ウマ娘プリティーダービ- クラウンガールズ   作:文月~夢売り商人~

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キミの名は? いや。関係は無いんだけど…

 入学式の翌日。今日からトレーナー業を本格的に始めるわけなので割り振られたトレーナー室に向かっている。

 その道中に数名のウマ娘に挨拶をされた。軽い会釈を返しつつトレーナー室に辿り着いた。

 トレーナー室に入ると先客がいたようで挨拶をされた。

 

「おはようございます。桜トレーナー」

 

 氷川トレーナーだ。彼女の近くのデスクにはタブレットやら紙の資料が置いてある。おそらくメイントレーナーから渡されたチーム担当のウマ娘のデータだろう。その確認をしていたようだ。

 

「おはようございます。お早いですね」

 

 普通は先輩トレーナーと同室になるのでは? と思ったが同期同士の親交を深める意味でもあるのだろう。

 

「はい。今日から先輩トレーナーと一緒にトレーニングに参加させていただけるのでチーム担当の子だけでも顔と名前を一致させようと思って」

 

 氷川トレーナーは、そう言ってタブレットに視線を戻した。どんな内容が表示されているのかが気になるところだが、そういった物は聞いたりしないのが暗黙の了解になっている。

 サブトレーナーが独立して自分のチームを作ることもあるが、必要な情報なのでサブトレーナーだけは確認できるって感じだ。邪魔をするのも悪いので俺は必要な物を手に取り退室することにした。

 

「さてと……」

 

 ヤル気満々なのは良いことだが、現在トレセン学園は授業中。つまるところ誰かが、トレーニングをしているわけもなく暇なわけだ。授業風景を見ても仕方ないしな。トレーニングメニューを考えるのも担当がいないから決められないしな。

 どうしようかと考えていても仕方ないので授業が終わるまで、どこかで時間を潰すか。そう思い時間を潰せそうな場所へと移動することにした。

 

 少し歩き中庭に辿り着いた。中庭には彫像と大きな切り株があり、彫像はウマ娘の始祖と言われている【三女神】の『ダーレーアラビアン』、『ゴドルフィンバルブ』、『バイアリーターク』を象っている。それが噴水となり鎮座しているわけだ。切り株の方は【大樹のウロ】と呼ばれており生徒だけでなく教員も様々な思いを喚き散らす有名なスポットになっているそうだ。

 

「木陰で昼寝でもしますかね」

 

 トレセン学園の授業が終わるのは、大体15時くらいだったはずだ。他のトレーナーが見たらいい気はしないだろうが気にしないでおく。果報は寝て待てとも言うしな。今日は気温も丁度いいくらいだから良い昼寝日和になりそうだ。

 どれくらいの時間が経っただろうか周りが少し賑やかになり始めてきた。授業が終わったのだろうと思い目を開けると、ベンチに腰を掛け弁当を食べているウマ娘がいるのが見えた。

 なるほど今は昼食時のようだな。俺は欠伸をしながら凝り固まった体を解すために大きく伸びをした。

 

 その後、少しボーっとしていると周囲より更に賑やかなと言うより騒がしい声が近づいてくるのが聞こえた。その騒がしい声がする方を見ると三人のウマ娘が話しているのが目に入った。頭に桜をモチーフにした髪飾りを付けた大和撫子風の子と、カチューシャを付けた騒がしい元凶であろう子に落ち着いた雰囲気のお嬢様気質の子が三人で話をしていた。

 

「あの子たちは確か……」

 

 思い出そうとしていると先に向こうが俺に気が付いたようで三人の内の一人が俺の方を指さし大きな声を上げた。

 

「見つけましたよ!」

 

 何のことか分からないが俺を探していたようだ。指さした子は他の二人が止めるのも聞かずに、ずんずんと俺の方へ向かってくる。わけが分からない俺をよそに俺の前まで来ると腰に手を当て胸を張った。

 

「さぁ! 私と一緒にバクシンしましょー!」

 

 この一言だけでも意味不明なのだが、それが拍車をかけ余計に理解できなくなった。困っている俺を心配してなのか一緒にいた他の二人もやってきて俺に頭を下げた。

 

「すみません……。ほら。バクちゃんもトレーナーさんが困っていますよ」

 

 そう言って落ち着かせようとする子に、しかしっと言った感じで言い返すともう一人が更に意味が分からないことを言い放った。

 

「そうですよ。チヨノートにも『急がば左回り。でも、右回りも忘れるな』と書いてあります」

 

 得意げな顔をしながら指を立てて何か諺を少し変えたようなことを言うもんだから俺の思考は停止寸前まで来ていたので、打開をするためにも自分から何の用件か尋ねることにした。

 

「あー……。『サクラバクシンオー』に『サクラローレル』、『サクラチヨノオー』だったな。何か用かい?」

 

 俺が三人の名前を告げると驚いた顔をされた。

 そりゃそうだよな。初めて顔を合わすのに自分の名前を知っていたんだからな。驚かせてしまったかなと思っていたが心配は無用だったようだ……。

 

「流石です! 同じサクラを冠する者同士だから知っていたわけですね」

 

 いや違う。生徒名簿を見て覚えただけなのだが。今の状態だと話を聞いて貰えそうもないな。諦めつつも一番話が通じそうな、サクラローレルに話を聞くことにした。

 途中、サクラバクシンオーが口を挟んできたり、サクラチヨノオーが言葉を付け加えたりしながら何とか用件が聞けた。

 

 事の始まりは、サクラバクシンオーの一言。「サクラを冠するから担当になって貰いましょう」だった。この時点で意味不明だ。

 その後、昼休みに俺を探すことにしたらしい。その間にも担当の話をするのは良いがサクラバクシンオーの理由では相手を困惑させるだけだと話し合ったらしいが、サクラバクシンオーが暴走。

 うん。実際に困惑してるよ。サクラバクシンオーが話し合いとは別の行動をしてしまい収拾がつかなくなっているのが現状だ。

 

「成程。話は大体分かったし担当になるのも問題は無いんだが……」

 

 俺は言い淀んだ。言い淀んでる理由は一つ。サクラバクシンオーの「一緒に全レースを制覇しましょう!」の一言だ。

 うん。無理だよ。バ場適性や距離適性があるんだから全レースは流石に無理だ。

 いや。全レース制覇が夢なら叶えさせてあげたいけど無理な物は無理だからね。夢を叶える以前に怪我のリスクが爆上がりだからね。

 その事を伝えるとサクラバクシンオーは残念そうな顔をしたが仕方ないことだ。

 担当になることに問題が無いと分かると三人は安心した顔をした。チームに入ってもらうわけだから入部届を提出して貰えるよう伝え昼休憩は終わりを告げた。

 

「賑やかになりそうだな」

 

 担当ウマ娘が決まったことだし仮のトレーニングメニューを考えますか。アイツのようにワクワクする走りを期待しよう。

 

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