お兄様のことが大好きな雨の魔女トネリコ或いは冬の女王モルガン 作:今井綾菜
流石に23日通して働いたあとの連休は何もできませんでした!!!
体力も回復してきた頃合いだったのでやっと書きかけだったお話に手をつけて投稿です。
翌日、キャメロットは爆撃と剣戟の音で満ちていた。
妖精騎士ガウェインによる円卓軍へのキャメロット城内への手引き。
そして、出陣してきた女王軍騎士たちによる防衛。
長年凍結されてきた騎士も総動員され、その総指揮はキャメロット城内……女王の間から妖精騎士長アーデルハイトによって行われていた。
「ご報告申し上げます!円卓軍により第14、23区画が陥落!」
「妖精騎士ガウェイン様が離反!円卓軍と共に第8区画へと進行を開始!」
「妖精騎士ランスロット様が賢者グリムと千子村正と交戦開始!第4から第6区画を跨いで被害が増大しています!」
女王の間に忙しなく現れる伝令。
そして戦況が芳しくないことを知らせる内容。
何より、こちらの戦力であるガウェインの離反。
アーデルハイトは次々と舞い込んでくる知らせに頭を悩ませながら的確に指示を飛ばし続ける。
「陥落したブロックに残った残存騎士たちは速やかに近くのブロックへ退避。戦況の共有の後に応戦を開始しなさい。ランスロットが戦闘を行っているブロックの騎士たちはまとめてガウェインの足止めを。あのガウェインといえども数千の凍結騎士たちを相手では容易には進めません。予言の子は何処にいる?必ずこの城下にいるはずだ早く探し出せ!」
アーデルハイトからの指揮が飛ぶ。
それを受けた十数人の足の速い騎士たちが女王の間から駆け抜けた。
「……やはりアルトリアの支援魔術が強力か。それともガウェインの離反が影響しているのか」
「どちらもでしょう。あのウッドワスすら払いのけたアルトリア様の支援魔術に選定の槍を持った円卓軍の若きリーダー、それに幾人ものサーヴァントともなればその戦力は確かに強大です。それに、ガウェインを引き込んだのならその巧みな話術も脅威となりましょう」
「そうでしょう。円卓軍の対応は各ブロックに配置している騎士たちで対応させなさい。アルトリア率いる予言の子一行の捜索を第一に、所詮は烏合の衆の反乱軍……錦の御旗を失えばその勢いはすぐに衰えるでしょう」
「御意、ではアルトリア様の方へは?」
「私が出る。巡礼の鐘を鳴らしきった楽園の妖精を相手できるのは私かランスロットの他にいない。ただの騎士の集まりでは範囲魔術で焼かれるのが目に見えている。アルトリアを発見し次第私の思念体を配置する、本体である私の護衛はお前に任せましたよアーデルハイト」
「承知いたしました」
モルガンとの短い会話を済ませてアーデルハイトの指揮が再び飛ぶ。
キャメロットの防衛のために割ける戦力は多いはず、だけれども最高戦力のうち実質使えるのがランスロットのみという事実にアーデルハイトは頭を抱えるのだった。
****
ランスロットを村正とグリムが抑えている間、アルトリアの部隊はキャメロットの街を駆け抜けていた。
目的地はモルガンの座する玉座の間、しかしいくら走っても城下町を抜けることは叶わず、むしろどんどん城から離れている気すらしている。
「やっぱり、街の構造が変わってる」
「城塞都市としての本領発揮というわけかな」
リツカの呟きにダ・ヴィンチが答える。
数ヶ月キャメロットにいたわたしですら記憶を頼りに歩いても全然違う場所に放り出されて困惑していた。
「街の構造そのものを変えているんだ。おそらくブロックごとに移動できるような仕組みを作っていてバラバラになったパズルのような状態を常に維持しているんだろう」
オベロンのその言葉は正しかった。
モルガンがかつてのオークニー、そしてロンディニウムの悲劇を2度と生むまいと建築した城塞都市キャメロット。
モルガンの匙加減で常に動き続けることができるこのキャメロットはいまのアルトリアたちにとってはスライドするプロックパズルの上を歩かされているようなものだった。
「このままじゃどれだけ歩いても城に乗り込めない。城は目の前に見えてるのにどれだけ進んでも無駄なんて……!」
「1番手っ取り早いのはいっそのこと建物をぶち破っていくことだけど」
「そんなことをしたら僕たちの居場所がここですよって言っているようなものだろう!?」
「しかし、どうしますか?このままではキャメロット城内に立ち入ることはできません」
「せめてどれくらいの規模の区画がどんな規則性で動いているかわかれば推察はできるんだろうけど……」
ダ・ヴィンチの言葉を区切りにわたし達から言葉が失われる。
どれだけ考えたとしてもこのキャメロットが2000年間陥落しなかった理由がわたしたちの前に立ちはだかっていたのだ。
しかし、考え込むのも束の間。
「いたぞ!予言の子だ!!!!」
わたしたちから少し離れた通りから数人の騎士がわたしたちを見ていた。
まずい、いまわたしたちがいる場所がバレるのは良くない。
「マシュ!オベロン!アルトリア!!」
リツカの号令が飛ぶ、騎士をこのまま城内に……いいやそれこそ他の区画にいる仲間に合流させるわけにはいかない。
瞬時に駆け出し、10人に満たない騎士から意識を奪う。
応援を呼ばれるわけにはいかない。
このままキャメロットに入るまで誰にも見つかるわけにはいかないのだから、と。
しかしそれが、罠だということは誰も気づけないまま。
****
「報告します!第9ブロック11区画にて巡回中の騎士からの連絡途絶!」
「……第9ブロックの他の被害は?」
「ありません!」
「わかりました。陛下、報告の通りです。おそらく予言の子はそこに」
アーデルハイトの報告にモルガンが頷いた。
玉座に腰掛けていた女王が立ち上がる。
バーゲストはカルデアの手に落ちた、メリュジーヌはサーヴァント2騎を相手に手が離せない。
残る女王騎士の数も決して多いと言えなかった。
ならば、ここから先は
「ならば……
「官民たちよ、壁まで下がれ。女王陛下の出陣である!」
文官の1人が叫ぶ。
周囲でガヤを飛ばしていた官民達が一斉に壁へその身体を寄せた。
「これより先は女王陛下の戦場である!頭を垂れよ!歓喜に震えよ!妖精國ブリテンの威光をその目に焼き付けよ!」
「これよりモルガン女王陛下の出陣である!!!」
ブリテンにおける妖精全てを纏めても到底届かぬ絶対的強者。
幾度と巡礼の旅を終えて、その高みに届くものはもはやどこにもいない。
たった一度巡礼の旅を終えただけの楽園の妖精など取るに足らないのだから。
これより、ブリテン全土をたった1人で平定した女王がその力を振るう。
****
キャメロットの城下に一陣の風が吹く。
冷たく、そして厳しい冬の風が吹き抜ける。
「冷たっ……さっきまでこんな風吹いてなかったのに」
「風の氏族の風の知らせじゃないかな。わたしもそんなに詳しくないけどオーロラくらいの大妖精になるとブリテン中の噂を聴いて、それを流布することが出来るって聴いたことある。ブリテン中の微風に乗せて……」
「…………ねえ、それって灰も一緒に降ってくる?」
「風の氏族の能力にそんなのない……って」
アルトリアの言葉は最後まで口にすることなく終わった。
一瞬、ほんの一瞬吹雪のような灰が吹き荒れ……それが晴れた時、アルトリア達の前には1人の女性が立っていた。
「その盾、円卓か。汎人類史の魔術師は畏れも、敬いも知らぬと見える」
冷たく、威圧のある声だった。
「英雄どもの集う座、国を守護せんとする意思の累。それを個人の武装とするなど私ですら考えぬ横暴だ。それとも、だからこその汎人類史だということか?生き残るための手段など、はじめから選んでいない、と」
「───うそ、こんな街中でいきなり!?」
「……妖精國の女王、モルガン!」
漆黒のヴェールに隠れた顔。
しかし、その中から見える瞳は冷たい青色に染まっている。
その威圧感、その視線から感じる心からの侮蔑がこちらに向けられていた。
「街中だからこそ、だ。我が城下に蔓延る虫を待つ必要がどこにある?キャメロットの玉座は妖精國の要、血で汚すことは私が許さぬ」
「予言の子アルトリア。カルデアの魔術師藤丸立香、そして天上の騎士ギャラハッドの霊基を持つサーヴァント。よく巡礼を終えた、褒めてやろう」
モルガンの口から出たのは思いもよらぬ賛辞の言葉。
しかし、その表情は決して誰かを褒めるようなものではなく。
むしろ、心の底から軽蔑しているような蔑むような顔で。
「───だが」
「腹の底から侮蔑が込み上げる、巡礼の鐘など一時のもの。妖精どもはすぐに忘れるだろう。お前の努力も、怒りも、嘆きも」
「2度目の巡礼でわかっていたはずだ。いや、それ以前にお兄様とブリテンを巡った時にはわかっていただろう。それでも……それでもお前は私たちやお兄様の生きるブリテンよりも正しさをとった。
「…………」
それは正しさの問いかけだった。
自分の生きる土地、愛してくれた人、知れば知るほど好きになっていった陛下と彼女に仕える騎士達。
残酷な問いかけで、でも……この道を選んだのは自分自身だった。
「いいワケない。今になって正しさとか、そういうのはやめて」
「モルガン陛下が使命を放棄したからわたしが生まれた。その事実はどうやったって消えないんだよ」
声は震えていた。
でも、以前のようにここで引き返すことも逃げるために意識を飛ばすこともできない。
「わたしは氏族の原罪とか知らないし、どうでもいい。わたしが譲れないもののために使命を果たそうとしてるだけ」
「妖精國の成り立ちも、陛下の苦悩も……全部知ってもそれでもわたしはあなたには寄り添えない……!前は言葉だけで負けちゃったけど今はそうじゃない……!勝負をしよう、モルガン陛下!」
「わたしは、自分の生まれた理由もその先の結末もどうだっていい。知る気もないし、知りたくもない」
「ブリテンの未来も、外の世界のこともわたしの手には負えない。あなたのように───」
「あなたのように立派な志なんて持てない!ただ、負けられないだけ!わたしがわたしであるために、わたしが信じるわたしのために!」
心からの言葉だった。
戦う理由なんて、結局自分のためでしかない。
モルガン陛下のように、国を愛したわけでもない。
レインのように、大切なヒトを守りたいわけでもない。
だからこそ、自分を貫くために目の前の彼女には負けられない。
その答えを聞いたからか、モルガン陛下はほんの一息分の時間沈黙した。
ゆっくりとした呼吸、そのひと息を終えた瞬間に纏う雰囲気が変わった。
「巡礼の旅を終えても、自身の使命の意味に辿り着かなかったか。だが、もう一度最後にお前に聞こう。ほんとうに、いいのだな?」
「……これでいい、これが……わたしの進む道なんだ!」
これが、最後の問答。
楽園の妖精同士の、最後の分岐点。
そしてそれはたった今決別の道を進んだ。
「そうか、では来るがいい。その愚かな運命を私が終わらせてやろう」
「アルトリア、汎人類史において我が仇敵であったものよ。お前はどこにも行けない、お前は何者にもなれない。だからこそ、慈悲をやろう。お前で変えられないのなら、私が変える」
「最果ての濁流に押し流されて、絶望の中で朽ちるがいい」
モルガンの纏う魔力が最高潮に満ちる。
アルトリアの纏う魔力も導かれるように最高潮に達した。
魔術回路に雫を落とす/光が満ちる。
「モルゴース!」
「レイン・クラレント!」
二つの魔術が、キャメロット城下に放たれる。
妖精國ブリテンの命運を賭けた楽園の妖精2人の決戦が幕を開けた。
しかし、今話で99話、記念すべき100話目はアルトリアvsモルガンになるのは運命の悪戯か。
作者自身もこんなことあるんだ、なんて思いながら次話をちゃんと盛り上げられるか緊張しております。
このお兄様の戦闘描写は正直他のFate二次創作と比べるとあっさりしているというか。
作者自身が戦闘描写苦手なのでスタート→飛ばして中間→また飛ばして最後と書くことが多いので2000〜3000字で片付いてしまうことが多いんですよね。
まあ、ここから先の展開的に戦闘描写苦手ナリ……とは言ってられなくてぇ……誰か助けて欲しくってぇ……
大丈夫戦闘描写、おもろいで!って思う方は感想でクソデカ声で応援してください。
超ニヤケながら作者が次話をかける可能性が高いです。
アヴァロン・ル・フェの更新について
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今まで通り月に3〜4話見れればいい。
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待ってもいいからストックして放出
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別に気にせんでええねんで(^ω^)