ウマ娘プリティーダービ- クラウンガールズ   作:文月~夢売り商人~

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健気な頑張り屋さん

 サイレンススズカのオープン戦を観戦した翌日。

 廊下で満面の笑みの沖野トレーナーと擦れ違った。何があったのか気になるところだが話を聞けば長くなりそうだし腹正しい笑顔を見せて来るに違いないので無視することにしたのだが、何故か俺の後をついてくる沖野トレーナー。

 見通しが悪かった。誰かと言うより俺に話を聞いてほしくて仕方ないといったところだろう。これじゃ、業務にも支障が出るかもしれないので話を聞くことにした。だいたい一言目は「どうしようかな~?」とかだろうがな。

 

「何かいいことでもあったんですか?」

 

 俺がぶっきらぼうに聞くと予想通りの返事が返ってくる。

 

「なになに? 聞きたい? どうしようかな~?」

 

 腹が立つ笑顔で答える沖野トレーナーだが、こう言った人相手の扱い方は知っている。

 沖野トレーナーは話したそうにしているのだが、どうしようかなと言われた以上は話を聞かなくてもいいのだ。俺は黙って先へ行こうとすると慌てて俺を制止させようとしてくる沖野トレーナー。

 

「あーあ! 待て待て! 話すから」

 

 そう言いながら話を始める沖野トレーナー。どうやら、最近気になっていた子の引き抜きの成功したのだとか。

 昨日の今日だ。誰を引き抜けたかは言われないでも分かる。

 サイレンススズカ。昨日のレースでは見事なまでの大逃げを見せてくれた子だ。確か元はリギルの所属の筈だったので東条トレーナーと一悶着あったに違いないが、のらりくらりと躱したに違いない。

 俺は話を聞きながら自分のトレーナー室へと向かった。歩きながらも沖野トレーナーは引き抜いた時の苦労話を始めた。

 トレーナー室に着く頃には満足したのか笑顔で去っていく沖野トレーナー。俺はげんなり気分だったが、二日後は大事なレースの日だ。気持ちを切り替えないとな。

 

 放課後。ひょんな事から本日、リギルの入部テストがあると耳にした。ついでに早めに仮眠室の準備ができたお礼も言われた。

 リギルへの入部は難関だと聞く。こういう言い方はあれだが、もしこの入部テストで面白い子がいればウチに誘ってみるのも悪くないと思い見学をすることにした。

 

 コースへ来ると既に何人もの入部希望者が揃っていた。リギルのメンバーも品定めでもするような視線を送っている。

 邪魔にならないようにとは習た場所から見学しようとしていたのだが既に先客がいた。

 双眼鏡で見学をしようとしている人物。沖野トレーナーだ。彼も俺と同じ考えなのだろうか?

 それともライバルチームにどんな子が入るのかが気になっているだけなのだろうか?

 そこは分からないが同じ見学者として気になるので今朝に仕返しにと少し悪戯の意味も込めて聞いてみることにした。

 

「サイレンススズカを引き抜いただけで満足せず、また誰かを引き抜くつもりですか?」

 

 俺が声を掛けると沖野トレーナーは珍しく気まずそうな顔を見せ俺の質問に答えた。

 

「おハナさんにお小言を言われたくないから少しは自重するよ。それより面白い子がいないかと思ってな」

 

 どうやら俺と同じ目的のようだな。なら、これ以上は弄る必要もないだろうと思い、沖野トレーナーの横に腰を下ろした。

 

「俺も同じ目的ですよ。面白い子がいればウチに誘えないかなと思って」

 

 どうせ聞かれるだろうと思いここに来た目的を先に話した。

 沖野トレーナーはお前もかと言った感じで、いつもとは違う腹正しい笑顔ではない笑顔を見せコースへと視線を戻した。

 入部テストの内容はコースを一周するだけとのことだが、入部できるのはたった一人らしい。脚自慢の子が集まりその中でも飛びぬけた才能を持った子が入部できる。

 リギルの素晴らしさは学園内だけには留まらずリギル目当てで入学してくる子も少なくないと沖野トレーナーが話してくれた。

 確かにファームからこちらに来る前にもリギルの名は耳にしたことがあるほど有名だからな。

 俺が来てから少し時間が経つがまだ始まらないみたいだが、沖野トレーナー曰く。テスト前にそれぞれの目標を聞いているとのことだ。

 沖野トレーナーと話をしている間に入部希望者たちが移動を始めた。沖野トレーナーが双眼鏡を使い見学を始めた。俺も同様に双眼鏡を使い見学を始める。

 スタート位置を確認すると全員が真剣な表情をしていた。

 当然だな。遊び半分でリギルに入る子なんていないだろう。皆、自分が一番だと信じて挑んでいることだろう。

 そんな中、昨日のレース場で出会った子の姿を見つけた。

 

「あの子もリギルに入部希望か……」

 

 俺は思わず呟いてしまったが、沖野トレーナーは何も言ってこなかった。

 すごい集中力だな。普段からそうであってほしいものだが……。

 

 入部希望者が全員ゲートに入り体制を整えるが、昨日の子は少し戸惑っている様子だ。おそらくゲートに入るのが初めてなのだろう。少し心配になって来た。

 俺の心配をよそにゲートが開かれ一斉に走り出した。と思ったのだが、一人で遅れていた。

 昨日の子だ。双眼鏡で確認すると慌てて走り出し100mほど走ったところで早速、一人追い抜いた。

 

「ん? 追い抜いた?」

 

 あの子が出遅れたのは、3秒ほどだ。100m地点に行く頃には他の子たちは速くて、200m地点に差し掛かる筈だが追い抜いた。追い抜かれた子を確認するとピンク髪の子が手を前方でバタつかせて走っている姿が目に入った。

 あんな風に走っても早くはならないだろうに、それでも懸命に走ってる姿に目を惹かれて、思わず口元が緩んだ。

 ピンク髪の子。名前は確か『ハルウララ』だったかな? どんな子なのかは、詳しく知らないが面白い子を見つけた。

 そう思い暫くハルウララを見ていると、隣から声が漏れたのが聞こえた。

 ハルウララから視線を先頭の方にやると何時の間にか、あの子が前の方を走っており、ウェーブのかかった鹿毛のセミロングヘアー。耳をシンプルな青色のカバーで覆って、右耳の直下には緑色のリボンを付けた子と並んで走っている。

 

「隣の子は確か……」

 

 昨日の子と並んで走っているのは、『キングヘイロー』だったな。その母親はGⅠを七勝したことで有名だが、親は親で子は子だ。どれだけの走りを見せてくれるのか非常に気になるところだ。

 二人の接戦を見ていると胸が熱くなってきた。

 どちらも頑張ってほしいところだが、あの様子じゃあ。外にもう一人いることに気が付いてないな。

 昨日の子がキングヘイロを僅かに抜きヒシアマゾンの前を両腕を広げて通過した。競い合い勝てたのが嬉しいのだろうが、残念ながら一着は……。

 様子を確認していると笑顔を見せ東条トレーナーやリギルメンバーがいる方を見るが、自分の目の前の光景にガッカリした様子だ。

 一着の旗を持った別の子。マスクを付けたウマ娘。名前は『エルコンドルパサー』アメリカからの帰国子女とのことだ。なぜ、マスクを付けているのかは知らんがな。

 人には聞かれたくないことの一つや二つあるから気にしないようにはしている。

 

「へぇ~……」

 

 隣で見学していた沖野トレーナーもストップウォッチを見ながら関心の声を上げていた。目当ての子が良いタイムでも出していたのだろうか?

 気にはなるがそう言うものは聞かないのが暗黙のルールだ。

 俺は沖野トレーナーを置いて目的の子を勧誘するために校門前に向かうことにした。チームの子たちには「今日も申し訳ない」と言って自主トレをしてもらうことにした。

 

 日も落ち始めた夕暮れ時。校門で待っていると寮に戻るウマ娘たちを何人か見かけたが目的の子はまだ来ない。

 暫く待っていると、目的の子。ハルウララと昨日の子が並んでやって来た。ハルウララは笑顔で話しながら、昨日の子は少し項垂れながら……。

 

(そんなにリギルに入りたかったのかな?)

 

 そう思いながらも二人……。

 正確にはハルウララになのだが声を掛けた。

 

「ハルウララ。ちょっといいかな?」

 

「あー。桜トレーナーだ♪」

 

 人懐っこいというかなんというか、誰にでもこんな感じならこっちまで元気になってくるというモノだ。

 

「そっちの子も昨日ぶりだな」

 

 俺はそう言ってい昨日の子にも声を掛けた。そうするとトレーナーさんだったんですね。と言った感じに挨拶を返された。

 それはそうと声を掛けた理由を話すと、ハルウララは笑顔を見せて快諾してくれた。それと同時に一つ尋ねられた。

 

「それじゃ、スぺちゃんも一緒に?」

 

 スぺちゃん? この子の愛称か?

 まあ、名前は分からないが取り合えず違うことを伝えたのだが、少し元気をなくすハルウララ。それを見た隣のスぺちゃんと呼ばれた子は取り繕い笑顔を見せて気にしないで下さいと言っていた。

 

「取り合えず、他のチームメンバーにも紹介したいから、一緒にチームルームに来てもらってもいいかな?」

 

 俺がそう言うと、これまた快諾してくれてスぺちゃんと呼ばれた子に「またねと」と伝え俺の後を着いてきた。

 

 チームルームに行く途中に何と言うか、別に怪しくは無いのだがどう見ても怪しい三人組。

 サングラスとマスクをしたゴールドシップとウオッカ、ダイワスカーレットが大きめのズタ袋を担いで走っていく姿を目撃した。ズタ袋の口からは脚が生えていたのが気になるが、気にしないことにした。

 

 チームルームに着くと全員が着替え終わっており、丁度帰り支度をしていた。

 

「間に合ったようで良かったよ」

 

 俺がそう言うとそれぞれが挨拶を返してくれた。セイウンスカイだけは眠たそうにしていたが俺の後ろにいるハルウララを見て質問してきた。

 

「ウララがトレーナーと一緒にいるということは、そういうことですか?」

 

「あっ! セイちゃんだ♪」

 

 スカイとハルウララはお互いの事を知っているようだな。紹介の手間が省けて助かる。

 

「まあ、そういうことだ。今日からハルウララもクラウンメンバーとして一生にやっていくことになった」

 

 俺がそう言うと他の三人も挨拶をすませた。

 

「さてと、挨拶も済んだことだし今後の話だな」

 

 今後の話をしようとすると全員が椅子に座る。ハルウララも何処に座ったらいいかと戸惑っていたが、スカイの隣に腰を下ろした。

 

「まずはスカイだが、デビュー戦だが二日後だな」

 

 スカイの初お披露目であるデビュー戦は二日後。どんな走りを見せてくれるのか俺も楽しみで仕方ない。

 俺がスカイのデビュー戦のことを言うとバクシンオーとチヨノオーが声を上げた。

 

「いよいよ、デビュー戦ですね! 頑張ってください!」

 

「応援しています」

 

 声援を受けたスカイも満更ではない様子だ。気楽にやりますよと言った感じで返事を返していた。

 

「次にハルウララ……。ウララのデビュー戦だが……」

 

 俺が話を続けてウララのデビュー戦のことを伝えようとするとリームルームが静まり返った。

 当然だな。自主トレしかしていなかっただろうウララがチームに入ってすぐにデビュー戦の話が上がったのだ、心配にもなるだろう。

 

「まあ、急な話だよな。ウララのデビュー戦は来月だ」

 

 来月。十一月がウララのデビュー戦だ。今からだと十分なトレーニングは出来ないだろうが、俺はウララの走りには目を見張るものがあると信じて勧誘したのだ。

 多少、急ぎ足になってしまうがウララの走りをURAファンに早く見て欲しいと思っての発言だ。 

 色々と俺の思いを伝えウララのデビュー戦には納得してもらった。

 

「大丈夫だ。無茶なトレーニングはさせない。基礎トレーニングを中心にフォームを少し矯正するだけだ」

 

 俺が無茶はさせないと約束をして今日はお開きとなった。

 

「さてと……」

 

 俺は一人チームルームに残されて独り言のように呟いた。

 ウララの走りだが、あれでは速くは走れない。本人が走りやすいと言っても無駄な動きが多い上にそれに伴いスタミナも大きく使ってしまう恐れもある。

 脚運びなどは直さずともまずは腕の振りから直さないとな……。そう思い基礎トレーニングの他にフォーム、主に腕の振りを矯正できるトレーニング方法を考えることにした。

 




アニメ準拠 スペシャルウィークがスピカ入部直後にデビュー戦。翌年がクラシック級なので対決の為にセイウンスカイも同時期にデビュー。

※史実では一月が新馬戦

そろそろゲームキャラ(ゲーム主人公)の話をいれていきたい……。
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