ウマ娘プリティーダービ- クラウンガールズ   作:文月~夢売り商人~

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3人娘 デビューします! チヨノオー編

 俺たちが今いるところは北海道、函館レース場。

 本日はチヨノオーのデビュー戦。なのだが運悪く悪天候。バ場状態は重の判定が出ることだろう。

 そう思いながら通路を通っているのだが天候の関係もあってか、昨日より少し人が少なく感じる。そもそも中山と函館ではキャパが違うのが理由でもあるんだけどな。

 それでもレース熱は冷めてないようで、本日のレースの話で持ち切りのようだ。昨日のこともありチヨノオーの名前も少なからず聞こえてくる。

 

「昨日に続きクラウンからは、サクラチヨノオーが出走するみたいだな」

 

「昨日のサクラバクシンオーは凄かったな」

 

 注目されるのは喜ばしいことだが、それだけ他からのマークが厳しくなる。注目チームのトレーナーとして恥じることがないようにしないとな。

 会場入りする俺たちに気づいた人たちの視線を背にして控え室に向かう。

 その途中、礼儀知らずの記者数名に声を掛けられた。レース前であることを理由に断ったのだが、一社だけしつこく後をついてくる。ご丁寧に出版社名と自分の名前を言ってくるが、再度同じ理由で断り、警備を呼ぶと伝えると逃げていった。

 チヨノオーの着替えも終わり俺はコンディションを確認する。少し緊張気味だが程よい緊張だと受け取れるようすだ。目を瞑り集中している。

 今日のレースは自分の憧れへ追いつくための一歩となるんだ。ここで躓くわけにはいかない。

 

「チヨノオーも、あまり気負わないようにな。先のことを見すぎると思わぬところで躓くぞ」

 

 俺がそう言うとチヨノオーは目を開き頷いた。その瞳には確かな強い意志が宿っていた。

 

「はい。まずは目の前のレースに全力で挑みます」

 

 作戦は先行。あまり内に入らないように、何なら外目でも構わないと伝えた。

 理由としては雨で重バ場となり芝が荒れてしまい脚が取られる可能性があるので、できることならそれは避けたい。内は無視して初めから外を走れば多少は走りやすいはずだ。

 函館レース場。1800mはスタートしてからの下り坂が近い。その坂で脚を滑らさないといいんだが……。

 心配なこともあるが後戻りはできないので、あとは時の運とチヨノオーの実力に任せることにした。係員が呼びに来てもうすぐ始まることを伝えてきた。チヨノオーが深呼吸をして自分の両頬を叩き気合を入れた。

 

「それじゃあ、行ってきます」

 

 よく見ると頬が少し赤くなっている。気合を入れるのはいいが少し力加減を考えてほしいものだ。俺は思わず吹きだし、頬が赤くなっていることを伝えるとチヨノオーは恥ずかしそうに頭をかいていた。

 ほどよく緊張がほぐれたようで何よりだ。

 

 パドックでの評判も上々で、バクシンオー効果もあり二番人気での出走だ。降りしきる雨の中、ウマ娘たちが続々とコースへ出てくる。実況と解説も本日のレースについての話をしており雨のためか出走を取り消した子もいるみたいだ。

 雨で様子が伺いにくいが、大型スクリーンに映されている雨に打たれる姿を見るに雨くらいでは集中力は途切れないようだな。

 あとは、スタートを待つだけだ。ウマ娘たちが次々とゲートインしていく。

 

 

 

1枠 1番 サクラチヨノオー

2枠 2番 ポルカステップ

3枠 3番 レディアダマント

4枠 4番 ヴィオラリズム

5枠 5番 ライフグレイフル

 

 

 

「荒れた天候の函館レース場。降り続いた雨がバ場状態を悪化させ不良の発表となってしまいました」

 

「こんなに荒れているとレース展開が読みにくいですよ」

 

 解説の言う通り展開は読みにくいが、作戦通りにいけば勝てるレースだ。全員がゲートインし少し時間をおきゲートが開く。

 

<ガコンッ!!>

 

「各ウマ娘、揃ってキレイなスタートを切りました」

 

「みんな集中してましたね。好レースが期待できそうです」

 

 五人ということもあり先頭はチヨノオーだ。他の子たちは差しが三人、追い一人。事前に逃げや自分以外に先行がいない恐れがあることは伝えてある。自分のペースで走ってくれよ。

 そう願いながらレースを見守る。先頭は依然チヨノオーのままだ。こんなことなら内に入るべきだったかと思ったが、レースが始まるまでは他の子たちの作戦は分からないから仕方ない。

 

「第1コーナーを回り第2コーナーへ。期待通りの結果を出せるか? 二番人気、サクラチヨノオー」

 

「彼女の脚質には合っているかもしれませんね」

 

 当然だ。俺は彼女たちの適性を見抜く力に長けているほうだと自負しているが、押しつけるつもりはない。本人と話し合い道を決める。そういったトレーナーがいてもいいと思う。

 第2コーナーを抜け向正面へ。大型スクリーンに先頭の様子が映される。

 

「サクラチヨノオーが快調に飛ばしていきます。先頭は、サクラチヨノオー単身で飛ばしていきます。二番手の位置で先頭を窺うのは、3番レディアダマント。2バ身3バ身開いています。そのすぐ後ろ、2番ポルカステップ。四番手にヴィオラリズム。殿(しんがり)はライフグレイフル」

 

 この調子だと勝負は最後の直線になりそうだな。そう思いレースを見守る中、いつの間にか隣に帽子を被った初老の男性と若い男が立っていた。会話内容から、トレーナーでチーフとサブの関係と思われる。オマケにトレセン学園の所属だ。

 隣も少し気になるが今はチヨノオーのレースに集中しないとな。

 第3コーナーへ入り第4コーナーへ。二番手と三番手が入れ替わりはしたが、先頭はチヨノオーと変わらず、二番手以降の子たちも差を詰めてきているが、チヨノオーに焦りは感じられない。自分のペースで走れているみたいだ。

 

「ポルカステップ。まだ1バ身以上の差があるぞ! ここから捉えることが出来るのか! ヴィオラリズムは外で脚を貯めている。ライフグレイフル、まだ抑えたままだ。レディアダマント、前を狙っているぞ。先頭サクラチヨノオー、気持ちよく逃げている」

 

 最終コーナーを最初に抜けたのは、チヨノオーだ。抜ける直前からスパートを掛け始めているタイミングとしては少し早いが、今回のレースでは丁度良いくらいだな。他の子たちもスパートを掛けているが、追い抜かれることは先ずないだろうな。

 ここまで来ると安心してみていられる。

 

「最終コーナーを曲がって先陣を切ったのはサクラチヨノオー、200mを切りました。突っ込んでくるポルカステップ! レディアダマント勢いよく上がってくるぞ。先頭は変わらず、サクラチヨノオー。リードは3バ身」

 

 歓声が大きくなるスタンド前を駆けるチヨノオー。憧れに追いつくための第一歩は白星でスタートを決めたいところだ。

 しかし、他の子たちも負けるものかと懸命に追いすがっている。譲れない思いがキラキラと輝いていて素敵だよ。

 だけど、今回はチヨノオーが勝たせてもらうよ。

 

「強さを見せつけて、サクラチヨノオー! ゴールイン! 圧巻の走りでレースを制した!」

 

 着順掲示板に目をやる。一着はチヨノオー、二着ポルカステップで三着にレディアダマント──。

 軽く息を整えたチヨノオーはスタンドに一礼をしてから手を振っていた。他の子たちは肩を落としていたのが可哀想だが真剣勝負の世界は非情だ。

 観客席から地下バ道へ向かいチヨノオーが戻ってくるのを待つことにした。地下バ道には、他の子のトレーナーも来ていたので軽く会釈をしてチヨノオーを待った。

 少しすると笑顔でルンルン気分のチヨノオーの姿が見えた。向こうも俺に気がつき駆け寄ってくる。

 

「トレーナー! やりましたよ。まずは1勝目ですね」

 

 そう屈託のない笑顔で言ってくる。レース内容としては反省点はないので俺としても満足だ。今後の話をしているとポルカステップと担当トレーナーがやってきた。何の用かと思っているとポルカステップから「次は勝つ」と宣戦布告をされた。

 ポルカステップは、それだけ言うと離れて行ってしまい担当トレーナーも頭を下げ離れていった。良いライバルになりそうだな。そう思っていると別の人物にも声を掛けられた。

 

「凄い走りだったよ。引退を考え直したいところだ」

 

 声のする方を見ると観客席で隣に居た初老の男性と若い男が立っていた。学園のトレーナーと言うのは分かってはいるが、トレーナーの顔や名前までは覚えてはいない。ウマ娘たちの顔と名前は全部覚えたんだけどね。

 俺が誰だと顔をしていると笑顔で自己紹介をしてきた。

 

「チーム【シリウス】のチーフトレーナーの西村だ。っと言っても引退する身だけどね」

 

 初老の男性がそう言い握手を求めてきたので応じた。ベテランの風格が漂う信頼できるトレーナーといった感じだな。まるで叔父のような人だ。

 続いて若いトレーナーも自己紹介をしてきた。

 

「サブトレーナーの星野です」

 

 若い男はお辞儀をしてきた。二年目くらいの若いトレーナーだ。若いというのもあり、まだ頼りなさげだが、氷川トレーナーと同様にウマ娘への想いは強い良いトレーナーだ。

 星野トレーナーも握手を求めてきたので応じた。

 

「今言ったように俺は引退しちまうんだが、その前に今年の新人や新任に挨拶をと思ってね」

 

 そう言いながら笑顔の西村トレーナー。逆に星野トレーナーは寂しそうな顔で俯いている。そんな星野トレーナーを見た西村トレーナーは、子供にするように頭を撫でて笑顔を見せる。星野トレーナーは顔を上げ西村トレーナーを見る。

 

「桜トレーナーの話は色々聞いているよ。面倒だと思うけど、コイツのことを頼んでも良いかい?」

 

 星野トレーナーは驚いた顔をしている。後任を自分で最後までしっかりと育てたいはずだが、それが叶わずといったところだな。

 俺は相談に乗るくらいならと返しておいた。それを聞くと西村トレーナーは「それで十分だ」と笑顔で言ってきた。

 

 その後、トレセン学園に戻ったのは門限ギリギリの時間だった。美浦寮の寮長には、チヨノオーはレースで遅くなることは伝えてあるので問題はないが、慌てて戻っている子たちをチラホラと見かける。

 チヨノオーにはゆっくり休むようにと伝え寮の門前で別れた。

 明日はローレルのデビュー戦だ。俺も明日に備えて早めに休むことにした。

 




レース後の病院描写は何もなければ省く事にします。

レース展開は勉強中。

2025/05/27
シリウスのチーフトレーナーの名前をアプリから、CVの西村さんの姓を使わせていただきました。
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