お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン 作:今井綾菜
メインストーリーの更新をしながらこれの最終話を目指す形になりそうです。
また、この番外編の最後にかけてアンケートの予定もありますので参加していただけると助かります。
それでは久しぶりの掛け声をしてご覧ください。
祝・モルガンピックアップ!!!
トネリコと不思議のダンジョン-雨の探検隊-Ⅰ
次元境界穿孔艦ストーム・ボーダー。
ノウム・カルデアの一員として僕が合流してしばらく経ち、トネリコをはじめとする僕に関わりの深い子たちがサーヴァントとして契約して幾度か特異点を駆け抜けていた。
ブリッジに呼び出された僕とトネリコ、メインマスターである立香ちゃんはもちろん呼ばれていたのだがどうやら今回は彼女に対する任務ではないようだった。
「今回はちょっと特殊な特異点っぽくてね。特異点に突入できるサーヴァントとマスターの最適性が君と雨の魔女トネリコだったというわけさ」
「特殊な特異点……?」
「うん、なんせこれまでレイシフト適正100%の立香ちゃんが弾き出されるっていうイレギュラーでね。カドックや芥ちゃん、キリシュタリアなんて問題外でこの特異点に介入できるのは君たちオークニー兄妹だけというわけだ」
「……しかし、召喚者さんが介入できないなんて妙ですね。私とお兄様ならどんな特異点であろうと解決してみせますが、意図的に召喚者さんを弾いているとみるほうがいいのかも」
「私が行けるならもう向かってるんだけどね。レインさんとトネリコしか行けないみたいだから今回はお願いしたくって」
立香ちゃんが両手を合わせて僕とトネリコへとお願いをする。
もとより断る理由はないし、僕とトネリコしか行けないのなら行くしかない。
外から特異点を詳しく解析することもできないらしく、現場に行って臨機応変に対応して欲しいというおおよそ作戦と呼ぶには大雑把すぎるブリーフィングだったのだ。
「…………それで、お兄様」
「…………うん」
「私が
「まあ、そうだね」
「ですが、“コレ”は一体なんなんでしょうか」
トネリコが若干呆れた様な瞳で目の前にそびえ立つ“塔”を見つめる。
いかにも古き良きRPGに登場するダンジョンの様な典型的な“塔”。
入り口にはこれまたあまりにもそれらしい装飾の施された扉。
そして、トネリコの手にはいつのまにか持っていたおあつらえ向きの“鍵”。
「……えっと、《境界の塔の鍵》」
「…………………………」
この特異点の犯人が誰なのかもうすでにわかってしまった。
何をやっているんだあの最強種、今回珍しく同行をせがんで来ないと思ったらそういうことだったのか。
「えっと、これって」
「うちの駄竜が本当にすまない」
「あ、あー。なるほど、彼女ですか」
トネリコの妙に納得したような、察しがついて呆れたというか。
そんな表情を浮かべた彼女に顔を向けて思いっきりため息をつきながら声をかけた。
「ひとまず、さっさと攻略してお説教をしてから帰ろう」
「そうですね、境界の竜といえども今はお兄様のサーヴァント。それなりの品位は身につけてもらわなければなりません!」
やる気出てきました!とサムズアップするトネリコの手を取って塔の入り口の扉に向かい、鍵を使う。
鍵は翳しただけで扉のロックは解除されておおよそ人の手では開けられない大きさの扉は大きな音を立てて開いていく。
「なんだか、無駄に本格的ですね」
「あの子、こういうロマン的なところには手を抜かないからなぁ」
少し前のハワトリアで彼女が装備していたフェアリー・パックも大したものだったと思い出した。
それを変形させたドラゴンパックはさらに凄いことになっていたのだが……。
何はともあれ一歩、塔の中に足を踏み入れる。
二歩、三歩と進んでいき、扉から少し離れたところで扉は勝手に閉まってしまった。
「わかってました」
「うん、すごくわかってた」
びくともしない扉から視線を逸らして、妙に明るいダンジョンの一階を見回す。
ダンジョンの一階、というよりは準備のできる拠点の様な作りだった。
中央には大きな階段、そこから左右に分かれて宝箱やベッド、少し奥には温泉なんかも用意されている。
「ここは拠点として使える場所みたいですね。温泉にそこそこ上等なベッド、2人で使うにはちょうどいい食卓と……」
「まあ、長期的な作戦になっても困らないのは間違いなさそうだ」
「では、行ってみましょうか」
「ああ、手早く済ませてしまおうか」
2人の視線が向くのは二階へと続くであろう階段。
部屋の中央から天井を突き抜けて続く螺旋階段だ。
少なくともモルガンの能力ベースのトネリコと聖剣を手にしたことで全ての能力制限が撤廃された亜麗の僕。
2人でかかれば大したことはないだろう、とこの時の僕は思っていたのだ。
[レインフォート:Lv1]
ジョブ:魔剣士
HP100 MP50
経験値0/100
[トネリコ:Lv1]
ジョブ:魔術師
HP50 MP100
経験値0/100
「……………………」
「これはなんともまたベタな……」
2階に上がってすぐに視界の端に映し出されたのはそんな表示。
それと同時に自分の能力が著しく低下した感覚。
試しに魔術を使おうとすればお得意の円卓魔術はMP不足とレベル不足で使えないと表示される始末。
そして、そんな僕たちの目の前に現れたのは一つの看板。
デカデカと《チュートリアルだよっ!》と書かれたそれに記されていたのは少なくともあの一階に置いておくべきだろうという内容だった。
・この塔は全100階の構成である。
・この塔の攻略には特殊なステータスが付与される。
・Lvは1からスタートし、HPが0になって力尽きると一階に戻される
・力尽きるたびにレベルダウンし、最大で5下がる。
・特定のレベルに上がることで魔術や宝具が解放される。
・侵入するたびにダンジョンの構造は変わる。
・10階到達するごとにワープポイントが解放されて一階との行き来が出来る。
・手に入れたアイテムは一階の売店で交換してね!
長々と書かれていたが、要約するとこういうことだった。
流石は境界の竜、ドラゴンという種族での最強種と呼ばれるだけの能力はあるなと感心していたもののこれだけの規模となればこの塔の維持には聖杯が使われているのは間違いないとアタリをつけていた。
「何はともあれまずはレベルを上げつつ10階を目指してみましょう!」
「そうだね、デスペナルティは足枷になるから危なくなったらすぐに撤退しよう」
「はい!なんだか王道のダンジョンっぽくてワクワクしてきました!」
そうして僕たちの《境界の塔》の攻略は幕を開けたのだ。
結果として、十階へ続く階段の前に辿り着くまでに危なげな戦闘は一切なかった。
今までの経験とトネリコとの連携がモノを言ったのもあったけれど、なにより出現したエネミーはありきたりな竜牙兵やゴブリン、時折現れるワイバーンくらいのもので強力なエネミーはまだ姿を現していない。
コツコツとレベルも上げてきたおかげでこの10階層に辿り着くまでに僕たちのレベルも15まで上がっていて刑部姫に言わせるところのRPGにおけるレベルマージンは十分とも言えるだろう。
それに、エネミーからHPやMPを回復するためのアイテムがドロップしたのもかなり助かった。
コレがなかったらトネリコはすでにその手に持った杖でそれはもう悲惨な撲殺劇を繰り広げなければいけないところだっただろう。
それに、ここに上がってくるまでに気がついたことなのだが、どうやらレベルアップで取り戻せる……というか使用可能になる魔術は確認ができるようで、僕たちがおそらく一番使うであろう水鏡はトネリコがLv48で僕がLv67で習得としばらく後にならなければ使えないことが発覚した。
トネリコ自体はあれから三つほど魔術を解放されてそれに対する僕は二つほど、魔剣士らしく属性を付与するようなモノだがないよりはマシだろうと納得させて十階へと続く扉へと視線を向けた。
「王道的に行けばここはボス戦が待ってるはずですね」
「普通のRPGや冒険譚ならここに出てくるのはゴブリンの親玉だったり竜牙兵の大群だったりだとは思うんだけど……」
「調べれるところは徹底的に調べて回りましたけど、ボスに関する情報は一切ありませんでしたね」
そう、徹底的に調べて回った。
途中でトネリコが習得したマッピングの魔術。
これを全て埋めるまで各階層徹底的に調べ尽くしたのだ。
宝箱や隠し部屋、そのような場所に置かれていた手がかりになりそうな書物。
全て回収して時間を作っては解読したりもしたが、この10階層のエネミーに関する情報は一切ナシ。
若干の不安要素を残したままここまできてしまったわけだが、逆にここまできてしまった以上やり切るしかないのも確かで。
「まあとりあえずなるようになれだ。危なくなったら撤退、最悪この低階層ならリトライだって視野に入れていこう」
「そうですね!よーし!行きましょう!」
そうして気合を入れて十階へと続く扉を開いて一歩踏み出して───
『グオオォォォォォ!!!』
目の前に 巨大な 竜が いた 。
《BOSS 炎影のニーズヘッグ Lv20 》
「…………」
「…………」
そして、無慈悲にも大きな音を立てて閉じる扉。
思考する間もなく、目の前の竜はその口を大きく開き───。
「トネリコ!!!!」
「わかってます、お兄様!!」
吐き出された炎に対抗するようにトネリコは杖を前方に構えて、彼女が得意な水の防御壁を展開する。
超高温の竜のブレスとトネリコの水の防御壁がぶつかり合う。
ものすごい量の水蒸気を発生させながらトネリコの防御壁は竜のブレスをなんとか防ぎ切ることに成功した。
そしてそれと同時にトネリコのMPが著しく減少する。
それはそうだろう、防御壁は攻撃を防いでいる時間と威力に乗じてMPが減っていく。
竜種のブレスを防ぎ切るには相応のMPを使うのはわかりきっていた。
「トネリコはMPの回復と僕の支援を!」
「はい……!お兄様もお気をつけて!」
トネリコに背を押され、抜刀して駆け出す。
ブレスを吐き切って硬直しているニーズヘッグの顎目掛けて斬撃を叩き込む。
属性変換:水
刀身に超振動する水を纏わせて叩き込まれた斬撃はニーズヘッグのHPをほんの少し削るだけに収まったものの、その生まれた隙をトネリコが逃すはずもなく。
「───“雨よ、汚れを祓え!”」
ニーズヘッグの頭上に雨雲が現れ、そこから鋭い槍のような魔力の雨が降り注ぐ。
水の属性に振り分けられた魔力の雨は威力も高いらしく、確実にニーズヘッグのHPを削っていく。
しかし、それだけで大きくHPを削れるわけもなく。
体勢を立て直したニーズヘッグは再び大きな咆哮をあげて攻撃の姿勢へ移行する。
巨大なその足を踏み鳴らし、さらにそれよりも太い尻尾を振り回す。
翼をはためかせるだけで僕らの身体を吹き飛ばし、追撃をかけるようにブレスを吐き出す。
「最初のボスで出していい相手じゃありません!」
「普通こういうのは階層とレベルは同期してるものじゃないのかい!?」
「使える魔術も貧弱ですし、なにより種類がありません!」
「僕だって使える魔術が属性付与の魔術しか使えないのはどうかと思うな!」
しかし、喚いても状態が変わるわけではない。
むしろ、ニーズヘッグの攻撃のペースが上がるという最悪の展開である。
「ああもう!ちまちまやるのはやめです!私だって殴りかかれる事を忘れないでください!」
杖の代わりに、手に取ったのは選定の槍。
さらに、そこに彼女が無意識に掛けたのは“竜殺しの逸話”の童話魔術。
「最初から!こうすれば!よかったんです!!!!」
もはや童話というよりも概念兵装である。
このダンジョン、攻撃魔術をはじめとした基礎魔術は制限をかけられたようだが、トネリコが修めた童話をエンチャントする魔術は抑えられなかったようで───。
手に持った槍に トネリコが 魔力を 全部乗せて 放った !
僕の真横を豪速で通過して行った選定の槍は寸分違わずニーズヘッグの心臓目掛けて飛んで行き───。
逃げようと飛び立とうとしたニーズヘッグの心臓を貫いた。
-congratulations!-
悲しきかな、第一回目のボスであるニーズヘッグは竜殺しの逸話を重ね掛けした選定の槍の全力投擲によって無惨にも散ってしまったのだ。
それによって僕たちにも膨大な経験値が手に入り、レベルは一気に3も上がってお互いに18になる。
「えへへ、トネリコはレベルが上がった!なんちゃって……!」
ニコニコでそんな可愛らしい仕草をするトネリコだが、正直僕はニーズヘッグに同情の念を禁じえなかった。
そう、オークニーにいた時に彼女の攻撃をかわせなければ“ああなっていた”のは僕だったのかもしれないと目にしてしまったのだから。
「あっ!ニーズヘッグのいたところに宝箱です!開けてみましょう!」
何が入ってるのかなー!と機嫌良さげに向かっていくトネリコの後を追い、彼女が開けた宝箱の中身をのぞき見る。
「これは……鍵と」
「なんでしょう?霊基のカケラ……?のようなものでしょうか」
そう、宝箱に入っていたのは《境界の塔の鍵10F〜20F》と記された鍵とどこか懐かしい雰囲気を感じさせる霊基のカケラ。
「ひとまず両方とも持って帰ろう。霊基のカケラなら集めれば元の姿に戻せるかもしれないしね」
「そうですね。それに、なんだか懐かしい雰囲気も感じますし」
「トネリコもそう感じたのかい?なら、なおさら戻してあげないとね」
「はい!それじゃあ一度1階に戻って準備を整えたら20階まで目指しましょう!」
「ああ、食事もして一度睡眠もとって体調を整えてからね」
さらば、ニーズヘッグ。
心の中であんまりにもあんまりな死に方をしたファーストボスを相手に心の中で黙祷しつつ、僕たちは1階の拠点に戻るのであった。
境界の塔10階層『炎影のニーズヘッグ』討伐完了!
獲得経験値4600
獲得AP(アルビオンポンド)18000
獲得報酬
境界の塔の鍵10F〜20F ×1
霊基のカケラ ×1
というわけで、おそらくみんな一度は考えたとこがあるであろう不思議のダンジョン。
それはトルネコだったり、元はニンゲンだったポケモンだったり。
今回はつよつよドラゴンが黒幕(推定)のダンジョンが生成されてしまったようですね()
ちなみに、今回なんでメリュジーヌが選ばれたかというと『ザ・トレジャー』の概念礼装を見て“こいつしかない(確信)”と作者の中で天啓が降りてきたからです。
このイベントはネタに全振り、コメディに全振りしながら進んでいくので陰鬱な本編の癒しとして楽しんでもらえればと思います。
それではまた次回、今度は本編でお会いしましょう!
皆様の感想と高評価、お待ちしてます。
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