お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン 作:今井綾菜
本年も拙作をよろしくお願いいたします。
ぺぺさんのエミュ終わってたらごめんなさい。
あとブルスカくんでお兄様の小話やあとがきで話してる内容の進捗なんかを話していく予定なので気になる方は作者のマイページからチラ見してみてください。
グロスターにたどり着いて4日目。
アルトリアは早朝から自作した財布にモルポンドを詰め込んで今日も彫金、鍛冶屋を巡りに出かけて行った。
昨日まで一緒に出回っていたのだが、今日は寄りたい店のピックアップを全て終えたらしく時間をかけて回ってくるんだとか。
ようやく年頃の少女らしく楽しむと口にしたアルトリアの代わりにグロスターの視察は僕がすることにして身なりを整えて街へと足を向ける。
街を歩いていても見えてくるのは相変わらずの内面のみ。
唯一マシなのは、この街に住まう妖精たちが他の街に住まう妖精たちよりも満たされていることで言葉の裏側がまだ不快感が少ないことだろう。
帰城の日程を考えるとここにいるのはあと2日。
ある程度この街も見て回ったこともあって何処に行くかというところだったのだが……
ふと、目に入った服飾店。
見たところ繁盛店なのはすぐにわかったが、僕の目を引き止めたのはそのデザインにあった。
明らかに、このブリテン発祥のデザインではない。
どちらかといえば現代で通ずるデザインだ。
……というより、どう見たって汎人類史でよく見るデザインだった。
「…………チェンジリングでこちらに人間が来てしまったのか?」
全くもって逞しい人間もいたものだと思い、興味本位で店の扉を開く。
時間もまだ早かったこともあり、店の中にはまだ客がいない。
店の奥からカツカツとブーツの踵が床を叩く音が聞こえる。
「いらっしゃいませ……って」
「…………は?」
硬直する、妖精と人間。
お互いにこんなところにいるはずがないと思考がまとまらず沈黙すること数瞬。
「アナタ、レインフォートじゃない!?!?」
「ぺぺ!どうして君がここに!?!?」
無音の店内に成人男性2人の大声が響く。
それもそうだ、ここにいるはずのない人物が目の前にいれば大声だって出る。
「いいや、ベリルがいるんだから君がいたっておかしくはないだろうが……」
「アナタの方は、聞かない方がいいって感じかしら?」
「いや、大したことじゃないさ」
店内を一度眺めて、ペペロンチーノへともう一度視線を向ける。
「いい店だ。君、服飾のセンスもあったんだな」
「そうなの!私、今じゃペペロン伯爵なんて呼ばれてるのよ!」
「爵位!?僕がここにきてからもうすぐ2年になるかというところだけど一体いつの間に!?」
驚きの連続、元同僚の知らない才能を知ってしまった瞬間である。
いや、彼はもとから服飾のセンスは良かったか。
それを自分でブランド展開するまでとは思っていなかったけれど。
「どちらにせよ、ベリルがいる時点でよもや……とは思っていたんだ。人理の裏切り者となったとしても、また会えて嬉しいよ」
「その言葉の通りじゃあ、一通り事情は知ってる……ってことでいいのかしら?」
「僕が知っていることはそう多くない。君が語ってくれるなら、それに越したことはないけどね」
「私もこの計画に関してはそんなに詳しくないのよね。まあいいわ、ここで立ち話もアレだしオススメのカフェがあるの。そこでゆっくり話しましょ」
「それはいい。伯爵殿のおすすめの店とは僕も気になるところだ」
「ふふっ、楽しみにしてて頂戴」
ペペロンチーノに促され、僕は店を出て彼を待つ。
すぐに身支度を済ませたペペロンチーノは店の鍵を閉めて目的のカフェへと先導してくれる。
とは言っても、目的地は3分も歩かないところにあるお洒落なカフェ。
汎人類史でよく見る外側がガラス張りの店で、外にはいくつかのテラス席が用意されている。
中も外も妖精達で賑わっているが、テラス席の一画に座るとペペロンチーノはサッとメニュー表を僕に手渡してくる。
彼がお勧めするだけあって、このブリテンで見た飲食店の中でもかなり汎人類史寄りの品揃えだった。
「ブリテンの食事事情、思っていたより全然いいのね」
「妖精騎士の1人が女王の要請でなんとかしたらしい。なんでも故郷の味をベースにしてるんだとか」
「ふふっ、詳しいじゃない」
「そうでもないさ」
そんな軽口を交わしながら僕が頼んだのはスコーンとアールグレイを注文して、ペペロンチーノが頼んだのはサンドイッチとアッサム。
頼んだものはそうかからずにテーブルに並び、温かい紅茶で身体を温めながら彼は口を開いた。
「……カルデアのこと知りたいんじゃない?」
「知りたくない、といえば嘘になるが君がここにいるということは彼らに負けたんだろう?」
「あら、やっぱりわかる?」
「わかるさ、強かっただろう?立香ちゃんとマシュは」
「ええ、強かったし……それに眩しかったわ。私とあの子達でAチーム復活!なんてどうかしら!!」
「まったく、調子がいいのは変わらないな。それに、あの子たちは彼のソロモン王に……ロマニ・アーキマンに認められて後を託された星見の子らだ。マスターとしては君たちの方が後輩になるんだぞ?」
一息ついて紅茶とスコーンを楽しむ。
それにしても流石はキャメロットのお膝元。
ブリテン最大の商業都市というだけあって娯楽の類である食事に関しても抜かりがない。
おそらく食事改革の際にこの街も対象になったのだろうが、食事のクオリティは僕がオークニーにいた時よりも数段上の段階まで来ている。
紅茶も香りがいいし、この店はアタリだなと1人で納得していたのだが……
「それで、アナタはなんでブリテンに?」
「まあ、そうなるよな。聞きたいかい?」
「私だって少し話したんだもの、ここにいる理由くらい聞いてもいいと思わない?」
「…………そうだな」
どこから話したものか、と思案する。
馬鹿正直に全てを話す必要はない。
僕とスカンジナビア・ペペロンチーノの関係は友人ではあるものの同僚という域を出ない。
これがマシュに問いただされたら答えてしまうだろうが、ペペロンチーノはそこまでの関係性ではないのも確かだ。
しかし、ベリル・ガットは僕の出自について知っている。
それが、僕にとって決定的な弱点になるかもしれないとすれば……個人として信用できる彼に話すのは選択としては正しいだろうか。
「少し長い話になるかもしれないが、それでも聞いてくれるか?」
「……私、自分で言うのもアレだけどロクデナシの類よ?」
「ベリルが自力でたどり着いた話さ。個人的に信用できる君になら話しておきたい」
「やだ、そこまでまっすぐ言われると照れちゃうわね。でも、レインフォート……アナタがそう言ってくれるなら聞かせて頂戴」
「ああ、僕がここにいる理由……それは僕の出自に関するものなんだ」
ペペロンチーノに語るのはある国の王子の話。
妖精を総べるために生まれ落ち、この世界の間違いを正すために生まれたある1人の男の一生の物語。
託したもの、託されたもの。
6000年も前から続いてきたもの。
この国の女王と僕の関係。
妖精騎士ランスロットとアーデルハイトとのつながり。
そして、僕がどうやってこのブリテンに来たのか。
その全てを話し終えるのに相当の時間がかかってしまったが話を聞き終えたペペロンチーノはひとつ頷いてみせた。
「驚いたわ、まさか異聞帯の妖精だったなんて」
「僕のことを汎人類史の妖精でないと見抜いていたのは芥くらいだろうね」
「……へぇ?」
「彼女は力のある大精霊だ。僕と彼女は交流こそそこまで多くはなかったけれど精霊と妖精という共通点もあって色々なことを話したからね」
もっとも、ここで彼女の名を勝手に教えてはもし会うことがあったら剣の一振り、二振りくらいは覚悟しなければならないため口にはできないが。
「……それで、アナタはこの後どうするつもり?」
「どう、とは?」
「惚けなくていいのよ、このブリテンかカルデアか……選ばなくちゃいけないでしょ?」
「…………そうだな」
もう何度注文したかわからない紅茶を一口飲んで、大きくため息を吐く。
「君は1番大切な1人よりも、世界の平和を願えるかい?」
「……どうかしらね」
「僕は、国と民や母と妹よりもたった1人の妹の命を選んだよ」
たとえそれが、正しい選択だったとしても。
オークニーという国そのものを対価としてトネリコを逃がす判断をしたのは僕だった。
今回も、僕はそうするのだろうか。
モルガンの統べるこの國を守るために、正しい世界を踏み躙る。
モルガンやアルトリアのために、立香ちゃんやマシュを打ち倒せるだろうか。
「…………すこし、大切なものが増えすぎたな」
「人間に近くなりすぎたのね」
「ああ、輝かしいもの……美しいものを僕は知りすぎたのかもしれない」
いまだに答えを出せないその問いに、ため息が出る。
長く話したせいか、日が落ち始めて街に灯りがつき始めていた。
朝早くから話し始めたというのに、こんな時間になるまで付き合わせてしまったことにほんの少しの罪悪感を覚える。
「っと、すまないなぺぺ。こんな時間になるまで付き合わせて」
「いいのよぉ!私も懐かしい顔と話せて嬉しかったわ!」
ペペロンチーノの明るいその返事に思わず笑みがこぼれる。
Aチームの賑やか担当であった彼をキリシュタリアが頼っていたのも納得だなと心の中で頷く。
「ああ……でも、カルデアが来るのももうすぐよ。カドックのロシア、オフェリアちゃんの北欧、ヒナコちゃんのシン、私のインド……そしてキリシュタリアのオリュンポス、デイビットの南米を除けば残る異聞世界はこのブリテンだけ。アナタが思っているよりも時間は少ないって……」
「あー!やっと見つけた!!!」
ペペロンチーノの言葉が、聞き覚えしかない大声で掻き消される。
視線を声の方へ向ければ僕の方へ駆け寄ってくるアルトリアの姿。
そしてそれを見て歓喜の表情を浮かべるペペロンチーノ。
「宿に戻ったら居ないから探してみたらこんなところに……」
「レインフォート、アナタこんな可愛いコ恋人にもらってたのぉ!?」
アルトリアの言葉を遮るようにペペロンチーノが『キャー!』と騒ぎ立てる。
そして、その言葉に反応して顔を真っ赤にするのがアルトリアだ。
「こっ……ここここ恋人ぉ!?!?!?」
余程動揺したのか、それともテンパっているのか。
いや、流石に恋愛感情に疎い僕だってわかる。
これは見当違いなことを言われて焦っているのだろう。
「違う違う、事態をややこしくするようなことを言うんじゃない!」
「そんなにはっきり否定するなよレイン!!!」
「ふふっ、冗談よ。ごめんねお嬢さん」
「あっ、いや……こっちこそ大きな声出しちゃって……」
言葉を言い切る頃には消え入りそうなほど小さな声になり、知らない人の目の前であんな大声を出したことに今更気がついたのかアルトリアは僕が座っている椅子の陰に隠れるように移動してしまった。
「だ、だれ!?」
「スカンジナビア・ペペロンチーノ。僕の友人で元同僚だよ」
「ペペロンチーノ?レインが作ってくれた手抜きパスタの名前じゃん」
「失礼なことを言うんじゃない」
全く、とため息を吐けば目の前のペペロンチーノはニマニマと笑みをこっちに向けるばかり。
「あんまりお二人の邪魔しちゃいけないから、ここらで解散にしましょ。私は普段あの店にいるから、話したいこともまだあるしまたいらっしゃいな」
「うちのお転婆娘がすまない、今度は菓子折りでも持って伺わせてもらうよ」
「お、お転婆娘じゃ……!」
「今度はその子も連れてくるのよぉ!その子に似合う服見繕ってあげるわ!!」
席を立ち、そのまま今回のカフェ代だけではすまない量のモルポンドを置いて去っていくペペロンチーノを見送って、僕はアルトリアへと視線を向ける。
「えっとぉ……もしかしてお邪魔しちゃった……?」
「いいや、もう朝からずっと話してたんだ。そろそろ切り上げようとしてたところだったし問題はないよ」
「ほんと?でも、友達だって言ってたし……」
「本当だとも、君の目は僕が嘘をついているように見えるかい?」
「みえ……ないけど」
「じゃあそう言うことだ。それよりも、お腹空いただろう?僕はスコーンしか食べなかったけれどメニューを見たところ美味しそうなものがたくさんある」
相変わらず僕の背後にいるアルトリアにメニュー表を渡す。
ペペロンチーノが置いていったモルポンドを見たところアルトリアの夕飯代も込みで置いていったんだろう。
相変わらず気配りの達人というか、そう言うところがAチームの賑やか担当としても好かれていたんだろうが……どちらにせよありがたくその好意をいただこうと思う。
「うわぁ……すっごい沢山あるね。このかるぼなーら?っていうの気になる」
「ああ、クリームのパスタだね。気になるなら頼むといい、美味しいぞぉ」
「じゃあそうする!てんいんさーん!!」
さっきまでペペロンチーノが座っていた席に座って店員を呼ぶ。
カルボナーラの他にグラタンやらシチューやらを頼んだアルトリアに思わず苦笑いをこぼして届いた料理を美味しそうに頬張るのを紅茶を供にして見つめるのだった。
ちなみに全部一口ずつわけてくれたのだが、とても美味だった。
年末の終章を超えてアフターストーリーが始まったFGO。
ぶっちゃけ終章終わって2週間はこの作品の終わりを考えていたんですよね。
セイファートの消滅とともにお兄様も消えるか、最後まで一緒に戦うかとか。
SNのラスエピ風味にしてトゥルーエンド的な終わり方にするか。
考えて考えて考えてたら、なんかホロアタみたいなアフターストーリー来ちゃった……(歓喜)
と、言うわけでひとまずアフターストーリーの更新を待ちながらお兄様のその後について考えればいいや(投げやり)と言うスタンスに変わりました。
あとは、作者初の試みとしてプロローグのオークニー編を題材にしたテキストゲームの制作を始めてみたりしています。
かぶり猫さんからいただいたお兄様を使用して、あとのキャラクターは生成AIくんに力を貸してもらいつつ、ほぼ新規のストーリーと追加エピソードを予定したりしています。
素人のつくるクオリティの同人ゲームということになりますが要望が多ければ公開も考えていますので皆さんの意見もお聞かせくださいな。
それでは今年もよろしくお願いするのと同時に、読者の皆様も良いお年となりますように。
皆様の感想と高評価、お待ちしてます。
お気に入り登録とここすきもお待ちしてます。
PS.ロード・ログレスさんことウルトラ我が王は6万課金して宝具4でした。
アヴァロン・ル・フェの更新について
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今まで通り月に3〜4話見れればいい。
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待ってもいいからストックして放出
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別に気にせんでええねんで(^ω^)