットはガウェインに稽古をつけてもらっているアルトリア・リリィを見つめる。

 

「しかし、レイン殿。我ら死者の剣技を受け継げるのはこの世界ではもはやあなたのみ、あの黒き我が王から聖剣の扱い方を学んだのならそれに見合った剣技を身につけてもらわねば」

 

「もちろん、そのための努力は惜しまないつもりだよ」

 

「それは重畳。我が凄裂の剣を学ぶもよし、ガウェインの柔軟かつ剛の剣を学ぶもよし、モードレッドのような剛のみの剣を学ぶもよし、貴殿に合う剣を我らの中から選び、自身の剣にするのです」

 

ランスロットはいつかを懐かしむように、微笑みながら僕と今戦っている少女騎士を見つめる。

そして、やんわりとした優しい風に吹かれながら彼は一つの願望を口にした。

 

「しかし、やはり師の1人としては……私の剣を身につけて欲しいとは思う」

 

「珍しいな、キミがそういう願望を口にするのは」

 

「確かにそうかもしれないね。しかし、私とて騎士の端くれ、己の剣を教えたものにはその剣を極めて欲しいとも思うさ」

 

それはきっとガウェインやモードレッドも同じだと思う、と彼は口にして再び少女の鍛錬に視線を向ける。

気がつけばガウェインとの模擬戦を終えていて、ベディヴィエールに新しい木剣と汗を拭くためのタオルをもらっているところだった。

 

「しかし驚いたよ、珍しく黒き我が王が君を引き連れて来たと思えば稽古をつけてやれ、と言われた時は」

 

「僕もあれには驚いたよ。もとから、君たちに剣を習うつもりではいたんだが……『ふむ、善は急げというしな。よし、今から円卓共のところへ行くぞ』と引っ張られて行ってしまって」

 

「なるほど、それであのような困り顔で来たわけだったのか」

 

納得したようにランスロットは頷く。

あの時の円卓の騎士たちの顔と言ったら僕と同じくらい困惑した表情になっていたことだろう。

なにせ、いままで関わりを持たなかったアルトリア・オルタが自分から来たと思ったら『聖剣使いとして恥ずかしくない程度に鍛えてやれ』と僕をそのまま放り投げて去って行ってしまったのだから。

僕も、円卓のみんなも顔を見合わせて何があったのかよくわからないままシミュレーション室へと赴き、そのまま始まった鍛錬が終わるころに漸くその状況がおかしいことに気がついて笑ったものだ。

 

日に日に剣が上手くなっている、という自覚はもちろんある。

現代に生きる生命で円卓の騎士に剣の稽古をつけてもらえる贅沢ものは確かに僕くらいだろう。

 

だからこそ、師事してくれる彼らに恥じない剣術を身につけようとは思っているわけだが……

 

「純粋な剣術だけでなければ……もう少し粘れると思うんだけどね」

 

「ははっ!魔術をアリにしてしまったら我らに勝ち目は薄いでしょう。なにせ、水鏡を使った3次元的な攻撃方法は我々には出来ない芸当だ。それに、我々の宝具をアレンジした魔術というのも正直気になってはいます」

 

「勘弁してくれ、教えを乞う立場の僕が君たちにそんなもの使えるわけないだろう。英霊にとって絶対の矜持、君たちがたどり着いた究極の技をパクった僕がそれを本家に見せるなんて悪い冗談にも程がある」

 

「そうだろうか?非常に言いにくいが、エミヤ殿のように宝具を投影されて爆弾にされるならともかく……宝具を魔術に落とし込むだけでもまさに天才の領域、そしてそこからアレンジを加えるとなると……魔術の才がない私には想像もできない努力があると思うのだが」

 

「じゃあ、君のアロンダイトを模した魔術を見てみるかい?アレンジをしてしまったからオリジナルの剣技とは随分かけ離れたものになるけれど」

 

「……ほう?」

 

ランスロットの瞳がすぅっ……と細くなる。

それは好奇心の表れか、それとも己の絶技を模した魔術への採点か。

騎士として、絶対の自信を持つであろう自身の剣技をどのように魔術へと変換したのか未知への探究心か。

 

「魔術の名は『ルクス・アロンダイト』、文字通りにキミの縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)を模した光の剣、となるわけだが……その効果は至極単純、投擲して着弾した相手の内側に光を放ち爆散させるための技だ。余りにも火力が高いから使う場面こそ少ないが……」

 

「なるほど、効果自体は私の宝具とほぼ同じというわけですか。問題は私の場合は切りつけなければならないことであり、レイン殿の場合は投擲して着弾、或いは突き刺さるだけで宝具の効果を再現できること……考えましたね」

 

「キミのこれはガラティーンやクラレントを模した魔術よりも燃費が良いことがミソでね。低燃費で高火力、多重展開してもガラティーン一撃分の魔力消費で済むところがいいところなんだが……今の所コレを使うような相手はいなくてね」

 

自分で説明しておいてなんだが、こんな話を本来の宝具の担い手であるランスロットに話してもいいものか。

いや、彼自身は興味津々で聞いてくれているから話すこと自体は良いことなのだろうが……それでも、僕としてはなんかこう……落ち着かない。

 

「確かにそれならば大型のエネミーなどには効果的だ。時折特異点で見かけるゴーレムや大蛇、スプリガンや竜種にも効果は見込める」

 

興味深いな、と呟いた彼は思い立ったが吉日と言わんばかりに立ち上がる。

 

「モノは相談なんだが、コレから一つ竜狩りなどは如何かな?」

 

「追加のレイシフト申請を出しておくよ」

 

ランスロットと2人、草原から抜け出す。

結局この後、僕ら2人がいないことに気がついた円卓の騎士たちが僕とランスロットがレイシフト先にやって来てひとしきり円卓の騎士魔術を披露させられた挙句、誰が一番ワイバーン狩りをできるかの競争が始まってしまった。

 

ああ、結果は唯一チームを組めた僕とリリィのチームがトリスタンの107の数字に僅差で勝つことができた。

モードレッド、ガウェインは塵一つ残さず消し去ってしまったのでノーカウント、カウント役のベディヴィエールに文句を言っていたが数えようがないのでダメですと突っぱねられてしまっていた。

 

ちなみに、一番おかしいのはランスロットだ。

あの湖の騎士、対空攻撃を持っていないにも関わらずトリスタンに迫るスコアを叩き出していた。

 

「や、やっぱりランスロット卿はすごいですねっ!」

 

リリィが終始興奮していたのは言うまでもないだろう。




【速報】お兄様、剣術を円卓に習い始めていた。

今回は幕間の第二話。
円卓の騎士とお兄様の一幕でした。
円卓の騎士というか主にランスロット、お兄様の魔術に興味津々なランスロット。
遠距離攻撃持ってないのにワイバーンを狩りまくるランスロット。

やっぱお前おかしいよランスロット。

ちょっとおかしい騎士の話は置いといて……

皆様のおかげで日刊ランキングではここ1週間くらいずっと滞在させていただいて、週間、月間、四半期にも拙作が掲載されていたりします。
これも読者の皆様が作者を甘やかs……もとい、高評価とお気に入りを登録してくれるおかげです。
本当にありがとうございます。

もっとください(厚顔無恥)
2部開幕までもう少し、皆様の応援よろしくお願いします!

読者の皆様にお聞きします。僕の文章は楽しめていますか?(文字数を多くする場合この先の投稿頻度が落ちる可能性がありますが、参考程度にお聞きしたいです)

  • この調子でモルガンに会いに行って(満足)
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