ウマ娘プリティーダービ- クラウンガールズ   作:文月~夢売り商人~

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3人娘 デビューします! バクシンオー編

 本日は雲一つない快晴。まさにデビュー日和って感じだ。

 中山レース場には俺とバクシンオーだけじゃなくチーム全員で来ている。この時期に、デビューするならいずれ勝負することになるかもしれないので走りを一緒に見ておこうと思ったからだ。

 クラシック級になったら走りが変わるかもしれないが、一つの参考にはなる。

 四人で中に入ろうとした。その道中、周囲からは今日のレースについての会話が聞こえてきた。誰が一番だ。この子だろなど。URAファンの期待の声が聞こえる。期待の新人ってやつだな。

 ちょっと残念なのはバクシンオーの名前が聞こえてこなかったことかな。

 誰も注目してなくても別にいい。俺は必ず勝つと信じている。そんな思いを胸に控え室に向かう。

 控え室につき、バクシンオーが着替えるので俺は外で待機中だ。そんな中、沖野トレーナーが姿を現した。

 

「どんな感じ?」

 

 バクシンオーの調子のことだろう。俺は気合十分、調子も絶好調であることを伝えた。

 

「それじゃ、観客席で見させてもらうかな」

 

 それだけ言って観客席のほうへ向かっていった。それと同時に着替えが終わったことを伝えにローレルが出てきた。

 

「トレーナー。いよいよですね」

 

 いつもより静かに喋るバクシンオー。やはり緊張しているのだろうな。クラシックの三冠やティアラと、一緒で一生に一度しか走れないメイクデビュー。

 さて、トレーナーらしく緊張でもほぐしてあげますか。そう思い声を掛けようとしたのだが──。

 

「今日もバクシンします!」

 

 腰に手を当て胸を張り笑顔でいつもと変わらない元気な大きな声でそう言ってきた。

 ……うん。俺の心配を返してほしい。

 そう思いつつも声には出さずに、気負いすぎないようにと注意をした。できるトレーナーは相手の気持ちを汲むことが出来るのだよ。

 

「それでトレーナー。バクちゃんの今日の作戦は?」

 

 ローレルがバクシンオーに、どう走らせるのかを聞いてきたので俺の考えを伝えた。作戦は模擬レースと同じの作戦だが、あまり前に出すぎないように場合によっては前に出てもらう。

 

「トレーナーさん。それで大丈夫なんですか?」

 

 チヨノオーの疑問はもっともだ。細かな作戦としては逃げがいる場合はスタミナを残しつつ差を1バ身ほどをキープ。少し横にずれて敢て姿を見せておく。逃げがいない場合は前に出すぎないようにと伝えた。

 三人が首を傾げているので付け加えた。逃げの子と差を開きすぎない位置にいることで、前にプレッシャーを掛けながら走らせる。ある程度、走らせたら自分のペースに戻しチャンスを窺うといった感じの作戦だ。

 

「バクちゃんの模擬レースでの失敗を逆に相手に仕掛ける……。そう言った作戦ですね」

 

 流石はローレルだ。こちらの意図を一早く察してくれた。もう一つ別の意図もあるんだけどな。

レースを見に来るのは何もURAファンだけじゃない。俺と同じ考えを持つトレーナーもいるわけだ。そう言ったトレーナーにバクシンオーは、そう言った走りをすると刷り込ませる。

 まあ、前回の模擬レースを見ているトレーナーには通じないけどね。

 いろいろと作戦やその説明をしていると出走時間が、やってきたようで係員が呼びに来た。

 

「時間だな。あと言うことは勝ち負けはどうでもいいと言うのは、トレーナーとしてはいかがなものかと思うが、まずは楽しんで走って来い! そしてバクシンオーの走りを見せつけてこい!」

 

 俺がそう言うと少し拍子抜けした顔をしたが、すぐにいつもの元気な顔をして元気な声で返事をした。

 

「はい! それじゃ、行ってきます!」

 

 俺にできるのはここまでだ。あとはバクシンオー自身の戦いだ。パドックへ向かうバクシンオーの後ろ姿を見送りチヨノオーとローレルと一緒に観客席へ向かった。

 

 観客席につくと、そこそこに盛り上がっていた。出走表を見ながら、どの子が勝つのかを楽しそうに予想している人物が多くいた。実況と解説も、どのようなウマ娘が出てくるのが楽しみだと場内アナウンスで話していた。

 人ごみを分けて前のほうへ行くと何の偶然か、ちょうど沖野トレーナーの近くまできてしまった。それに気がついた沖野トレーナーが話しかけてきた。

 

「今日の一番人気は、『ステイシャーリーン』らしい」

 

 そう言いながら出走表を俺にも見せてきた。バクシンオー五番人気。二番人気にレベレント、三番人気がソワールセレステ、四番人気がタクティカルワン。

 どれ程の仕上がりか見させてもらおうかな。そう思いながらパドックのほうに目をやるも、何か忘れている気がしてきた。何を忘れているのか思い出そうとするも中々でてこない。

 そうこうしていると一番目の子が出てきた。そして、その時点で重大な事を思い出した。

 

「あっ!」

 

 俺の声に周りの人も何事かと思い、こちらに視線を送るも俺が押し黙っていると、びっくりさせないでほしいといった感じで、パドックに視線を戻したが沖野トレーナーは気になったのか大きな声を出した理由をたずねてきた。

 

「なになに、どうしたの?」

 

「……パドックでの見せ方………教えるの忘れてた」

 

 俺が頭を抱えて悩んでるのを見て沖野トレーナーは何とかなるといった感じで笑いながら俺の背中を数回叩いてきた。

 当然、悩んでいる俺とは関係なくパドックは進んでいき、バクシンオーの番になった。バクシンオーは、堂々と前へ進んでいき中央で立ち止まった。俺は上手くできるか気が気ではなかったがそんな心配を払拭してくれた。

 思いっきり羽織っていた上着を脱ぎ捨て腰に手を当て、胸を張り堂々とした佇まいを見せてくれた。

 

「バクちゃんの場合は教えなかったほうが、逆に良かったかもしれませんね」

 

 ローレルの言う通り教えたら、上手くやろうと考えすぎて失敗してしまったかもしれない。猪突猛進な性格に今回は助けられたな。

 パドックでの披露が終わり、彼女たちは控え室に戻っていった。これからゲートインまで少し時間がある。

 その間もレースの話で持ち切りだし、やはり一番人気と二番人気など人気上位の話が多かったが後ろの方からバクシンオーの話が聞こえてきた。

 

「五番人気のサクラバクシンオー」

 

「人気では負けてるけど、結構堂々としてて良さげだったよな」

 

「俺、応援しちゃおうかな」

 

 そんな声が聞こえてきたので、ついつい顔が緩んでニヤけてしまったのがまずかった。沖野トレーナーが、そんな俺の顔を見逃さず茶化してくる。自分の担当が褒められたり良く言われたら嬉しいだろう。

 悔しそうな苦虫を嚙み潰したような顔をしている俺を沖野トレーナーは腹が立つ笑顔で見た後、視線をコースへと戻した。

 少しすると徐々に彼女たちがコースへ出てくる。それぞれ脚の調子を確認したり、集中を切らさないようにしたりしている。バクシンオーは、こちらに気がつき小走りで駆け寄ってきた。

 

「トレーナー! 見ていてください。必ず勝って見せます。なにせ私は学級委員長ですから!」

 

 ……うん。今は学級委員は関係ないよね。寧ろその発言でほとんどの子を刺激しちゃってるからね。

 困った性格だが、これもバクシンオーの持ち味なのだろうなと思い、もう一度注意をしておく。

 

「気合が乗ってるのは、いいことだが気負いすぎには注意だからな」

 

「はい!」

 

 元気よく返事をして手を振りながらコースへ戻っていった。

 

「バクシンオーさん……。大丈夫ですかね」

 

「あの元気は空回りしているようには思えないから大丈夫だよ」

 

 チヨノオーを元気づけるために、ありきたりなことしか言えないが大丈夫だと伝えた。時間が経つにつれ、どんどんゲートインしていく。ゲートインが苦手な子もいるが、今回の出走ではいないようでスムーズにことが運んでいった。

 

 

 

1枠 1番 ソワールセレステ

2枠 2番 レベレント

3枠 3番 メモラビリンス

3枠 4番 リトルトラットリア

4枠 5番 サンドコマンド

4枠 6番 ステイシャーリーン

5枠 7番 トラフィックライツ

5枠 8番 サクラバクシンオー

6枠 9番 セレブアクトレンス

6枠 10番 パワフルトルク

7枠 11番 スウィートパルフェ

7枠 12番 イミディエイト

8枠 13番 ヴァイスグリモア

8枠 14番 タクティカルワン

 

 

 

<ガコンッ!!>

 

 全員がゲートインして少し時間を置き、ゲートが開いて全ウマ娘が一斉に飛び出した。

 

「さあ、一斉にスタートしました。先頭争いは、5番サンドコマンドとスウィートパルフェ。少し下がり8番サクラバクシンオー、そのすぐ後ろ外にステイシャーリーン……」

 

「4番リトルトラットリアは後方で様子を窺っているようですね」

 

 実況と解説が場内放送で分かりやすくレース展開を教えてくれる。バクシンオーは作戦どおり着かず離れずの位置より少し下がっているようだな。スタミナ温存も考えているようだ。

 勝ちは十分に見込める。場内の歓声を受け、各々の夢の第一歩を踏み出したウマ娘たちは、とてもキラキラしていて輝かしい。

 

「第2コーナーを回り向正面へ。先頭は、スウィートパルフェ。すぐ後ろにサンドコマンド、1バ身ほど下がりサクラバクシンオー、ステイシャーリーンはここ……」

 

 巨大スクリーンに向正面の様子が実況とともにカメラを少しづつ後方をうつしていく。バクシンオーの走りは安定している。後ろのステイシャーリーンが気になるところだが、今は焦らずに脚をためておくのが吉だ。

 向正面も終盤、第3コーナーへ。差し組も大分距離を詰めてきている。バクシンオーも僅かに詰めているな。第4コーナーを抜けると【中山の坂】があるが、それをどう攻略するかが勝負の分かれ目だ。まだ脚はとっておけよ。

 そう思いバクシンオーを見守る。先頭集団が第3第4コーナーを抜けて坂へ向かっていく。

 

(これが中山の坂ですか!? 思っていたよりも結構な斜面ですね。……でも)

 

「バク、シーン!」

 

 バクシンオーが声を上げながら坂を登っていく。本来のピッチ走法より少し歩幅は広いが他の子たちよりも早く坂を登り切った。最後の直線だ。

 

「サクラバクシンオー。サクラバクシンオー! 一気に坂を登り完全に先頭!」

 

 実況も少し興奮したようすで声を出している。他の子たちも登り切ったが、バクシンオーは既に残り約70mほどだ。ここから追いつくのは至難の業だ。

 そして……。

 

「サクラバクシンオー! 今ゴール板を駆け抜けたー!」

 

 全力を出し切ったバクシンオーは、ゆっくりと速度を落としていった。二着にステイシャーリーン。三着にレベレントだった。実況も解説も走り抜いた子たちを称賛していた。

 観客たちも同様に「よく頑張った」、「良いレースだった」などの声を上げていた。速度を落とし安全に止まったバクシンオーは、呼吸を整えてからスタンドに向かって笑顔で両手を振っていた。その姿は夢への切符を掴み取り、素晴らしく輝いていた。

 

 地下バ道で待っていると満足そうな顔をしながらこちらに向かってくる、バクシンオーの姿が見えてきた。向こうも俺に気が付くと笑顔で駆け寄ってきた。

 

「トレーナー! やりましたよ!」

 

 初めての勝利を手にし屈託のない笑顔で言ってきた。

 バクシンオーが少し興奮した様子でレース中のことを話していると、バクシンオーの名前を呼びながら手帳を片手にこちらへ走ってくる女性がやってきた。

 スーツを着て手帳を持っているので記者の類だろう。

 まあ、五番人気とそこそこの人気で圧巻の走りを見せたので注目されたんだろうな。担当トレーナーとしては嬉しい限りだ。

 記者は俺たちの所まで来ると一息つき自己紹介をしてきた。

 

「初めまして。私、月刊【トゥインクル】の記者──『乙名史 悦子(おとなし えつこ)』と申します」

 

 第一印象は礼儀正しく誠実そうな人だ。丁寧な記事でファンの支持を集めてくれるかもしれないと思い取材の申し入れを受けることにした。

 他の記者は、ウイナーズ・サークルでバクシンオーへの取材を終えたようだった。地下バ道まで追ってきたのは彼女だけで、バクシンオーに今後の目標やローテーションなどを質問し俺には、バクシンオーに対しての俺の役割、何をしてあげれるかなどを質問してきた。

 

「す………………す。す、す…………」

 

「す?」

 

 目の前の記者は「す」しか言わなくなってしまったので、少し様子を見ることにした。

 

「素晴らしいですっ!!」

 

「「はい?」」

 

 俺とバクシンオーは素っ頓狂な声を出してしまった。いきなり、どうしたんだこの人は?

 

「つまり貴方は担当ウマ娘に夢を掴ませるために、どんな事もやる覚悟がおありだと」

 

 いやまあ、何でもしてあげるつもりはあるけど覚悟という程でもないと思うんだけど。深読みというか少々妄想癖が強いようで拡大解釈する人のようだ。

 見た目は真面目そうだったのに少し残念な人だな。

 まあ、それだけ取材に対し真摯でウマ娘に対する思いが強いのだろうな。

 その後、乙名史記者からの怒涛の質問攻めが始まり、終わったのは一時間ほど経った後のことだった。

 

「本日はありがとうございました。今後とも宜しくお願いします」

 

 それだけ言うと彼女は去っていった。

 その後ろ姿を見送っていると、チヨノオーとローレルがやってきた。少し疲れた顔をしている俺を心配してきたので大丈夫であることを伝え、バクシンオーの付き添いを頼んだ。多少の疲れはあったが、バクシンオーのことを知ってもらえる良いチャンスになった。

 そう思い俺もバクシンオーの控え室に向かった。

 バクシンオーが着替え終わるまで外で待つこと10分。三人とも部屋から出てきたので、バクシンオーに病院へ行くことを伝えた。

 バクシンオーは不思議そうな顔をしながらどこも痛くないこと、違和感がないことを伝えてきたが俺の方針の一つだ。

 レース後は何ともなくても病院へ連れていくことにしている。筋肉疲労の確認などの意味もあるが、違和感がない程度でも骨に僅かなヒビがある場合もある。それに気づかずにトレーニングやレースを続けると大変なことになる。

 そういった可能性をなくすための検査だ。そのことを伝えると三人とも納得してくれた。付き添いは俺だけでいいのだが、チヨノオーとローレルも付き添ってくれることになった。

 

 ウイニングライブ後に病院へ向かい脚の検査を行った。筋肉疲労が多少あるが、レントゲン検査では問題なしとのことで、安心してトレセン学園へと帰った。

 明日は、チヨノオーのデビュー戦だ。バクシンオーが作ってくれた勢いに乗ってもらい所だと思い今日も一日が終わった。

 




レース後の通院。
模擬レース後も行く予定だったけど忘れてて書き忘れた。

模擬レース後も通院した体でお願いします。

あとイベント中に付き投稿が遅れる事もあります。
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