お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

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祝!トネリコピックアップ!!!

祝!アルトリア・キャスターピックアップ!!!


第七周遊 『喧騒』

 

「…………」

 

「おう、死神が爺の命を刈り取りに来たってか」

 

大穴周辺の森林、その一角で村正はその霊核をメリュジーヌに貫かれながらも辛うじてその存在を保っていた。

 

「しかし、参った。あの騎士、(オレ)の霊核を徹底的に狙ってきやがった……普通のサーヴァントなら12回は死んでたぜ」

 

叩き落とすまでに苛烈な連撃を加えたのは彼の姿を見ればわかる。

放っておいても彼は死ぬだろうが、それでも記録の上とはいえ知っている顔なのも僕の判断を鈍らせていた。

 

(オレ)の息の根を止めにきたんだろ?」

 

「そのつもりではあるんだが……」

 

「女王サマの兄貴でも判断が鈍るってか?」

 

「彼女だって昔からああだったわけじゃない。彼女の命を狙う君にはどうでもいいことかもしれないが……」

 

「違いねぇ」

 

ゲホッ、と大きく咳と共に血を吐く村正に思わず顔を顰める。

傷が深いのは見ればわかるが、こうして話しているのも辛いだろう。

モルガンへの危機と彼を生かしておくことでの女王統治の世界が崩れる可能性だって少なくない。

 

少なくとも、僕の想定通りに異星に仕える使徒だとしたらどのみちこのブリテンには不必要だ。

 

 

───だが、僕にとっては利用価値はある。

 

 

「千子村正、君に取引を申し込みたい」

 

「……取引?お前さん女王の兄貴だってのに何言ってんだ」

 

「僕は今、アルトリアという子と共に旅をしていてね。その子は所謂、予言の子と呼ばれる子なんだ。その子が僕の元から旅立ち、己の使命を果たそうとしたその時、ここで見逃す代わりにあの子の助けになってやってくれ」

 

「……アンタへのメリットが見当たらねぇな」

 

「そうかもしれないな、もしアルトリアとの旅でモルガンに危害を加えるのならば僕は今度こそ君を殺す。だが……下総國で立香ちゃんの力になってくれたという理由でひとまずは十分さ。それに……これは取引と言ったが、君に拒否権なんてないだろう?何をどうしたって君は今抵抗できないんだから」

 

「……そういうことかい」

 

「ああ、そういうことさ」

 

永遠にも思える一瞬の時間、しかし村正はこの言葉を無視するほど愚かでもなかった。

 

「そのアルトリアってのは……どんな娘だ」

 

「金髪で碧眼、少し特徴的なツインテールでモルガンを幼くしたような顔立ちだろうか。性格は天真爛漫、と言った方がいいかもしれないが肝心なところで自信がなくなる」

 

「そりゃ手のかかりそうな娘だ」

 

「とびっきりのじゃじゃ馬さ」

 

くすっと少しだけ笑い、僕は彼へと背を向ける。

 

「僕はここで何も見なかった、そういうことにしておく」

 

「…………そうかい」

 

「ああ、それとこれは独り言だが……“うっかり”魔力の籠った宝石を落としてしまったらしい、どこに行ったかわからないから誰かに拾って使われてしまうかもしれないな」

 

それだけを言い残して僕は水鏡を開き、その中へと足を進める。

 

「───約束は果たせよ、千子村正」

 

「……命の恩人の頼みとありゃ一働きくらいしてやらぁ」

 

その言葉を聞き届けて僕は今度こそ水鏡の中へと消えていくのだった。

 

「───難儀な性格してるぜ」

 

そして、“うっかり”落としたと口にしたその宝石で一命を取り留めた千子村正もまた、ゆっくりと歩きだしたのだった。

 

 

 

 

****

ほんの少しだけ時は遡りレインフォートが女王の間から立ち去ってすぐ。

女王の間にはモルガンとバーヴァン・シーだけが取り残されていた。

ここ最近はレインフォートが帰城するタイミングにあわせてバーヴァン・シーもキャメロットに帰城しており、昔の母……モルガンの話を聞いていたりしたのだが……気難しいが根は優しい母との時間が少しでも欲しいと思っていたのもあって、一度相談したことがあった。

 

「どうやったらお母様との距離を縮められるの?」

 

「なんだい、藪から棒に」

 

「お前……まあいいや伯父様にはすっげぇ優しい顔するじゃんか。私にはあんな優しい顔見せてくれたことねぇし、なんていうか……あんなの一面もあるんだなって思ってさ」

 

「……君たちの間には確かにちょっと溝があると言うか距離があるように思うのは確かだね」

 

「だろ?だからお母様と距離を縮められる方法を教えてってハナシ」

 

そうして幾つかの方法を教えてもらった中で、1番簡単なものから試してみることにしたのだ。

 

「お母様、このあと少しだけ時間ある……?」

 

「……どうしました?」

 

「その、こんなことあった後に言うのもどうかなって私も思うんだけど。1時間……ううん、30分だけでもお茶会なんて」

 

「…………」

 

「あっ……ごめんなさい。やっぱりダメよね?侵入者があった後にこんな誘いなんて。ま、また今度時間があるときに……」

 

モルガンから帰ってきた無言の返答。

それが拒絶の意味と受け取ったバーヴァン・シーはすぐに自分の言葉を取り下げた。

つくづく空気の読めない自分に腹が立つ。

せっかくレインフォートに母との距離を縮めるための方法をいくつか教えてもらったのに肝心の自分がこれでは全く意味がない。

悔しくて悔しくて、ここに立っているのが嫌になって。

逃げるように部屋を後にしようと踏み出した。

 

「待ちなさい、バーヴァン・シー」

 

モルガンの声がバーヴァン・シーの足を止めた。

 

「……嫌とは、言っていないでしょう?」

 

「…………ぇ、それって」

 

「貴女からの誘いは数年ぶりですね。私も驚きで少し返答が遅れてしまいました、お茶と茶菓子をアーデルハイトに用意させましょう」

 

「いいの……!?やった……!ありがとうお母様!」

 

「それに、そのように畏まる必要もない。お前のためならいくらでも時間は作ろう、30分などと遠慮はしなくてもいいのです」

 

さあ、行きましょう。とモルガンが歩みを進める。

嬉しくて嬉しくて、思わず顔が緩むのが自分でもわかる。

きっとこの後の時間は楽しい時間になる。

アーデルハイトのお茶とお菓子は美味しいし、モルガンとの話は絶対に楽しいに決まっている。

 

不意に現れて信用ならないと思っていたレインフォートにも感謝の一つでも言ってやらないと、とこの時のバーヴァン・シーは浮かれていた。

 

 

 

結果、モルガンとバーヴァン・シーのお茶会は3時間以上にわたっておこなわれ、夕方からの執務を行うモルガンの表情は普段よりも柔らかかったという。

 

 

 

 

 

 

 

****

 

「しかし、予想はしていたけれどレインフォートさんは今のカルデアにはいないんだね」

 

「はい、レインフォートさんは南極のカルデアから脱出する時に銀色の髪のサーヴァントと取引をしたようで、私たちを逃す代わりに連れ去られてしまいました」

 

「僕が一度捕まった時にはすでにいなかったのはそういう理由があったのか」

 

地獄界曼荼羅を突破し、異星の神の使徒である羅刹王・髑髏烏帽子蘆屋道満を討ち取ったノウム・カルデア。

オリュンポスで傷を負ったものの致命傷を避けたキリシュタリア・ヴォーダイムに同じく予定よりも早く目が覚めたカドック・ゼムルプスの2名は現在のカルデアの組織を確認しつつ、キリシュタリアにとってはほんの一時期の師であった男の不在に肩を落としていた。

 

「……アイツがいる場所が何処かなんて分かりきってるわ」

 

「虞美人さん?」

 

「……いや、彼女はヒナコでは?」

 

「芥ヒナコは人間としての姿、本来の私はこっちなの」

 

顎に手を当てて本気で考えたようなキリシュタリアに虞美人はため息をつきながら答える。

それに納得したのか、キリシュタリアは「そうだったんだね」と一言だけ呟いて虞美人の言葉を待つ。

 

「レインフォートがいるのはブリテン異聞帯よ。これは間違いないわ」

 

「ブリテン異聞帯となるとベリルの管轄か」

 

「しかし、攻略は少し難しいだろうね。空想樹はもう枯れてしまっているけれど、あそこにはロンゴミニアドをオリュンポスまで撃ち込める女王モルガンがいる」

 

オリュンポスで天空より現れた光の槍。

かつて第六特異点で目にした最果ての光と同じものだったのを立香は覚えている。

 

「どのみち次の目的地はブリテン異聞帯だ。ストーム・ボーダーの強化のためにもロンゴミニアド級の兵装は欲しいと思っていたからね」

 

「ふむ、では作戦開始までは各員身体を休めておくように。特に藤丸、お前は作戦終了したばかりなのだからゆっくりしておきなさい」

 

「はーい」

 

気の抜けた返事をしたものの、立香の頭の中にはあの銀の少女の姿がチラつく。

 

見たことのない英霊だった。

見た目だけならば華奢な少女だった。

だけど、あの瞳を見た時……イシュタルやエレシュキガル以上の威圧感があったのを覚えている。

数々の異聞帯を踏破しても尚、彼女クラスの英霊はほぼいないといっても過言ではないだろう。

 

「……ところで、何当たり前のような顔をして司令室に集まっているのかねキミ達ィ!?」

 

ゴルドルフ新所長の怒声が司令室に木霊する。

一体誰のことだ……?と首を傾げる元・クリプターの三人。

当然のようにボケ倒すこの三人が元々は敵だったと考えると今このような環境に入れることが幸福のように思える。

 

「ああ、そうだ後輩」

 

「……?ぐっちゃん先輩?」

 

「あんた私にだけ随分と馴れ馴れしいわね、まあいいわ。レインフォートの事なんだけど、ブリテンに行くなら以前までの半人半妖の彼だと思わない方がいいわ」

 

「それってどういう……?」

 

「これから行くブリテン異聞帯はあいつの故郷だから。もし、妖精としての属性が完全に戻っているなら私たちが束になっても勝てないわ」

 

虞美人の言葉に思わず眉を寄せる。

司令室にいる誰もが彼女の言葉の真意を聞くために黙り、彼女は言葉の続きを口にした。

 

「だってあいつ、亜麗クラスの妖精だもの。この星から直接使命を与えられて産まれた、私たち英霊では太刀打ちできないくらいの霊基を持った妖精よ」

 

サラッと告げられたその事実に再びゴルドルフ新所長の絶叫が響き渡るのであった。




リアルも少し落ち着き始め、冬本番を控えたこの時期に少しでも投稿しておこうと思いました。
カルデアの現状は曼荼羅突破直後、メンバーとしては負傷中のクリプター2名と鯖化したぐっちゃん先輩が追加されてます。
……この先どうするかって?

この作品のメインシナリオはアヴァロン・ル・フェだけだから何も考えてません。
強いていうならキリ様込みのバカをやるために生存させました()

さてさて、ゲーム本編はあと2日で終章・序が始まりますね。
おそらくインドラやノア方式となるキャスター戴冠戦の実装キャラは誰なのかも楽しみなところです。

皆さんの鯖予想も感想と一緒に教えてくださいね。

作者は安直にソロモン(ゲーティア)だと思ってます!

それではまた次回のお話でお会いしましょう。

皆様の感想と高評価、お待ちしてます。
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