ウマ娘プリティーダービ- クラウンガールズ   作:文月~夢売り商人~

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一緒に見たい夢がある

「共同通信杯ですか?」

 

 共同通信杯。GⅢレースの一つで1800mのマイル距離。ローレルには距離的に少し走りづらい距離だが問題はないだろう。

 

「目標は三着以内だ」

 

 今のローレルなら達成できそうな目標を設定してやる。出走するからには一着を狙うべきなのだが、デビュー戦以降出走していないローレルには少し難しそうだから、こうした目標が必要だと思ったから提案をしてみた。

 俺の提案に何も言わずに頷くローレル。それを確認し俺も頷く。

 

「よし。共同通信杯は2月上旬だ。それまでにできるだけのトレーニングをして挑むぞ」

 

「はい!」

 

 ローレルは、いつも以上に元気な返事をして先に行った三人の方へと向かっていった。

 大丈夫だ。あの時より医療技術は発展している。そう自分に言いきかせて、俺にできることを精一杯するだけだ。あの子が後悔しないように……。

 一カ月ほどトレーニングをしてローレルの仕上がりは十分な程になったと思う。今回はスタミナより加速度。いかに早くトップスピードに持っていけるか、トップスピードをどれだけ維持できるかの二点を重点的に鍛え上げた。

 脚への負担も増えたが様子を見ながらトレーニングをしてきた。今日まで怪我もなく過ごせたので一安心だ。

 そして今日はローレルの二回目の出走となる共同通信杯が開催される。このレースで好成績を残せればいい。

 ローレルの夢に一歩近づける。無事に走り切って来いよ。

 俺はそう祈りながらコースを見つめる。

 天候は曇りだがバ場状態は良好のようだ。これなら三着どころか一着を狙えるかもしれないな。このまま最後までもってもらいたいな。

 ウマ娘たちが次々とコースへ出てくる。緊張した面持ちをしている子が多いな。ローレルも見た感じは大丈夫そうだが、実際のところは緊張しているだろう。心配だが俺には見守ることしかできない。

 

 

 

1枠 1番 ブラングリモア

1枠 2番 ライフグレイトフル

2枠 3番 ステンツ

2枠 4番 リボンマドリガル:

3枠 5番 マイトリート

3枠 6番 フリルドアップル

4枠 7番 ソワールセレステ

4枠 8番 ダイイチルビー

5枠 9番 サンドアタック

5枠10番 スマートファルコン

6枠11番 ザンバーハ

6枠12番 クスタウィ

7枠13番 ハートブロウアップ

7枠14番 サンドコマンド

7枠15番 ブラックエボニー

8枠16番 ミニハーブ

8枠17番 プチフォークロア

8枠18番 サクラローレル

 

 

 

「曇り空のもと、東京レース場。芝1800m共同通信杯。18人のウマ娘たちが挑みます。三番人気はこの子です、サクラローレル。この評価は少し不満か? 二番人気はこの子、スマートファルコン。スタンドに押し掛けたファンの期待を一身に背負って一番人気ダイイチルビー!」

 

「私が一番期待しているウマ娘。気合入れて欲しいですね!」

 

 残念ながらローレルは今回三番人気。この時期までデビュー戦以外に顔を出していないから三番人気でも十分期待してもらえていることが嬉しい。

 それにしてもダイイチルビーに加えてスマートファルコンまで、このレースに出走するとは思わなかった。どんなレースになるか楽しみだな。

 

「ゲートイン完了。出走の準備が整いました」

 

 実況がそう言うとスタンドから応援の声が聞こえなくなった。相変わらずゲートが開くまでの静けさでこちらまで緊張してくる。

 

<ガコンッ!!>

 

 ゲートが開き一斉に走り始めるウマ娘たち。先頭争いは誰が制するのかね。

 

「スタートです。各ウマ娘、キレイなスタートを切りました」

 

「誰が先頭に抜け出すか、注目しましょう」

 

 先頭争いは少し予想と違うが概ね予想通りの展開だな。ブラングリモアとスマートファルコン、ザンバーハも逃げを選択したようだな。意外だったのがサンドコマンドとハートブロウアップだな。

 てっきり今回も逃げを選択すると思ったんだが、サンドコマンドは先行の位置。ハートブロウアップはローレルの近くで動きを窺っているようだ。

 

「先頭争いは1番ブラングリモア。11番ザンバーハ、スマートファルコン。これから第2コーナーへかかっていきます。期待通りの結果を出せるか? 一番人気ダイイチルビー!」

 

 そろそろ位置争いが落ち着いてきたか?

 ローレルは後方。得意の差しの位置で様子を窺っているようだが得意距離ではないので、どう転ぶか分からないな。勝てなくとも後悔のない走りをしてほしいよ。

 

「1番ブラングリモア、快調に飛ばしていきます。先頭は1番ブラングリモア。単身で飛ばしていきます」

 

 実況の言うようにかなり飛ばしているな。スマートファルコンはその後ろについている。スリップストリームか……。

 スリップストリーム。他者のすぐ後ろにつくことで、空気抵抗をかぎりなく減らす走法だ。体力の消費も減らせるが前を走る者より体が大きいと効果は見込めない。

 

「第2コーナーを回って向こう正面。1番ブラングリモアが先頭に立ちました。続きました10番スマートファルコン。早くも激しい競り合い。それを見るようにザンバーハ、後ろにクスタウィ。そしてその外を回ってサンドコマンド。そのあとサクラローレル。外から外から、ハートブロウアップ」

 

 逃げと先行が少ないので差し組が団子状態になっているが、その中でもローレルとハートブロウアップが抜きんでている。

 だが、他の子たちも弱いわけではない。油断していると、あっという間に置いていかれるに違いないな。

 

「そしてその外から行ったのは4番リボンマドリガル。その内並んで5番マイトリート、内には7番ソワールセレステ。その内並んで9番サンドアタック、外に15番ブラックエボニー。少し後ろから6番フリルドアップル」

 

 ローレルとハートブロウアップは差し組では先頭なので問題はないだろうが、後ろの方は抜け出すのに一苦労しそうだな。追い込み組は先頭集団が疲れが出てくるのを窺っているな。

 今回のレースは先頭もそうだが、追い込みもローレルにとって十分に怖い存在だ。

 

「後方二番手に16番ミニハーブ。17番プチフォークロア、最後方だ。1番ブラングリモア、先頭を進みますが、これは正解でしょうか?」

 

「1番ブラングリモア、彼女の脚質には合っていますね」

 

「大ケヤキを越え、第4コーナーへ。互いに脚を溜めている展開! このまま直線での争いになるのか!?」

 

 最終コーナー。そろそろ誰かが仕掛けてくると思うが、誰が最初に仕掛けるか見ものだな。全員が先頭との距離を徐々に詰めてきている。

 プチフォークロアが最後方から十三番手まで上がってきている。

 

(かなりの追い上げだな……)

 

 ミニハーブは少し出遅れたようだが、こちらも徐々に上がってきている。二人とも今後が楽しみな子達だ。

 

「さあ、外から先頭を窺うのは13番ハートブロウアップ! サクラローレル前を狙っているぞ。最終コーナー、最初に駆け抜けてきたのは13番ハートブロウアップ。並んでくるサクラローレル」

 

 一着を十分に狙えるが少しずつ疲れが見えてきているな。入着は出来るだろうが、一着は厳しいだろう。

 

「400mを切りました。ハートブロウアップ行きました。まくって上がってくるハートブロウアップ。サクラローレル食らいついていく!」

 

 やはり得意距離じゃないからペース配分やスパートタイミングが、うまくいかなかったようだな。残念だが今回は一着は獲れないだろう。

 だが、今回のレースはローレルにはいい経験になっただろう。それだけでも今回は出走できて良かったと思える。

 

「ハートブロウアップ! 先頭はハートブロウアップ! これは強い! 残り200m。これは強い!先頭は、ハートブロウアップ、変わらない! 勝ったのはハートブロウアップ! 見事な走りで、勝利を手中におさめました!」

 

 肩で息をしているローレル。経験不足もあり今回は二着となったがいい結果だ。

 ローレルは息が整ったのかスタンドの方を向き応援をしてくれていた人たちに深々と頭を下げコースを去っていった。

 さて、俺も頑張ったローレルを迎えに行きますかね。

 レースは終わったが、まだ熱の冷めないスタンドから控え室へと向かう。

 控え室に行くとローレルは椅子に座り休んでいた。大丈夫なのだろうか心配しているとローレルが口を開いた。

 

「大丈夫です。私はこれくらいでは壊れません」

 

 そう言って笑顔を見せてくるローレル。詳しく聞くと脚に気だるさはあるが痛みはないとのことだ。この後、ウイニングライブがあるので終わり次第病院で検査をしなくちゃな。

 二着であったが、ウイニングライブでは笑顔で歌い踊りきったローレル。とても誇らしく思うよ。

 ウイニングライブも無事に終わり、病院の診察室にて検査結果を聞かされている。はっきり言って最悪の結果だ。

 ローレルの脚は1800mを全力で走ったことにより、限界寸前だったとのことだ。脚が弱い分、他のウマ娘たちより負担が大きくなるとのこと。これから先の事を考えると、これ以上レースに出走は医師として勧められないとも言われたな。

 

「……」

 

 ため息を吐きたくなったが、ローレルの方が受けるショックが大きいのが分かったので何とか堪えることができた。待合室ではバクシンオーとチヨノオーにスカイが待っていた。遅くなるから先に帰るように言っていたんだけど心配だったようだな。

 まったく。仲間思いのいい子たちだよ。

 

「トレーナー……。ローレルさんは大丈夫ですか?」

 

 普段の元気の良さは何処へいったのやら、バクシンオーがおずおずと聞いてくる。

 さて、どうしたものかね。どう答えようかと迷いローレルの方へ目をやると丁度ローレルもこちらを見ていた。俺の意図を理解し静かに頷くローレル。

 うん。分かったよ。皆に正直に答えよう。

 

「ローレルの脚は今回のレースで限界寸前の状態だった」

 

 俺がそう言うと三人は驚いた表情をした。当然だろうな。走るどころか歩けなくなる一歩手前の状態だったのだから。

 チヨノオーが何か言おうとしていたが俺はそれを遮るように続けた。

 

「とにかく、この話は明日だ。ローレルの気持ちの整理をさせてやらないと……」

 

 俺はそう言ってローレルの方を見て、明日までの短い時間だが今後どうしたいのかを決めてもらうように伝えて今日は解散とした。

 

 翌日。チームルームへ向かうとローレル以外は揃っていた。

 バクシンオーとチヨノオーは同じ倶楽部の出身だから分かるが、スカイまでもがソワソワしている。ローレルがどんな答えを出すのかが気になるといった感じだな。

 まあ、俺もローレルがどういう答えを出すのかは気になる。

 静かなチームルームの中。時計の音だけが大きく聞こえる。どれくらい時間が経ったのか20分くらいだろうか?

 一時間、ニ時間くらいたったように感じる。

 沈黙に耐え切れなくなったのかスカイが声を出そうとした時。チームルームのドアが開かれた。

 

「遅くなりました」

 

 そう言いながらローレルが入って来た。顔を見ると何か決意をした目をしていた。

 ああ、言わなくても分かるよ。諦めたくないんだよな。分かったよ。俺も覚悟を決めるよ。

 

「トレーナー……。私は諦めたくないです。これからも走り続けたいです」

 

 静かなチームルームにローレルの決意の言葉だけが聞こえた。その場の空気もあり重く感じる言葉。

 ローレルは、それだけ重大な決意をしたのだ。そうなれば俺の答えは決まっている。どんな手を使ってでもこの子の思いを支える。

 

「分かった。脚の方は俺の方で何か方法を考える」

 

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