ルシウスがポンペイに事の説明をしている同時刻――
『警告、目的地のシンダーグロー・レイク付近でエーテル濃度の急激な上昇が検出されました』
「何だと?何があったんだ?」
それはまさに、ポンペイがシンダーグロー・レイクに向かって偽火打石を投げ込んだことによって起きたとは知る由もなかった。
すぐさま状況を知りたいところだが生憎シンダーグロー・レイクにカメラの類はない、一つだけわかっているのは早く向かわなければマズイと言うことだけだ。
「クソッ、あと一歩遅かったですわね!」
『ナナシの方も、途中でモルスの妨害にあってまだ到着には時間がかかるみたいだ』
通信で瞬殺したのは聞いているが、それでも時間は稼がれてしまった。とにかく、今カリュドーンの子にできるのは最速でシンダーグロー・レイクに向かうことだけだった。
数分後――
『シンダーグロー・レイクはすぐそこだよ!』
やっと、シンダーグロー・レイクに到着したカリュドーンの子一行、しかし――見覚えのある人影が二人確認できた。
「シーザー!スマン、遅れた!」
シーザーたちがバイクを降り人影に近寄ろうとしたタイミングで明後日の方向から声がかかる。その方向に視線を向けるとエーテル結晶を蹴りながらこちらに下ってくるナナシの姿があった。
「ナナシ!無事だったか!」
「ああ――それよりも、どういうことだ説明してもらうぞ、グラン」
人影の一人はエーテルの影響を受けて今にもエーテリアスに変わってしまいそうなポンペイと傍らで立っているグランだった。
「やあ、ナナシ。いいタイミングに来たね――頼みがある、人工聖剣を渡してくれないかい?」
「はあ?」
何言ってんだこいつと思わず素っ頓狂な声が漏れる。
「ひどい、浸食反応――!」
遠目からでも、一刻を争う状態――しかし、グランの横を抜けルーシーが火の湖を確認する。
「シーザー!火の湖が――エーテル結晶まみれですわ!」
「なっ――それってものすごいまずいことなんじゃ」
もし、シンダーグロー・レイクの火の湖が完全にエーテル結晶に飲まれれば石油は瞬く間に全てエーテル結晶へ変わり、郊外は終わりを告げるだろう。
「そうさ、後数分もたてば火の湖は全てエーテル結晶に飲まれる――」
「それがどういう意味か分かってるのか!!郊外の人々の生活の根幹を担ってる石油が消えれば一体何人の犠牲が出ると!!」
怒りのままグランに怒鳴りつける。ブレイズウッドがいい例だろう、あの町は石油資源が使えなかったことによってトライアンフに頼る事になった。それが、すべての町で起これば――その損害は計り知れないものとなる。
「――ああ、わかってるよ。それよりも、ポンペイの親分の方が一刻を争う――人工聖剣を渡してくれないか?親分を救うためなんだ」
「だから!!―――ッ、聞かせろ!どうすれば救える?」
イラつきのボルテージは青天井だが、目の前の失われかけている命を前に冷静に戻る。
「人工聖剣にはエーテル浸食を抑える力があるんだ。今は俺が近くにいるからポンペイの親分のエーテル浸食は一時的に収まってるけれど、離れればそうはいかない――モルスに持たせていた4つの指輪を渡してくれないかい?」
「ナナシ、絶対に罠ですわ!この状況、むしろグランがポンペイに何かしたと考えるべきですわよ!」
確かに、ルーシーの考えた最もだ。自身の手にある4つの指輪を眺め、視線をポンペイに移す――。
「本当――なんだな?」
強く、グランはうなずいた。
「ナナシ!」
「俺には俺の目的がある。それを達成するには親分じゃなくてルシウスについたほうがいい――それだけだよ。だから、親分への恩を忘れたわけじゃない――俺は助けるためにここに居る」
確かに、この状態もしもこの場にグランがいなければ今頃ポンペイはエーテリアスになり俺達に襲い掛かっていただろう。そして、そもそもグランがここに居るメリットなんて存在しない。俺達を潰すなら奇襲でもなんでもすればいい。
「わかった」
赤、青、水、土色の指輪をグランに投げ渡す。
「感謝するよ、ナナシ」
そのまま、グランはポンペイに指輪をはめその体をこちらに投げ渡した。
「回復できるかは親分次第だけど――親分ならきっと大丈夫だろう」
「それじゃあ、話を戻すけど――一体何があったんだ?」
ポンペイの状態を確認する、軽い熱は出ているもののエーテル浸食は完全に止まっている。
しかし、返答はグランからではなく抱えているポンペイから聞こえてきた。
「こ、ぞう、シーザー。時間が無い、る、ルシウスが――裏切った。必ず――シンダーグロー・レイクを守ってくれ――」
それを最後にポンペイは力尽きたようで意識を失った。
「おい、ルーシー!覇者のオッサンを頼む」
「わかりましたわ――生きて帰ってきてくださいまし!」
ポンペイを託し、ルーシーはバイクにまたがりその場を去っていった。
「――親分、そうはさせないよ。確か、シーザーは火打石を持っていたはずだね。ここでシンダーグロー・レイクは終わらせる」
「おかしいな、なぜシンダーグロー・レイクを終わらせようとする?」
ライトがグランにそう問いかける。奴らも郊外に居れば石油とは切っても切り離せないずっ友状態のはずだ。わざわざそれを断ち切る理由なんてないはずだ。
「シンダーグロー・レイクが終われば、石油はなくなり――郊外の町にいる弱者たちはやがて消えるだろう――」
「弱者を消す?それが、お前の願いなのか?」
「そうだよ――弱者を全て消し、強者だけの世界を作る。それが、俺の願望さ――この世界は救うものが多すぎる、守るものが少なければ――この手から零れることはない!全てを救うことができるんだ!」
「ッ――そんなことが許されるはずがないだろ!」
一瞬、迷いが生まれた。もちろん、グランの物言いに納得したわけじゃない、けれどもしも――救うものが少なければ、全てを救えるのだろうか。そして、それは果たして全てを救えたと言えるのだろうか、頭の中をぐるぐる回っているのだ。
「元から俺の考えを納得してもらおうなんて思っていないよ。ただ、知ってもらいたいだけさ――全てを救うにはこの世界はあまりも大きすぎる――そのことをね」
白い短剣を構える。
「――たとえ、お前の言う通りだとしても!俺は無限に手を伸ばし続ける!『ムゲン・ザ・ハンド!』」
こうして戦いの火ぶたは切って落とされた、それと同時に発動したムゲン・ザ・ハンドはそれぞれ側面から攻撃を仕掛けているシーザーとライトのサポートに回し、俺自身は真正面から突っ込んだ。
「3対1か――甘くはないね」
「食らいやがれ!」「消し飛べ!」「突破する!『真・熱血パンチ!』」
もちろん、同時に攻撃を仕掛ければグランがよけて最悪同士討ちになるので皆、微妙にタイミングがずれている。だが、聖剣一振りでこの猛攻を防ぎきることはできない――
「抜くしかないか――『フローズンスティール!』『イグナイトスティール!』」
だが、それはあくまで聖剣が一振りだけの話。突然、グランの片手にさらに聖剣が現れる。
その両端から放たれた薙ぎ払いは、ライトとシーザーを薙ぎ払い、最後に遅れた俺の拳を必殺技もなしにたやすくはじき返した。
「なっ――オマエ二刀使いだったのかよ!」
シーザーが驚きの声を上げる、先ほどまで手持無沙汰であった片手には――炎のように真っ赤な刀身を携えた短剣だった。
(なるほど、アルターエゴが言っていた、炎と氷ってこういうことか――)
「――さて、こっちからも攻めようかな!」
一瞬で、シーザーとの距離を詰め白き短剣を振るう、だがそれはシーザーの円盾によっていなされる。
「俺様は、一歩も引かねえ!!」
(よし、シーザーは意外に結構カウンターで堅実な戦い方をするタイプ。これなら、『ムゲン・ザ・ハンド』のフォローが間に合う!)
「そんなわかりやすい攻撃少し後ろに跳べば――なっ」」
シーザーに振り下ろされる一閃にグランはバックステップで対応しようとしたが、背中にムゲン・ザ・ハンドの2本の手がグランを押しむしろシーザーの間合いに押し戻される。
「シーザー!そのまま振れ!」
「くっ――『フレイムベール!!』」
グランの苦し紛れの炎の壁、だがシーザーの一撃を数秒遅らせることに成功する。だが、そこにはライトの拳が後方から迫ってきていた。
「ライト気にせずぶちかませ!道は俺が作る!」
「おう!目に焼き付けろ!」
だが、ライトの接近に気づかぬグランではない軽く顔を動かし迫るライトを確認。
すぐさま、その場から跳躍し体を翻しライトの拳を避けたと思えたが――。
「そうは問屋が卸さない!」
ムゲン・ザ・ハンドの残り2本の手が空から強襲し、グランを地に引きずり下ろす。
「なっ――!」
まるで最初から決められていたかのようにライトの拳が軌道線上に落ちたグランの頬に突き刺さる、その衝撃でグランはまるで車にはねられたような勢いで吹き飛び壁に激突する。
「これで終わりじゃない!『正義の鉄拳G3!』」
追撃の正義の鉄拳はまっすぐ、土煙を切り裂きながらグランに迫る。
(手ごたえあり!このまま貫く!)
だが、そう思えたのは一瞬だけだった――瞬時に正義の鉄拳は切り裂かれ中からグランが額から血を流しながら現れる。
「やるね――少し、気分が乗ってきたよ。これなら、どうだい?『アトミックフレア!』」
直径2mほどある火球が俺に迫る、もちろんよけてもいいのだがここは旧油田エリア。何の拍子で爆発するかわからない。
手を重ね合わせ、ムゲン・ザ・ハンドを発動させる。そして、左手を上げ、右手を腰あたりに置き引く心臓にある気が体全身を回り、オーラが立ち昇る。
「止める!『ムゲン・ザ・ハンド』『マジン・ザ・ハンド改!』」
これが、ムゲン・ザ・ハンドをマジン・ザ・ハンド改を合わせた現段階の最強防御。
最初に火球に対しムゲン・ザ・ハンドが受け止め、威力が減衰したところをマジン・ザ・ハンドが手のひらを突き出す。
「はぁぁぁ!」
多少押されたがマジンは十分『アトミックフレア』を抑えることができていた。
(でも、こんなのを何回も受け止められる余力はない――火の湖も心配だ)
「――炎じゃダメみたいだね。なら、凍てつく闇の恐怖をまた教えてあげるよ!」
辺り一帯の温度が低下する、それは白い聖剣の能力を行使しようとする証でもあった。
「シーザー、ライト!ノーザンインパクトが来る、相手の聖剣の正面には立たないで!」
最初に会った時で一回、ムゲン・ザ・ハンドを破壊された時で二回――わかったことがある。ノーザンインパクトは聖剣を空ぶらせた正面に現れるということだ――まあ、わかってても早すぎて対応は難しいのだが。
「なるほど――もう弱点が見破られたのか。でも、それで避けられるほど必殺技は甘くないよ!『ノーザンインパクト!』」
「なっ――」
声を上げる間もなく、シーザーに氷の柱は迫る。もちろん、シーザーの反応速度なら盾で防ぐことなんて余裕だろう。しかし、予想外だったのはこの必殺技の“貫通力”だった。
「シーザー!!」「大将!!」
ノーザンインパクトがシーザーの円盾を貫きそれを付けていた義手も貫いていたのだ。幸いにも体には刺さっていないが――。
「なんだ、義手か――でも、もうその盾は使えないね『フローズンスティール!』」
それは、同時に先ほどまでのカウンター戦法が使えないことを意味する。それを察したグランは追撃のフローズンスティールを放つ。
「届いてねぇよ!」
しかしながら、シーザーは片手に残ったブレードでそれを何とかいなし、距離を取る。
「これ以上やらせるか!『メガトンヘッド!』」
走った勢いのままメガトンヘッドでシーザーとグランの間に入る。
「――そうだね、まずは聖剣使い同士――決着を付けよう」
(何が来る?『アストロブレイク?』『グングニル?』『ノーザンインパクト?』『アトミックフレア?』何が来ても止めて見せる!)
「シーザー、立ち上がれるか!――シーザー?」
ちらっと視線を向けるとシーザーはその場に剣を立て、膝をついている。
「どうなってるんだ、大将がこんな攻撃でやられるはずないだろ!」
「もしかして、ヒートショック現象か!?」
ここら一帯の気温は火の湖の近くということもありとんでもないほど熱い。その中で、ノーザンインパクトとフローズンスティールをまともに食らったシーザーは気温の変化により血圧が上下した結果、めまいやふらつき最悪意識を失ってしまう状態だ。
「これで、避けるわけにはいかなくなったね――」
「くっ――受けて立つ!『ムゲン・ザ・ハンド』」
アトミックフレアを受け止めた時と同じく現段階の最強防御を展開する。
「な、なし――逃げろ!」
「大丈夫だ、シーザー!助け合ってこその仲間だろ?」
シーザーと一緒に新エリー都に戻ったときの日を思い出す。シーザーがカリュドーンの子のみんなを守りたいと言うならば俺がここでシーザーを守って見せる。
双剣を重ね合わせクロスの形にする。炎と氷、相反する二つが今一つに混ざりだす。
「終わりだ!『ファイアブリザード!!』」
「止めて見せる!『マジン・ザ・ハンド改!』」
先ほど展開していた、ムゲン・ザ・ハンドが先にファイアブリザードの勢いを減衰させる。だが、全くムゲン・ザ・ハンドは持たずすぐさまマジンとぶつかり合う。
「はぁぁぁぁぁ!!」
少しずつマジンの手が押し戻される。ゴッドノウズ、アストロブレイク、ノーザンインパクト、アトミックフレア――数々の必殺技を受け止めた牙城が今――音を立てて崩れる。
「ナナシぃ!」
何とか軌道をずらすことには成功し、安堵を浮かべながら粉砕されたマジンと共に壁へ叩きつけられたのを最後に――。
俺の意識は闇へ消えた。
うーむ、まずい展開ですね。流れが完全にグランに傾きました。このまま順当に行けば、カリュドーンの子は敗北しナナシも死んでこの物語終わりますね!!
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け