ウマ娘プリティーダービ- クラウンガールズ   作:文月~夢売り商人~

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揺蕩う雲と気まぐれな気分

 三人のデビュー戦から一週間が経った。

 今日も今日とて放課後にトレーニングをしている。デビュー戦を終えて余裕が出てきたのか少しずつではあるが悩んでいることを俺だけではなく、チームメイトにも相談する場面が見えてきた。

 それにより多少なりとも、トレーニング効率が上がってきている。俺は彼女たちのトレーニングを横目に今後の予定を組んでいる。

 ローレルの最終目標は凱旋門賞だから、それまでは無理をさせられないがレース経験が欲しいところだ。クラシックで数回、出走し経験を積みシニア級で強いウマ娘が出走するレースを狙って走る。当然、国際招待のジャパンカップは外せないな。

 チヨノオーはマルゼンスキーを超えたいとのことだ。まずはマルゼンスキーがどれだけ凄いウマ娘かを知るために可能な限り同じレースを狙って出走も悪くない案ではある。あとは強敵の多いレース、三冠路線を狙うことも視野に入れておきたいな。

 バクシンオーは短距離で最強を冠する子になって欲しいと思っている。それが全レースを走るという夢を諦めてもらった代わりに俺がしてあげられる返礼だ──。

 だとすると短距離で代表的なレースを狙っての出走ということになるな。

 

「トレーナー。トレーニングメニュー終わりました」

 

 俺が今後のことを考えているとバクシンオーの元気な声が聞こえてきた。まだまだ、体力に余裕があるといった感じだな。チヨノオーは少し疲れた様子だがまだいけそうだ。ローレルもプールトレーニングが終ったようで、ちょうど戻ってきたようだ。

 

「トレーナーさん。私の方もメニュー終わりました」

 

「それじゃ、校外にロードワークに行きますか」

 

「「「はい!」」」

 

 俺がロードワークに行くことを伝えると、三人は元気よく返事をした。校門まで行くとスピカもちょうど、ロードワークに行くようで一緒に行くことになった。

 初めて一緒にロードワークに行った時から、何回か一緒に行ったことがある。その中で一度だけ沖野トレーナーが俺に付き合い、自転車を使わずに自分の足で走ったことがあるのだが、帰りの道で途中でバテてしまい結局、俺が背負って帰ってきた。

 それ以来、沖野トレーナーは自転車を使っている。

 

「それじゃ行こうぜ~」

 

 ゴールドシップの掛け声で出発するも、沖野トレーナーが少し浮かない顔をしているのが気になったので尋ねてみると、ここ最近はテンションが下がっていたらしいが今日はテンションが高いとのこと。

 理由はトレーニング自体ではなくロードワークの小休止、屋台が出ているのだが沖野トレーナーは金欠で奢ることが数回しかできないらしく、今日は俺がいるから奢ってもらえる確率が上がるからテンションが高くなっているんだろうとの推測だ。

 

「なるほどね~」

 

 俺としては別に構わないが沖野トレーナーとしては、やるせなく複雑な気持ちだろうなと思い俺たちも出発した。

 目的地の公園につき小休止。たい焼き屋が来ていたので奢ることにして全員の注文が終わり支払いを済ませた。

 小休止中、俺は出走レースのことを考えていた。そんな中、沖野トレーナーが話しかけてきたので出走レースで悩んでいることを相談した。沖野トレーナーからおすすめレースを言われ、それも視野に入れることにした。

 ロードワークから戻りトレーナー室で次のレースのことを考えぬき決めることができた。明日は二人の考えを聞くことにして今日は休むことにした。

 

 翌日。放課後まで時間があるので、いつも通りいつもの場所で昼寝をすることにした。

 暫くすると賑やかな声に目を覚ましたが、何故か腹に重さを感じた。何だ? と思い確認すると二匹の猫が俺の腹の上で寝ていた。この学校は理事長公認で猫を放し飼い(?)しているらしい。

 名前も理事長や職員、生徒が協力して一匹一匹につけて回っているとのことだ。

 流石の俺も猫の名前まで全部覚えれない。起こすのも可哀想なので退けるまで待つことにしたのだが、少し近くから猫とは別の寝息が聞こえてくる。頭だけ動かし確認すると以前、見たことのあるウマ娘が近くで昼寝をしていた。

 確か名前は『セイウンスカイ』。噂では自由気ままらしく、寝ていることが多いとのことだ。

 俺がセイウンスカイを見ていると、寝返りをうち目を開ける。俺と目が合い、ニマと笑顔を見せて体を起こした。

 

「いや~、トレーナーさん。ようやくお目覚めですか?」

 

 第一印象どおりに、ゆったりとした喋りをする子だ。聞いた感じから俺に用があるようだったので用件を聞いた。

 

「それはですね~。ローレルさんから聞いた話ですけど、トレーナーさんのチームは自由なトレーニングが売りだということでですね」

 

 そう言いながら一枚の紙を差し出してきた。紙を確認すると名前の書かれた入部届だった。どうやら俺のチームに入りたいとのことだが少し齟齬がある。トレーニングは無理のない範囲でやってもらいたいが全部が自由じゃない。きちんと基礎トレーニングをするなら、後は何をしていても構わないというだけだ。

 そう伝えると少し残念そうな顔をしていた。自分が思っていたのとは少し違ったようだな。

 

「でも、ローレルさんのようすを見るに良さげなチームなんで~」

 

 そう言いながら差し出した入部届を引っ込めようとしないので受け取ることにした。

 まあ、俺としてはチームメンバーが増えるのは有難いことだ。見た感じ、のんびりしたいと言った雰囲気が漂っているので他の三人……。

 いや、話を聞いているとローレルとは同室のようだから残った二人と問題が起こらないかが心配だ。特にバクシンオーだな。

 何事にも真っ直ぐだから文句を言いそうな予感がするが、そこは時間をかけて分かりあっていけばいいだろう。

 何はともあれ、トレーニング前に三人にもセイウンスカイが入ったことを話しておかないとな。そう思いセイウンスカイの夢を聞くのを忘れていたので聞くことにした。

 

「セイウンスカイ……。あー……スカイで良いか?」

 

 俺がそう聞くと、どうぞどうぞっといった感じで許可を出してきたので夢を聞いた。

 

「私の夢というより爺ちゃんの夢かな……。三冠ウマ娘が夢ですね~。っということでトレーニング期待してますよトレーナー」

 

 おかしいな。最初の爺ちゃんのくだりはシリアスっぽかったんだけど、かなり緩い感じで三本指のピースで全部台無しになった感じがするのは気のせいかな。

 俺が拍子抜けしていると予鈴が鳴り、それを聞いたスカイは「それじゃ~」と言って校内へ戻っていった。

 うん、少し問題児っぽいところもあるが、そこは愛嬌というものだろ。それに今時、祖父のために頑張るなんて優しい子はそうはいないからな。

 

「それじゃ、俺も戻りますかね」

 

 そう言いながら腰を上げトレーナー室へ戻る。スカイには今日から同じ基礎トレーニングをやってもらうつもりだが無理はさせない。どこまでできるかを見極めないといけないからな。

 その後で専用のメニューを考える。三冠は二人の夢ともいえるから是非とも獲らせてあげたい。

 

 放課後。邪魔にならないようグラウンドの端のほうで、四人が来るのを待っている。

 スカイには放課後にグラウンドに来るようにと伝えてあるが、あの性格だから時間通りに来るかは不安ではある。

 まあ、そこはトレーナーとして信じて待つことにする。

 待つこと十数分。ジャージに着替え終えた四人がグラウンドへやって来た。和やかに話しながら来ているので、チームルームで自己紹介は済ませてあるのだろう。それでも改めて紹介する必要はあるけどな。

 四人は俺の所までやってくると整列した。

 

「よし。んじゃ改めて本日付けで、セイウンスカイがクラウンに入ってくれた」

 

 俺がそう言うとローレルにバクシンオー、チヨノオーは拍手をしスカイは照れた感じで「どうもどうも」といった感じで挨拶をしている。

 挨拶も済んだので、早速トレーニングを始めることにした。三人にはいつも通り始めてもらいスカイには基礎トレーニングのメニューを渡す。

 

「出来れば全項目をやってもらいたい。一つ一つは出来る範囲でいい。今日はウチのトレーニングは、どういったものかを知ってもらう感じだ」

 

 メニューを受け取ったスカイは「ふ~ん」といった感じでメニューを眺めている。最初からいる三人には軽い程度だがスカイにしたら厳しいかもしれない。それでも、どういったトレーニングをしているかを知ってもらうのが今日目的だ。

 メニューを確認したスカイは早速トレーニングを始めた。ゆったりとした立ち上がりで、なるべく疲れないようにといった感じでトレーニングをしているのが見てとれる。

 不真面目のように見えるが、それも大きな武器になることがある。

 先に始めた三人がグラウンドを四周終えた頃にスカイは一周半くらいかな。周りのようすを見ながらトレーニングをしているようだ。まるで獲物を狙う捕食者のように隙を窺っているように感じる。

 大体のトレーニングを終えてプチミーティング。このことをスカイに説明をしてからミーティングを始めた。それぞれが相手のことや自分の課題について話し合う。話し終えてから俺も一言言うことにした。

 

「ローレルにバクシンオー、チヨノオーは自分でも分かっているから俺から言うことは特にないが、スカイはサボろうとしているのが見て分かる。サボるならもっと上手くサボれ」

 

 スカイは時折、手を抜いたりしていたので少し注意をしておく。そうしないとチーム内で不満が募るからそれを防ぐためにもトレーナーから言っておかないといけない。

 俺がそう言うとスカイは少し驚いた顔をしていた。

 

「サボるな。真面目にやれとは言われてるけど、上手くサボれって言われたのは初めてかな~」

 

 そう言ってスカイは頭の後ろで手を組み少し嬉しそうにしていた。

 

「はぁ~……。今言っておかないとバクシンオーあたりと衝突しそうだったからだ」

 

 俺がそう言うとバクシンオーが少し驚いた様子で「確かに」と言っていた。とりあえずスカイはこういった子なんだと周知できれば問題はないだろう。

 その後、追加トレーニングの時間となり各々、個別にトレーニングを始めた。

 俺はスカイに追加トレーニングをどうするかを確認をしたらスカイはグラウンドを二周くらいしたら上がると言って軽めに走り始めた。雰囲気からは分からないが勝ちたいという気持ちは他の子と同じように持っているみたいで安心だな。

 実力は本番まで見せないタイプだ。面白い子だな……。

 そう思い全員のトレーニングが終わるまで見守った。

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