お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

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ブリテン異聞帯本編スタートです。

ここから崩壊編スタートまでのテーマソングは雨宮天さんの『永遠のAria』になります。


第5章 『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ 第2章-輝く星を追いかけるアリア-』
プロローグ


 

キャメロットから離れて、わたしはあのログハウスへと戻ってきた。

 

正直どうやって帰ってきたとか、全然思い出せなくて気がつけば自分の部屋のベッドの中で目が覚めた。

 

あれから2ヶ月くらいが経って、わたしがやることは対してあの頃と変わっていない。

 

朝起きて、魔術の練習をして、ご飯を食べて彫金の練習をして、ご飯を食べて周辺の見回りをして、帰ってきたらご飯を食べて宝石に魔力を込めて眠りにつく。

 

ルーティーン化した生活をずっと繰り返していくだけのつまらない人生。

あのとき、強がって出ていかなければ今もまだ笑っていれたのかなって思うことだって少なくなかった。

 

周辺の見回り、といっても歩いていける程度の場所までしか行ってない。

 

ティンタジェルの跡地。

 

エクターの工房。

 

コーンウォールの村の近く、たしか『おしまいの村』。

 

たまに南部平原まで赴いて魔獣狩りをした時もあった。

 

今日もこのあと見回りに出てる予定だった。

 

キャメロットからの旅で着ていた服は大事にしまってある。

 

いつもの田舎娘みたいな服にレインが残して行った黒いフード付きのローブを羽織る、選定の杖を持って魔力の籠った宝石の入ったポーチを腰につける。

 

「……いってきます」

 

返事の返ってこない家の鍵を閉めて、わたしは結界の外へ出た。

結界にロックをかけて向かう先はおわりの村の方面。

陽が落ちる前には帰ってこよう、そう決めて今日の見回りへと向かったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

「…………外からの来訪者ですか」

 

今更語るまでもないが、このブリテンはモルガンのものである。

このブリテンにおいて何が起きているのか、何が原因なのかを見抜けてしまうほどに彼女の視点は超越したもの……になっているわけではない。

 

このブリテンにおいて、魔術を扱うものなど自分に連なるものたちしかいない。

 

即ち、バーヴァン・シー、レイレナード、レインフォート、ベリル・ガットに数ヶ月前に別れたアルトリア・キャスター。

 

その全ての魔力の波長を記憶しているモルガンにとって未知の魔力波長はすぐに感知できるようになっていた。

 

「考えられるものはひとつでしょう。メリュジーヌにお兄様を迎えに行かせた組織……カルデア、といいましたか」

 

星見の天文台、今現在も汎人類史を取り戻すために異聞世界を刈り取って回っているこのブリテンにおいての明確な敵。

世界を滅ぼす組織だというのなら、霧の海岸にたどり着いた今の時点で攻撃してしまうのも一考ものだが……。

 

「仮にもお兄様が所属していた組織、そしてお兄様が希望を持って逃したと言われる人々……妹として、女王として一度顔を合わせるのも悪くはない」

 

誰もいない玉座の間でモルガンはひとり、虚空を眺めながら呟いた。

 

 

「妖精國ブリテンへようこそ、お客様」

 

 

かつて、少女であった頃のように。

 

やっと待ちかねた、世界の外からの来訪者へ向けて。

 

 

「この國を見て、聞いて、感じて……そして私の元へと来るのです」

 

 

「そして、どうか私に聞かせてください。この國は美しかったかどうかを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

かくて、ノウム・カルデアは第六の異聞帯ブリテンへたどり着いた。

 

作戦にあたる人員は藤丸立香、マシュ・キリエライト、芥ヒナコ……もとい虞美人の3名。

 

同行サーヴァントは唯一この異聞帯から弾かれなかった円卓の騎士トリスタンのみ。

 

カドック・ゼムルプスとキリシュタリア・ヴォーダイムについては負傷中のためストーム・ボーダーで待機、いざとなればストーム・ボーダーの防衛任務という形に落ち着いた。

 

 

そして、立ち入ったブリテン異聞帯。

 

彼らが降り立ったのはコーンウォールの近くの海岸。

 

『霧の海岸』であった。

 

どんどん希薄になっていく記憶。

 

認識が曖昧になって自分の名前すらわからなくなりそうになって。

 

隣にいる大切な人のことすら───

 

 

 

『意識をしっかり持つんだ!この世界では君の名前そのものが大切な存在の証明になる!』

 

 

遠くから聞こえてくる謎の声。

誰だかわからないけど、その声に応えようとして……。

 

 

いしきが

 

じぶんのしょうめいが

 

わからなく、なっ……て

 

いしきが、たもてなく

 

 

 

 

『ああもう、どうしてこうも準備不足な時に……!』

 

『まあいい、ひとまずこの海岸から運んでおけばあとはなんとかなるか』

 

『まったく、これはサービスだぜ?目が覚めたら、うんと働いてくれよ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、目は覚めた?この辺の見回りに来たら3人も纏まって倒れてるんだもん」

 

パチパチ……と焚き火の音で目が覚める。

覚醒した意識で最初に見たのは私の顔を覗く少女の姿。

見覚えのある顔、聞いたことのある声、しかしその手に持つのは剣ではなく杖の少女。

 

「ああ、いきなり声をかけられても戸惑うよね。わたしはアリア、この付近に住んでる彫金師見習い兼魔術師見習いです」

 

フードに隠れているものの、そこに悪意がないことはわかる。

 

「見たところ、あなたは人間で……あとの2人は妖精……?に近いのかな。まあどっちでもいいや、とりあえず残りの2人が起きるまで少しお話ししない?」

 

アリアと名乗った少女と、星見の魔術師がここに邂逅したのだった。





拝啓、ご観覧の皆様。

ここから始まるのは本来の歴史とは乖離したもうひとつのブリテン異聞帯。

見習い魔術師アリアと名乗った少女と星見の魔術師の物語。

巡礼の旅、世界を取り戻すための戦いがここから始まります。

悪い女王を打ち倒し、真なる王の戴冠までの物語をぜひご覧ください。

アヴァロン・ル・フェの更新について

  • 今まで通り月に3〜4話見れればいい。
  • 待ってもいいからストックして放出
  • 別に気にせんでええねんで(^ω^)
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