お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

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第十五旋律 『女王の娘(トリスタン)vs予言の子(アルトリア)(2)』

 

「そら!細切れにしてやるよ!!」

 

「っ!ルクス・アロンダイト!」

 

オークション会場のステージの上では女王の娘と予言の子の一世一代の勝負が始まっていた。

前回と違って自身の武器であるフェイルノートやその他魔術礼装をふんだんに持ち込んだ妖精騎士トリスタン、それに相対するのは巡礼の鐘を二つならして上級妖精に身体半分くらいその力を解放されているアルトリア・キャスター。

 

トリスタンが持つ、小さな妖弦から放たれるのは不可視の斬撃。

これはかつてガウェインと戦闘になった果てに犠牲となった汎人類史のトリスタンが持つフェイルノートと同じ効果を持つものだ。

 

しかし───。

 

(狙いが甘いっ!)

 

左手に作り出した“ルクス・アロンダイト”で切り落とす。

本来なら射出することで真価を発揮する魔術ではあるが、こうして武器として扱うこともレインフォートとの旅の中で学んだものだ。

弦を弾いた数だけ不可視の刃が迫り来るが、それを自分に当たるものだけ的確に弾いていく。

 

だが、いくらなんでも作戦のうちとは言ってもフェイルノートを持ち出すのは流石にないのではないだろうか。

下手をすればこっちだって決して浅くない傷を負うことになるのはトリスタンだってわかっているはずで……。

 

「お前、剣も使えんのか」

 

「見様見真似!でも“それ”を弾くならこれで十分っ!」

 

「舐めやがって……!」

 

ポロロン、と耳馴染みのいい音色とは相容れない容赦のない斬撃の嵐。

それに加えるようにトリスタンの周囲に展開される無数の魔力球から放たれる呪詛の砲撃。

さらにその中に織り交ぜられる“見覚えのある宝石”の数々。

 

「アルトリアっ!足元!!!」

 

「わかってます!」

 

後方のリツカから飛んできた指摘の声。

しかし、先に視界に入っていたわたしは回避行動を取ろうとして……。

 

「遅ぇよバーカ」

 

「っ!やば……!」

 

フェイルノートからの斬撃、呪詛の砲撃、それらに気を取られて遅れた宝石への反応。

足元に広がった宝石が溜め込んだ魔力が一気に増幅する。

特別な魔術が組まれたわけではない、単純な魔力の爆発。

しかし、その威力は決して侮ることができるものではなくて。

瞬時に展開したのは自身を守る絶対の守護、杖の先を地面に叩きつけ自身に許された絶対の防御を展開する。

 

「『きみをいだく希望の星(アラウンド・カリバーン)』!

 

爆散する宝石、変わらず襲いかかる斬撃と砲撃。

その全てを受けても尚崩れることのない絶対の守護。

ステージに満ちる爆煙の中から反撃のために魔術をいくつも放つ。

 

輝剣のシャスティフォル。

早撃のスピュメイダー。

光輝のルクス・アロンダイト。

紅焔の“ルプス・ガラティーン”。

 

瞬時に放たれた四つの聖剣魔術が一斉にトリスタンは襲いかかる。

十数の剣が無数に襲いかかるスピュメイダー。

着弾地点で爆発を起こすシャスティフォル。

当たればその時点でゲームオーバーなルクス・アロンダイト。

そして、四方から襲いかかる狼を模したルプス・ガラティーン。

普通に考えればどれかが当たる確殺コンボとでもいえる殺意マシマシの魔術の組み合わせ、しかし……それはついさっき自分がしたように魔術障壁によって防がれた。

 

「出鱈目な火力の魔術を連射しやがって……!」

 

「そっちだってフェイルノートと宝石爆弾組み合わせてきたでしょ!」

 

「減らず口……!」

 

それから交わされるのは互いに放てる魔術の組み合わせ。

水、炎、雷、氷、光、闇、呪。

ありとあらゆる属性の魔術がステージに舞い、そして消えていく。

この妖精國ブリテンにおける滅多にない魔術戦の機会。

それを観覧するいつぞやと同じ噂好きの上級妖精たち。

トリスタンとアルトリアがこのステージの観衆のテンションを少しづつ上げていく。

 

****

 

 

「やっぱすげえよな人間じゃない奴らの戦いってやつは。そうは思わないか後輩?」

 

「…………」

 

「ハッ、やっぱ敵とは口すら利きたくないってタチか?それともそこにいる芥に口止めでもされたとか?まあ、どっちでもいいけどよ。どのみち俺らはこいつらの攻撃を一発でも貰ったらそのままお仕舞いだ、少しくらい話を聞いてくれても……おっと、危ねぇ」

 

隣にいた虞美人の深紅の刃が私に声をかけるベリルの足元に突き刺さる。

アルトリアとトリスタンの戦い、勝敗が決するのをこの目で見届けなければと集中して彼女たちの一挙手一投足を観察している。

正直なところ、何か言われているのは気がついていたけれど何を言っているのかはあまり聞いていなかった。

 

どのみち彼からの攻撃は村正にオベロン、それに先輩が防いでくれる。

この衆人環視のなかで下手な動きをして不利になるのは彼なのは本人が1番わかっていることだと思う。

 

「……へぇ、それにしてもその眼が歴戦のマスターの観察眼ってか」

 

「黙ってみてなさい。どう転んだってアンタじゃこの状況で何もできないでしょ」

 

「それはお互い様だろ?あの魔術の中に飛び込んでくなんて自殺行為だ。オレはまだ自分の目的を果たせてないんでな、自殺行為なんてまだ御免だぜ」

 

「ふぅん?じゃあその目的とやらは教えてもらえるの?」

 

「それこそナシだぜ芥。お前たちに話して台無しにされたんじゃ目も当てられないって話だ」

 

戦闘に集中しながらも2人の先輩の話は耳で受け取る。

クリプターには確かにそれぞれ目的があった。

それは世界への証明であったり、最愛の人との再会であったり。

譲れない思いがあって、そして対峙して打ち破ってきた。

だから、ベリルという男の目的だって知る必要がある。

目的を知って、知った上で踏み越える。

そうして、全ての願いと世界を踏みこえた責任を持ってこの白紙化地球から汎人類史を取り戻すと誓ったのだから。

 

「まあどちらにせよ、お前たちがあいつと手をとれるってならそのうち分かるだろうよ」

 

ベリルはそれ以降口を開くことはなかった。

彼の目的、彼が語る“あいつ”が誰なのかはまだわからない。

私の周囲にいるみんなには警戒をしてもらったままアルトリアとトリスタンの戦いに再び集中するのだった。

 

 

 

****

 

魔術の飛び交う派手なステージの決着は想定していたよりも呆気なくついた。

 

すでに二つの鐘を鳴らして“現在の”レインフォートと同程度の性能と魔力リソースを持つアルトリアが繰り出す様々なバリエーションの魔術の物量に圧倒される形でトリスタンの敗北となった。

 

「これで終わりだよトリスタン……!」

 

静まり返ったステージ、目の前には膝をついたトリスタン。

選定の杖を彼女に向けて勝利宣言をする。

 

そう、ここから彼女の真名を暴く。

妖精騎士トリスタンとしての鍍金を剥がして彼女をただの妖精へ堕とす。

しかし、それは妖精騎士として過ごしてきた彼女の環境を一気に変えるものであり、剥がれた鍍金を再び纏うことは出来ない。

 

つまり、自分の発言で目の前の妖精騎士を殺すことになる。

 

「………………っ」

 

覚悟はしてきたつもりだった。

トリスタンが提案してきてそれに乗ったことで路は決まっていた。

でも、それをすることでトリスタンがこれから受けるであろう扱いを受け入れることができないでいた。

 

「……迷ってんなよ、私らで決めたことだろ」

 

「トリスタン……」

 

誰にも聞こえないような小さな声。

そうだ、それを覚悟した上で彼女はこの作戦を提案してきたんだ。

本人が覚悟を決めているのだから、わたしだって覚悟を決めろ。

意を決して、口を開く。

その瞬間、彼女と目が合い……そして微笑んだのだ。

 

「妖精騎士なんてたいそうな名前、お前には相応しくない!」

 

声が震える。

確かにわたしはいま、1人の騎士の運命を終わらせるのだ。

 

「吸血鬼バーヴァン・シー!それがお前の本当の名前だ!」

 

会場がざわつく。

トリスタン……バーヴァン・シーに向けられていた視線が一気に反転する。

そして、それと同時にグロスターの鐘が鳴る。

重苦しい巡礼の鐘の音が響く中、たったいま1人の妖精騎士が死んだ。

 

『そうだ!俺はあの妖精を100年前に見た!』

 

『吸血妖精を後継にするなんて女王陛下は何を考えているのかしら!』

 

『穢らわしい!あんなものが妖精騎士だって!?』

 

ステージに降り注ぐのはバーヴァン・シーに向けられる嵐のような罵詈雑言。

巡礼の鐘は鳴り、妖精騎士としての力をバーヴァン・シーは失った。

だが、これだけでは終わらないのだ。

 

「は、はは……!負けちゃった……!お母様から与えられた祝福(ギフト)も無くしちゃった……!」

 

『死人から血を吸うなんて穢らわしい!』

 

『道理で臭いと思ったわ!まるでドブ川の臭いだもの!』

 

『やっぱりモルガンとアイツのせいだ!予言の子が正しいんだ!』

 

「もうこれで終わり、何もかも終わりに……」

 

思っていた通りだった。

全てを失う覚悟をしたバーヴァン・シーはこうなることがわかっていた。

それでも、この状況を作り出したのは間違いなくわたしで……。

 

ふらふら、とバーヴァン・シーが立ち上がる。

手に持っているのは、モルガン陛下から渡されている合わせ鏡の礼装といつか自身の身を守るためにとアーデルハイトから渡されていた庭の礼装。

 

「このまま終われるかよバーーーーカ!!!」

 

そのうち、“庭”の礼装を起動して使用した。

その対象はリツカと、わたし。

 

暗い地獄のような微睡がわたしたちを包み込んで、そして夢の中へ堕ちていく。

 

そして、微睡の底へ落ちていく前に感じた浮遊感。

 

ああ、これで作戦の第一段階は完了だね。

 

 

 

 

 

 

 

****

走る、走る、はしる、はしる。

 

悪意の嵐から逃げるようにグロスターから逃げる。

 

やった、やってやった!

作戦通り、失意の庭に落として合わせ鏡で“ニューダーリントンの地下”に飛ばしてやった!

 

トリスタンとしてのギフトは失ったけれど、それでもあの地下を暴けばあのベリルにだって嫌がらせになる!!

 

信じられない速度で魔力が減っていくけれど。

 

身体が腐っていく速度がどんどん早くなっていくけれど。

 

あの舐め腐ったことをしてくれた奴に少しでも仕返しをしてやった!

 

だから、上手くやれよアルトリア!

 

私とはちがうキラキラ輝いた魔術を使うあなたならきっと……!

 

 

 

 

ああ、でも

 

 

 

かえるばしょなくなっちゃった。

 

 

 

 

 

 




新イベント、良かったですね(泣)
俺たちのゴッフとアフタータイムで特異点攻略出来るなんて思ってなかったよ……。

さて、本来よりも数日早いニューダーリントン入りを果たしたアルトリア&立香。
原作との差異はマシュがいないことですが、そこはぐっ様がいるのでなんとかしてもらいましょう。
マシュには人間モースよりもデカい情報を持って帰ってきてもらいます。

ここでアーデルハイトが“庭”をバーヴァン・シーに持たせていた理由ですが、このようにトリスタンとしてのギフトが剥がれた際に彼女へ向けられる悪意に対してのカウンターでした。
あくまで、今作では魂を腐らせる呪いを加速させるのは激しい魔力の消費。
というふうにしていますので、ここから庭を使って効果が切れるまではとんでもない速度でバーヴァン・シーがダメになっていきます(ひとのこころ)

ここからは余談ですが。
FGOフェスのチケット全落ちしたので作者は原作よりもハードモードになった奈落の虫と一緒にブリテン崩壊を目指して頑張りますので、読者の方々で現地入りする皆様は作者の代わりにモルガン生徒会長のボイス聞いてきて下さい(血涙)。

ち な み に 。
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なんと、作者のやる気が上がってしまうかもしれませんね??
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アヴァロン・ル・フェの更新について

  • 今まで通り月に3〜4話見れればいい。
  • 待ってもいいからストックして放出
  • 別に気にせんでええねんで(^ω^)
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