ウマ娘プリティーダービ- クラウンガールズ   作:文月~夢売り商人~

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秋に咲く桜と栄光の盾

 本日も先日に続き見事な秋晴れとなった。

 今日はチヨノオーが出走する天皇賞・秋の開催日だ。レース場も満員状態で移動するだけでも大変な思いをしそうだ。

 見知った顔が何人か来ていた。チームの子が出走するのか敵情視察なのかは分からないが気になるところだな。

 控室前でチヨノオーが着替え終わるのを待っていると声を掛けられた。

 

「おはようございます。桜トレーナー」

 

「おはようございます」

 

 氷室トレーナーだ。

 彼女が一人で、ここに居るということは担当のガーリースマイルが出走するということだろう。初めの頃はトレーニング方法で悩んだりしていたが、今はそんなことは遠い昔のような顔をしている。

 

「今日はガーリーも出走するんです。あの子の強さをぜひ見てください」

 

 トレーナーなら誰しも自分の担当の子が勝つと思いレースに送り出している。彼女もそうだが、当然俺もそうだ。

 チヨノオーが今日出走するどの子よりも強いと思っている。

 

「チヨノオーも憧れに追い付くまで負ける気はないですよ」

 

 俺がそう言うと彼女は真剣な表情をし頭を下げ、その場を去っていった。

 前回はバクシンオーと競い合ったが、その時より更に仕上げてきたに違いない。

 

(氷室トレーナーもガーリースマイルが負けると思ってないよな。だが、勝ちは譲らない。勝つのはチヨノオーだ)

 

 氷室トレーナーを見送るその奥に東条トレーナーの姿を見つけた。どうやらリギルからも誰か出走するようだ。

 候補としてはバクシンオーと対決したフジキセキかヒシアマゾンあたりだろうか?

 いや、シニアも出走できることを考慮すると、シンボリルドルフやエアグルーヴ、ナリタブライアンあたりか?

 

「やれやれ、今回は難しいレースになりそうだな」

 

 どんな作戦で行くか……。

 内に切り込むか、外に出るか。先行の位置が得意だが前の方につけるか後ろの方につけるか……。

 このあとのパドックで、どんな子が出走してから決めても良いが、少し時間が足りないかもしれない。

 

「う~ん……」

 

 俺が悩んでいると、控室のドアが開き着替え終わったことを伝えられた。

 パドックでのお披露目が終わるまでに考えておかないとなと思いながらチヨノオーや他の子たちと一緒にパドックの方へと向かった。

 パドックでは、なかなか良さそうの子が多くいた。その中でもガーリースマイルは群を抜いていたが、リギルからはフジキセキが出走するようだ。

 

「ガーリースマイルもフジキセキも最後の直線での伸びが凄まじいからな。逃げで余裕を持たせたいがスタミナが持つかが問題だな。だからと言って先行だと直線で追い抜かれる可能性が大と……」

 

 さて、どうするか……。

 今日のチヨノオーは調子が良い。ならフジキセキを徹底マークし残り800Mくらいからスパートを掛けさせる作戦で行くか?

 いやスパートタイミングはチヨノオーに任せてフジキセキをマークだけさせるか。

 作戦は決まった。あとは時の運に任せるしかない。

 

 

 

1枠 1番 セレブアクトレス

1枠 2番 フリルドアップル

2枠 3番 リードヒステリア

2枠 4番 アグリゲーション

3枠 5番 リボンマンボ

3枠 6番 アーリースプラウト

4枠 7番 ライフグレイフル

4枠 8番 ソードラマティック

5枠 9番 ヴィオラリズム

5枠10番 フジキセキ

6枠11番 レディアダマント

6枠12番 パワフルトルク

7枠13番 マイトリート

7枠14番 フルーツパルフェ

7枠15番 ガーリースマイル

8枠16番 ヴァイスグリモア

8枠17番 サンドコマンド

8枠18番 サクラチヨノオー

 

 

 

「ウマ娘たちが追い求める一枚の盾。鍛えた脚を武器に往く栄光への道! 天皇賞・秋!」

 

 天皇賞・秋。ジャパンカップ、有馬記念とともに【秋の三冠】と言われているレースだ。

 天皇賞と言えば『メジロ』が有名だな。ここ数年の戦績は思わしくないようで、今回のレースは出走してないようだ。

 在学中のメジロ家の令嬢がいた筈だが、時期がズレたのか?

 

(少し残念だな……)

 

「人気と実力を兼ね備えたガーリースマイル。今日は三番人気です」

 

 さて、今回は初めて氷室トレーナー担当の子とのレースになる訳だが、あの時のアドバイスから大分時間が経つ。

 二人三脚でトレーニングをしてきた成果を見させて貰おうかな。

 

「二番人気を紹介しましょう。サクラチヨノオー」

 

 チヨノオーは今回二番人気での出走だな。個人やチームの認知度もあるだろうが、少し悔しいものだな。自惚れと思われるだろうが俺のチームも少しは有名になったと思ったが、やはり古参の有名チームには敵わないといったところなのだろう。

 

「さあ、今日の主役はこのウマ娘をおいて他にいない。フジキセキ。一番人気です」

 

「火花散らすデッドヒートに期待しましょう」

 

 フジキセキの名が呼ばれると声援の他に黄色い声も聞こえてくる。

 流石。容姿端麗な子だな。女性ファンの心をがっちりと掴んでいる。

 

「各ウマ娘、ゲートに入って態勢整いました」

 

<ガコンッ!!>

 

「スタート!」

 

 ゲートが開き一斉に走り出すウマ娘たち。今回も出遅れた子はいなそうだな。

 

「各ウマ娘、揃ってキレイなスタートを切りました!」

 

「これは位置取りが熾烈になりそうですね」

 

「期待通りの結果を出せるか? 一番人気、フジキセキ!」

 

 先頭はマイトリート。その後方にライフグレイフルにソードラマティック。その内に入ってリードヒステリア。一バ身程離れてフジキセキとガーリースマイル、チヨノオー。

 フジキセキが先行の位置につけてくれて助かった。ガーリースマイルはチヨノオーをマークしている感じだな。氷室トレーナーの指示か? それともガーリースマイルの考えなのかは分からないが要注意といったところだな。

 少し後ろにヴィオラリズム。そこから三、四バ身程離れた後方、アーリースプラウトにフリルドアップル……。

 後方組はいつ順位が入れ替わるか分からないくらいの団子状態になっているな。

 

「チヨノオーさん。いいスタートができたみたいですね」

 

「レース前は少し緊張していたみたいだけど」

 

「それだけレースに集中できていたってことだな。まあ、集中し過ぎて出遅れることも、ままあるんだけどな」

 

 バクシンオーの言うように、いいスタートが切れていた。このまま、いい位置についてくれればそこまで心配ではないんだけどな。

 

「これから第二コーナーへかかっていきます。ハナに立ったのはマイトリート。快調に飛ばしていきます。このままリードすることができるか?」

 

 先頭は変わらずマイトリートか……。

 二番手にはライフグレイフル。スタートより少し下がった位置にいるな……。先頭争いをしたのはマイトリートを走らせるためにわざとか?

 とは言っても、そのマイトリートも関係ないといった感じで走っているのを見るからにスタミナを重点的にトレーニングしてきたみたいだな。

 マイトリートのレースは何度か見たことあるが、その殆どがゴール前での失速だ。先行の位置で走っている時は割と勝っていたレースもあるから単なるスタミナ不足といった感じだったな。今回逃げの作戦にしたのは、自信があるからだろうな。

 だが……。

 

(なにもフジキセキが出走しているレースでやらなくても良いだろうに)

 

 これでダメだったらせっかく付けた自信が折れてしまわないか心配になってくるな。

 

「二番手の位置で先頭を窺うのは7番ライフグレイフル! 第二コーナーを抜け、向こう正面に入った。先頭は変わらずマイトリート。単身で飛ばしていきます」

 

 オーロラビジョンには先頭を走るマイトリートが映し出されていた。その映像からは全くと言っていいほど疲れは見られない。

 

「リートさん。結構、飛ばしていますけど大丈夫なんでしょうか?」

 

 マイトリートはバクシンオーと同じクラスだったはずだな。クラスメイトとして心配なんだろうな。

 

(流石は委員長と言ったところかな?)

 

 同じチームのチヨノオーを応援したいが、委員長としてクラスメイトの応援もしたいと言ったところか?

 いや、チヨノオーも同じクラスだったよな? チームメイトということを除いても、どちらも応援したいのだろうな。

 

「どちらも応援してもいいと思うぞ。負けたくないといった思いはあるかもしれないが、同じレースに出走して負けたから仲良くしないなんてことは無いだろうからな」

 

「そうですね。トレーナーさんの言う通りどちらも応援したらいいと思いますよ」

 

 ローレルも俺の言葉に賛同しバクシンオーに対して微笑みながらそう言った。

 それを見たバクシンオーも頷き大きな声を出し応援を始めた。

 

「チヨノオーさん! リートさん! 頑張ってくださーい!」

 

 周りの歓声もあり本人たちには聞こえないだろうが、思いは届いてる。思いは力になると俺は信じている。

 

「続きました7番ライフグレイフル。それを見るように8番ソードラマティック。一バ身差、3番リードヒステリア。差が無くフジキセキ。内を回りますサクラチヨノオー。一バ身差ガーリースマイル」

 

 向こう正面に入ってからも先頭は変わらずマイトリートだが、ライフグレイフルたちが少し下がってきたか? 代わりにチヨノオーたちがフジキセキを先頭に上がり始めてきてるな。後続はまだ抑えたままなので縦長のレース展開だな。

 2000Mだからハイペースでも問題は無いがスパートも速い。油断しているとすぐに追い抜かれてしまうだろうな。

 

「マイトリートさん。凄いスタミナですね……」

 

 隣で大きな声で応援しているバクシンオーを横目にポツリと呟いた。

 恐らくだが、自分もあんな走りをしてみたいと思っているのだろう。サポーターがあるとはいえ現状では不可能に近いだろう。治療にかかる資金は良いとしても治療が可能な医師がいるかが問題だ。

 

(ローレルのためにも腕の良い医師を見つけてあげないとな……)

 

 そんなことを考えながらレース展開を見守った。

 

「そしてその内から行ったのは9番ヴィオラリズム。二バ身、三バ身開いて6番アーリースプラウト。あとは2番フリルドアップル。その外並んで5番リボンマンボ。一バ身離れて12番パワフルトルク。さらには1番セレブアクトレス。その内並んで4番アグリゲーション。一バ身離れて11番レディアダマント。そして外めをつきましては14番フルーツパルフェ後方二番手に16番ヴァイスグリモア。17番サンドコマンド最後方からのレースになりました」

 

 向こう正面の中間ごろから逃げ組と先行組のリードが無くなり始めていた。それに伴い後方組も距離を詰め始めてきた。

 第三、四コーナーを抜ける頃には先頭が入れ替わっても、おかしくはない展開だな。

 このままマイトリートが逃げ切れるか気になるな。

 

(チヨノオーには悪いがマイトリートが、このまま逃げ切れるかどうか楽しみでならないな)

 

 そう思ったのもつかの間。フジキセキがスパートを掛け始めた。それを見たチヨノオーとガーリースマイルもスパートを掛けた。

 少し早めの仕掛けだが、フジキセキが仕掛けたのなら仕方ない。自分のタイミングで仕掛けていては追い付けない恐れもあるからな。

 フジキセキを先頭にチヨノオーたちは先頭のマイトリートをかわし先頭に立った。

 だが、マイトリートもまだ諦めた訳ではなく必死に追いすがる。負けたくないと言う気持ちがヒシヒシと伝わってくる走りを魅せてくれる。

 

(凄い子だな。フリーだったらチームに誘いたいくらい面白い走りをする子だよ)

 

 そんな思いを胸にしまい。誰が勝利を掴むのかを見守った。

 

「意気揚々と先頭を行きます。フジキセキ! どうでしょう、この展開?」

 

「掛かってしまっているかもしれません。ひと息つけると良いですが」

 

「大ケヤキを越え、第四コーナーへ。まだ一バ身以上の差があるぞ! ここからとらえることができるのか! この直線で勝負が決まるぞ!」

 

 実況と解説がそんなことを言っていたが本人は、余裕の表情を見せながら先頭を走る。続くチヨノオーたちを徐々に離し第四コーナーを抜ける頃には後続と五バ身程の距離を開けていた。

 チヨノオー、ガーリースマイルも必死に追いすがり後続と二バ身程の距離を開けているが、それでもフジキセキには追いつけないでいた。これが経験と地力の違いなのだろう。今回はチヨノオーの負けを認めるが次があれば逆にチヨノオーを圧倒的に勝たせてあげたい。

 

「フジキセキ。ハナを進む! 栄光まで400M。フジキセキ強い! 強すぎる! 完全に抜け出した!」

 

 母親は舞台俳優と聞いたことがある。人を魅せる母親に憧れてか別の道で、こうも人を魅了するのは、才能と言うしかない程の走りだ。

 もし母親もレースを走っていたら同じように人々を魅了していたに違いない。そう考えると少し見てみたかったと残念に思ってしまう。ウマ娘だから絶対に走らなければいけないと言う訳ではないが本当に残念だ。

 

「フジキセキ! 先頭はフジキセキ! これは強い! サクラチヨノオー、ガーリースマイル。食らいついていく! フジキセキ。脚色は衰えない! フジキセキ、リードは七バ身。 フジキセキ! これは完璧な勝利です! 他の追随をまるで許さなかったぞ!」

 最終的に後続と七バ身もの差をつけゴール板を駆け抜けた。

 圧巻のスパートだった。思わず拍手をしてしまう魅せる走りだったよ。

 

「やったぞ! フジキセキ! 並み居る強豪をねじ伏せ。今、天皇賞・秋を制覇した! 二着はサクラチヨノオー。三着はガーリースマイル」

 

 サクラチヨノオーとガーリースマイルは、一バ身程の差でチヨノオーが勝った。一番驚いたのはマイトリートだ。

 二バ身の差がついていたが必死に追いすがり、三着のガーリースマイルとはアタマ差でのゴールとなった。驚異的な追い上げだな。驚きと同時に脚に負担が掛かりすぎていないか心配になる追い上げだった。




 タイトルでチヨノオーが勝つと思ったか?
 残念。あれは嘘だ。
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