お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン 作:今井綾菜
作者も例に漏れずプレイして少年の頃の懐かしさに浸っておりました。
まだ、ハナダジムに行かずにきんのたま周回してますが()
第三旋律
「───以上が、昨晩の人間工場における任務の報告になります」
「そうか、ご苦労だったガウェイン。負傷したと聞いたが、お前自体は大事ないか?」
「はい、傷は既に塞がっております。私に傷を与えた異邦のサーヴァントも報告の通り始末しましたが……」
「どうした?なにか、他に?」
「……アルトリア殿が、討ち取った騎士の一団と共にいました」
「───そうか」
キャメロット、女王の間。
昨晩に起きたソールズベリー近郊の人間工場の襲撃。
有象無象が相手ならガウェインの部隊で殲滅できると踏んで派遣したものの、結果は甚大な被害とガウェインの負傷。
報告を受けたモルガンはそこにアルトリアがいたということもあって思わず眉間に指を当ててため息をつく。
「自由にしろ、とは言ったがまさかここまで早く行動を起こされるとは」
「しかし、彼女はここ最近は南部平原付近の治安維持活動に貢献していたといいます。あの一団にそそのかされて……というのも想定はできますが」
「なんにせよ“鐘”さえ鳴らさなければ何をしてもいい、と口にしたのは私だ。異郷の魔術師にそそのかされているのなら適度に痛めつけてやればそのうちやめるだろう」
「ハッ!では、私はこのまま例の一団の追撃でよろしいでしょうか」
「……いや、お前は一度領地に戻りまずは負傷を完全に治療してきなさい。流石のお前でも傷は塞がったと言っても万全ではあるまい。奴らの監視は凍結中の騎士を1人目覚めさせる、何かあれば追って指示を出す」
「しかし陛下……!」
「このところは任務続きで領地には帰れていないでしょう。妖精騎士としての任務も重要だが婚約者にも顔を見せに帰れ、と言っているのです」
食い下がるガウェインに、モルガンはそれらしい理由を付け加える。
ただ休め、と言っても休まないのはこの100年で理解している。
誰よりも正しくあろうとし、誰よりも騎士たらんとした妖精だ。
このくらいのことは言わないと引き下がらないだろうともわかっていたのだ。
「……承知しました。妖精騎士ガウェイン、領地に帰還し数日の療養をいただきます」
「よろしい、では下がるがいい」
「ハッ!」
立ち上がり、一礼をしてガウェインが玉座の間から立ち去る。
しかし、面倒なことになったとモルガンは天井を眺めながら深く息を吐いた。
「今このタイミングでお兄様を部屋に閉じ込めていたのは正解でしたね。やろうと思えば水鏡で抜け出せるでしょうが、それをしたら私が即座に気がつく。無闇に抜け出すようなことはしないでしょうが……」
異邦の魔術師に、報告にあったサーヴァント。
円卓の騎士、トリスタン。
同行しているというアルトリアによくない影響を与えなければいいが、と考えはしても今すぐに連れ戻すという選択は取らないつもりでいた。
「一度タイミングを見て異邦の魔術師とその協力者の全員をキャメロットに招集し、アルトリアを奪還するのも手ですが……」
とはいえ、あの問答で自分の意思を貫いたのも事実。
自分の意思でその場にいるのなら、どのような言葉を使ってもこちらに戻ってくることはないだろう。
「この数ヶ月は逞ましくやっていると報告を受けていたから安心していたものを、あまり好き勝手をやってお兄様を心配させないようにと釘を刺しておかなければなりませんか」
誰もいない女王の間に独り言が溢れる。
扉の外からはガウェインが出て行ったことでキャメロットの文官たちが次々とここに向かってくるのがわかった。
「───まあいい、近く現れるであろう厄災の対処もある。まずはそちらを対応しなければなりませんね」
女王として、モルガンは目の前に迫る厄災の影へ対処のための準備を進める。
もちろん、雪崩れ込んでくるであろう文官たちへの対応をこなしながらではあるのだが。
****
「───やっちゃったぁぁぁぁあああああ」
自分に当てがられた宿屋の一室。
頭を抱えて叫んでいる少女は昨晩キャメロットの軍勢に“攻撃”をしてしまったアルトリア・キャスターだ。
本当はソールズベリーについた時点で帰るつもりだった。
それがあれよあれよという間に彼女たちの仲間であるダ・ヴィンチに出会い、領主であるオーロラに出会い。
その流れに流されてしまうまま昨晩の人間工場への襲撃だ。
黙って引き返せばよかったのにバゲ子と戦っている立香たちの手助けまでしてしまった。
「やばいよぉ、バゲ子に顔見られたしすごい顔で睨みつけられたしぃ……!これが陛下とレインに知られたらどうしよぉぉぉぉ!」
悲しきかな、こうしてうじうじしている数時間後にはモルガンの耳に入っているのである。
そんなことはつゆ知らず、アルトリアは自宅にあるよりも簡素なベッドに頭を潜り込ませてせめて声が外に漏れないように叫ぶ。
この楽園の妖精、自分のやらかしが大きすぎてせっかく身につけた防音の結界を張ることを忘れている。
しかし、アルトリアとしてはこれがモルガンの耳に入ったらあの自宅までランスロットやガウェインがやってきて強制的にキャメロットに連行されることだって視野に入ってくる。
今度は客人としてではなく、女王軍に反発した罪人として。
「なんのために今まで目立たないようにあの辺の治安維持だけしてたと思ってるんだよぉ……昨日のアレで全部台無しだよぉ……」
ひとしきり叫んだ後、ベッドに顔を埋めてピタッと止まる。
意識しないようにしていた、こんな日が来ないことを祈っていた。
だけど、こうなってしまった以上は“その時”が来てしまったということなのだろう。
「───予言の子、かぁ」
楽園の妖精、予言の子。
アルトリア・キャスターという妖精に与えられた使命。
数千年前に果たされなかった聖剣鍛造の役割を押し付けられてこのブリテンに生まれた聖剣鍛造のための集積装置。
六つの巡礼の鐘を鳴らしてその身を星の内海に返還することで聖剣は完成してこのブリテンは正しい歴史に戻ることが出来る。
そして、その聖剣を持って妖精たちを正しく導くのは───
「レインが聖剣を持って導くのが正しい歴史……かぁ」
正直嫌だった。
それはアルトリア・キャスターという犠牲の上に成り立って、レインフォート・アーデルハイトという妖精の心を殺して成り立つものだったから。
2000年以上を守ってきた陛下のブリテンを壊すことで、あの本当は優しい先代の楽園の妖精を悲しませることだから。
でも、運命はこうしてやってきてしまった。
レインに拾われて、一年以上彼の教育を受けた“わたし”はあの場で藤丸立香を放っておくことはできなかった。
「やるしか、ないか」
自分に言い聞かせるように、つぶやく。
「やるしか、ないんだ」
どうせもう帰る場所なんて無くなった。
罪人としてキャメロットに連れて行かれるくらいなら。
あの家を土足で踏み躙られるくらいなら。
嫌でも、苦しくても、前に進まなきゃ。
きっとレインならそうしたから。
「…………あいたいよ、レイン」
それでも、わたしが求めるのはただ一つ。
「まだまだわかんないや。どうするのが正解なの?」
まだ16歳の少女には環境の変化が激しすぎて、自分の考えだけではちゃんと飲み込めていなくて。
「前みたいに教えてよ」
数ヶ月前までの当たり前を求めてしまうのは仕方のないことだった。
こんな姿を見られたらまた“うじうじアルトリア”と揶揄われるだろうか。
きっと揶揄ってくる、そして大好きなカフェラテを淹れてくれるんだ。
“かえりたい”と心が泣いている。
“やりたくない”と気持ちが乗らない。
アルトリア・キャスターにとって、彼女たちが戦おうとしている女王軍のトップたちは“何も知らない”ひとたちではないのだから。
「……もう寝よう」
いくら考えたって状況がよくなるわけではない。
なら、昔みたいに逃避する……というか先延ばしにするのが一番だ。
家のベッドから比べたら考えられないくらい硬いベッドに身体を預けて瞳を閉じる。
もし夢が見られるなら、レインと一緒に笑っている夢でありますようにと願いながら。
この数日後、自分の発言から従姉妹にまで関係が近づいてしまった赤い髪の少女と再会することになるとも知らずに。
基本的に序盤の流れは重要な部分を挟みつつ、原作と同じようなところは大体カット。
全部書いてたらとんでも無いことになるし、それこそ現在までの話数を余裕で超えてしまいますからね。
その分、後半はしっかりと描写していく予定なのでそれはお楽しみいただけると。
前回に投稿したログレス回での元気マシマシ幸せ前回のアルトリアを見た後にこれを投下するとか正直、作者頭おかしいんか?テンションの差で風邪引くわボケ。
と作者自身も思いますね、ハイ。
それはそれ、これはこれ。
アルトリアはいずれ幸せになるから今は曇ります。
なやんでなやんで、最後は笑顔で旅立てるといいですね(ひとのこころ)
とはいえ、ここからはレッド・ラピッドに村正買取のグロスター。
それとこの作品初めてになるアルトリア・キャスターの魔術戦でvsバーヴァン・シーとイベントは盛りだくさんですね。
原作よりも“ちょっと”お金持ちなアルトリアは一体どこまで稼いでいたんでしょう。
数ヶ月間、引きこもっていたとはいえ彼女はお兄様と一緒に見つけた趣味の彫金は辞めてませんからね。
さて、あんまりなかなか話してると本編の文字数超えてしまうかもしれませんしここら辺でお開きといたします。
また次回、お会いいたしましょう。
皆様の感想と高評価、お待ちしてます。
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アヴァロン・ル・フェの更新について
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今まで通り月に3〜4話見れればいい。
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待ってもいいからストックして放出
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別に気にせんでええねんで(^ω^)