お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

65 / 83
祝!モルガンピックアップ!!!

トネリコは帰っちゃったけど、モルガンが来たのでとりあえずセーフということで。


第三週遊 『妖精騎士ガウェインvsレインフォート』

 

「はあ!?バゲ子と模擬戦することになったぁ!?」

 

ぜんっぜん意味わかんないんだけど!?

と朝食を終えて機嫌の良かったアルトリアの咆哮が部屋に響き渡る。

 

「昨日わたしが寝てから何があったの!?そもそもいくらレインが強いからって相手は妖精騎士だよ!?そんなのと模擬戦とか本気で言ってる!?」

 

「模擬戦とは言っても身体を温める程度だよ。世界を賭けた戦いでも命懸けの殺し合いじゃないんだ。そこまで気を張るものではない……とはいえだ」

 

真剣な面持ちでアルトリアを見れば彼女は首を傾げて僕を見つめ返す。

今回の模擬戦と言ったってただ、彼女だっての願いだからと言う理由だけではない。

 

「……君がどんな選択をするかはわからないけれど、ここで妖精騎士の実力を見ておくのは悪いことではないはずだ」

 

「…………レイン」

 

「女王歴になってアーデルハイトを除いた1人目の妖精騎士。彼女がこの國を支える一柱であることは間違いない。そんな彼女の力量を少しでも知っておくのはどんな選択をするにしたって必要なはずだ」

 

「うん、わかった」

 

渋々、了承した……といった表情だ。

アルトリアがこの先予言の子としての使命を果たすのなら、必ずぶつかることになる妖精騎士。

ガウェインの名を冠する妖精の実力が如何程のものか、知っておいて損はない。

……まあ、僕としてはアルトリアが聖剣を作るための巡礼の旅に出るとなればいつかは止めに行ってしまうかもしれないけれど。

 

なんにせよ、ガウェインだけが得をする試合ではないということだ。

アルトリアにとってもこの先戦うかもしれない相手を知ることができるのは利点にもなるし、向かうべき道標にもなるだろう。

 

あと問題があるとすれば……

 

「……剣、持ってきてないんだよなぁ」

 

悲しきかな、剣での試合を求められているにも関わらず自身の剣を持っていないのである。

いや、仕方ないだろう。

僕魔術師なんだから。

 

剣は、手頃なものを借りることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

そして、約束の時間になった。

マンチェスターの外れ、広い草原で僕とガウェインは向かい合っていた。

観客にはアルトリア……と、どこから聞きつけたのかメリュジーヌとモルガン、それにレイレナードにトリスタンまでいる始末だった。

 

「……どうして君たちまでここに?」

 

「すみません、レインフォート殿と手合わせさせていただくとなれば陛下にはお伝えするべきかと思い……」

 

「ええ、ガウェインから早馬での知らせがあったので今日1日の政務を午前のうちに終わらせて見にきました。私たちのことは気にせず、思う存分その力を奮っていただければ」

 

いつものすまし顔、しかし口角が上がっているのが隠しきれていない。

というか高々模擬戦だというのにキャメロットの戦力を集めてまで見学に来る必要はないだろうに。

 

チラリ、とトリスタンの方を見れば“どうせガウェインが勝つだろ”とカケラも興味のないご様子。

それに対してアルトリアは『やっちゃえ!レイン!』なんて両手を握りしめてぶんぶん振り回している始末だ。

 

模擬戦開始前から頭が痛い。

軽く手合わせするだけのつもりが観客の多さ、というよりもお互いに手を抜けない状況にあるのが困りどころだった。

 

「互いに胸を借りる程度のつもりだと思っていたけれど……僕も君も手を抜けない状況になってしまったね」

 

「ええ、ですが……私としては好都合というもの。私も手を抜くつもりは一切ありませんので」

 

「……困ったな。魔術を行使しても文句はないね?」

 

「ええ、もちろん」

 

ニヤリと、ガウェインが好戦的な笑みを浮かべる。

全サーヴァント退去前に受けていたあちら側のガウェインが稽古をつけてくれた時と同じ笑みを浮かべていることに若干引き笑いを浮かべつつ、彼女と戦うための武器を探した。

 

「……殿下」

 

「レイ……じゃなかった、アーデルハイト?」

 

「彼女と戦うために武器がなくては苦しいでしょう。こちらをお使いください」

 

差し出されたのは、彼が普段から腰に刺している霊剣。

オークニーの崩壊時に彼に託した“霊剣シャスティフォル”だった。

 

「数千年ぶりの本来の主人との戦ともなればたとえ模擬戦であろうともこの霊剣とて歓喜するというもの、殿下の御言葉通り返却するのではなくこの一時だけでもシャスティフォルに殿下と共に駆ける栄誉を与えてやって欲しいのです」

 

騎士らしい彼なりの気遣いだったのだろう。

剣を愛し、誰よりも剣に励んだ彼だからこそ……2000年以上共に歩んだ愛剣を思っての言葉は嘘偽りなく真に心の底から思った言葉だった。

 

だからこそ、その申し出を断ることなど出来るはずもない。

 

「わかった、この一戦だけ借り受けよう」

 

差し出された剣の柄を握る。

手に馴染む懐かしい感触。

全身に巡る魔力が一瞬にしてシャスティフォルに流れ出し、抜き放った刀身に眩い蒼色の光が灯る。

まだ何も知らない無垢な剣、だからこそ霊剣シャスティフォルは担い手に適した形へと染まる。

 

「それが、貴公の輝きなのですね」

 

「数千年ぶりに握る相棒なんだ、少しばかり乱暴になっても許してくれるかい?」

 

「妖精騎士として、あなたの剣の全てを受けて見せましょう。その代わり……こちらも全力で行かせて頂きます!」

 

その言葉が試合開始の合図となった。

ガウェインの姿が一瞬にして目の前に現れて左下からの逆袈裟斬り。

圧倒的なスピードと比類なき力で振るわれるガラティーンは直撃を受ければ即死は免れないだろう。

 

「数千年ぶりで悪いけど無茶をさせるぞ……!」

 

シャスティフォルに魔力を流し込む。

シャスティフォルの刀身が更に輝きを増し、それに加えて自身の肉体にも強化をかけてジェット噴射じみた威力にまで強化された肉体で応戦する。

初めの一撃を弾く、ニ、三と続いてそのまま十、二十と剣戟が重なる。

その時間、わずか10秒程度。

目にも留まらぬ神速の剣戟が周囲の大地を削り、砂埃どころかあっちこっちに抉られた土や泥を飛ばしている始末だ。

 

 

「……ふむ、ランスロット、トリスタン、アーデルハイト、アルトリアもこちらへ来なさい。そのまま見ていたらあの2人に巻き込まれるぞ」

 

最初の一撃の余波が周囲を抉った瞬間モルガンはアルトリアを含めた4人に自分の元へと集まるように指示を出した。

4人が集まったところでモルガンは指を鳴らし、自身の周囲に結界を展開する。これで仮に泥や土、魔術が飛んできても服が汚れることなどはないだろう。

 

 

モルガンが結界を張り、戦闘の余波を気にしなくて良くなった頃。

ガウェインとレインフォートの模擬戦は更に苛烈さを増していた。

 

振り下ろされる剣は間違いなく最強と名乗るに相応しいほどの物。

しかし、対応する剣もスピードもパワーも負けていない。

ガラティーンとシャスティフォルのぶつかり合いはお互いの刀身がぶつかり合うたびに戦闘の余波を生み出し、大地だけではなくほんの数キロ離れた程度の森の木々すら粉々に消し飛ばしていく。

 

「流石はガウェインの名を冠するだけのことはある……!だが……!」

 

ガウェインの剣が再びシャスティフォルを捉えんと振り下ろされる。

しかし、魔術も使うと宣言していた僕は自身の背後に水鏡を展開してその中へと飛び込んだ。

 

 

****

 

ドォン、とガラティーンが地面にめり込み、ガウェインは相手が消えた瞬間に目に映った魔術には見覚えがあった。

いいや、見覚えがあるどころの騒ぎではない。

ついさっき、自身が仕える主人が使っていた魔術だった。

 

「……これは陛下の水鏡!?」

 

ならば、彼はどこに飛んだ……!

背後……?いいや違う。

頭上でもない、ならばどこに……!?

 

「バカやってんな!!魔術がくるぞ!」

 

トリスタンのその大声と共に頭上から大きな魔力反応を感知した。

 

「雨よ、汚れを祓え……!」

 

パチンッというフィンガースナップの音と共に頭上に現れた魔力の雲から高密度の魔力の雫が零れてくるのを視認して思いっきり地面を蹴り飛ばして後退する。

先ほどまでいた場所にはまるで槍が雨のように降り注いだ光景が映し出されて、咄嗟の後退の判断が正解であったことと警告してくれたトリスタンに感謝を覚えながら次にやってくるであろう攻撃に備える。

 

「風よ───荒れ狂え」

 

再びパチンッという音と共に風の刃がまるで嵐のように渦巻いて猛スピードでこちらへ飛んでくる。

しかし、風の魔術であるならこの身に宿る力で迎撃できる。

逃げているだけでは勝利を得られよう筈もない。

 

ガラティーンを握る手に力を込めて、炎を手に横一文字に振り抜く。

風の刃の中心を切り裂き、その中へと突撃する。

視線の先には感心したようにこちらを見るレインフォートの姿。

やはり、剣術も一流と聞いていたが魔術の腕も大した物だ。

陛下が持ち上げるのもわからなくもない。

 

しかし、陛下はブリテン全ての戦力を集めてもそれ以上の力を持つお方。

たとえ、陛下の兄であり……師であろうとも圧倒的な暴力であるモルガン陛下には遠く及ばない。

 

獲れる、そう確信して嵐の中を突き破りガラティーンに炎を宿しながら振り下ろそうとしたその時……。

 

「───プロミネンス・ガラティーン」

 

豪ッ!

まるで太陽のフレアを思わせるような熱量がその言葉と共に彼の剣に、シャスティフォルに宿る。

 

───まずい、あれに当たって仕舞えばひとたまりもない。

 

騎士としての勘などではない、生物として、妖精として、獣として、全ての感覚が“アレ”に触れてはならないと警鐘を鳴らす。

 

自身が持つ炎とは比べ物にならないほどの熱量を持ったその力の前に、全力で後方へ跳躍する。

 

当たってはいけない、だが……避けられるほど生易しい範囲ではない。

ならば、やることは一つ。

全力を持って相殺することを選ぶしかない。

 

全霊を持ってガラティーンを握りしめる。

放たれた炎を前に、その炎を両断するために全神経を集中させる。

 

熱い、熱い、熱い。

まるで煉獄の中にいるような熱気が迫り来る。

 

だが、それがどうした……?

 

ここで負けることなど許されない。

私は妖精騎士ガウェイン、ブリテンを守護する誉高き騎士の一員……!!

相対する魔術師はたしかに陛下に並びうる魔術師だ。

相対する剣士は間違いなくアーデルハイト卿に並ぶ騎士だろう。

だからこそ、陛下の剣として負けるわけにはいかないのだ!

 

迫る烈火の炎、対するはこの身と剣一つ。

呼吸を整え、炎を切り裂くために構えをとる。

 

「……はっ!!!!」

 

渾身の力を込めた右斜め上からの袈裟斬り。

迫り来る炎を迎え撃って振り下ろした剣は間違いなく炎を切り裂いた。

突破できた、あの太陽のフレアとも錯覚する熱の剣を凌ぐことが……

 

しかし、安堵したその瞬間。

 

振り切った剣の構えのままの私に向かって神速の如く駆け抜けてくる影が───

 

 

 

「僕の勝ちだね、ガウェイン卿」

 

「……ええ、私の負けですわね」

 

首筋に当てられたシャスティフォルの刃が、私の負けを物語っていた。

 

「そこまで、ですね。見応えのある良き試合でした、ガウェインもお兄様もお疲れ様でした」

 

モルガン陛下の声が響く。

同時に首筋に当てられた冷たい刃が離れた。

なんでもないように、軽い笑みを浮かべた彼は確かに聴き及んでいた通りにこの妖精國でも最強格の魔術と剣術を修めた騎士だと認めざるを得ない。

 

「ガウェイン卿、貴女の剣は真っ直ぐすぎる。汎人類史におけるガウェイン卿の剣に通ずるところは確かにあるけれど、もう少し搦手を使うともっと磨きがかかるかもしれないね」

 

「なるほど、参考になります。それにしても、レインフォート殿は本当に剣も魔術も一流なのですね。陛下とアーデルハイト卿の言葉を疑っていたわけではありませんが、あれほどの魔術を無詠唱で繰り出すとは驚きました」

 

互いに手にしていた剣を帯刀する。

彼はその手にしていた剣をアーデルハイト卿に返して私と再び向き合う。

 

「どちらにせよ、いい運動になった。妖精騎士相手に稽古をつけてもらえたのは僕にとってもいい経験になったよ」

 

「それはこちらもです。流石は陛下の兄君、胸を貸していただいたのはこちらの方ですわ」

 

差し出した手を彼が握り返して、戦いの余韻に浸る。

久しく出会えた強敵だった、模擬戦でなければこの首が落ちていたと考えても彼の剣は確かに研ぎ澄まされた絶剣であった。

 

身体の底で、何かが疼いた。

強敵、自身よりも強い陛下にも届きうるであろう騎士。

喉が渇いた、久しく感じていなかった飢えが喉を鳴らす。

 

「───ガウェイン」

 

ヒヤリ、と陛下の冷たい指先が私の喉に触れる。

腹の底から湧き出ていた飢えが一気に引いていく。

上昇していた体温が一気に冷めていくのがわかる。

 

「…………申し訳ありません、陛下」

 

「構いません、強きものに出会ってお前の飢えが現れることはわかっていた。だからこうして私が見にきたのだ」

 

澄まし顔のまま、陛下は私から離れて騎士たちとレインフォート殿の方へと視線を向ける。

 

「お前の渇き、お前の飢えを満たすことは難しいかもしれない。しかし、その力を我が剣としたのも確かだ。女王である私はお前を満足させることは叶わないが……こうして抑制させることは出来る。ガウェイン……いや、バーゲスト。お兄様との戦いは、どうでしたか?」

 

「……強かったです、私が出会ったどんな騎士よりも」

 

「ふふっ、そうでしょう。なにせ、アーデルハイトが仕えた雨の国の騎士団を束ねる人でしたからね」

 

誰よりも誇らしそうに、陛下は笑う。

まるで自分のことのように笑顔を浮かべる陛下はこの数百年で一度たりとも見たことがない少女のような笑顔で…………。

 

「モルガン陛下、私ももっと精進しようと思います」

 

「ええ、期待していますよ」

 

このあと、少しの会話と陛下が模擬戦で私たちが破壊した大地を魔術で元通りにするのを待ってマンチェスターまで帰還することとなった。

 

 

 

 

 

****

 

「レインってあんなに強かったんだね」

 

「まあ、それなりに強いという自負はあるかな」

 

「バゲ子に勝っておいて“それなり”ってことはないじゃん。妖精騎士ってこのブリテンで最高戦力の1人なんだよ?それに勝てるなんて凄いことなんだから」

 

部屋に戻り、シャワーを浴びた僕を待っていたのは不貞腐れたアルトリアの膨れっ面。

 

「妖精騎士の実力を見ておけー、なんて言ってたけどあんな目に見えない剣と何してるかわからんない魔術の連射されてもどうしたらいいかなんてまるでわかんないし。ただレインが強いことしかわかんなかったんだけど」

 

「そうは言われてもな、手を抜いたら彼女に失礼だし……君だって何も得られないだろう?魔術の組み合わせや連携なんかも学べるいい機会だと思ったんだけれど」

 

「確かにガラティーンの魔術をどう使うかとか、その後に攻撃をつなげることの重要性なんかは理解できたよ?でも、それと出来るかは別っていうかぁ」

 

はあ、と大きなため息ひとつ。

ベッドに大きく腰掛けたアルトリアはやや不満げなようだ。

正直な話、加減をする余裕はなかった。

あの時、剣が彼女の首に届いていなければ次はルクス・アロンダイトを使うことも視野に入れていた。

 

「まあ、この先も魔術戦を見る機会はあるさ。それに、妖精騎士がどれだけ強い相手かという尺度は君の中にも出来ただろう?」

 

「とにかく強いことしかわからなかった」

 

「………………」

 

「な、なんだよう!!こちとら正真正銘の田舎妖精だぞぉ!」

 

がおー!と擬音が出そうなほど大きく口を開けて反論してくる。

田舎妖精なことと妖精騎士がどれほどの強さを持っているか測る尺度は別だと思ったのだけれど、それは言わないに越したことはないだろう。

 

何はともあれ、この世界のガウェイン卿がどのくらいの強さなのかはわかった。

確かに強いが、相手をできないわけではない。

彼女はもしかしたら全力ではなかったかもしれないが、僕だってまだ使っていない魔術は山ほどある。

 

いざとなれば、旅の途中にアルトリアを守るだけのことは出来るだろう。

それを知ることができたのは僕にとっても良い収穫だった。

今のブリテンで僕の能力は通用する。

少なくともメリュジーヌ以下の存在には負けないというのは堅いだろう。

 

「しかし……実剣も必要にはなってくるか」

 

「…………?レイン、剣が欲しいの?」

 

「まあ、そのうち必要かなと思ったくらいだね」

 

「ふーん、今すぐ欲しいってわけじゃないんだ」

 

「そうだね。追々必要かな、と言った感じだ」

 

「……言ってくれれば造ったのに」

 

ボソッとアルトリアが小さく何かを言ったけれどあまりよく聞き取れなかった。

 

「僕の剣のことはまあ、そのうちでいいだろう。それよりもアルトリア、明日はマンチェスターを少し歩いてみよう。認識阻害の魔術は掛けなければいけないが、見たところ穏やかな村だ。旅の始まりにはちょうど良いかもしれない」

 

「うん、それはもちろん。キャメロットに戻ることも考えたら明日まで滞在して水鏡で帰るってことで良いんだよね?」

 

「そうなるね、なんにせよ無事に一つ目の領地を見れるのは本当に助かるよ」

 

アルトリアの隣に腰掛けて一息つく。

しばらく黙っていたアルトリアだったが、何かを思い立ったように彼女は口を開いた。

 

「…………レインは妖精眼を閉じる方法は知ってる?」

 

「……僕の場合は千里眼と妖精眼を切り替えることで普段は妖精眼を閉じてはいるんだけど。そうだな、僕たちの眼は基本的に閉じることはできない。それがこの妖精の住むブリテンでどれだけ残酷なことかは……言うまでもないけれど」

 

「レインが居たっていう汎人類史……?っていうところは妖精みたいな嘘と欺瞞で飾られた言葉ばかりじゃなかったの?」

 

「ふふっ、そうでもないさ。人間も基本的に嘘と欺瞞で飾られた言葉をよく使う。種族の壁、小さないざこざが何十年にも渡る戦争のきっかけになったこともあった。怨嗟と憎しみ、果てない殺し合いの末に何も残らないなんてザラだったようにも見える」

 

「…………」

 

「でも、それだけじゃないんだ。人間はそこから手を取り合って生きていける、発展していけることも僕は知っている。どれだけ醜くて残酷な生物であってもそれを覆せるほどの希望も持っていたんだ」

 

汎人類史に転生してから千年以上人を見守ってきた。

幾度となく行われた国同士、種族同士の戦争。

それを超えて生きて、文明を発展させてきた協調性は妖精には到底できないことだった。

 

「言葉の裏にある真実を見る僕らの眼は確かに生物を信用できないものとして映してしまう。それは仕方ないことだけれど……アルトリアもそれだけじゃないことは知っているだろう?」

 

「……うん、それはわかってるつもり」

 

「なら、見えるその真実をどう受け取るかは君次第だ。醜く、残酷なものとして捉えるか……それとも、君の行動を正しくするための動力として扱うか。なにせ、普通は得られない特別な眼であることは変わらない。自分自身が信じられるものを見つけるための決定材料程度に思っておくのが一番楽だよ」

 

立ち上がり、部屋に用意されたティーセットに手をつける。

重苦しい話ばかりではアルトリアの心も疲れてしまうだろう。

用意されていた茶葉はキャメロット印のアッサム。

ミルクも用意されていたことからロイヤルミルクティーにするのが一番良いだろう。

 

慣れ親しんだ手順でミルクティーを淹れ、アルトリアに手渡す。

なんにせよ、この眼に関する悩みというのはアルトリアくらいの年頃では一番の悩みの種というのも理解はできる。

実際に幼い頃の僕もその手の悩みは勿論あったのだから。

 

「長い目で考えていくしかないのかな」

 

「そうだね、すぐに解決するような問題じゃないのは確かだ」

 

チマチマとティーカップに口をつけてアルトリアはため息を吐く。

理解できる、と心の内で頷きながらも僕はアルトリアの言葉に明確な答えは出せないままなのだった。

 

 

 




皆様、冠位戴冠戦に宝箱イベント楽しんでいらっしゃいますでしょうか。
リンゴがない?もはや虹リンゴ……もといコンペイトウすら消費しているマスターの皆様も多いことでしょう。

作者はマシュの絆を15にするためにあと170周あまりをすることが確定している始末でございます。

それはそうと本編のお話。
現在のお兄様はその存在の7割近くが妖精として復帰してきています。
汎人類史に転生した時に得た『人間』としての属性は特別な妖精としての能力である『妖精炉』へ接続することでその割合を妖精へと傾けてしまうわけですね。
ただでさえ時間神殿で大暴れした後、時空を越えてきた時にメリュジーヌから離れてその属性をさらに削ったことで現在人間3割の妖精7割という割合になっています。

ちなみに、聖剣未装備の7割お兄様の出力はどの程度?
A.巡礼の鐘2凸アルトリアと同等レベルです。

強いですね()

さて、そんなこんなで久しぶりの戦闘描写いかがでしたでしょうか?
できるだけ派手に、楽しく見ていただけるようにしたいところですが思い通りにいかないことも多く…………

それはそれとして!!!

みなさん聴いてください!ついにお兄様がイラストに!!!!
かぶり猫様よりオークニーでの王子様お兄様のイラストをいただきました!


【挿絵表示】



【挿絵表示】


表情差分までついて豪華ですよねぇ……!
このバチくそイケメン櫻井孝宏ボイスお兄様に甘やかされて育ったトネリコがブラコンになるのは仕方ないのでは……?
この神イラストはあらすじの方にも掲載しておきますのでもう何回もみなさん見てくださいね!

それでは次回、また会いましょう!
皆様の感想と高評価、お待ちしてます。
お気に入り登録とここすきもお待ちしてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。