お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン 作:今井綾菜
配布サーヴァントの件、前回の僕大当たりでしたね。
ソロモン(ゲーティア)はまあみんな知ってたよねという話ですが()
「次の目的地って何処だっけ?」
「ニュー・ダーリントンだね。妖精騎士トリスタンの領地、悪名高き国立殺戮劇場がある場所だが…………」
週明け、アルトリアと次に向かう街の確認をしていたのだが……どう見てもアルトリアの顔色が悪い。
無理をしている、というわけではないけれどシンプルに行きたくないと言った顔だろうか。
「……ニュー・ダーリントンへは僕だけで行こうか?」
「……ううん、大丈夫。気分悪いけど旅は続けるよ」
しかし、そう告げるアルトリアの顔色は本当に悪い。
無理をして連れて行くような場所でもないが、モルガンの言いつけ通り僕たちはこのブリテンを見て回るという役割はある。
「このくらいで逃げちゃダメなんだって。レインからも陛下からも学んだから」
「……そっか、じゃあいつも通り向かおうか。でもほんの少しだけズルしてしまおう。ニュー・ダーリントンへは向かうけれど今回はゆっくり向かって滞在は一日、そしてトリスタンに挨拶して帰ってくるのでどうだい?」
「うん、そうする」
「じゃあ今回は半分以上が野宿だ。久しぶりに猪肉のシチューでも作って食べようか。猪狩りはアルトリアに任せたよ」
アルトリアの自室となった部屋で水鏡を開いて、2人でその中に消えて行く。
ゲートの先はキャメロットの西口、ここから東に歩いていけばニュー・ダーリントンへ辿り着ける予定だ。
「さて、久しぶりにたくさん歩くよ」
「うわぁ……それはそれで嫌かも……」
「ワガママ言うんじゃありません」
「はぁい、じゃあ行こっか」
やる気のなさそうな感じで歩き出したアルトリアに続くように、苦笑いをしながら僕も彼女の隣を歩きはじめた。
1日目。
「なんだかんだ言っても野宿にも慣れたよね。あの森の中の家が懐かしいよ」
「あの家ももうしばらく帰っていないから、1日くらい帰ってしまおうか?」
「それしたら毎回帰りたくなるからダメ!それに、わたしはこうしてレインと焚き火を囲んで話すの好きだから、これでいいの」
「そっか、なら今後もこの旅の仕方にしようか」
「とは言っても、グロスターはキャメロットからすぐそこだし、ロンディニウムに向かうなら後一回だけだけどね」
「言われてみれば確かにそうだね。じゃあロンディニウムへの旅も楽しみにしておこう」
2日目
「まって!待って待って!!!レインも見てないで助けてよ!!!」
「いやぁ、怒り狂った猪を止めるだけの力は僕にはないなぁ」
「嘘だ!!!!バゲ子相手に勝ったくせに何言ってんの!!!」
猪に追いかけ回されるアルトリアをニコニコと笑いながら見守っていたのだがアルトリアの大声を聞くたびに猪のボルテージが跳ね上がりより苛烈に追い回され始める。
「杖!せめて杖頂戴!わたしに向かって杖投げてくれるだけでいいから!」
「本当に放り投げていいのかい?」
「いい!取り敢えず杖があれば戦えるから!」
その言葉に頷いてアルトリアの方へと杖を投げる。
意外と重たいな、などと思ったけれどこの杖を取ったらこの面白い追いかけっこも終わりかなと思っていた。
そう、思っていたのだ。
「「───あっ」」
コツン、という軽快な音と共にアルトリアの杖が猪の牙に当たり、その勢いのまま飛ばされてしまった。
「や、やだああああああ!待って本当に助けて!止まれ止まれ止まってぇぇええええ!!!」
「あっははははははっ!!!!!」
「笑ってないで助けろぉ!!!!!!!」
涙目で逃走を再開したアルトリアを見て笑い転げていたら飛んできた怒号に僕は笑いすぎて溢れてきた涙を指で拭って猪相手に指を向ける。
「あはは……本当に面白かった」
空間を指でなぞり、そこから水の刃を生成して猪を狙って放つ。
ガンド感覚で放てるまでに改良したティア・フェイルノートの簡易版だ。
水の刃はアルトリアを追いかけていた猪の頭を綺麗に切り落としてそのまま絶命させる。
問題なのは切り落とした頭が慣性そのままに、安心したアルトリアに激突したことだろうか。
森の中に1人の悲鳴と1人の笑い声が再び響いたのだった。
3日目
僕たちもだいぶ遠くまで歩き、大穴付近の東側街道まで来た。
アルトリアといえば昨日猪の頭が直撃した腰を押さえながら、トボトボ歩いている。
それに加えて機嫌が悪い。
もうこれ以上ないほどに機嫌が悪い。
「……なんだよぉ」
「いや、なんでも……ふふっ」
「なんだよぉ!!そんなにわたしの腰に猪の頭が当たったのが面白い!?」
「申し訳ないけどすごく面白かった」
「レインがもっと早く助けてくれればこんなに痛い思いしなくて済んだのに!」
腰痛に悩まされるアルトリアを笑いながらゆっくりと歩を進めていった。
4日目
4日目はあいにくの大雨となった。
野宿続きではあるものの流石に今日はいつものように歩くわけにもいかない。
「えへへ〜!レインもセンスある可愛い傘とか持ってるんだ〜!」
「僕が持っているというよりは創り出したという話なんだけど」
「あ〜!聞こえなーい!空想具現化なんて高等妖精にしか使えない技術なんてわたしみたいな田舎妖精にはわからないのです!」
「しっかり理解してるじゃないか」
呆れ顔のままアルトリアの隣で傘をさしながら歩いている。
彼女に渡した傘は昔に世界を見ていた時に見た傘だったのだが、ここまで上機嫌になるのなら創ってよかったと思った。
しかし、アルトリアの長いツインテールも時々雨に濡れてしまっていた。
新しく手に青色のリボンを創り出してアルトリアを木の陰に誘う。
「……?どうしたの?」
「髪が濡れてしまっているだろう結んであげるから、じっとしていて」
「えっ!?レイン髪結べるの!?」
「失礼だな、昔のモルガンに髪の結い方を教えたのは何を隠そうこの僕だぞ」
「えぇ〜?ほんとにー?」
「まあ見ていなよ、可愛くセットしてあげるとも」
雨にほんのり濡れている髪を風の魔術で軽く乾かしてアルトリアの金糸の髪を手慣れた手つきで結んでいく。
「なんか本当に手慣れてるね」
「だから言っただろう?あの子も昔からアルトリアみたいに髪を伸ばしていた子だったからね。彼女に教えるために僕自身がまず身につけたというわけさ」
「わたしなんていっつもふたつ結びだから気にしたことなかったや」
「せっかく綺麗な髪なんだ。可愛らしい結び方の一つくらいは覚えた方がいいかもしれないね。身だしなみを整える魔術で今から結ぶ形を記憶させておくのも手かもしれないが」
「キャメロットに帰ったらやり方教えて?出来なかったら……魔術で頑張ってみる」
「それがいい、1日使って教えてあげるさ」
軽い雑談を終える頃には綺麗な編み込みポニーテールの完成だ。
何を隠そう編み込みは僕の得意な結い方だし、絶対この髪型はアルトリアに似合うと思っていた。
「なんか、普段とは違うから変な感じ?」
「アルトリアの髪は長いから掛かる重量の変化でそう思うんだろう。とても似合っているのは僕が保証するよ」
「えへへ、そっか!ありがとう!」
土砂降りの雨の中を2人で歩いて、夜は防水完璧なテントで過ごした。
5日目
僕たちもだいぶゆっくり歩いてきたとは言え、もうニュー・ダーリントンもすぐそこにまで近づいてきた。
僕とアルトリア自体はこの姿が直接認識されないように認識阻害の魔術を重ねがけして旅をしているけれど、僕には会いたくない人間がいる場所でもある。
そう、このニュー・ダーリントンにはベリルがいる。
バーヴァン・シーの館、協会、市井と当然ながらあらゆる場所にやつは現れる。
かといって街の近くでキャンプなんてしていたら怪しまれるのも分かりきっているのもあって、僕たちは街へと歩を進めることにしたのだった。
****
「遅いっての」
そして、ニュー・ダーリントンにたどり着いたその日の晩。
僕とアルトリアで一部屋取った宿にこの街の領主であるバーヴァン・シー。
もとい、妖精騎士トリスタンの姿があった。
「伯父さまと田舎妖精が今週来るっていうから待ってたってのに、5日目の夜にたどり着くとかどんだけノロマなワケ?」
「まあ、そこは許して欲しい。キャメロットからここまでは遠いんだ、旅のコンセプトとしてもそう易々と水鏡で移動というわけにも行かなくてね」
「ふぅん……?まあ、いいわ。一応、私の方でベリルとアンタたちが鉢合わせないように誘導してやるよ。お母様とアーデルハイトからの頼みじゃ流石の私も無下にできねぇし、久しぶりに顔合わせてやるのもいいかもって思ってたからちょうどいいわ」
手を振りながら、明日の巡回ルートを机に置いて部屋を後にしていく。
赤い彼女がいなくなったことでアルトリアもやっと緊張の糸が緩んだのか、思いっきり大きなため息を溢すのだった。
「わたし、あの子のこと嫌いじゃないけどなんだかとっつきにくいんだよねぇ……」
「そうかい?話してみると素直でいい子だったよ、きっと君とも仲良くなれるさ」
「ほんとかぁ?コミュ力お化けのレインと陰気くさい田舎妖精のわたしじゃレベルが違うんだぞぉ!」
「陰気くさいわけじゃないだろう、僕のセンスはともかくモルガンやアーデルハイト……あとトリスタン辺りにキャメロットで服を仕立ててもらおうか?」
「そんなレベルの高い服着こなせるわけないだろぉ!!!」
アルトリアの怒声が部屋の中に響く。
防音の結界を張っておいて良かったと心の底から思いながら、五日目の夜も静かに更けていくのだった。
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ノウム・カルデア。
ストームボーダー内食堂。
「それで、レインさんが亜麗……?ってどのくらい強いんですか?」
「はぁ、お前ねぇこれだけ英霊や神霊、精霊と契約しておいてそんな初歩的なことも知らないの?」
「まあ、ヒナコ。彼女は私たちよりも経験はずっと多いけれど、知識の面では私たちに一日の長があるということで説明しておくのもいいんじゃないかな」
「……あんた、そんなキャラだった?はあ……わかったわよ。後輩にとっては勉強、マシュと他2人にとってはおさらいってことでよく聞いておきなさい」
大きくため息をついた虞美人はブリーフィング用のホワイトボードを近くから引っ張り出してきてそこにペンで書き込み始める。
「まず大前提として、私のような精霊とレインフォートの妖精。ルーツとしては星の触覚という面では同一であると言えるわ。あんたたち人間と違って長命で、そもそもの価値観が違う……善悪の概念がなく、人間から見たら厄災とも取れる行動を遊び感覚で引き起こすのが妖精や精霊といった種族よ」
「でも、先輩やレインさんは善悪の概念があってどちらかと言えば人間的な思考を持ってると思うんですけど」
「私やアイツは例外的なものだと見たほうがいいわ。それで妖精の中で特に優れたもの、星の触覚として明確な使命を帯びて生まれたものを『亜麗』というの。ここにいた時は半人半妖の中途半端な出力だったけれど、それでも並のサーヴァントじゃ太刀打ちできないほどの霊基だったわよ」
「実際、僕はそんなに関わりがあったわけじゃないからそんなに知らないんだが……レインフォートはどれくらいの力があったんだ?」
「そうね、50%の状態でいわゆるトップサーヴァントクラス。その枷を全部取り払ったなら……主神クラスじゃない?星の内海から生まれた純粋な妖精は並外れた能力値を与えられているはずだもの」
「……そういえば、レインフォートさんは終局特異点でアルトリア・オルタさんから聖剣を借り受けていました。しかも、宝具としてしっかりと使えていたことも記録には残っています」
「……アルトリア・オルタと言ったら、あのアーサー王の黒化した姿だろう?その聖剣ってことはエクスカリバーを十全に振るってたってことか?」
信じられない、と言ったふうに顔に手を当てて天井を仰ぎ見るカドック。
そんな光景なら見てみたかったと口にするキリシュタリア。
凄かったんですよ!と熱弁する立香に同調するマシュ。
虞美人は説明してやってるのに勝手に盛り上がるなと若干呆れ顔のまま再び口を開いた。
「聖剣、しかもエクスカリバーを握る資格があるというならそれこそアイツの使命に関わる情報よ。アイツともし戦った時に聖剣を手にしているか、属性がどれだけ妖精に戻っているか、それが鍵になるわ」
「もし、両方とも揃っていたら?」
カドックの問いかけに虞美人は少しだけ考え込む。
しかし、その答えは考えるまでもなく出ていた。
「勝てないわ、確実にね。真祖の姫君を相手に丸腰で戦うようなものよ。それならまだ、南米のORTを遠目に見るほうが現実的ね」
「そんなレベルか……次のブリテン異聞帯は僕やキリシュタリアは怪我が治ってないから力になってやれないが、レインフォートと1番付き合いが長いのはお前たちだろう。今まで通りやればどうにかなるさ」
「うん、レインさんなら今の世界の事情を話せば絶対に理解してくれる」
「そう、ですよね。レインさんなら……きっと」
立香の言葉にマシュが頷く。
彼女たちにとってはあの時自分を犠牲にして自分たちを助けてくれた人。
離別だけでなく再会の余地があるのなら、会って話して、再び手を取り合えると信じている。
だって、敵として立ちはだかった3人のクリプターはこうして仲良くなれたのだから。
「絶対に、諦めないよ」
だから、待っていてください。
前回から話の終わりにカルデアパートを挟むようになりましたが、皆さん楽しめていらっしゃいますでしょうか?
まあ、作者自身クリプター達のエミュがとても不安なので震えながら書いているのですが()
なんとなく雰囲気だけでも似ていたら作者の勝ちですね、異論は認めません。
さて、話題は変わり冠位戴冠戦/BOXイベントですが。
作者は3つ目のクラススコア全解放(キャスター)を終わらせるために560周終わらせてきました。
約220箱程度ですね、QPも72億を超えてそろそろカンストが見えてきました……。
作者の冠位はもちろんトネリコ(フル強化済み)、毎日数万ptのフレポを持って帰ってきてくれてニッコニコです。
作品の感想と一緒に皆さんの冠位キャスターを教えてくださいね!
そして最後に一言、ロード・ログレスさん一体誰……????
皆様の感想と高評価、お待ちしてます。
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