お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン 作:今井綾菜
祝!アルトリア・キャスター【水着】ピックアップ!!!
翌朝、僕とアルトリアはキャメロットで最も大きな部屋。
つまり、玉座の間にいた。
理由は単純明快、先延ばしになっていたブリテン視察出発の為の正式な任命のためだった。
そして、当然だが……その場にはレイレナードやメリュジーヌの他にも妖精騎士が2人いた。
赤い髪に少し灰色がかった肌の少女、妖精騎士トリスタン。
金色の髪に銀の鎧を纏った大柄の女性、妖精騎士ガウェイン。
そして、蒼い鎧を纏った妖精騎士ランスロット。
最後に僕にとっては一番縁の深いモルガンの隣に立つ妖精騎士長アーデルハイト。
「お前たちに課していた役割であった楽園の妖精の確保。エインセルの残した予言の子はランスロットの働きで無事見つけることができた」
朝のまだ肌寒い玉座の間に、モルガンの芯の通った冷たい声が響く。
「まずはランスロットへは後日、正式に褒美を取らせる。よくやりましたね、ランスロット」
3人が並ぶ中、ランスロットが一歩前へ出て軽く会釈。
僕とアルトリアをチラ見して一瞬微笑んで列の中へと戻る。
「お前たちに正式に紹介しよう。楽園の妖精、予言の子であるアルトリア・キャスターだ」
「えぇっと……アルトリア・キャスター、です」
「よろしい、では……もう1人、隣にいる彼は彼女を保護していた妖精であり……」
モルガンの言葉が一瞬止まる。
この場には妖精騎士と僕たちしかいないが、一応念の為……防音の結界をこの玉座の間に張り巡らせたようだった。
「6000年前に滅びたオークニーの王子であり、私にとっては兄になるお方です」
「……え?お母様の?」
「……兄君、でございますか?」
トリスタンの気の抜けた声と、ガウェインの疑問に満ちた問いかけが響く。
それにモルガンはしっかりと頷き、隣に立っていたアーデルハイトが口を開いた。
「彼の御方はオークニーの第一王子であり、モルガン女王陛下の兄君になります。我が身が忠義を誓った方であり、そして……この霊剣シャスティフォルの本来の担い手でもある。名をレインフォート・アーデルハイト殿下、我がギフトの名の由来となった今はなき雨の国の王子であらせられます」
「……そこ迄持ち上げるほどのものじゃない。とうの昔に滅びた氏族の生き残りだ、妖精騎士の君たちにも余計な混乱を与えたいわけではないんだ」
早朝から正式な出立の挨拶をする、と呼ばれてきてみれば玉座の間にはメリュジーヌを含めた妖精騎士たちとモルガンの姿。
誰だコイツ、という視線を耐え忍んだその先に待っていたのは胡散臭いやつが増えたなという疑念の視線。
それもそうだろう、2000年統治した女王に身内がいるなんて話一度だって出てこなかったはずだ、それが急に現れたと思ったら自分たちのリーダーであるアーデルハイトが途轍もないワッショイをしているのだ。
僕だったら変な魔術をかけられたのではないかと疑ってしまう。
それほどまでにこの話はあんまりにも突拍子のない話であることに変わりはない……のだけれど。
「……ふぅん?アンタがお母様がたびたび口にしてた“お兄様”ってワケ?」
赤い少女、妖精騎士トリスタンが誰よりも先に僕の目の前にいた。
品定めをしている、と言われてもいいだろう。
「見た目は悪くないじゃない、妖精としての格も高いみたいだし?でも……お母様の統治が始まって2000年も経って、今更どのツラ下げてここにいるワケ?」
「トリスタン、彼に無礼な態度を取るのはやめてほしいな。訳あってこのブリテンから遠い世界にいたのを僕が無理を言って連れて帰ってきたんだ。それに……彼は魔術の腕では陛下に並ぶほどの腕の持ち主だ、言葉には気をつけた方がいい」
「そうですね。陛下や騎士長の言葉を疑うわけではありませんが、仮にその言葉が真実であった場合……その態度は不敬罪にあたるぞトリスタン」
「……ちっ、わかったわよ。でも、妖精騎士トリスタンとしては納得しても、お母様の娘としては納得してないから」
「無理もない、僕も君の立場なら同じことを思うさ」
トリスタンが一度、いいや2度ほど僕にガンを飛ばしながらランスロットとガウェインの元へと戻る。
危うくアーデルハイトがモルガンの横から飛び出してきそうだったところだったが、そうならずに済んだことに安堵のため息をこぼす。
「さて、落ち着いたな。今日お前たちに集まって貰ったのは他でもない、我が兄であるレインフォートと予言の子であるアルトリアに正式な勅命としてこのブリテンの主要都市の視察を任せる運びとなったからだ」
モルガンはその勢いのまま言葉を続ける。
視察はグロスター、オックスフォード、ソールズベリー、マンチェスター、ニューダーリントンの女王統治下の主要都市5つと機会があるのならエディンバラとロンディニウムを含めた7都市だ。
妖精騎士たちが統治するニューダーリントンとマンチェスター、風の氏族長オーロラ統治のソールズベリーに僕たちが向かうときには歓待するようにとの勅命と僕たちの視察という名の旅における制約というかルールというものも公言された。
僕とアルトリアは週に一度キャメロットへ帰還すること。
その際は僕が水鏡を使って帰還することが大前提だが、その方法については語られることはなかった。
そして、僕とアルトリアの存在。
特に失われた雨の氏族の王族である僕の存在は絶対に他言しないことを妖精騎士たちは厳命されていた。
そして、僕とアルトリアは正式に女王の命として視察という名の旅を認可されることになる。
「殿下、アルトリア様。以前から陛下に任されていた旅装束と旅道具の準備が整っています。出立の前に一度自室の方までお戻りください」
妖精騎士たちが玉座の間から退室した後、アーデルハイト……もとい、レイレナードが僕とアルトリアにこそっと告げる。
2人でその言葉に頷いて、妖精騎士たちとは違う方向へ足を向けるのだった。
***
「バーヴァン・シー、すこしだけ話をしましょう」
玉座の間から退室したバーヴァン・シーはその足で真っ先に自室へと直帰したはずだったのだが、部屋に戻ったときにはモルガンが既に部屋で待機していた。
「お、お母様……!?」
いつもの無表情は変わらずで漆黒のヴェールと王冠は今は着けていない。
何か気に障ることをしただろうか、と思案したがそれはすぐに思い当たった。
そう、先ほど玉座の間にいたあの男だ。
レインフォート・アーデルハイト。
私の大好きなお母様がたびたび口にしていた“お兄様”と呼ばれる妖精。
私を大切にしてくれるアーデルハイトが敬愛するという“名前”の起源。
私にとってはポッと出のあの男が2人の視線を独占することが気に食わなかった。
「お話は……さっきの……」
「それもありますが、少し親子らしい会話も必要でしょう」
「……え」
「私とお兄様は言うまでもなく家族ですが、私にとってはお前も愛おしい我が娘。娘の近況を聞くのに、理由などいらないでしょう?」
おどろいた。
正直、お母様とは最近ちゃんと会話できていなかったこともあってほんとうにおどろいた。
だって、私はお母様に叱られてばかりだったもの。
『どうしてお前はそうなのだ、バーヴァン・シー』
何度、その言葉に謝罪しただろう。
お母様の期待に応えたい。
でも、全然うまくできなくて叱られて謝って。
見捨てられることが怖くて怯えていた。
だから、いつぶりかわからないほどの温かな言葉にどうしようもなく胸が温かくなった。
「はい、お母様っ!」
久しぶりに、心の底から笑えた気がした。
悪いことをするのは嫌ではない。
お母様に“そうあれ”と願われてアーデルハイトだって頑張る私を応援してくれた。
最近ベリルに会うことはできないけど、彼だって悪であることの手本はみせてくれるし、実際にやることで聴こえる悲鳴は嫌いじゃない。
でも、誰も褒めてくれないもの。
恐怖と悪意を込めた目で見てくるんだもの。
“ほんとうのわたし”では生きていけないんだもの。
なら、お母様に望まれたように悪虐に生きる。
たったひとり、私を救ってくれたお母様が望むように生きる。
そうした対価がこんな優しい時間なら私はいくらでも悪くなれる。
そうでしょう、バーヴァン・シー。
今の私はお母様のために生きる妖精だもの。
たとえこの命が最後の命だとしても……ただひとり、私の幸せを願ってくれたのはお母様だけだもの。
……いまは、アーデルハイトもいるけど。
でも、お母様がわざわざ作ってくれたこの時間を私は……
今回は旅に向かうための最後のお話と、ちょっとだけバーヴァン・シーとモルガンのお話でした。
バーヴァン・シーとモルガンというか、バーヴァン・シーのちょっとした内心と言ったほうが正しいですかね(目逸らし)
なにしろ作者はしがないニワカ(当社比)マスターなれば……
皆様にちゃんと“この子はこういう子だよ”と思ってもらえているか不安になる矮小メンタルでありますゆえ。
それはそれとして、作者とFGOフレンドになった皆さまへご報告を。
作者バーサーカー&キャスター戴冠戦ポッド無料期間中はマスター名がお兄様の名前に変更することになりますので「誰だこいつ……」とフレ解除されると悲しみのあまり咽び泣きますのでお気をつけください。
ひとこと欄もいじる予定ですのでお楽しみいただければと思います。
さて、始まりましたバーサーカー冠位戴冠戦ピックアップ。
読者の皆さまなら既にモルガン陛下とアルキャスをお迎えしている歴戦のマスターの皆様かと思われますが、宝具を重ねる予定の方や万が一まだお迎えしていないマスターさまに関しましては健闘を祈っております。
ちなみに作者はアルキャス宝具4からの変更は残念ながらありませんでした。
それではまた次回のお話でお会いいたしましょう。
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