お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン   作:今井綾菜

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皆様大変お待たせしました。
ここ最近の暑さと理解不能な22日連続勤務の影響でやられていました。

さて、それはそれとしてFGO11周年バンザーイ!

そしてそして、もはや恒例となったこの掛け声と共に本編をどうぞ!

㊗️トネリコピックアップ!!!


第二十四旋律 『決戦前夜』

 

オックスフォードの鐘がなってからそう時間の経たないうちにロンディニウムの鐘が鳴った。

襲撃によって崩壊したロンディニウムを最後まで防衛していたガレス。

アルトリアの友人として、彼女に仕える騎士として街を守り、民を守り、そして最後は鐘付き堂で力尽きていた。

そして、ガレスこそ鏡の氏族の氏族長であるエインセルであり不在のままであった最後の巡礼の鐘となったのである。

 

 

 

 

 

そして、決戦前夜。

アルトリアはロンディニウムの鐘付き堂で夜風を浴びていた。

この数日、たくさんのことがあった。

その数週間、たくさんの出会いと別れがあった。

この一年と少しの間で大切な人たちが出来すぎた。

まるで時代が変わる躍動の中心にいるようで、少し前までは他人事だった自身の使命ももうすぐ終わりの時が近づいてきている。

一度走り出したら、もう止まることができない旅なのは理解していた。

終わりが近づくにつれて、わたしはわたしを愛してくれた人たちを裏切ることになると言うのは理解していた。

 

「……流されて、流されてこんなところまで来ちゃった」

 

それは心からの気持ちだった。

でも、今思えばこれは運命だったのかもって思う。

それはリツカに出会った時から……?

村正を買ったあのオークションから?

 

きっと違う、わたしの運命はレインの手を取った時から始まっていた。

 

今でも思い出す、怯えて、レインの手を取ることを躊躇っていたあのとき。

真っ直ぐにわたしの目を見つめて、嘘偽りのない気持ちを口にした不思議な妖精。

 

うれしかった。

まっすぐに手を伸ばして無償の愛をくれる人がいたこと。

嘲笑うような笑みではなく、心から笑ってくれる人だった。

諦めの心しかなかったわたしに、たくさんの希望をくれた。

 

ねえレイン、わたし魔術うまくなったよ。

ねえレイン、わたし彫金はもっと上手になったよ。

ねえレイン、わたしたくさん仲間ができたよ。

 

でも、わたしがいまレインにしてるのはレインを裏切ることで。

レインの大切なものを壊していく最悪の裏切り行為で。

 

そして、わたしはレインの1番大切なモルガン陛下と戦う直前にいる。

 

正直、いまだって迷ってる。

わたしが進んだこの道が正しいことだなんて胸を張って言えない。

でもきっと、モルガン陛下の手を取らなかったあの時からわたしの道は決まっていたのかもしれなかった。

 

「迷わず、まっすぐに」

 

いまのわたしは何もなかったあの頃のわたしじゃない。

 

予言の子アルトリア・キャスター。

 

鏡の氏族、エインセルの予言にあるこのブリテンを終わらせるもの。

覚悟を決めて、もう立ち止まることなんてできない。

わたしの足はもう引き返せないところまで来てしまったのだから。

 

「おう、こんなところにいたのか」

 

「……村正」

 

「決戦前夜に食事会をしようってのに明日の主役がいないんじゃ締まらねぇからな」

 

村正の言葉を聞いて、わたしは眼下に広がるボロボロのロンディニウムを見つめる。

わたしたちがエディンバラとオックスフォードに向かっていた最中の襲撃だった、と生き残りからは聞いている。

相手は女王軍の一般騎士と力のある騎士数名。

そのとき、ロンディニウムにはガレス以外の戦力は誰もいなくてたった1人で街の住民を守りつつ騎士たちを撃破してこの鐘付き堂で力尽きた。

ガレスの守った街は、もう街として機能は出来ないほどボロボロだった。

騎士たちがこの円卓軍の拠点を潰しに来たのだと一瞬で理解できるほどの徹底的な破壊の爪痕が残されていた。

 

円卓軍にはもう女王軍に、いいやモルガン陛下に決戦を挑むしか道が残されていなかった。

 

そして、それが明日に迫っている。

 

「本音を言うとね、わたしモルガン陛下と戦いたくないんだ」

 

ここには誰もいない。

わたしが命を買った村正しかいないのなら彼は絶対に口を漏らさない。

だから、これはわたしが吐く最後の弱音。

 

「みんなに会う前はレインと一緒に何ヶ月かキャメロットにいたの。モルガン陛下の優しさも、どうしてこんな治世になったのかも、本当はどんな人だったのかも全部知ってる」

 

「わたしとモルガン陛下の関係知ってるでしょ?レインはわたしにとってはお父さんでモルガン陛下はレインの妹で、トリスタン……バーヴァン・シーはモルガン陛下の娘。わたしね、いまたった数ヶ月前になったばかりだけど家族と戦ってるんだよ」

 

「何度も何度も、覚悟決めないとって自分に言い聞かせてきた。ねぇ、教えてよ村正。好きな人たちを踏み躙ってまで救う価値が、このブリテンにあるの……?」

 

それは心からの問いかけだった。

アルトリア・キャスターという人物を形成するには大好きな人が増えすぎた。

今は敵対しているモルガン陛下や妖精騎士。

味方としてここまで歩んできたロンディニウムのみんなとカルデアの彼女。

どちらかを救うということはどちらかを切り捨てなければならない。

そんなのずっとわかってる。

だからこんなにも悩んで悩んで誰にも言えなくて困っていたんだから。

 

「でもね、もう引き返せない。今更わたしは逃げられないよ」

 

夜風に髪が靡く。

冷たい風が壊れた街を流れていく。

遥か遠くに見えるキャメロットの壁。

明日、あの壁の中へ強襲を仕掛けるのだ。

そうなったらもう進むしかない。

わたしは、予言の子としてモルガン陛下と戦うのだ。

 

「…………悪かったな、こんだけ近くにいて気づいてやれなくて」

 

「なんで村正が謝るのさ。流されて、こんなところまで来ちゃったわたしの責任だよ。むしろここまで付き合ってくれた村正に驚いてる」

 

「命を買われたからな、(オレ)の仕事を終えるまではお前さんについてやる。それに……」

 

「……?」

 

「お前の親父にも頼まれてた。あの時はモルガンの暗殺に失敗してランスロットに霊核を貫かれてな、死にかけのところを助ける代わりに条件としてお前のことを頼んできやがった」

 

カラカラと笑う村正から告げられる全く知らなかった事実。

そもそもモルガン陛下の暗殺ってなに?いつの間にそんなことしてたの?

言いたいことは沢山あったけれど、どうして彼がわたしについてきてくれるのかはしっかりわかった。

 

「まあ、お前ら親子に命を拾われたってわけだ。1度じゃなく2度ともなれば刀鍛冶だって命のひとつでも懸けて恩を返すってやつだな」

 

「ふぅん……?まあそういうことなら仕方ないか。ならちゃんと働いてもらわないとね」

 

「おう、任せとけ。気に食わないがグリムの野郎とランスロットの足止めは完遂してみせるってな」

 

力強いその言葉にほんの少しの安心感を得る。

村正がわたしの隣にならんで、2人でロンディニウムの街を見下ろした。

 

「───ねぇ村正」

 

「どうした?」

 

「死なないでね」

 

「ああ、約束する」

 

もう、引き返せない。

わたしはもう、この道を進むしかないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

目が覚めてから、どれだけの月日が経っただろうか。

いいや、そんなものはしっかりと記録している。

2018年と7ヶ月28日、それが私があの地下室でモルガン女王陛下に封印を解除されてから流れた月日だ。

 

幾千という戦場を駆け抜けた。

幾万というモースを斬り伏せ、幾百という反乱分子を手にかけた。

全ては自身が仕える女王陛下のため、そしてあの日自分を凍結した主君の命を果たすために。

 

「此度の戦は……荒れそうですね」

 

思わず、そんな言葉が溢れる。

深夜のキャメロット、妖精騎士長アーデルハイトの執務室。

円卓軍の拠点であるロンディニウムへの襲撃を指示して結果として作戦は成功、しかし侵攻時点では存在しなかったはずの巡礼の鐘がロンディニウムに出現し予言の子はついに最後の鐘を鳴らした。

報告が上がったのはつい数刻前のこと、円卓軍との決戦がすぐそこに迫っているというのにキャメロット城内はあまりにも静かだった。

 

それに、オックスフォードにすら帰っていないという友のことも気になる。

 

排熱大公ウッドワス。

 

彼の先代であるライネックは最後のその瞬間までモルガン女王陛下のために戦った。

それはひとえに、女王陛下への愛そのもの。

モルガン陛下がトネリコ様であった頃からのその一途な愛は報われることはなかったもののこのブリテンにおける全ての氏族の中で1番の信頼を得ていたのは紛れもない事実だ。

 

さらにその先代であったウルヴァーはレインフォート殿下の戦友であり、私にとっては最後に殿下の信頼を裏切った罪人であった。

 

そして、今代の排熱大公たるウッドワスは私にとって唯一無二の親友だ。

彼がライネックの後継として生まれ直してからというもの、幾度も戦地を共に駆け、何度も食事を共にし、この國の未来について語り合った。

 

ウッドワスのモルガン陛下への忠誠は確かだった。

彼は陛下の忠臣として相応しくなるように教養を身につけ、礼節を学び、菜食主義へと変わっていった。

しかし、その強さは衰えることなく磨き続け何度もこの國の最強の爪として肩を並べてきたのだ。

 

『ここ最近の戦闘は妖精騎士ばかり、このブリテンを守護してきたのは我ら牙の氏族だったというのに……アーデルハイト、お前は陛下から何か聞かされていないのか?』

 

『陛下は妖精騎士の試用期間とは言っていたが……だが、心配することはない。牙の氏族が、いやお前がこの國で最強の爪なのは揺るぎない事実だろう。ここ数百年戦い詰めだったんだ、少しの休養だと思っておくのがいい』

 

『そうだといいが、しかしこのままではカンも爪もそして牙も鈍るというもの……お前の霊剣も魔術も使わねば鈍るのではないか?』

 

『今日1日の業務は終わらせてきた。もとよりティータイムの後は私の方から稽古の申し出をするつもりだったよ』

 

そうして、最後に稽古をしたのはもはや数年前。

我ら妖精にとって数年という時間は大した時間の流れではない。

しかし、その後何度も繰り返したティータイムで彼は何度も戦に駆り出されないことを不満に思っていることを口にしていた。

 

そして、つい最近与えられた任務では敗走。

それ以降、彼の消息は不明となったままだった。

 

「早く戻って来い、ウッドワス……この妖精國の国防にはお前は不可欠なんだ」

 

椅子に深く腰を沈めて大きなため息と共にそんな言葉が溢れた。

目の前にいくつも並ぶ大きな壁が一気に押し寄せてくるような感覚。

ただの騎士であったはずの自分が國の参謀となって駆け回る日々。

一生の忠義を捧げた殿下と王女殿下。

立場もお姿もあの花の咲くような笑顔も全て変わってしまったけれど。

あの何もかも終わってしまった雨の国の地下で光のない瞳で自分を見つめる変わり果てたトネリコ様に目覚めさせられた時から。

 

この命を懸ける場所は決めていたのだ。

 

親友が戻らぬのならこの身を賭して主君を守る。

たとえこのブリテンの剣と爪が揃わぬとも、女王陛下だけは守り通してみせる。

 

2000年、共に過ごした霊剣を見つめる。

もしかしたら、次の戦が自分にとって最後の戦いになるかもしれないと思いながら。




さて、次回からはキャメロット攻防戦になります。
作者が本編で体調不良になり吐き気を催しながら一時中断したところまでやってきました。

2部6章 妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ

第24節『モルガン』

原作とは大きく異なる後半編の決戦をお待ちください。

アヴァロン・ル・フェの更新について

  • 今まで通り月に3〜4話見れればいい。
  • 待ってもいいからストックして放出
  • 別に気にせんでええねんで(^ω^)
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