ウマ娘プリティーダービ- クラウンガールズ   作:文月~夢売り商人~

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夏の強化合宿 クラウンVS桜ファーム

 夏合宿八日目。少しづつ、こちらの環境に慣れ始めた今日この頃。

 クラウンメンバーとファームの子たちで模擬レースをと考えて、ファームのトレーナーたちに打診してみたところ、快く引き受けてもらえたので現在は走者の選定中だ。

 スカイはデビュー前だが、クラウンからはフルメンバーと考えている。十六名でのレースを予定しているので残り十二名。各トレーナーたちも自分たちのチームからと言い始めて、若干収拾がつかない状態になっている。

 現在。桜ファームには八名のチーフトレーナーが在籍している。誰もがウチの子をと言っているので話が進まない。

 そんな中、春樹が全チームから一名を確定で残りの四名は、クジ引きでという鶴の一声で事なきを得た。

 

「すまんな。お陰で助かったよ」

 

「いえ。ここにいるトレーナー全員が自分たちの教え方に自信を持ちたいんだと思います。大おじいちゃんの教え子たちに勝てれば自信になりますからね」

 

 春樹はそう言うが、上には上がいるというものだ。チヨノオーは皐月賞でヤエノムテキに負けているから、ヤエノムテキのトレーナーの教え方が上手いとも言えるし、ダービーではチヨノオーが勝っているから俺の教え方が上手いとも言える。

 

「目標を持つのは良いけど俺なんかより、もっと優れた人たちだっている。それに俺も今は新しい手法を勉強中だしな」

 

 古いやり方だけではもう駄目だ。新しい手法や技術も取り入れていかなければ、トレーナーとして失格だ。そんなことを少し自信なさげに口にした。

 

「大おじいちゃんでも自信がないこともあるんですね。大おじいちゃんはいつも自信ありげだったので……」

 

「そうだな。新しいことを見様見真似、聞いたとおりに行うのはいつでもドキドキしているよ。これで正しいのか? 万が一にも怪我をさせてしまうんじゃないかってね」

 

 俺の間違った判断で怪我をさせて夢を諦めさせてしまうのは申しわけないし怖いと思う。でもそうも言っていられない時もある。本人と話し合いリスクの説明もして納得してもらいトレーニングに組み込む。

 

「大おじいちゃんはウマ娘全員が好きなんですね」

 

「ああ。夢に向かって走る、キラキラした姿がとても綺麗だからな」

 

 俺と春樹が話している間にくじ引きも終わり誰が走るのか決まったようだった。模擬レースは午後からということになり解散し、それぞれの業務にあたった。

 

 その日の午後。各トレーナーが模擬レースのことを話し出走する子の名前を挙げた。選ばれなかった子は、がっかりした様子だったが見るのもいい経験となるはずなので今回は我慢してもらおう。

 

 

 

1枠 1番 ゴーイングノーブル

1枠 2番 グリームアトリウム

2枠 3番 カラフルパステル

2枠 4番 サクラチヨノオー

3枠 5番 サクラローレル

3枠 6番 キュラキュラ

4枠 7番 グーテンベルク

4枠 8番 クラースナヤ

5枠 9番 カルテットアコード

5枠10番 グリードホロウ

6枠11番 コードオブハート

6枠12番 コルスカンティ

7枠13番 サクラバクシンオー

7枠14番 キャラメルパルフェ

8枠15番 クリエイトセンド

8枠16番 セイウンスカイ

 

 

 

 くじ引きの結果。チヨノオーとローレルは内側。バクシンオーとスカイは外側となった。スカイに関しては、完全に外なので真面目に走るか疑問だな。

 模擬レースのコースは仮想東京レース場。最初の下りはないが、その後のアップダウンは再現されている。トレセン学園の生徒としては最も近場のレース場だ。こちらに分があるとは言え桜ファームの子たちも厳しいレースの世界で走ってきた子たちばかりだ。

 

「油断するなよ……」

 

 俺はコース全体が見渡せる場所で小さく零した。

 ほぼ全員がゲートへ入ったが、スカイがゲートインを渋っているのが窺えた。模擬レースだから問題はないが本番までには何とかしないといけないな。

 五分程して漸くスカイもゲートへ入った。それを確認したスターター係がスイッチを押す。

 

<ガコンッ!!>

 

 始まったみたいだな。今回は模擬レースということもあり距離は1800mに設定している。マイル距離になるわけだが、バクシンオーとチヨノオーが得意としている距離だな。ローレルは少し走り難い距離だ。スカイは練習を見る限りは中距離・長距離を得意としているように感じる。マイル距離はどんなものかな。

 距離適性のことを考えながらレースを見守る。

 最初に飛び出したのは、コードオブハートとコルスカンティにバクシンオーだ。コードオブハートは逃げ切りのようでコルスカンティは、コードオブハートをマークしているようだな。バクシンオーは逃げと先行の間くらいの作戦にしたみたいだ。

 

「コルスカンティの奴。いつもより少しペースが速いか? 張り切り過ぎてなきゃいいけどな……」

 

 コルスカンティの担当だろうか? そんなことを呟いている。

 確かに見た感じペースが速いと感じるが、スタミナに自信があるなら悪くはないと思う。調子がいいなら尚更、このまま逃げ切れるかもしれないな。

 

「どうしていつもこうなんだろうな。意識し過ぎだっていうの」

 

「何かとコードオブハートと張り合っているからね」

 

 コルスカンティはライバル視するあまり、コードオブハートと走ると自分のペースで走れないようだな。トレーナーも大変だな……。

 そんなことを思いながらも少し後ろの方を注視する。先頭から二バ身ほど離れた集団の先頭はチヨノオーみたいだな。その内にカラフルパステル、少し後ろにカルテットアコード。ゴーイングノーブルは、カルテットアコードの後ろにぴったりとついて走っているな。外にクリエイトセンド、その後ろ内にグーテンベルク。ここまでが先行組といったところだな。

 

「抜け出すのが大変なのに、ゴーイングノーブルはどうしても内に入りたがるな。走りやすいなら構わないけど……。クリエイトセンドはそれが分かっていて横で抜け出しづらくしているみたいだ」

 

「同じチームでもライバル同士だから余計に意識しちゃうんじゃないかな?」

 

 俺はゴーイングノーブルとクリエイトセンドの担当トレーナーにそう返した。彼は少し気まずそうに頭を掻いていた。

 カルテットアコードとカラフルパステルは、ダービーウマ娘であるチヨノオーをマークすることにしたようだ。チヨノオーも二人にマークされるのは、初めてのことだろうからな。自分のペースを乱さなきゃいいな。

 

「見た感じグーテンベルクは先行組の様子を窺っているように思えるんだけど……」

 

 俺の呟きに担当トレーナーが返してくれる。

 

「グーテンベルクは堅実さが売りです。早いペースなのを見て前が落ちてくるのを、あの位置で待っているんです」

 

 やっぱりな。ウチのスカイもそうだが結構計算高い子のようだな。

 さて。そのスカイとローレルはどんな感じかな。俺はさらに後ろに目をやる。

 

「グリードホロウとキャラメルパルフェは、普段通りの走りができているみたいだな。でも先頭のペースが速いから差し切れるか不安だ」

 

 差し組。先頭は僅かにローレル、少し後ろ外にグリードホロウとキャラメルパルフェ。スカイも真面目に走っているようだ。ローレルは兎も角、スカイは様子を窺っているようで全力で走っているようには感じられないな。自分より前の子たちの走りを観察しているといった方が正しいか? そんな感じの走りだな。

 

「殿はどんな感じかな」

 

「殿はウチの子たちとグリームアトリウムですね。今回は追い込みのすごい子たちを出走させてみました」

 

 キュラキュラとクラースナヤの担当トレーナーが、そんなことを言っている。遠目からだと分かりにくいが走りに力強さを感じる。同じく殿のグリームアトリウムの走りにも力強さが見える。

 

「確かに追い上げが怖そうな子たちだな。どんな走りを見せてくれるか今から楽しみだよ」

 

 俺は笑顔で返した。

 ある程度、位置取りが落ち着き向正面も終わりを迎え、第3コーナーへと向かう。最初に第3コーナーへ入ったのは、コードオブハートだ。コルスカンティも、あとに続きバクシンオーは少しペースを落として一バ身差の位置で、チヨノオーも一バ身差まで詰めてきている。カラフルパステルも、付かず離れずの位置にいる。カルテットアコードは、前が詰まった時のことを考えてか少し外にズレたみたいだな。ゴーイングノーブルとクリエイトセンドが入れ替わり、グーテンベルクも並んできている。

 差し組も距離を詰めてきて、ローレルがグーテンベルクの少し後ろに付けている。グリードホロウとキャラメルパルフェも離されないように距離を詰めてきているというより、ローレルが抜け出せないように囲っているようだ。

 グリードホロウは兎も角、キャラメルパルフェは自分も多少抜け出しづらくなるリスクも承知でローレルの道を塞ぎにきているようだな。

 スカイは少し離され殿との距離が縮まってきている。キュラキュラとクラースナヤにグリームアトリウムも落ちてきたスカイを見るや、それを躱し前へ出てきた。それでも変わらずスカイは追い上げようとはしていない。

 

「本気で走るのはここじゃないってことか? それともやる気の問題か?」

 

 俺は少し不安になりながらもスカイの様子を窺う。今回の模擬レースはデビュー前ということもあり少し辛いかも知れない。周りはシニア級やクラシック級の子たちばかりだ。実力差は明白だが少しは、やる気を出してもらいたいものだな。

 俺が内心、やれやれと思いながらも先頭集団へと視線を戻す。

 先頭の方でも変化があったようで、先頭は変わらずコードオブハートだが、第4コーナーに入った頃から、コルスカンティが落ち始めバクシンオーが二番手となった。

 

「スタミナ切れのようだな」

 

 コルスカンティの担当トレーナーの言うとおりスタミナ切れだろう。見る見る順位を落としていく。逃げのペースで走るなら、もう少しスタミナをつけさせた方がいいだろう。ライバル視している子が逃げが得意なら尚更な。若しくは同じ土俵での勝負を避けるかだ。俺がそんなことを言っても駄目だろうから、そこは担当との話し合いだな。

 コードオブハートが初めに第4コーナーを抜け直線へ、バクシンオーもそれに続く。少し遅れてチヨノオーも第4コーナーを抜ける。それと同時に少し早いと思うが、スパートを掛け始め先頭との距離を詰め始めた。

 カラフルパステルとカルテットアコードもコーナーを抜けると同時にスパートを掛け始めた。ゴーイングノーブルもコーナーを抜けたが、スパートはまだ掛けないようだがクリエイトセンドとグーテンベルクは、ゴーイングノーブルを躱しスパートを掛ける。

 後方の差し、殿組も先頭がスパートを掛け始めたのを確認し徐々にペースを上げ始めた。

 ローレルは脚の状態を確認しながらスパートを掛けているからか、今までのレースのようなスパートが見られない。まだここの芝に慣れてないようだ。スカイは変わらず、デビューしレースに出走してきた上のクラスの子たちの走りの観察に専念しているようで本気でスパートを掛ける気がないようだ。

 

「やはり課題は山積みのようですね」

 

 コルスカンティのトレーナーの一言に周りのトレーナーたちも同意している。俺もその通りだと思うよ。

 いくら重賞レースに勝っても、ライバルたちはさらに力を付け追いかけてくる。長所を伸ばし短所をなくすトレーニングをしていかなければならない。短所を完全になくすことは不可能に近いけどな。

 そんなことを思っているとレースも残りわずか、残り400mの時点でさらなる動きがあった。

 先頭で争っていた、コードオブハートとバクシンオーだが、スタミナがなくなり始めたようで速度が落ちてきていた。後続の子たちに追い付かれることはないだろうが、一着はコードオブハートだろう。

 残り200mになり、先頭は完全にコードオブハート。バクシンオーは二バ身程、離されている。後続との距離も詰まってきており、三バ身くらいの差しかない。

 だが、バクシンオーも最後まで諦めてはいないようで力を振り絞りコードオブハートを追い縋る。コードオブハートも捕まらないようにと最後の最後まで全力で走っている。

 結果。一着はコードオブハート。二着はバクシンオーで三着には、カラフルパステルが入着した。

 レース後。それぞれのトレーナーから講評を受けていた。ウチも反省会を始めますか。

 

「まあ、なんだ。バクシンオーは最後の方にスタミナが切れたのは自覚しているな。最後まで諦めない気持ちは大切だが根性だけでは、どうしようもないことがあることを覚えておくようにな」

 

「はい!」

 

 バクシンオーはレース後だっていうのに元気だな。アクションゲームで言うところのスタミナ回復レベルMAXって感じだな。

 

「チヨノオーは今回は六着だったな。走り慣れていないは、負けの理由にはならない。トップスピードの維持をどれだけできるかが課題だ」

 

「はい」

 

 チヨノオーは次は負けないといった感じの闘志を目で訴えかけている感じだな。実際、性格からして俺の感じたままのことを、その胸に秘めているんだろう。

 

「ローレルは脚のこともあるだろうが、今回は臆病になり過ぎだったな。時には思い切りも大事だということを頭の片隅にでも置いておけ」

 

「分かりました」

 

 脚の怪我で二度と走れなくなる子もいるので、常に全力で走れとは言えない。だが勝ちたいレースでも臆病になってしまうのも避けたい。

 

「んで。最後にスカイだけど……」

 

 俺が名前を言うも眠たそうな表情をして、我関せずを決め込もうとしている。

 

「模擬レースも調整のためだと思って少しは真面目にな。他から真面目にやってほしいって苦情がくると俺も言わざる得なくなる。言われるのは嫌だろうからな。前にも言ったが、サボるならバレないようにサボれよ」

 

 俺がそう言うも返事はない。耳は動いていたので聞こえてはいる。バクシンオーもスカイが、どういう性格なのか理解し始めているようで何も言ってこない。

 

「んじゃ、レース後の疲れもあるだろうから、残りの時間はハードトレーニングはなしで、軽めにするようにな。スカイはストレッチを忘れずにするようにな」

 

 レース後に軽めのトレーニングでさえしないだろうと思い。ストレッチだけは忘れずにするようにスカイには伝えておく。

 さて、俺自身も今後の課題に向けて勉強をしないとな。

 そんなことを思いながら今日も一日を終えた。

 




小事情により変なところがあるかもしれません。
主にウマ娘の名前。英字になっている箇所があるかもしれません見つけたら連絡をお願いします。
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