ウマ娘プリティーダービ- クラウンガールズ   作:文月~夢売り商人~

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速さこそ真理と信じ爆進

 強化合宿から帰省して一ヶ月経った。その間にローレルがGⅡレースを一回出走した。結果は一着で、二着とは一バ身程だったが、満足のいく走りができていたと思う。

 だが、本人はそれで満足している様子はなかった。俺はそれでいいと思った。ウマ娘として生まれたなら誰よりも速く走りたいと思うはずだ。ローレルは脚のこともあるから、誰よりもその思いが強いのだろうな。

 さて、今日は中山レース場に来ているわけだが、目的は当然出走のためだ。

 

「今日は楽しみで朝5時に起きてしまいました!」

 

 とんでもない発言をするバクシンオー。寝不足で具合が悪くならないだろうか? 気合は乗っているようだが体調が心配になる。

 

「具合が悪かったりしないか?」

 

 俺がそう聞くと普段と変わらない笑顔を見せて大丈夫とアピールしてくる。今の状態は自律神経のバランスが乱れて、軽い興奮状態だと感じる。楽しみにしていたと言っていたが、バクシンオーには悪いが今からでも棄権するのが最良だろう。

 そう考え、いつもより興奮して楽しみだというバクシンオーの姿を見る。そんなバクシンオーを悲しませたくないという思いも出てきてしまった。どうしようかと悩んでいると、バクシンオーが声を掛けてきた。

 

「大丈夫ですよ。トレーナーさん。確かに寝不足気味ではありますが、怪我無く走り切って見せます!」

 

 どうやら顔に出ていたみたいだな。俺の不安を払拭するために、そんなことを言ってくるバクシンオー。レース前の子の不安を取り除くのがトレーナーの仕事なのに逆に不安を取り除かれてどうする。

 そう思い俺はバクシンオーの意見を尊重することにした。

 

「わかった。きっちり完走してこい! 万が一にも怪我をしても知り合いに腕のいい医者がいるから大丈夫だ」

 

 俺がそう言うとバクシンオーは元気な返事を返してきた。その後、レースまで時間があるので応援に来ていたローレルとチヨノオーと会話を始めた。少しでも気持ちを落ち着かせようとしているのだろう。

 因みにスカイは授業中に居眠りをし過ぎたせいで教師陣に怒られ本日は真面目に授業を受けなければいけないとのことで来られなかった。スカイのことだから、おそらく今日も居眠りをしているだろうな。

 暫く、会話をしていると係員が呼びに来た。

 

「それじゃ、いってきます!」

 

 なぜか敬礼をしながらそう言って控室を出ていくバクシンオー。無事に走り切ってほしい。

 

 

 

1枠 1番 ヤマニンゼファー

2枠 2番 イミディエイト

3枠 3番 ニシノフラワー

3枠 4番 タクティカルワン

4枠 5番 アクアラグーン

4枠 6番 アレイキャット

5枠 7番 サクラバクシンオー

5枠 8番 ステイシャーリーン

6枠 9番 サンドコマンド

6枠 10番 ソワールセレステ

7枠 11番 メモラビリンス

7枠 12番 レベレント

8枠 13番 ヴァイスグリモア

8枠 14番 セレブアクトレス

 

 

 

「秋の気配が近づく中山に快速自慢が集う! 電光石火、スプリンターズステークス!」

 

 実況がそのレースならではの謳い文句を言う。バクシンオーは寝不足で調子が悪そうなのが気になるところだ。

 

(今回のレースは厳しいものになりそうだな)

 

 俺がそう思うのにも理由がある。今回のレースには油断できない子が二人ほど出走してくる。『ヤマニンゼファー』。栗毛の長髪で髪を後ろで二つ結びにし前髪の流星がトレードマークの子だ。見た目通りおっとりした性格。こう言っては何だが天然といった感じの子なのだが走りはそうではない。風のようと言われるが俺が見たところ、あまりにも苛烈で嵐のような走りをする子だ。

 もう一人が『ニシノフラワー』。黒鹿毛でショートボブの小柄で純真無垢といった感じの子だ。飛び級でトレセン学園に入学してきた経歴を持っており最年少なのだが、実力は他の子たちと引けを取らない。

 

「三番人気はこの子、ニシノフラワー。この評価は少し不満か? 二番人気はこの子、サクラバクシンオー」

 

 今回は二番人気か……。三番人気にニシノフラワーだとすると一番人気はやはり──。

 

「スタンドに押し掛けたファンの期待を一身に背負って本日の一番人気ヤマニンゼファー!」

 

「私が一番期待しているウマ娘。気合入れてほしいですね!」

 

 やはりヤマニンゼファーが一番人気か……。八番、九番人気が重賞レースで一着を獲った過去もあるので人気投票の結果はさほど関係ないが、それだけ実力を認められているということでもある。

 

「っと、そろそろ始まるみたいだな……」

 

「各ウマ娘、ゲートに入って体制整いました」

 

<ガコンッ!!>

 

「スタート! 各ウマ娘、きれいなスタートを切りました」

 

「これは位置取りが熾烈になりそうですね」

 

 全員いいスタートが切れたみたいだな。バクシンオーも寝不足気味だったが周りに遅れることもなくいいスタートが切れたみたいだな。

 スタートで出遅れている子がいないことを確認しバクシンオーの姿を探す。

 

「先行争いはサクラバクシンオー。ヴァイスグリモア、ニシノフラワー。やはりサクラバクシンオー。続きました3番ニシノフラワー。一バ身離れて1番ヤマニンゼファー」

 

 意外というか当然というかバクシンオーが先頭に立っている。無理はするなとあれほど言ったのにな……。

 すぐ近くにはヴァイスグリモアとニシノフラワーがいる。ヴァイスグリモアには悪いが彼女のここ最近の走りは少しパッとしない印象だ。二着、三着まではいくのだが、どうも勝ちきれないことが多い。

 ニシノフラワーの走りは今日、初めて見るが年齢や体躯の差を感じさせず、小さいながらも周りに負けたくないという気迫のあるいい走りを見せてくれている。

「8番ステイシャーリーン、四番手。その内並んでタクティカルワン。そしてその外から行ったのはメモラビリンス。差がなくレベレント。少し後ろから14番セレブアクトレス。それを見るように2番イミディエイト。サンドコマンド並んできた。差がなくアクアラグーン。一バ身差、6番アレイキャット。第4コーナーカーブ」

 

「勝負所、最後の直線へと駆けていきます!」

 

 やはり短距離は直ぐに決着がついてしまう。だが、彼女たちは短い距離でも全身全霊で走り抜ける。自分が一番だという思いを胸に走る。夢に向かってひたすらに走り続ける彼女たちの姿は美しいな。

 

「まだ先頭は動かない! このまま直線での争いになるのか!? 各ウマ娘一段となって、団子状態の大混戦!」

 

「さあ、最終コーナーを曲がって最後の直線コースに入った。サクラバクシンオー、ここから一気にちぎるか! 脚色は衰えない! 200mを通過。サクラバクシンオー、リードは一バ身」

 

 残り僅かの距離。アスリートたちなどは、プレイ中に周りがスローモーションのように感じることがあるようだが彼女たちもそうなのだろうか?

 ほんの数秒が長く感じ隣や後ろにいる子がいつ自分を追い抜くのか気が気じゃないだろう。それでも、前だけを向いて走り続けるしかないのだろうな。

 そう思っていると今バクシンオーがゴール板を駆け抜けていった。

 

「勝ったのはサクラバクシンオー! 最後、意地を見せて、栄冠を手にしました!」

 

「サクラバクシンオーGⅠ獲ったー! サクラバクシンオーが右手を挙げました! 二着ヤマニンゼファー。三着に入ったのはニシノフラワー」

 

 寝不足とは思えない走りを見せてくれたな。なんともまあ、屈託のない笑顔で手なんか上げちゃって……。それほど嬉しかったんだろうな。

 さてと、地下バ道まで迎えに行かないとな。そう思いローレルとチヨノオーを連れて地下バ道へと向かった。

 地下バ道へ着くとコースの方から、ちらほらとウマ娘たちが戻ってくるのが見えた。その中には少しふら付きながらも俺たちの姿を見つけると元気に振る舞うバクシンオーの姿も見えた。

 

「やりましたよ。トレーナーさん!」

 

 笑顔でそう言いながらVサインを見せてくるバクシンオー。レースの疲労と眠気で少しフラフラしていて今にも倒れそうだった。この後はウイニングライブが控えている。

 

「ウイニングライブは出来そうか?」

 

 応援に来てくれた人たちには悪いと思うが、バクシンオーの体調が心配なので早く休ませたいと思ってしまう。病院での検査はその後でも大丈夫だろう。事情を話せば分かってもらえると言い、ウイニングライブを辞退することを提案した。

 

「本当に大丈夫ですよ。それに応援してくれた人たちを悲しませたくありませんから」

 

 そう言って普段通りに振る舞うバクシンオー。URAファンを悲しませたくないという気持ちが伝わってくる。

 トレーナーとしては無茶はさせたくないが、トレーナーと同時に俺もURAファンであるといっても間違いではない。ウイニングライブで輝く姿を見たいとも思ってしまう。どうしたらいいかと悩んでいると、バクシンオーは俺に最後までやらせてほしいといった感じの視線を向けてくる。

 

(そんな顔をするなよ……)

 

 少し悩んだがバクシンオーの顔を見て、バクシンオーの意志を尊重することにした。

 

「分かったよ。あまり無理をしないように、応援してくれた人たちに感謝の気持ちを伝えて来い」

 

「はい!」

 

 元気な返事をしてウイニングライブの準備のため控室から出ていくバクシンオー。疲労と眠気もあるはずなのに殊勝な子だな。

 ウイニングライブでもステップなどで脚を挫いたりするかもしれない。心配ではあるが大丈夫だと信じよう。そう思い、俺もローレルとチヨノオーを連れて控え室を出てライブ会場へと向かった。

 会場にはすでに人が集まっておりウイニングライブが始まるのを今か今かと待ちわびている人でいっぱいだった。

 

「人がすごいから逸れないようにな」

 

 俺はそう言いながら人ごみをかき分けながら進んでいく。本当なら前の方で見たいのだが、こうも人が多くては前には進めない。仕方ないと諦め少しでも開けている場所へと移動する。

 何とか開けている場所にたどり着き、ローレルとチヨノオーが着いてきていることを確認する。少し遅れて、二人が人ごみから出てきて俺の傍へとやってきた。人ごみがすごかったようで少し疲れた顔していた。

 

「大丈夫か?」

 

「はい。大丈夫です」

 

「私も大丈夫です。それにバクちゃんの方が疲れているんだから、私たちが疲れたなんて言ってられないです」

 

 チヨノオーは少しげんなりしながら返事を返してきたが、ローレルの言葉を聞いて謎に私は元気ですアピールをしてきた。それを見て思わず吹き出しそうになったが、何とか堪えた。

 チヨノオーも、そんな俺に気が付いたのか再度「大丈夫です」と言ってきた。そんなチヨノオーに対し「分かった。分かった」と言葉を返しウイニングライブが始まるのを待った。

 待つこと。10分ほどでステージ衣装に着替えた三人がステージ上に上がって来た。

 

「始まるみたいだな」

 

 疲れているだろうに笑顔で歌って踊り始めるバクシンオー。ライブ会場からも歓声やコールが聞こえてくる。それに応えるようにバクシンオーとヤマニンゼファーにニシノフラワーもありったけの感謝の気持ちをライブに参加できなかった子たちの分も合わせて伝えている。

 今日も最高のライブになるだろうな。

 




短距離のレースはレース展開が短くなるから困る(´;ω;`)
いい方法がないだろうか?
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