ウマ娘プリティーダービ- クラウンガールズ   作:文月~夢売り商人~

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興味のレース

 沖野トレーナー、東条トレーナーと飲んだ翌日。

 普段はあまり利用しない学園のカフェテリアで朝食を食べていると、周りが少し騒がしくなってきた上に、こちらをチラチラと見てくる子もいる。

 視線は気になるが何に騒いでいるのかを確認すると、ニュース番組が報道されていた。どうやら情報提供のニュースをやっているようで街中の映像が流されていた。見覚えのある風景だったが特に気にならなかったものの、何気なく眺めているとテレビの画面には走っている俺の姿が映されていた。

 思わず吹き出しそうになったがなんとか堪えられた。どうやら昨日、時間に間に合うようにとバ道を走っているところを通行人に撮られていたようだ。

 

「やっぱり、まずかったかねぇ……」

 

 俺はそう呟き朝食を食べ終える。カフェテリアから出る際も後ろから見られている視線を感じたが気にしていても仕方ない。今後は気をつけないといけないな。

 

 

 

 放課後。グラウンドで皆が来るのを待っていると声を掛けられた。声がした方を見てみると、褐色肌でつり目、膝まで伸びた青みがかったストレートのロングヘア、耳周りには寝癖なのかピンっと跳ね毛、右の前髪にはヘアピンをつけていて左耳につけた赤いシュシュが特徴的なウマ娘がいた。

 

「アタシとタイマンして欲しいんだが良いかい?」

 

 名前は確か『ヒシアマゾン』だったかな。【女傑】と呼ばれるほどの実力者の1人だな。あと美浦寮の寮長だ。

 笑顔で俺の返事を待っているが担当でもない子に何かあっては担当トレーナーに申し訳がないので担当トレーナーの許可があればと伝えると「おハナさんの許可があればいいんだな」とその場を後にした。

 その後、少しすると4人が来たのでトレーニングを始めようとしたのだが、笑顔で戻って来たヒシアマゾンとその他数名。シンボリルドルフに、グレーに近い鹿毛を左分けワンレングスボブカット。左耳に黄色のリボンと金チェーンの髪飾りを付けた。切れ長の目をして赤いシャドウをした【女帝】と呼ばれている『エアグルーヴ』。

 黒髪ショートカットで前髪に一房の白髪。右耳に青い宝石に金チェーンの耳飾り。失礼な言い方だが男性的な麗人といった感じの『フジキセキ』。

 黒鹿毛のストレートのロングヘアで、飾り紐で注連縄風に結ってポニーテールにしており鼻の上にテープをつけ、何かの枝のような茎のような物を咥えた一匹狼風の子『ナリタブライアン』。

 栗毛のロングヘアーを腰まで伸ばしていて、おっとりした印象で青色の垂れ目。プロフィールにはアメリカ生まれと記載されていたが大和撫子と言う言葉がシックリくる感じの『グラスワンダー』も一緒に来ている。何か嫌な予感がする……。

 

「おハナさんの許可をもらってきたよ。あと一緒に走りたいって奴らも連れてきた」

 

 嫌な予感は的中だな。許可が取れればと言った手前、断ることができないので付き合うことにしたが、これはチャンスともとれる。スカイを除きデビューしている3人も一緒に走ることでいい経験になるはずだ。

 そう思うと同時に複数人で来たことから、それも織り込み済みだと解釈し模擬レース形式を提案した。

 向こうも、そのつもりだったらしく二つ返事で了承してきた。

 

「オッケー。それじゃ、コースを1周の勝負でいいな」

 

 俺がそう言うとヒシアマゾンも、それでいいと頷いてきた。こちらからも3人を走らせてもらうことを伝えた。バクシンオーには少しきついかも知れないが、これくらいなら問題はないだろう。

 参加する全員にウォームアップは念入りにすることを伝えて俺も準備を始めた。

 どこから話を聞いてきたのか、沖野トレーナーたちもやってきて参加することになった。準備を終えた頃に指示を出し終えたのか東条トレーナーもこちらへやって来た。

 軽く話し合いをした後、今回のことを謝罪したが東条トレーナーは俺の走りが気になっている様子だった。

 

 

 

1枠 1番 エアグルーヴ

2枠 2番 サクラバクシンオー

3枠 3番 桜

4枠 4番 フジキセキ

4枠 5番 ヒシアマゾン

5枠 6番 サクラチヨノオー

5枠 7番 ダイワスカーレット

6枠 8番 サクラローレル

6枠 9番 ウオッカ

7枠 10番 グラスワンダー

7枠 11番 ゴールドシップ

8枠 12番 ナリタブライアン

8枠 13番 シンボリルドルフ

 

 

 

 全員が位置についたので、あとは合図を待つだけだ。さてさて今回はどういった作戦で行くか……。

 全員の実力を見るなら後ろにつくのが正解だが実力が分からない以上は、後ろ過ぎても仕方ないな。

 差しの位置で様子を見るか先行で行くか迷うな。そう思い迷っていると合図を頼んでいた東条トレーナーから、そろそろ始めると声が掛かった。

 よし。差しの作戦でいきますか。そう決めて模擬レースに臨んだ。

 

<ガコンッ!!>

 

 合図にと、頼んでいた音声。ゲートの開放音と同時に全員が走り始めた。合図については全員に通達しているので戸惑う子はいなかった。

 模擬レースが始まると外野から黄色い声が聞こえてきた。どうやら、いつの間にか見物人が集まっていたようだな。

 まあ、気にせずレースに集中しますか……。

 現在のレース展開は先頭争いは、意外にもダイワスカーレットとバクシンオー、チヨノオーだった。リギルの子たちも先行組に食いついているが先頭に立とうとしていないことから様子見で少し下がっているようだ。

 

「先頭はスカーレットが少し前に出ているみたいだな。その後ろにサクラバクシンオー、外にいってサクラチヨノオーか……」

 

「少し後ろにブライアンにルドルフね。ここまでが先行しているわ」

 

 先行組が大体決まったみたいだな。

 さて、中盤以降の先頭がエアグルーヴ並んでグラスワンダー。少し下がってローレル、その内にウオッカ。

 んで、1バ身程離れて外についた俺。残ったゴールドシップとヒシアマゾンは俺の後ろ追い込みの作戦のようだな。大体は落ち着いたようだな。

 

「それにしても、おハナさん。よく許可なんか出したな」

 

「昨日の桜トレーナーの走りを見て、いい経験になればと思っただけよ」

 

 第2コーナーに入ったところで先行組と少し距離が縮まってきた。見るかぎり全員が自分の走りができていて仕上がりも十分だ。シニア級の子たちも申し分なく、経験と自信が十分といった感じだな。俺は内心ワクワクしながら走った。

 第2コーナーを抜け向正面の直線、先行組の順位が少し変動したようだな。ダイワスカーレットに代わりチヨノオーが前に出たようだが、ダイワスカーレットがスタミナ温存で下ったようにも見えるな。ダイワスカーレットの横に並んでバクシンオー。

 2バ身程離れてグラスワンダーとローレル。少しペースを落とし様子見のエアグルーヴに少しずつ離されてきているウオッカ。ゴールドシップとヒシアマゾンは、まだ後方で前が落ちて来るのを待っている状況だな。

 その後も、ほとんど順位は変わらず第3コーナーへ。そろそろ誰かが仕掛け始める頃かな。そう思っていると追い込み組が徐々に距離を詰めてきた。横目で確認するとヒシアマゾンが、ニヤリと笑って俺を追い越していった。それに続きゴールドシップも前を狙いに行った。

 なるほどね。タイミング的にも良い感じだな先頭を確認すると、そろそろ第4コーナーを抜けそうな位置にいた。

 

「んじゃ。そろそろ仕掛けさせてもらいますか」

 

 俺は、そう言って大きく深呼吸をして左足で思いっきり踏み込んで加速を始めた。つまり第3コーナーと第4コーナーの中間あたりから、スパートを掛けた感じだ。

 追い越したはずの俺が追い抜き返したことに驚いた様子のヒシアマゾンとゴールドシップだが、独特の雰囲気に呑まれ動きが鈍くなっていた。この2人だけじゃなく先行組たちも俺が近づくにつれ動きが鈍くなってきている。

 バクシンオーに関してはキョロキョロと辺りを見渡している。それもそうだろうな俺は絶対に勝つといった感じで覇気や威圧感を放ちながら走っている。普通の子たちも迫力があったり凄みを効かせたりするが、それを凌駕する殺気に似た感じの威圧感だ。

 体が強張り上手く動かせなくなって当然のことだ。歴戦のウマ娘でも、それは同じで全員が走ることで精一杯な様子だ。その結果、7バ身差をつけて俺が1着となった。

 

「マジかよ……」

 

「想像以上の走りね……」

 

 俺がゴール板を抜けた後、続々とゴールをしてくるウマ娘たち。何度もレースを経験している子たちは、そうでもないが経験の浅い子たちは、ウチのチームの子もふくめ冷や汗をかいている。ちょっと悪いことをしたかな……。

 可哀想なことをしたなと反省をしつつ、ヒシアマゾンに声を掛けた。

 

「これで満足したかい?」

 

 俺がそう言うと息を整え終えて笑顔を見せてきた。

 

「今回は完敗だよ。またリベンジさせてもらうからね」

 

 また勝負を仕掛けてくる気かよ。勘弁してもらいたいものだ。そう思い自分のチームの子たちの様子を見に行った。

 息を整えながら模擬レースの感想を言ってくる3人だが、まだ息も整っていないので無理に喋らなくていいことを伝えた。

 この様子だと今日のトレーニングは中止した方がいいかもな。

 スカイは喜ぶかもしれんがバクシンオーは無理にでも走りそうなので見張ってないとな。そんなことを考えていると沖野トレーナーが話し掛けてきた。 

 

「本当にお前には驚かされてばかりだな」

 

 感心したような顔をしているが、体(てい)のいい並走相手を見つけたという思惑も感じられるな。言っておくが俺の本職はトレーナー業だからな。並走相手の時間なんて、そうそう作れるわけじゃないからな。心の中で文句を言いつつも3人の様子を再度確認。大分息が整ってきたようだな。

 

「トレーナー! 本当に早いんですね!」

 

 息が整い開口一番がそれとは流石のバクシンオーだな。また、一緒に走りたいと言わんばかりの笑顔を見せながら言ってくる。

 担当だから、その提案はやぶさかでないが他の子も集まってきそうで怖いな。俺が並走トレーニングをする場合は内密に行う必要性が出てきた。

 多分、無駄なんだろうけど……。

 

「バクちゃんの言う通り全く追いつけませんでした」

 

「次は絶対に追い越して見せます!」

 

 ローレルとチヨノオーも息が整い思い思いの感想を言ってくる。ローレルは素直な感想だが、チヨノオーは次があるような言い方をしてくるので、今回模擬レースに参加した面々はこちらを見てきた。

 他のチームがいないところで発言するならともかく、いる時に言わないでもらいたい。全員から次の模擬レース開催を期待する眼差しを感じる。

 そんな眼差しを向けられても時間がないからな。こっちは担当の子のトレーニングで忙しいんだ。

 そう思いながら、4人のトレーニングに付き添い今日も1日を終えるのだったが──。

 その翌日からウマ娘本人やトレーナーから並走トレーニングの依頼が殺到したが、時間が取れないと言って断ることにした。

 俺もいい加減目立つ行動は控えることにしようと心に決めた出来事だった。

 

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