お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン 作:今井綾菜
祝!トネリコピックアップ!!!(継続中)
祝!アルトリア・キャスターピックアップ!!!(継続中)
旅に出ろ、とモルガン陛下はわたしに言った。
確かにあの時、冷静さを欠いていたからモルガン陛下に何かをするなと言われたらしない、なんて言ったけれど。
旅をしてこい、なんてあんまりにも急だと思うのです。
レインがついてきてくれるから平気?
確かにそうかもね。
でも、週に一度キャメロットに帰還するなんてどうやってやるのさ。
ブリテンって広いんだよ?
キャメロット周辺の街、グロスターとかオックスフォードあたりならそれでも帰ってこれるかもだけど、ノリッジとかノクナレアのいるエディンバラなんて遠すぎて行くだけでも1週間くらいかかりそう。
それに、旅をしてモルガン陛下の統治が間違ってるとおもうなら楽園の使命を果たせ?
なにそれ、結局モルガン陛下だってわたしに使命を果たしてほしいってこと?
……なんて、そう思ったのはほんの少しだけ。
本当はわかっているのです。
わたしが使命を果たすということはこのブリテンを終わらせるということ。
このブリテンで生まれなかった聖剣を作るための集積装置として生まれたわたしは、その役目を果たすことで世界のための生贄となり、世界の安寧をもたらす聖剣となる。
そして、その結果はこの間違ったブリテンの歴史を終わらせることになる。
…………でも、そんな役目を持たせるなら“わたし”って人格を作り出したのはあんまりにも人の心とかないと思うのです。
だってそうじゃん。
わたしの運命はもう決まってて、こんな世界のために命を捨てなきゃいけない。
それがどんなに大事なことかなんてわかってるけど、それじゃあ“わたし”の気持ちとかそういうのってどうなるの?
レインと出会うまで、ずっっと気持ち悪い世界を生きてきた。
心地よい言葉の裏には必ず汚い思惑があって。
信用できるかなって思った人はわたしを利用するために近づいてきて。
わたしの大切なものばっかり奪っていった。
正直な話、こんな妖精たちのために使命を果たすとかありえない。
わたしがどう生きたって、わたしの自由じゃん。
…………でも、わたしを救ってくれたあの人は違った。
言葉の裏にはいつだってわたしを気遣ってくれる優しさがあった。
触れてほしくない過去があるんだなって納得して聞くことはしていなかったけど……モルガン陛下とレインの関係はこの数日でわかったつもり。
あはは……あの話が本当なら、邪魔者はわたし……のほうだよね。
レインだってきっとモルガン陛下と一緒にいることを望んでるはず。
だって、6000年も前に死に別れした兄妹、なんだもんね。
どうやってレインが生き返ったの、とか。
なんでモルガン陛下から逃げるようなことをしてたの、とか。
納得のいく話の答えはまだ貰っていないけど……。
…………いずれ、わたしはレインの元から離れないといけない。
きっとそれがみんなのためになる。
わたしが居たら、きっとレインもモルガン陛下も幸せになれない。
わたしがいることでレインが幸せになれないのは、すごく嫌だ。
だって、大事な妹のために自分の命すら捨てられるような人なら幸せになれないと……そんなの嘘じゃん。
だから、レインと一緒に居られるのはこのキャメロットからの旅で最後。
そしたら、この気持ちも全部しまい込んでキャメロットから離れよう。
わたしに彩りをくれた優しい人。
わたしに生きる楽しさを教えてくれたかけがえのない人。
わたしにたくさんの初めてをくれた大切な人。
「…………いやだなぁ」
怖かったモルガン陛下が本当はすごく優しい人だって知った。
妖精騎士ランスロットがあんなにお茶目な人だって知った。
レインが彼女たちと話している時に優しい笑顔を向けていることを知った。
「……みんなと、離れたく……ないなぁ」
いつぶりだろうか、こんな部屋の片隅で膝を抱えて。
誰かに見つけてほしいくせに、誰にも近付いてほしくなくて。
誰かに助けてほしいくせに、手を伸ばそうともしない。
「……うぅ……ぐすっ……」
ここ何日で何度泣いただろう。
こんな思考になってから1人で何度も何度も泣いた。
こんなに辛い思いをするなら、幸せなんて知りたくなかった。
温かい優しさなんて知りたくなかった。
それを手放さなきゃいけない葛藤なんて知りたくなかった。
たくさん我慢して我慢して我慢して手にした幸せなのに、それを手放さなきゃいけないのがこんなに早いなんて知りたくなかった。
「なんで……わたしだけこんな……」
「こんな……辛い思いを、しなきゃいけないの……!」
「そうですよね。楽園の妖精の役割とか正直欠陥まみれだと思います」
1人しかいないはずの部屋に、誰かの声が響いた。
誰かと思って勢いよく振り向けば、そこにいたのはわたしに似た白いローブ姿の少女。
「どうして私だけ、なんて当時の私もよく思いました。そもそも、反省のかけらもない妖精たちのせいで滅びるのに私が旅をしないだけで世界が終わるとか正直意味わかりません」
わたしとおなじ、翡翠の瞳。
顔立ちもそっくりで、髪は彼女の方が長い。
声は……ちょっと似ているかもだけどそれでもそこだけは明確に違った。
「もし、楽園の妖精さん。通りすがりの妖精でよければ、そのお悩み、少しだけ話してみませんか?」
童話に出てくるような真っ白な魔女服の彼女は、膝を抱えて俯くわたしにそっと手を差し伸べたのだった。
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「……それで、今頃モルガン陛下は2000年も掛けていた霊基の変換魔術を解いてまであの子のところに行ってるんだ?」
「まあ、そうなるでしょうね。あのお方も殿下に似て甘い方です。自身の後継となる楽園の妖精には情の一つでもわいてしまうのでしょうか」
「うーん、私も少し聞いたけど。あの子ティンタジェルで酷い扱いを受けていたらしいよ?冬の間に寒さに耐えきれなくて足の指無くなっちゃったらしいし」
「…………それは本当か?」
「あの子自身が言ってたことだし間違いないんじゃない?彼……レインのいうことじゃあの子を初めてみた時、すごく痩せてたらしいよ。凄いよね、成長するタイプとはいえ、楽園の妖精を痩せさせるなんてさ」
「……予言の子の捜索を任されていた私の落ち度だ。もっと早くに見つけていれば、そのようなことにはならなかったものを……!」
妖精騎士長アーデルハイトの私室。
そこにはアーデルハイトとメリュジーヌの姿があった。
話は自分たちの主たるモルガンともう1人の楽園の妖精について。
今頃行われている2人の楽園の妖精の邂逅を話のタネにして2人は満月の輝く夜空を見上げる。
「そういえば、最近はトリスタンへの授業はちゃんとやっているの?」
「そこは抜かりなく、あの子は女王の後継者です。たとえ殿下が御帰還なされたとしても元の業務とトリスタンへの教育の手を抜く訳がありません」
「そう、あなたもあの2人に似て生真面目なこと」
「それは褒め言葉として受け取っておきましょう」
軽く笑ってアーデルハイトはバルコニーから室内へと戻る。
季節は既に秋、外の冷え込みもそこそこなこのキャメロットでは既に深夜になろうとしているこの時間は気温がかなり下がってきていた。
「…………殿下へお茶を淹れに行ってきます。貴女もそろそろ自分の部屋へおかえりなさい」
「えっ!?彼のところに行くの!?じゃあ私も行く!お茶は3人分でお願いね」
先ほどまでの真面目な表情はどこへやら。
呆れた表情をするアーデルハイトといつもの澄まし顔はどこへやったのか満面の笑みを浮かべるメリュジーヌは上層にいるレインフォートの部屋へと向かって行くのだった。
アルトリアの前に現れた妖精……一体なにリコなんだ。
4月から副業を始めた作者です。
毎先月は半月くらい毎日投稿してたのでこの2日くらい投稿してないと読者さん離れてしまうのではと内心ビクビクしていました。
僕の書くブリテンメンバー、ちゃんと認識できてますか?
こんなの〇〇じゃねぇ!!みたいなこと起きてませんか?
いや、言われてしまっても文句言えないくらいキャラクターのメンタルと価値観変わってしまっているんですが……お兄様のせいで……(目逸らし)
今まで新話投稿した時にお返ししていた感想ですが、時間の空いた時に一気に返信させていただきますので、変わらぬ感想をいただけるとうれしみです。
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