ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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ごめんなさい、予想以上にボリューミーだったので2話に分けることになりました。
次回こそエピローグです。
そろそろアンケートを打ち切るので是非投票していってください!!



第62話・泣き言

 

一週間後――

 

「―――」

重い瞼を開けながら、目線だけで辺りを見渡す。どうやら、ここはブレイズウッドの拠点の家らしい。

朧げな意識のまま、目だけを呆然と開けて数秒が経った頃物音が聞こえると何やら話声が聞こえて来る。

 

 

「ナナシ!――起きたのかい?」

「―――う、ぁ」

どのくらい経ったのだろうかしわがれた声しか出ず困惑するも、それを察したのかすぐ水の入ったコップを持ってきて俺に向ける。

それを“左手”で受け取ろうとした時、つけられてギプスを見て思い出した――

 

 

「――その腕は義手になるそうだ。体の方は全治2週間くらい、ナナシが目覚めた時点で1週間経ってるから実際は1週間だけどね――大丈夫かい?」

コップを“右手”で受け取りとにかく一杯飲む――すると、さっきまで朧気だった意識は一気に明瞭になり、目の前に誰がいるのかも認識することができた。

 

 

「うん、大丈夫だよ。アキラ、いつかこんな日が来るとは思ってた――あっ、それよりもポンペイは無事なの!?」

「“それよりも”?――ポンペイさんは生きながらえているっていう表現が正しいかな――」

あの後、パイパーに託されたポンペイはすぐに近隣の町に届けられ、今はトライアンフにいるのが危険だと判断され同じくブレイズウッドで治療しているらしい。

けれど、かなりの浸食反応の上に何やらエーテル浸食を悪化させる薬まで服用させられていたみたいで毎日ギリギリの山場を乗り越えているようだ。

 

(グランが言ったのは本当か――聖剣にはエーテル浸食を抑える能力があるのか、だから俺には一切侵蝕反応が――あれ?でも、サクリファイスとの戦闘の時少し侵蝕されたような――)

 

 

「“それよりも”ナナシ―――」

アキラに怒られるんじゃないかとぎょっと構える。

 

「よかった――生きていて、本当によかった」

アキラが俺の肩に手を回し抱き寄せる、その意外なアキラの行動に思わず困惑するがともかく身を任せる。

 

「――ごめん、アキラ。心配かけちゃってさ――ところで、リンは」

「全くだよ――リンはナナシの顔を見ると泣き出しそうだから外で待ってもらっている」

確かによく目を凝らすとリンの青髪のようなものが扉の方で揺れている。

 

(ていうか、1週間も寝てたのか――その割には体が元気だけど――ああ、でもキッチリないな)

 

「リンにも後できっちり謝ってくる。もちろん、カリュドーンの子の皆にもね」

「うん、僕も同伴してあげるよ――ところで、どうしてあんなことをしたんだ?――ナナシはああするしかなかったことは、素人目でもわかるけど――できれば、あんな自己犠牲してほしくなかった」

グランとの戦い、道中でシーザーに『ファイアブリザード』が放たれそれを左腕でかばった。でも、そうしなければシーザーは死んでいたかもしれないし、最後の火口へのダイブだって、あれ以外の手立てではシンダーグロー・レイクは救われなかった。

 

「――あれが、最善だからだよ。あれ以外だったら“全員”を救うことはできなかった」

こう答えるしかない。一秒でもズレが起きればグランに逆転を許し敗北していただろう。

 

 

「――“全員”?あれが、全員助かる策だったのかい?」

アキラがぽつりと疑問を呈す。だが、ナナシには一体何がおかしいのか全く分かっていなかった。

 

「そうだけど――あれが、全員助かる上で最善の策だったんだ――まあ、ちょっとアドリブもあったけど」

正直、開始数秒で破綻していたような気がするが――まあ『フルアーマー・ザ・ハンド』を発動し逆転して勝利できた、終わりよければ――

 

「僕はそう言うことを言いたいんじゃない!」

全てはよくないみたいだ――それにしても、普段は怒鳴らず、静かに理詰めでこちらの精神をゴリゴリ削るアキラにしては打算的な方法に思わず目を丸くする。

 

 

「ナナシは、全員助けようとしたんだろう?――その、全員って誰だい?」

「え、っと――アキラにリン、カリュドーンの子の皆、郊外の人たち――等々?」

指を折りながら考える――やっぱり、全員助けられている気がするのだが。アキラは『やれやれ』とでも言いそうに頭を抱え、数秒考えた後口を開いた。

 

 

 

「その全員にナナシは入ってないじゃないか――どうしてだい?」

「え――?―――――――?」

考えてみれば自分を救うなんて考えたことがなかった。でも、全員救えてるし――あれ?全員って――あれ?あああ、あれ?ああれ?――頭の中が回らない――なんだか、己の根幹的な部分が揺れているような――感覚。

 

(どうして?だ、って?あれああ?――――)

「誰かを救うのが――俺“達”の使命だから」

口から漏れたのは、これは俺の言葉じゃない――何か、もっと奥底の何かがアキラの問いに返答した。

 

「それは――くっ、僕はナナシの過去について何も知らない。みんなを守りたいのはわかってる――けれど、僕たちは仲間が苦しんでいるのを見て――どう耐えればいいんだ」

「苦しんでる?――誰が?」

(ああ、そういえばシーザーの目の前で左腕飛んでちゃったな――後で、ちゃんと話さないと――)

 

「君だ、ナナシ」

「――俺?」

アキラが苦しんでいると言っているのは俺だった――

(苦しいのかな俺?――確かに、命は消えかけたけど――みんなを救えて嬉しかったのに――)

 

 

「ナナシがどんな使命を背負っていても戦って――痛かっただろう、怖かっただろう――辛かったら泣いてもいいんだ――僕たちの前で泣いてもいいんだ」

改めて俺の首に手を回し、抱き寄せる。

 

痛かった?――『目の前で失うのに比べれば痛くなんてなかっただろう』

怖かった?――『目の前で失うのに比べれば怖くなんてなかっただろう』

辛かった?――『目の前で失うのに比べれば辛くなんてなかっただろう』

 

(――そうだ!俺は痛くなんてなかったし、怖くなんてなかったし、辛くなんてなかったんだ!!)

思ったことをそのまま言おうと口を開く――。

 

 

「俺は――」

この先が続かなかった、視界が歪み――手を目元に伸ばす。

 

「あれ?俺は――」

涙が滴り、何かが砕ける音がする。右手でアキラの背中を強く抱き返す。

 

 

「――痛かった、怖かった、辛かった。――本当は、火口にグランと一緒に飛びこむ時――嫌だった。死にたくなかった、生きていたかった――もっと、みんなと一緒に居たかった――うわぁぁぁぁん!」

 

この日、ナナシは“生まれて初めて”泣いた――それと同時に、今まで複数の人格データの合成だったナナシに確固たる人格が生まれた日だった。

その時、外にいたリンとアキラが泣いていたのを俺は全く気が付かなかった。

 

 

 

その後、少しだけ滞在したのち俺達はブレイズウッドを発つことになった。

 

「大丈夫なの?ナナシ」

「大丈夫だよ、両腕なくなったわけじゃないし――便利な必殺技もあるからね」

車に色々機材を乗せるために、ほいほいっと次々とムゲン・ザ・ハンドと右手で乗せていく。

 

 

準備をしていると、遠くから声がかかる、ムゲン・ザ・ハンドを一度解除し振り向くと、ちょうど2日前くらいに義手を直したばかりのシーザーがこちらに向かってきていた。

「プロキシー!ナナシ!ふぅ、よかったぁ――まだ出発してなかったんだな。見送りに間に合わないかと焦ったぜ」

「シーザー、来てくれたんだ!でも、大丈夫?旧油田エリアの覇者になったのに色々忙しいってルーシーから聞いたけど」

覇者ポンペイが生きているとはいえ、今は死んだことになっている。まだ、どこから命を奪われるかわかったもんじゃないからだ。でも、覇者は必要になる――ということで白羽の矢が経ったのがシーザーと言うわけだ。

 

 

 

「あのな、言っただろ?オレ様はただの『覇者代理』だって。覇者の地位は、今でもポンペイのオッサンのもんだぜ。あの日、あいつが投げ込んだ火打石がルシウスにすり替えられたニセもんだったとしても――あいつが最初にゴールした事実は変わらねぇ」

「シーザーらしいな――だからって、覇者は覇者なんだから、見送ったらすぐ戻ってね!!」

と言って帰ったらルーシーが小言をぶつぶつ言いながら、シーザーに決闘を申し込む流れまでが軽く想像できるが――まあ、大丈夫だろう。

 

「ははっ、わかってるぜ。それに、同じことをルーシーに言ったらよ『でしたら、2番目に火打石を投げ込んだナナシに覇者になってもらいましょうか!その方が、走り屋連合も平和かもしれませんわね!』だってよ――どうだ、覇者になってみねぇか?」

「大丈夫?シーザー、変な物でも食べた?――ていうか、よそ者の俺が覇者になれるわけないじゃん!」

そもそも、俺は『ツール・ド・インフェルノ』の参加者ではない、スタートにすら参加していないのだ。

 

「そりゃあそうだな――なら、カリュドーンの子に入らねぇか?ナナシが居てくれれば心強いしよ」

(あれ?こんなことがいつぞやにあったような)

 

「悪いけど、ナナシは僕たちの社員でね――残念ながら貸出業務はやっていないんだ」

俺とシーザーの間にアキラが立ちシーザーを遠ざける。

 

 

「――仕方ねえか、ナナシ!クビになったらいつでも来いよ!」

「ははっ、その時はバイクを教えてね!」

リンやアキラは車を運転できるし、俺も一つここで何か免許を取得しようと思ったが――カリュドーンの子から教わると逆にやばそうな気が――。

 

 

 

「そういえば、ルシウスとグランの足取りは?」

「結局あの後は進展なしだ――二人どころか、ナナシがボコボコにしたモルスの行方もつかめてねぇ」

俺が意識を失っているうちにもカリュドーンの子は3人の捜索に乗り出していた。しかし、結果は芳しくなくルシウスはパイパーとバーニスが包囲したが人工聖剣を使いどこかに逃げていった。グランはその足取りすらなく、完全に迷宮入りと言うのが今回の顛末だ。

 

「けど、ヤツが残してったもんから、都市のエーテル企業と結託してた証拠が見つかったし――あの日のことがイアスに録画されてたおかげで、ヤツの悪行は旧油田エリアの走り屋に知れ渡ったからな」

そのおかげで、トライアンフの信頼事真っ逆さまなのだが、きっとシーザーが何とかしてくれるだろう。

 

「プロキシ、ナナシ。今日、改めて礼を言うぜ、火の湖を守れたのはオマエらのおかげだ――ありがとよ」

「私はあんまりかな――ナナシがあの時火打石ごと飛びこまなかったら――それに私は、ナナシが戦っているのをただ見てるだけしかできなかった――」

「リン――」

何だか、感傷的と言うか――主に俺が居心地の悪い雰囲気になっていく――。

 

 

「はいはい!!いやぁ――終わりよければすべてよし!幸運なことにまさか噴出口に裂け目があって助かったんだから!うん、ラッキーラッキー!!――はい、すみません。もう二度とあんな事しません」

何とかハイテンションでこの場の雰囲気を打ち破ろうとしたが、段々と首が下がっていくシーザーに睨むアキラ、それらによって謝罪に追い込まれた。

 

 

「――でもよ、どうしてあんな上手くいったんだ?」

「えっと、専門家の友達が言ってたんだけど――ああいう裂け目の周りって機龍が複雑なんだって。だからエーテル粒子も不安定になりやすくて中々塞がらないみたい――」

加えて、天然ガスとエーテル粒子が微妙に拮抗してたせいであの裂け目は何十年も昔から存在している可能性があるらしい。

 

 

「『火海に入りて、英雄は戻る』――初代覇者が火の湖に身を投げた時も、あそこに飛びこんだんだろうか?」

「そこに俺とグランが続いて飛びこんでいったわけかもしれないね」

てっきり、初代覇者の物語は眉唾かと思ったが案外実際の話なのかもしれない。

正直、炎に飲まれたあたりから記憶がないので『へぇ~』って感じなのだが、と言ってもまさか火の湖のど真ん中に裂け目があるとは神様の仕業を疑いたくもなる。

 

 

「そうだ、プロキシ、ナナシ。街へ帰るんなら、オレからのはなむけを受け取ってくれよ!」

渡されたのはカーサさんからももらったサン・フリントだった。

(相変わらずの火の湖に飛びこむ初代覇者と拳、双剣、弓、刀が描かれた石)

 

「そういや、ナナシはもうカーサからもらってるんだったな――ならこいつをやるよ!」

そう言うと、何やら懐から筒状の何かを渡してくる。

 

「これ――義手じゃん!?」

シーザーがつけているのと見比べても全く同じ奴だった。

 

「もともと、オレが付けてるのはビリの字のスペアなんだが――それがまだ残ってたからよ、ナナシの無くなった手の代わりにしてくれ」

「――ビリーの、そっかありがとう。腕が完全に治ったらつけてみるよ」

実を言うと、ビリーの機械人の体に少しばかり憧れている自分がいたなんとなくだがメカは心を震わせる何かがあるのだ。

 

 

「――ナナシ、そいつをオレだと思って大事にしてくれよな!」

「ああ、大事にするよ」

何だか、シーザーの目が一瞬、猛獣のそれになったが気にせずその義手を眺める。

(うん、シーザーも確かに思い出すけど。先にビリーの顔が映りそうだな)

 

「じゃあな!灰に飛びこんだ英雄!」

 

 

そして、俺たちは郊外を後にした。

 

 

車窓はまるで無限に広がる絵巻物のようだった。車は揺れながら進み、果てしない荒野の景色に新エリー都の色が混ざりだす――

 

「もう、バックミラーではシーザーが達が見えない。後少しで郊外ともお別れみたいだ」

「周りと景色とナナシの寝顔は私が見てるから、お兄ちゃんは運転に集中して。――それにしても、こんな郊外の端っこまで護衛してくれるなんて、シーザーたちって義理堅いね」

ナナシは寝息を立てながら、リンの膝を枕にして熟睡していた。

無論、最初からこんな感じだったわけじゃない、車に乗って数秒ナナシが車の外側に体重をかけ寝始めたのだがそれを隣に座っていたリンが横たわらせ己の膝に頭を乗せたのだ。

 

 

「それは、写真に撮って後で僕に送ってくれ――それにしても、ナナシが飛びこんだ時を思い出すと背筋が寒くなってくる――ナナシが安心して眠って家路についている今この時が、まるで夢みたいだ」

「うん――私もナナシが飛びこんでいった時、呼吸が止まりそうになったよ。落ちていくナナシをタダ見ていることしかできなかったから――」

「あの無力感――もう二度と経験することは無いと思っていたけれど――ちょうど、ここは都市の境目あたり、それにイアスやフェアリー、ナナシもいる――いい頃合いかもしれない」

無言で、アキラはハンドルを切り『Random Play』の社用車は大通りからそれる道へと進んで行く――

 

「アキラ、リンどうかした?」

何かを察したのかナナシが目覚める、寝顔を写真で取れなかったことを残念に思いながら目的地に進んで行く。

 

『案内ルートを外れました、助手二号。帰宅ルートを再探索します――』

「え?どうしたの、今日のご飯の食材が無いとか!?」

かなりの死活問題を勝手に想像し身震いするナナシ、だが予想とは裏腹にアキラの表情は穏やかだった。

 

 

 




ちなみにナナシがこんな自己犠牲を気にしないのもきちんと理由があるんですよ~
ヒントは”第37話・激闘!神vs魔神!!”と”第53話・聖剣とは”での話に少しあります。


そして、ここでやっとナナシの人格が固まりました。
実はSeason1~Season4を通してみるとナナシの言い方とかリンとアキラをパエトーンと読んで居たり、何だかふらふらしている印象を作っていました。


皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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