お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

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皆様方、アンケートのご協力ありがとうございました。
今回は大雪の影響などでなかなか作品に手をつけることができず、忙しかったこともあり更新が遅れました。


第二旋律 『休息Ⅰ』

 

おわりの村から抜け出して、国道に出る。

南部平原へと続く道を前にして自身の意味を失った妖精たちは追ってくることはなかった。

 

わたしたちを助けた男はオベロンと名乗り、わたしたちを助けるためにわざわざ森の中まで走ってきたのだとか。

どこか聞き覚えのある声で……いいや、はっきりいえばわたしに話しかけていた『マーリン』と同じ声で同じ話し方だった。

 

だから、彼の名乗りを聞いた時は動揺したし『えっ、マーリンじゃなくて?』と聞き返してしまったのは仕方ないだろう。

 

しかし、彼の話すことからするとハーミアたちに協力するためにやってきたと言うのだからわたしの出番はここで終わりだろう。

それに、彼女たちも自分の名前をしっかりと思いだしたみたいだし。

 

「じゃあ、ハーミア……じゃなくてリツカはオベロンと一緒に行くんだよね?わたしはこのまま家に戻るから、この先も気をつけて」

 

「ちょーっと待った!君は一緒に行かないのかい!?」

 

「なんで?わたしはたまたま見回りであそこにいてリツカたちを拾っただけだし……旅をするために仲間もいるならそれでよくない?」

 

「よくない!とても良くないさ!なにより旅の仲間は多ければ多いほどいいだろう?このブリテンを知っている子がいるなら尚更さ!」

 

やたらと大きな身振り手振りで話すオベロン。

正直、話は上手いなと思った。

知っている声が一緒に旅をしようと誘ってくるのは魅力的だった。

別れを経験して、寂しさでどうにかなりそうな今のわたしには……

 

でも、ここにくるまでに話していた彼らの話を聞くところによると彼女らはこのブリテンの外から来たらしい。

 

それはレインと同じで、モルガン陛下の敵かもしれない。

そんな彼女たちと旅を共にすると言うことは、モルガン陛下の敵になると言うことになる。

 

「…………ソールズベリーまでなら案内してあげる」

 

結局、口から出たのはそんな言葉だった。

ソールズベリーまで送り届けたら家に帰ろう。

その後は、彼女たちがどんな旅をしてもわたしには関係ない。

ただほんの少し、誰かとの触れ合いが欲しかっただけなんだから。

 

だが、そんなわたしの言葉にオベロンは明るい笑顔で応えた。

 

「十分だとも!ソールズベリーにたどり着くまでに色んな話を聞かせてくれると助かるよ!」

 

「じゃあもう少しだけ一緒にいられるね。よろしく、アリア」

 

リツカから差し出された手をほんの少しだけ複雑な気持ちで握り返す。

後ろに立っていたトリスタンと虞美人はそんな様子を見て笑っていたのが視界の端に映った。

 

「でもその前に家に帰らせて」

 

ソールズベリーまでとはいえ何が起きるかわからない。

どうせならもう少し追加で宝石は持っていきたいところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

「……アルトリアと立香ちゃんたちが遭遇したか」

 

世界を見通す青の瞳が、自分に縁のある少女たちを捉える。

本来、彼にとっては喜ぶべき事柄で、きっといい友人にもなれるだろうと思ったことも何度もあった。

 

だが、このブリテンを終わらせるものとしてここに来た以上……レインフォートがこの邂逅を素直に喜ぶことができないのも事実であった。

けれど、きっと自分だってこれから旅をする彼女たちに出会うだろう。

その時がどんな出会いになってどんな関係になるのかは……今はまだわからないけれど。

 

「それにしても、芥……キミは精霊としての姿でカルデアに同行しているのか」

 

精霊としての名は虞美人、だったはずだ。

非常に高位な精霊でその存在としての階位は真祖。

僕の亜麗としての能力よりはすこし下になるけれどそれでも強力な存在だ。

 

「彼女が一緒にいるならそこらの妖精には引けを取らないだろう。問題は妖精騎士たちか」

 

アルトリアと一緒にいるカルデア。

モルガンとブリテンを守護する妖精騎士。

どちらにつくか、という話をするのならどちらにもつかないという選択をとる気ではいるのだが……おそらくそう上手くはいかないだろうか。

 

僕はおそらく、二度目も同じ選択をする。

世界よりも、国よりも個人を選択するだろう。

モルガンとアルトリア、僕にとって何よりも大事な妹と娘が最優先で守るべき対象なのだから。

 

虚空を見つめる。

海の底のように青く輝く瞳が世界を見つめる。

 

「……しかし、あの白い妖精はなんだ?」

 

認識の外から突如として現れた王子様然とした妖精。

白いマントにクリーム色の髪、キラキラとした笑顔。

あの森の中に突然現れ、アルトリアを助け、そして今……彼女たちと同行を開始した。

 

ブリテンを見回すこの“眼”を持ってしてもいまの今まで認識できなかった。

 

“アレ”はなんだ?

 

嫌なものを見たような気がした。

アレに弱みを見せるのは絶対にしてはいけないと確信めいたものを感じた。

 

「…………一度、会っておく必要があるか」

 

そうなれば、やることは一つだ。

部屋を見渡し、ため息を一つ吐き出す。

 

 

「この部屋、どうやって出ようかな」

 

レインフォート・アーデルハイト。

現在、キャメロットの一室でモルガンによる幾重にも重ねられた魔力錠を掛けられた部屋で頭を抱えていた。

 

 

 

 

 

 

****

 

それから1時間とすこし。

わたしはオベロンとリツカ、トリスタンと虞美人を連れてわたしの家に帰ってきました。

 

「それにしても驚いたな、ここまで強固な認識阻害と防衛用の魔術が張り巡らされているなんて」

 

「それに、庭には野菜なんかもたくさん生ってたし家の中もかなり立派というか……エアコンに3連コンロ、さっきの村とは全然違う」

 

「それはわたしのおとうさ……じゃなかった、師匠が全部用意してくれたんです。わたしが生きるのに困らないようにって」

 

「……師匠、ね。ねぇアリア、あなたの師匠の名前は教えてもらえたりするのかしら?」

 

「うーん、あんまり人前で名前を出すなって言われてるから教えられないかな」

 

もちろん真っ赤な嘘である。

そんなこと言われたことはない。

でも、わたしの中でまだ信用できない部分の方が多い彼女たちにわざわざレインの名前を教えてあげる必要はないだろう。

 

「そう、それなら無理には聞かないわ」

 

「しかし、これほど現代技術に精通しているとなれば間違いなく汎人類史と何か関わりのある人物なのは間違いないでしょう。レインフォート殿でなくともいつか出会えれば話は聞けるかと」

 

レインフォート、あまりにもダイレクトに聞こえてきたその名前に一瞬反応しそうになるけれどなんとか抑えて彼女たちを居間の椅子に座らせる。

 

「ソールズベリーまでとはいってもわたしにも準備があるから少し待ってて。飲み物……といっても安物の紅茶しかありませんがそれでよければご自由に」

 

杖を壁に立て掛けて自室へと向かう。

何かあってもいいように魔力を込めた宝石はいつもより多く持っていこう。

 

 

 

 

 

アリアが自室に入ったのを確認した立香は正面に座る虞美人をまっすぐに見つめて口を開いた。

 

 

「…………それで、先輩は何かわかった?」

 

「なにかって?」

 

「アリアの家の中の話。今までの異聞帯だってここまで発展したものなんてなかったでしょ?オリュンポスみたいなところっていうならわかるけどあの村からすぐ近くの子の家だけこんなに違ったら私だって流石に気がつくよ」

 

「ふぅん?まあ、いい着眼点ね。あの子が戻ってくるほんの少しの間だけ話してあげる」

 

虞美人はチラリと扉の方をみて立香、トリスタン、ついでにオベロンに聞こえるくらいの声量で口を開く。

 

「家具のどれか、という話じゃないわ。この家、小物の一つに至るまでの全てが空想具現化で用意されたものよ」

 

「……ふむ、それは凄いな。ここまでの規模を用意するとなれば相当な大妖精ということになるね」

 

「外の結界も迎撃魔術も流石の私でも誰のものか気がつくわ」

 

虞美人は大きくため息をついて眉間に指を当てる。

隠すつもりあるのかしら……?とうわごとのようにつぶやいて彼女は立香へ視線を向ける。

 

「後輩、お前……キリシュタリアが持っている鍵を見たことはある?」

 

「……鍵?」

 

「そう、そうね……見た目はなんの変哲もないただの鍵よ」

 

「あー、はい。一回だけ見せてもらいました。大切なものなんだって言っていたのだけは覚えてて」

 

「そう、その鍵ね。レインフォートが住んでいるオークニーの隠し泉への侵入許可証兼直通のゲートなのよ」

 

「……?そうなんですか?」

 

「……察しが悪いわね、あのアリアって娘が使ってた鍵がそれと一緒だって話よ。つまり、あの娘の師匠はレインフォートで間違いないってこと」

 

「っ!!!!」

 

幸先がいいとはまさにこのことだろう。

こんなにも早く目的の人物の情報に辿り着けるなんて思ってもみなかった。

 

「アリア、話してくれるかな」

 

「……難しいでしょうね。アリアがそう“教わったから”言わないというのなら口を割ってくれることはないでしょう。少なくとも……彼女にとっての父だと口を滑らせかけていましたから」

 

それはそうだと立香は納得するしかなかった。

親に“ダメ”と言われたのならいうことを聞くのが子供だ。

妖精にとってその“概念が”本来ないはずでもあの一瞬、間違いなく彼女はお父さんと言いかけたのだから。

 

「どちらにしても、君たちの仲間なんだろう?そのレインフォートって人は」

 

「……はい。私たちのために犠牲になった、大切な仲間です」

 

「なら、やることはひとつだ。アリアと仲良くなって彼の話を聞く、どこにいるかわかれば出会う方法だって連れ戻す方法だって見えてくるはずさ!それに旅の仲間は多いに越したことはないだろう?」

 

「うん、わかってる」

 

何はともあれ、やることはいつもと変わらない。

現地での協力者を見つけて、この異聞帯を超える。

まずは逸れたマシュと合流してレインフォートを救出、ロンゴミニアドを手に入れる。

 

「……気合い、入れていかないと」

 

人類最後のマスター、藤丸立香。

まずは出会ったあの女の子と仲良くなろうと決意したのだった。

 




悲報:お兄様閉じ込められる。

どうすんだこれ……どうすんだこれ……()
いやでもね、お兄様強すぎて予言の子一行には同行させられないし、女王軍としても戦わせられないんですよね。
じゃあどうするの?
閉じ込めればいいじゃない(理由は考え済み)
というわけでお兄様には五条悟よろしく少しの間、本当に少しの間お部屋に閉じこもってもらいます、どうせこの人のことだからすぐ出てきます()

それはそれとして、ちょっと書きたいお話が多すぎて本編が手につかないのも事実。
なので、ここで少し上位者組とお兄様のお話を書きたいと思います。
具体的にはロード・ログレス陛下(第二再臨)とアースちゃん(第三再臨)の単話を書こうと思います。

本編に関係のない話なので割り込み更新する予定なので興味があればお付き合いいただければと思います。

また、この2本の話にはえっっっぐいネタバレも含まれる可能性があるのでご了承ください。

それではまた次回、番外編でお会いしましょう。

皆様の感想と高評価、お待ちしてます。
お気に入り登録とここすきもお待ちしてます。

アヴァロン・ル・フェの更新について

  • 今まで通り月に3〜4話見れればいい。
  • 待ってもいいからストックして放出
  • 別に気にせんでええねんで(^ω^)
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